新せいきエヴァンゲリオン   作:七九六十

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3-2 第5使徒(ラミエル)戦 後編

 

 

 

 プラグスーツに着替えるため、更衣室へとやってきたパイロットたち。彼らの話題も使徒一色だ。

 

「ぜったいロボットに変形するって思ったのに……」

「爆発……」

 

 シンジとレイはまだ引きずっているようだ。着替える動作の中にため息が混ざる。

 

「使徒戦はまだ序盤、ってのを考慮に入れてなかったせいだな」

 

 そういうマイトの『体当たり』はちょっと捻りがなかった。使徒という人類の敵が取る手段としては、絵面が地味すぎて採用されないだろう。

 

「……ってレイちゃん」

 

 自然に会話を進めてしまったが、マイトはある事実に気が付いてしまう。

 

「脱ぎ散らかしたらダメだよ。軽くで良いから畳んでおきなさい」

「………………?」

 

 見れば、レイは着ていたNERV(ネルフ)の制服を無造作に脱ぎ捨て、床にそのままにしている。

 これでは服が汚れたり痛んだり、何より見栄えが悪い。

 

「ボクはちゃんと畳んだよ」

「いや、シンジの方もどうかと思うんだが」

 

 自慢げに指差す方を見てみれば。確かにキレイに畳まれているが、下着がそれと分かるように一番上に置かれているのはどうなのだろうか。

 

「でも、また着替えるときに手に取りやすいよ?」

「確かにそうなんだが、下着が表に出ているのはな」

 

 マイトにしても何が正解かまでは分からないので、自分の感覚がおかしいと訴えたという以上の事は言えない。

 なんせ彼は全裸で施設内を闊歩した(おとこ)なのだから。

 

 まあ何にせよ、今はレイのことである。服の畳み方を教えつつ、今後の子育てについてはマヤにも協力をお願いしないと、自分たちでは手に負えない範囲があると考えていた。

 

(女の子のことは分かんないもんねー)

(今はシンジもそうなんだから、一緒に勉強しないとな)

 

 しっかり畳めたレイの頭を撫でて褒めつつ、じゃれついてくるシンジに釘を刺すことも忘れない。

 

 そんなわけで着替えが終わり、初号機に乗り込むのだが。

 

「今さらだけど、3人しかいないパイロットがまとまって出撃って、リスク分散しなくていいのかな?」

「たしかに。言われてみればそうだな」

 

 戦力の逐次投入は愚策だが、まとめて一網打尽になる危険を考えないのはどうなのだろうか。特に今の初号機は3人で乗ることでパワーアップなんて機能は持っていないのだから、単にリスクが高まっているだけである。

 

「一緒が良い」

 

 そんな考えは、レイの力強い主張の前には意味をなさない。全部まとめて捨ててしまえばいい。

 彼女が自分の思いを(くち)にすることを、その成長ぶりを単純に喜べばいいのだ。

 

「まあ、レイちゃんが使徒戦、実戦を間近で経験するのは意味があるからいいか」

 

 今回の使徒は火力が高いので、レイを戦わせるのは不安である。しかしマイトが前面に出れば安全を確保できるので、一緒に居ることで特等席から観戦できるというメリットだけを甘受できる。

 

 ギュッと抱き着いて、絶対に離れないと全身で主張する彼女を(なだ)めつつ。そんなこんなで全員で初号機へと乗り込むことになった。

 現在行われている零号機の最終チェックが済み次第、レイはそちらに移ることになるのだ。こうやって一緒に乗るのも今のうちだけだろう。

 

「……!」

「え、無理だって?」

 

 首を左右に振って主張するレイに、シンジも同調する。

 

「マイちゃんが自分の機体を持ったら、ボクも独りになるんでしょ? それはイヤだよ」

「うーん、それだとパイロットが複数いる意味が薄くなるな……」

 

 この様子だと勤務シフトを交代でということもできないだろう。人数が増えた意味が本当に無くなってしまう。

 

「エヴァンゲリオン3体による合体技とか、やりたくないか?」

「う……」

 

