まあそれはそれとして、今は目の前の第6使徒である。
『エイ、か?』
(柔らかカブトガニ?)
(……ボーリングのピン)
(さすがにそれは無いわ)
空中に固定されているのでじっくり観察できるのだが、正体がよく分からない。空母よりも大きいというのもあるが、身体が柔らかいため形が歪んでおり、全体像が把握できないのだ。
これでは第2回使徒の正体を予想しよう大会の結果が出せない。由々しき事態である。
『マイト君、コアは見つかった?』
「……そういえば見当たりませんね」
ミサトから通信が入り、使徒の弱点であるコアの存在を思い出す。これを破壊しない限り使徒は倒せない。ということになっている。
ざっと見た感じでは体表にコアらしきものは見当たらない。となると体内にあるはずだが、巨体に合わせて巨大なコアだったらともかく、空母よりも大きな身体から探し出すのは骨である。
(セオリー通りだったら、頭部か心臓かな?)
(頭部……頭はどこ?)
(心臓って、エイの心臓ってどこにあるのよ?)
締めた後ならともかく、生きている状態で
「とりあえず仮面の下……って、
これまでの使徒は生物的な見た目をしていても
マイトの
(ウオノエが居たら、悲鳴を上げる自信があるよ)
(お兄ちゃん、私も)
(なんて気持ち悪いこと想像させんのよ……)
どうやらウオノエは居なかったが、不思議な光景が広がっていた。ウツボに似た鋭い歯が生えているのはまあ予想できていたことだ。しかしなぜ、ピンク色の舌が存在しているのだろうか。食事からエネルギーを摂取する必要がないことから考えると効率よく飲み込むため、つまりこの使徒の最大の攻撃は『飲み込んで消化』なのかもしれない。
「ん? あの奥に見えるの、もしかしてコアか?」
人間で言えば
(2回続けてビームは無いんじゃないかな?)
(噛みついた後に
(逆流して頭が吹き飛ぶ未来が見えるんだけど?)
というわけで、これはコアだという結論に達した。
ならば後は破壊するだけである。
「ラングレー先生、お願いします」
(どぉーれー、て何やらせんのよっ)
いよいよ真打登場、ということでアスカに代わる。いつもよりもスムーズに機体を動かせることに驚いていたが、そこは正規の訓練を受けたパイロット。すぐに順応したようだ。
弐号機は肩のウェポンラックから
(え、弐号機ってナイフ持ってるの?)
(いいなアレ。使えるかどうかはともかく、カッコいい)
(お兄ちゃんの初号機にも装備されてるわ)
驚きの新事実である。初号機の無駄に長い肩パーツもウェポンラックだったのだ。
ということは初出撃のときも装備されていたというわけで。なんで教えてくれなかったのだろうか。
(アレって『長い
(じゃないとあの尖った
(……エヴァって脳震盪、起こすの?)
「ちょっとは使徒のほうに集中しなさいよ」
好き勝手に騒いでいる3人に対し、アスカは頭痛を覚える。一応は人類の存亡をかけた戦いのはずなのだが、この緊張感の無さはなんなのだ。
ではあらためて使徒に向き直ると、それはそれでツッコミどころが見えてくる。
(ラングレー先輩、そのナイフでどう攻撃するの?)
(
(生々しいピンクの舌は踏みたくない)
「うっ」
ナイフを構えて決めポーズまでやっちゃった後だが、そもそもナイフが役に立つような場面ではない。
「しょ、しょーがないじゃない! 他に武器無いんだし!」
腕をぶんぶん振り回しつつそう主張しているアスカ。
中身ならともかく、弐号機でそれをやるのはビジュアル的にアレだからやめて欲しい。機体の操作性が上がるのも考えものである。
(戦艦からミサイル撃ってもらう?)
