新せいきエヴァンゲリオン   作:七九六十

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3-8 第6使徒(ガギエル)戦 後編

 

 

 

 まあそれはそれとして、今は目の前の第6使徒である。

 

『エイ、か?』

 

(柔らかカブトガニ?)

(……ボーリングのピン)

(さすがにそれは無いわ)

 

 空中に固定されているのでじっくり観察できるのだが、正体がよく分からない。空母よりも大きいというのもあるが、身体が柔らかいため形が歪んでおり、全体像が把握できないのだ。

 これでは第2回使徒の正体を予想しよう大会の結果が出せない。由々しき事態である。

 

『マイト君、コアは見つかった?』

「……そういえば見当たりませんね」

 

 ミサトから通信が入り、使徒の弱点であるコアの存在を思い出す。これを破壊しない限り使徒は倒せない。ということになっている。

 ざっと見た感じでは体表にコアらしきものは見当たらない。となると体内にあるはずだが、巨体に合わせて巨大なコアだったらともかく、空母よりも大きな身体から探し出すのは骨である。

 

(セオリー通りだったら、頭部か心臓かな?)

(頭部……頭はどこ?)

(心臓って、エイの心臓ってどこにあるのよ?)

 

 締めた後ならともかく、生きている状態で(さば)くというのは気が引ける。できれば失神している今の状態のまま、一撃でトドメを刺したいのだが。

 

「とりあえず仮面の下……って、(くち)があるな」

 

 これまでの使徒は生物的な見た目をしていても(くち)を持っていなかったのだが、今回は大きなモノを備えていた。もしかしたらこれで攻撃するつもりだったのかもしれない。

 マイトの不思議パワー(ATフィールド)を使って(くち)をこじ開け、中を覗き込む。

 

(ウオノエが居たら、悲鳴を上げる自信があるよ)

(お兄ちゃん、私も)

(なんて気持ち悪いこと想像させんのよ……)

 

 どうやらウオノエは居なかったが、不思議な光景が広がっていた。ウツボに似た鋭い歯が生えているのはまあ予想できていたことだ。しかしなぜ、ピンク色の舌が存在しているのだろうか。食事からエネルギーを摂取する必要がないことから考えると効率よく飲み込むため、つまりこの使徒の最大の攻撃は『飲み込んで消化』なのかもしれない。

 

「ん? あの奥に見えるの、もしかしてコアか?」

 

 人間で言えば口蓋垂(のどちんこ)に当たる部分に、やけに自己主張の激しい赤い球体が見える。おそらくコアであろうが、ビームの発射口の可能性もある。

 

(2回続けてビームは無いんじゃないかな?)

(噛みついた後に(くち)からビーム……………斬新)

(逆流して頭が吹き飛ぶ未来が見えるんだけど?)

 

 というわけで、これはコアだという結論に達した。

 ならば後は破壊するだけである。

 

「ラングレー先生、お願いします」

 

(どぉーれー、て何やらせんのよっ)

 

 いよいよ真打登場、ということでアスカに代わる。いつもよりもスムーズに機体を動かせることに驚いていたが、そこは正規の訓練を受けたパイロット。すぐに順応したようだ。

 

 弐号機は肩のウェポンラックから合口(あいくち)もといプログレッシブ・ナイフを取り出し構える。カッターのように刃がせり出してくるが、こんな構造で強度は大丈夫なのだろうか。

 

(え、弐号機ってナイフ持ってるの?)

(いいなアレ。使えるかどうかはともかく、カッコいい)

(お兄ちゃんの初号機にも装備されてるわ)

 

 驚きの新事実である。初号機の無駄に長い肩パーツもウェポンラックだったのだ。

 ということは初出撃のときも装備されていたというわけで。なんで教えてくれなかったのだろうか。

 

(アレって『長い(あご)を固定することで、どんなに叩かれても絶対に脳は揺れない』をやるためだと……)

(じゃないとあの尖った(あご)に説明がつかないもんな)

(……エヴァって脳震盪、起こすの?)

