というわけで翌日。レイとシンジ、マイトによる3人で初号機に乗り込むこととなった。
その際、レイのプラグスーツ姿を見てシンジたちは驚愕する。
(おっきいねぇ)
(肉を食べないから細いのに、なんで必要な部分にしっかり肉がついてるのやら)
それだけ
それにしてもこのプラグスーツ、胸を強調しすぎではなかろうか。
(女の子の場合はこんなデザインになるのか。シンジはよく男物を着れたな)
(むぅ。ボクもすぐ大きくなるもん)
まあ今回の本題はそちらではなく、胸元に記された数字の方なのだが。
(レイが00ってどういうことだろ? ボクが渡されたのって01だったよね?)
(あれはファーストチルドレンの01だと思ったんだが、まさか乗機に合わせているのか?)
それこそあり得ないだろう。プラグスーツは個人専用だろうから、機体を乗り換えるたびに胸元の数字を変更するなんてことになってしまう。
男女でデザインの差が大きいことから考えると、あの01のスーツがレイの予備だったとも思えない。
ではこの数字の意味とは果たして。
(クローンナンバーとか)
(それだと00は
(ボクたちの専用スーツができたら分かるかな?)
(デザイン決めに難航してるとか言ってたが、早くしないと先に俺たちがリタイアしそうだな)
現在2人はテスト用の間に合わせで作ったスーツを着ている。染色していない素材の味を生かした見た目が見すぼらしいので、早くして欲しいものである。
「……………………」
レイは自分の胸元を凝視したまま考え込む2人の姿に、何かあったのだろうかと不安になる。
そんな彼女の様子に気付いた2人は何でもないよと返しつつ、エントリープラグに乗るよう促す。
「そういえばレイは、なんでコレに乗るの?」
ごまかすための話題転換もとい彼女の不安を取り除くため、シンジは世間話でもと考える。どうせならレイのモチベーションを確認して、今後の役に立てられたならと軽い気持ちで質問したのだが。
「……絆だから。みんなとの……碇司令との絆だから」
レイは自分の
果たして自分は、
果たして自分は、
今の自分が、本当に欲しいものは……
そしてさらにその発言は、シンジたちにも衝撃をもたらしていた。
(イカリシ・レイ……まさかゼロチルドレンって!?)
(なるほど。『レイ』の名を継いだとかそういうパターンもあるのか)
社長とかならともかく、司令という役職に馴染のない中学生である。さらに『碇』というあまり一般的でない苗字だったことも合わさり、『碇司令』という単語に結びつかなかったのだ。ここ10年、さらに
ちなみにマイトは最初の使徒戦後のネタバレで、黒幕が彼らの父親である『碇司令』だと知ったため、レイの言う『イカリシレイ』の正体に気付いたのだが。シンジの勘違いが面白いので乗ることにした。
(マイちゃん。ボク、分かったかもしれない)
(ほほう。聞こうか)
アイデアロールに成功したシンジは、これまで入手した情報から1つの可能性に気付く。
ゼロチルドレンであるイカリシ・レイが最初に居て。
地下の第2使徒から生まれた綾波レイが居て。
ならば第1使徒から生まれた男のチルドレンが居るのではないだろうか。
(仮にハジメ君だとして)
(第1使徒から生まれたファーストチルドレン、だからハジメ君か)
本来のレイはセカンドチルドレンだった。しかしファーストであるハジメ君が裏切って逃走、レイがファーストに繰り上がったのだ。
その騒動が元でゼロチルドレンもリタイアし、レイは彼女の意思を継ぐべく00のプラグスーツを身にまとっている、と。
(なるほど。01が男物だったのは、ハジメ君のものだったからか)
すべての話が繋がった。
(そしていずれ、ボクたちの前にハジメ君が立ちはだかるんだよ、きっと)
(レイちゃんが『敵となったあなたはもうチルドレンではない。使徒よ』とか言うんだな)
そして彼を倒すと、いよいよ黒幕が出てきてクライマックス突入である。
一時は追い詰められるも、絆パワーで覚醒したレイが世界中の人々と絆を結び、全人類の心を1つにして大逆転の必殺技を放つ。
黒幕は意味深なセリフを残して消滅し、そして世界に平和が訪れるのだ。
(シンジは凄いな。そこまで読めるとは)
(えへへー)
すっきりしたところでシンクロテストに集中する。レイをシートに座らせ、シンジたちはその横に待機する。
まずは確認として、シンジからシンクロを開始する。