「それじゃダメよ。弐号機が倒したことにならないわ」
シンジの提案は
よっぽど切羽詰まった状況ならともかく、これだけ余裕があるのなら倒す手段にも
……そういう意味だと、弐号機の装備したプログレッシブ・ナイフで倒した場合はどうなるのだろうか。ナイフがあればエヴァンゲリオンでなくとも良い、なんてことになるのだろうか。
これまでは初号機の拳(から叩き込まれた
(じゃあ、今回はこんな感じで行くか)
今のアスカにATフィールドを攻撃に回すほどの技能は無い。ならばその部分についてはマイトが担当すればいい。
つまりはアスカの身体を通して
「んっ」
アスカの体内にナニカが入り込んでくるような、同時にナニカに全身を包まれるような、不思議な感覚に襲われる。そこに不快感はなく、安らぎや温かさで満たされる。
そしてそれはやがて右腕に集まり、外部へと
(霊気で剣を作り出した~)
(物質化能力か~)
シンジとレイが騒いでいるが、
(グレート動輪剣……)
マイトの言葉に合わせて弐号機は右手を頭上に掲げ、刃を天へと伸ばす。
大海原を進む空母の甲板にいたはずなのに、いつの間にか黄昏時の荒野のような背景に切り替わり、稲妻が
『真っ向、唐竹割り!』
アスカの、シンジの、レイの、そしてマイトの。
4人の心が1つになり、弐号機は必殺技を繰り出す。振り下ろされた刃は使徒の肉体ごとコアを両断し、一拍おいてその巨体は爆炎に包まれる。
それを背景に向き直り、ナイフを肩のウェポンラックへと収める。
右手を降ろして自然体へと移行した弐号機は、4つの目のうち上2つを光らせるのだった。
◆
「……さっきのは、何だったのよ」
初の使徒戦を終えたアスカは、再び肉体を取り戻していた。しかし思考が上手くまとまらない。風邪をひいたときのような、ふわふわとした感覚に包まれていた。
自己を保つために、目の前の存在に
抱きしめられることで、自分と他人の境界を認識する。
「神経接続による操縦ではなく、意識をエヴァンゲリオンに同化させて直接操縦したんですよ」
「わけわかんないんだけど」
マイト自身も理屈は分かっておらず、
「普段よりも操縦しやすかったと思いますが、副作用もありまして……」
「………………?」
言葉を
「どうもプラグスーツを着た姿での復活は苦手なんですよね」
「………………」
見覚えがあると思ったが、あれはプラグスーツだったようだ。
複雑に絡み合ったそれをシンジとレイが
まあつまりは、今のアスカも全裸なのである。
「………………!?」
そして彼女が抱きしめている目の前のマイトも全裸なのである。
「………………!?」
「お客様、密閉空間で大声を出されては困ります」
アスカが叫び出しそうな気配を察知したマイトは彼女の
「なんだか、えっちぃね」
「………………?」
ピンクの触手で拘束された少女を見たシンジの感想であるが、別に本当に性的興奮を得たわけではない。単に知識としてあったので、お約束を踏襲する意味で
そしてそのどちらも無いレイは、何のことか理解できずに首を
まあ、それはともかくとして。
使徒を撃退したらお役御免の彼らと違い、アスカはこの後も弐号機の輸送任務を続けなくてはならない。
港に着いたら陸揚げ、はまだ問題ない。しかしその後はどうするのか。機体の全長が40mから200mにもなる弐号機を、どうやって第三新東京市の
風力発電に用いる風車のブレードが40mほどであったか。特殊なトレーラーと交通規制の合わせ技によって陸路での運搬を行うというが、弐号機は横幅もあるため、一般道は通れそうにない。
……ストⅡのサガットステージにある涅槃像のように、横向きにしたらいけるか?
もしくは掃除機のように、コンセントをリレーしていくのだろうか。第三新東京市ならともかく、それ以外の場所にコンセントが用意されているとは思えないので、そこは延長コードか、もしくは内部電源で駆け抜けるのだろうか。
まさかここまで来て空輸なんてことは無いだろう。
どのような手段を取るにせよ、パイロットであるアスカにも相応の負荷がかかる。だからこそ今は英気を養って欲しい。
そういう思いから、彼女が無駄な体力を消費しないようピンクの触手で拘束したのだ。他意はない。
「お子様に配慮して触手を太くしてみたんだが……」
「なんかミシュランマンみたいだね」
「…………ムッシュ・ビバンダム」
次に会うのは第三新東京市か、それとも新たな戦場か。
4人は各々が複雑な思いを抱えたまま、道を2つに分かれるのだった。
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【アスカ、来日】
アスカ「レイは?」
シンジ「さっき海の方にいたよ」
バシャッ
バシャ
アスカ「弐……弐号機でッッ!
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