 

「ちょっとは使徒のほうに集中しなさいよ」

 

 好き勝手に騒いでいる3人に対し、アスカは頭痛を覚える。一応は人類の存亡をかけた戦いのはずなのだが、この緊張感の無さはなんなのだ。

 

 ではあらためて使徒に向き直ると、それはそれでツッコミどころが見えてくる。

 

(ラングレー先輩、そのナイフでどう攻撃するの?)

(くち)の中に入るのはちょっとな……)

(生々しいピンクの舌は踏みたくない)

 

「うっ」

 

 ナイフを構えて決めポーズまでやっちゃった後だが、そもそもナイフが役に立つような場面ではない。(くち)の奥まで届きそうには無いし、たとえ投げたとしても破壊できないだろう。滑らかな表面の球体に刺さるには、よっぽど角度が良くないと無理そうだ。

 

「しょ、しょーがないじゃない! 他に武器無いんだし!」

 

 腕をぶんぶん振り回しつつそう主張しているアスカ。

 中身ならともかく、弐号機でそれをやるのはビジュアル的にアレだからやめて欲しい。機体の操作性が上がるのも考えものである。

 

(戦艦からミサイル撃ってもらう?)

 

「それじゃダメよ。弐号機が倒したことにならないわ」

 

 シンジの提案は退(しりぞ)けられる。

 よっぽど切羽詰まった状況ならともかく、これだけ余裕があるのなら倒す手段にも(こだわ)りたい。通常兵器で倒せるまで撃ち込む、なんてことができる絶好のチャンスなのだが、エヴァンゲリオンの優位性というか、パイロットとしての雇用を守るためにもここは弐号機で倒したい。

 

 ……そういう意味だと、弐号機の装備したプログレッシブ・ナイフで倒した場合はどうなるのだろうか。ナイフがあればエヴァンゲリオンでなくとも良い、なんてことになるのだろうか。

 これまでは初号機の拳(から叩き込まれた不思議パワー(ATフィールド))、サイキック・ソーサー(という名のATフィールド)、加粒子砲(を不思議パワー(ATフィールド)ではね返したもの)と、一応はエヴァンゲリオンでしかできないことで勝利しているので、今回もそのようにしたほうがいいのかもしれない。

 

(じゃあ、今回はこんな感じで行くか)

 

 今のアスカにATフィールドを攻撃に回すほどの技能は無い。ならばその部分についてはマイトが担当すればいい。

 つまりはアスカの身体を通して不思議パワー(ATフィールド)を展開すればいいのだ。

 

「んっ」

 

 アスカの体内にナニカが入り込んでくるような、同時にナニカに全身を包まれるような、不思議な感覚に襲われる。そこに不快感はなく、安らぎや温かさで満たされる。

 そしてそれはやがて右腕に集まり、外部へと(あふ)れ出す。握っていたナイフを媒介に、まるで刃が伸びたかのように光り輝く。

 

(霊気で剣を作り出した~)

(物質化能力か~)

 

 シンジとレイが騒いでいるが、強い霊力を帯びた道具(マイト)によって本当の力(ATフィールド)が導き出されたのだ。いずれは次元を切り裂くことすらできるようになるかもしれない。

 

(グレート動輪剣……)

 

 マイトの言葉に合わせて弐号機は右手を頭上に掲げ、刃を天へと伸ばす。

 大海原を進む空母の甲板にいたはずなのに、いつの間にか黄昏時の荒野のような背景に切り替わり、稲妻が(ほとばし)る。

 

『真っ向、唐竹割り!』

 

 アスカの、シンジの、レイの、そしてマイトの。

 4人の心が1つになり、弐号機は必殺技を繰り出す。振り下ろされた刃は使徒の肉体ごとコアを両断し、一拍おいてその巨体は爆炎に包まれる。

 

 それを背景に向き直り、ナイフを肩のウェポンラックへと収める。

 右手を降ろして自然体へと移行した弐号機は、4つの目のうち上2つを光らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

「……さっきのは、何だったのよ」

 