 ロマンで釣ろうとするが、それでもダメだった。レイに続いてシンジまでギュッと抱き着いて、絶対に離れないと全身で主張する始末である。

 

「うーん、どうしたものか」

 

 おそらくこの先の戦いは、初号機だけでは乗り切れないような厳しいものになるだろう。回を追うごとに使徒はパワーアップしていくだろうし、複数で攻めてくる可能性だってある。

 どうにか複数機同時運用に持って行かなければならない。

 

「………………お、そういや良いモノがあるじゃないか」

 

 マイトは参考になる先達のことを思い出す。

 

 複数の巨大ロボットが登場して。

 パイロットたちは専用のスーツを着ていて。

 巨大ロボと融合する形で操縦して。

 自分たちと同じく月を舞台にしていて。

 

「………………え、なんでグランゾート?」

「いや、さっきの正八面体の使徒が巨大ロボットに変形するってヤツから連想されて」

 

 デカい顔かと思っていたら、あの変形である。

 

「それに、ウサギみたいな子もいるし」

「え?」

 

 グリグリとレイの頭を撫でる。

 気持ちよさそうに目を細める姿は、どちらかと言えばネコであろうか。最近、自分の半身に影響されてネコ化が進んでいる気がする。

 人類ネコ化もといネコ科というやつである。

 

 まあそれはともかく。

 あのパイロットたちは、いつの間にか全員がお互いを認識できる謎空間で接続されていたではないか。だったら自分たちもそうすればいいのだ。

 

「魔動機もある?」

 

 ワクワクしているシンジには残念なお知らせだが、さすがに魔動機は無い。チルドレンがすでに4人いるので、数が合わないのだ。

 それにそこまでやってしまうと、作品の方向性が変わってしまう。

 ……ファーストからサードまで女の子なんだから、むしろレイアースで行くか?

 

「プレートを銃に装填、とかやりたかったのに」

「たしかに。あれは何か惹かれるものがあるよな」

 

 何気に独楽(コマ)という他では見ない道具を使用しているのもポイントである。その点では弓は普通過ぎて残念である。

 じゃあ何がいいのかと言われると困るが……凧揚げとか浮かんでしまったが、さすがにコレはない。いくら風に乗る共通点があろうと、絵面がヒドい。

 

 

 

『そろそろ準備できた?』

 

 オペレータであるマヤから連絡が入る。シンジたちのシンクロ方法が人体消失マジックになっているため、他に知られぬよう彼女が事実上の専属のような扱いになっている。

 

「もう少しですね。そちらは使徒について何か分かりました?」

 

 実際には既に準備は終わっているのだが、それを伝えた途端『発進!』とかやられそうなので、情報収取のための時間を稼ぐ。

 シンジが素直に返事しそうになったのでその(くち)を塞ぎ、それを見ていたレイが催促してきたので空いてる手で彼女の(くち)も塞ぐ。

 

『行動や弱点なんかは分からなかったけど、あの攻撃は加粒子砲だったみたいね』

「加粒子砲?」

 

 荷電粒子を電位差や磁場を利用して加速させて打ち出す、まあすっごいビーム兵器である。粒子加速器といえば円形加速器、サイクロトロンが有名だが、今回は『円周部()加速』といっているので高電圧でも利用したのだろうか。

 

「なるほど、荷電粒子ですか……」

 

 本来なら直撃しなくとも結構な被害が発生するし、直撃したらもっと悲惨な被害が発生する代物(しろもの)である。

 

「どうするの? 普通なら攻撃を掻い潜って接近戦に持ち込む、って流れだけど」

 

 口元を覆っていた手から抜け出したシンジが問う。

 これまでの2体相手に近距離で戦った初号機としては、やはり自分の距離に持ち込むのがセオリーだろう。

 

「……いや、それだとダメだな」

 

 今回の攻撃は単発の砲弾が飛んでくるのではなく、しばらく当たり判定の残るビーム攻撃である。

 

「ああ、鉄雄おぉ~な感じで横なぎにされちゃうのか」

「街の被害がとんでもないことになるからな。受け止めないとマズいだろ」

 

 使徒のあの形状は、ビームを出しながら独楽(こま)のように回転することを想定しているのだろうか。まさかドリルは支柱の役割ももっているとか?