突然シンジが消えたことにびっくりしているレイを
『シンジ君、どう?』
『はい、大丈夫です』
実験の指揮を執っているリツコは計器で確認しながら指示を出す。今回はジオフロント内の屋外?訓練場にて行われるため、移動がてら動きを観察する。
『何か違和感はあるかしら?』
『んー、特には。いつもと同じ感じです』
『ATフィールドは?』
『……問題なく張れますね』
シンジが操る初号機は普段と変わらない動きを見せている。レイという異物をプラグ内に抱えていても問題ないようだ。
一通り確認が終われば、次はいよいよレイの番である。
「それじゃあレイちゃん、俺たちも合体しようか」
「……」
レイがこくりと
(上手くいったようだな)
(いらっしゃーい)
(………………)
2人の姿は見えないのに、そこに居るという確信はある。
初号機は自分の肉体だと分かるのに、自分の意思で動かせないことに不安はない。
そんなよく分からない状態に少し戸惑う。
『シンクロできたみたいね』
『はい、レイもこっちに居ます』
こっちとは何処なのか。
リツコの中にそんな疑問が浮かぶが、感覚で動いているシンジに聞いても答えは返ってこないだろうと思い、実験を続ける。
先ほどの動作を繰り返し、レイがシンクロする前後での差分を確認する。
『んー、この状態でも普通に動かせます』
シンジの感覚でも違いは無さそうだし、計器のほうでも誤差の範囲に収まっている。どうやらここまでは問題なさそうだ。
『それじゃあレイに代わってくれる?』
『分かりましたー』
いよいよ本命である。
(よしレイちゃん、出番だ)
(……がんばる)
マイトに見送られ、シンジと交代する。というより交代させられる。やり方が分からなかったので、今回はマイトの手によって行われる。練習が必要だろう。
『………………』
今まで何度もシンクロテストを行ったが、ここまではっきりと操作できる感覚なのは初めてである。むしろ自分の身体よりも動かしやすいのは気のせいだろうか。
ゆっくりと身体の各所の動きを確認していると、それに気付いたリツコから通信が入る。
『レイ、聞こえる?』
『……はい、問題ありません』
自分では
これがいわゆる、腹から声を出すということか。
(腹話術じゃないかな?)
(どっちも違うぞ)
実際はマイトが初回搭乗時に
今の彼らは実際にエヴァンゲリオンになったわけではなく、仮想現実のアバターに憑依しているような感じである。
(……OVERSか。私の生徒に寄生しているな。何の用だ)
(竜を倒しに来た)
竜ではなく使徒を倒して欲しいものである。
そうやって遊んでいる間にも、表ではレイのテストが進められている。
リツコの指示通りに機体を動かしていくが、やはり最初は上手く行かない。自分の身体とも、零号機とも少し違う感覚に戸惑う。
しかしそこはやはりベテランパイロットである。すぐに順応する。
(やっぱり訓練してる人はスゴイね)
(レイちゃんの動きはカッコいいな)
2人の動きはどこまで行っても『運動神経の良い素人』でしかない。シンジは決断の速さと反射神経でごまかしているし、マイトは我流で格闘技っぽい動きになっているだけである。
それに対してレイの方は実戦を想定して訓練してきた結果がよく現れている。合理的な動きをしているので、素人目にもキレイに見えるのだ。
2人に褒められてテンションが上がり、レイの動きがますます良くなる。
(ボクたちも訓練に混ぜてもらえないかな?)
(パイロットだから行けると思うが、どうだろ)
各種検査や調査の合間に行われる彼らの訓練は、機体を使ったシミュレーションが主であった。これからは生身での訓練も必要だろうと考える。とはいえあまりやり過ぎると人の肉体という範囲で動くようになってしまい、せっかくのエヴァンゲリオンの機体性能を生かしきれないなんてことになってしまうので注意が必要だ。
『レイ、ATフィールドを』
『了解。展開します』
最後に無事ATフィールドを展開できたので、レイのシンクロテストが完了する。あとは再度シンジへと交代し、レイが操縦したことによる影響を確認したら実験終了となる。
『これなら初号機を失っても、シンクロ係として食べていけそうですね』
『縁起でもないこと言わないで』
シンジから飛び出した複数の意味で問題のある発言に、リツコは頭痛を覚えるのだった。