 初の使徒戦を終えたアスカは、再び肉体を取り戻していた。しかし思考が上手くまとまらない。風邪をひいたときのような、ふわふわとした感覚に包まれていた。

 

 自己を保つために、目の前の存在に(すが)り付く。

 抱きしめられることで、自分と他人の境界を認識する。

 

「神経接続による操縦ではなく、意識をエヴァンゲリオンに同化させて直接操縦したんですよ」

「わけわかんないんだけど」

 

 マイト自身も理屈は分かっておらず、不思議パワー(ATフィールド)でゴリ押ししているだけである。そんな説明でアスカが納得できるはずもない。

 

「普段よりも操縦しやすかったと思いますが、副作用もありまして……」

「………………?」

 

 言葉を(にご)したマイトが指差す先には、シンジとレイの姿があった。2人して何か作業をしている。どうやら何かを(ほど)いているようだ。よく見てみればそれは白やら青やら赤やら……

 

「どうもプラグスーツを着た姿での復活は苦手なんですよね」

「………………」

 

 見覚えがあると思ったが、あれはプラグスーツだったようだ。

 複雑に絡み合ったそれをシンジとレイが(ほど)いている。目の前にスーツがあるのだから、当然2人は全裸である。

 

 まあつまりは、今のアスカも全裸なのである。

 

「………………!?」

 

 そして彼女が抱きしめている目の前のマイトも全裸なのである。

 

「………………!?」

「お客様、密閉空間で大声を出されては困ります」

 

 アスカが叫び出しそうな気配を察知したマイトは彼女の(くち)を塞ぐ。ついでに暴れないように全身を拘束する。使用したのは第4使徒(イカ)の使っていたピンクの触手である。不思議パワー(ATフィールド)で拘束するイメージをしたときに出てきたのがコレだったのだ。

 

「なんだか、えっちぃね」

「………………?」

 

 ピンクの触手で拘束された少女を見たシンジの感想であるが、別に本当に性的興奮を得たわけではない。単に知識としてあったので、お約束を踏襲する意味で(くち)にしただけである。

 そしてそのどちらも無いレイは、何のことか理解できずに首を(かし)げるのだった。

 

 まあ、それはともかくとして。

 

 使徒を撃退したらお役御免の彼らと違い、アスカはこの後も弐号機の輸送任務を続けなくてはならない。

 港に着いたら陸揚げ、はまだ問題ない。しかしその後はどうするのか。機体の全長が40mから200mにもなる弐号機を、どうやって第三新東京市の地下空洞(ジオフロント)まで運ぶのだろうか。

 

 風力発電に用いる風車のブレードが40mほどであったか。特殊なトレーラーと交通規制の合わせ技によって陸路での運搬を行うというが、弐号機は横幅もあるため、一般道は通れそうにない。

 ……ストⅡのサガットステージにある涅槃像のように、横向きにしたらいけるか?

 

 もしくは掃除機のように、コンセントをリレーしていくのだろうか。第三新東京市ならともかく、それ以外の場所にコンセントが用意されているとは思えないので、そこは延長コードか、もしくは内部電源で駆け抜けるのだろうか。

 

 まさかここまで来て空輸なんてことは無いだろう。

 

 どのような手段を取るにせよ、パイロットであるアスカにも相応の負荷がかかる。だからこそ今は英気を養って欲しい。

 そういう思いから、彼女が無駄な体力を消費しないようピンクの触手で拘束したのだ。他意はない。

 

「お子様に配慮して触手を太くしてみたんだが……」

「なんかミシュランマンみたいだね」

「…………ムッシュ・ビバンダム」

 

 次に会うのは第三新東京市か、それとも新たな戦場か。

 4人は各々が複雑な思いを抱えたまま、道を2つに分かれるのだった。

 

 

 

 

 

 

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【アスカ、来日】

 

 アスカ「レイは?」

 シンジ「さっき海の方にいたよ」

 

 

 バシャッ

 

 

 バシャ

 

 

 アスカ「弐……弐号機でッッ! 鵜飼(うか)いをしているッッ!」

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