 さすがにそれをされると街が壊滅してしまう。バッテリー切れのあとに『汚ねぇぞ鉄雄! 素手で勝負しろぉ!!』とかは望めないので、自分たちでどうにかするしかない。

 

『こっちでも作戦を考えてるけど、どうにも良い案が出てこなくて』

 

 戦術作戦部と技術開発部による作戦会議ではいくつかの案が上がっているが、どれも決め手に欠けるために結論が出ていない。現状では情報が足りないのでもう少し威力偵察を続けよう、というのが今のところ優勢である。

 

「あ、じゃあ1つ、試してもいいですか?」

 

 というわけで、マイトの操る初号機によって威力偵察が行われることになった。いきなり切り札である初号機を投入するのはどうかと思われるが、過去の使徒戦を見れば今さらである。

 

 パイロット3人は初号機にログインし、地上に射出されるのを待つ。

 

 今回の目的は『初号機のATフィールドで使徒の攻撃を防げるかを確認する』というものであり、射出後に加粒子砲を受け、すぐに戻す手筈になっている。

 

『じゃあ予定通り使徒の目の前……目? 目ってどこよ? まあとにかく近くに出すけど、いいわね』

「はい、問題ありません」

 

 珍しく事前の確認が行われた。

 

『発進!』

『目標内部に高エネルギー反応! 円周部を加速、収束していきます!』

 

 使徒はやはりこちらの動きが見えているのだろう、予定通り即座にチャージが始まる。このままでは地上に顔を出した途端、狙い撃ちされてしまう。

 

 しかしマイトは余裕を持ってそれを受け入れる。

 

「たとえ不思議パワー(ATフィールド)を硬質化させても加粒子砲のビームを真正面から受けるのはかなり危険だ」

(それぜったいウソだよね)

(お父さんなら無くても大丈夫そう)

 

 いつも通り、これ見よがしに『ココから出てきますよ』と主張する射出口から初号機が姿を現す。使徒と初号機の間には(さえぎ)るものがなく、まさに正対するといった状況である。

 

 そして使徒は躊躇(ためら)うことなく、引き金を引いた。

 

「だからこうして斜めの角度ではじく」

 

 初号機から展開されたATフィールド、ではなく不思議パワー(ATフィールド)による磁場の力によって、荷電粒子の帯は弧を描くように曲げられる。それはぐるりと回転し、つまりは使徒に向かって一直線である。

 

『マ・ワ・シ・受ケ…………見事な……』

『そうじゃないでしょミサト!』

 

 あらゆる受け技の要素が含まれる廻し受け。受け技の最高峰であるが、今回はどちらかというとアイスラッガー返しである。

 

以子之矛(しのほこをもって)陷子之楯(しのたてをとほさば)何如(いかん)

(何だっけ、それ)

(矛盾)

 

 使徒にアイスラッガー返し返しをできるだけの技量がなかったため、そのままコアを貫かれて絶命した。

 

『いや、だったらATフィールド(たて)にぶつけなさいよ』

『矛で身体を突いたら、そりゃあねえ』

 

 もちろんいつも通り不思議パワー(ATフィールド)を奪い取り、爆発させる。地面に刺さっているドリルを消すのも忘れない。

 

『というか亜光速にまで加速された荷電粒子に、どうやって反応したのよ』

 

 リツコから呆れたような通信が入る。

 

「……荷電粒子に反応するといっても荷電粒子より速く動けるわけではありません。相手の眼球や手もとの動きからビームの軌道を読んだだけです」

(それぜったいウソだよね)

(お父さん手もとってどこ?)

 

 結果だけ見れば、初号機は指一本動かすことなく第5使徒に勝利したのであった。

 

 

 

 

 

 

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【決戦、第三新東京市】

 

 アスカ「しまった、使徒の攻撃よ! 盾を使って!!」

 

 

 アスカ「よし! 防げたわ!」

 

 

 レイ 「うーん、やっぱり盾は……立てられない」

 

 

 アスカ「どえええぇ!」

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