第拾話 マグマダイバー
第拾壱話 静止した闇の中で
第拾弐話 奇跡の価値は
第拾参話 使徒、侵入
・アスカとユニゾンして満足したのか、そこで連載が止まる作品が多い気がする。
・どれだけミサトアンチなスパシンでも、落下する使徒を受け止める作戦に対してはトーンダウンするよね。今回だけ特別に従ってやる、とか。
・A-17、D-17、17秒もつ盾、第17装甲板、垢落とし17回、17体の使徒……
新世紀エヴァンゲリオンという作品には『17』という数字が多く使われている。
つまりEver17ということだろうか。
4-1 炎の転校生
立て続けに3体の巨大怪獣?の襲撃を受けた第三新東京市。
それに加えて迎撃用の巨大ロボまで現われ、市民は気付く。
「あ、このまま
実際に逃げ遅れた人や野次馬が犠牲になっていたりする。
そんなわけでどんどん人口が流出している中、それとは逆向きに動く物好きも居たりする。
「惣流・アスカ・ラングレーです! よろしく!」
その内の一人が、市立第壱中学校2年A組に転入したセカンドチルドレンである。
彼女は笑顔を浮かべたまま、教壇の上からクラスを見回す。巨大怪獣の被害や疎開によって人数が半減しているため、すぐに全員の顔を把握できたのだが。
「………………?」
お目当ての人物たちが見つからない。
「………………あれ?」
◆
一部界隈では使徒と呼ばれる巨大怪獣であるが、その姿・特性は様々であった。
ではそれを迎撃する任務を帯びたパイロットたちは、どう備えればいいのか。彼らの乗る巨大ロボ・エヴァンゲリオンをどう運用すればいいのだろうか。
「そろそろそっちに追い込むぞ」
「大丈夫、準備はできてるよ」
「しっぽは任せて」
パイロットたちが所属する特務機関
そこでパイロットたちは考えた。
MAGIのスペックを利用して、考え得る限りの疑似使徒との戦闘をシミュレーションすればいいのではないだろうかと。
そして同時に思った。
それはいいけど、いちいち考えるのがメンドイなと。
「あ、コイツ意外と固いんだね」
「前回のヌメヌメ系よりはマシだけどな」
「しっぽ切れた」
そこで目を付けたのが日本の特産品である。つまり漫画やアニメ、ゲーム、特撮作品に登場するモンスターや怪獣なんかと戦うのだ。
体重100kgのかまきりりゅうじとか、スイミー率いる群体型巨大生物との熱いバトルを楽しもうというのだ。
しかしここで問題になったのが、現在使用しているシミュレーション設備である。
ゲームセンターにあるガンシューティングゲームのほうが
そんな
「だいぶ弱ってきたね」
「もう一息ってとこだな」
「つのも欲しい」
というわけで早速、新しい訓練施設を用意することになった。
幸いなことに
ちなみにこの立体映像、MAGIの中にあった「謎のモノリスを立体表示するプログラム」を流用している。技術局員のマヤが見つけてきたもので、本来の用途は分からないが今回のプロジェクトでは大活躍している。
「……もしかして倒した?」
「やっぱ爆発させたほうが分かりやすいかもな」
「それだと剥ぎ取りできないから、ファンファーレのほうが良い」
街並みとモンスターの映像だけでも大迫力のアトラクションとなったが、やはり触覚に訴えるものが欲しい。そこで目を付けたのが、マイトが使用しているプラグスーツ、と表向きにはなっているウォードレス・
ということで使徒戦で貯めた発言力で陳情したところ、それ用にカスタマイズされたウォードレス(背中に電源ケーブル付き)と制御用プログラムが届いたのだ。
MAGIの高い演算能力とこのウォードレスが合わされば、実にリアルな戦闘が楽しめる。しかも利用者はパイロットたち3人だけで待ち時間なし。さらには施設利用料は無料どころか、これは仕事の一環なので遊んでいるだけで給料が出る。まさに言うことなしである。
そんな娯楽施設の数少ない欠点はといえば、やはりシャワー室だろうか。
「せまいねー」
「せまい」
「そりゃあ1つのブースに3人で入れば狭いだろ。隣に移りなさい、隣に」
シンジとレイが不満の声を上げるが、それで何が変わるわけでもない。
お湯が途中で水になるとか、水圧が足りないとかではないので、狭いくらいは我慢してほしいところである。
まあその代わりといってはなんだが、シャワー室の出口に設置されている自動販売機には瓶の牛乳、コーヒー牛乳、フルーツ牛乳が
3つの中からそのときの気分で選択し、腰に手を当て一気に飲むのが最近の日課である。
シャワーで火照った体を冷たい牛乳と業務用の巨大扇風機で冷ました3人は、これまた併設されている休憩室で体力の回復を図る。
暗い室内。
プロジェクターで天井に映画を流し、3人はそれを寝転がって見ている。
穏やかな時間が過ぎていくが、映画が残り30分となったタイミングでそれは壊される。
使徒の襲来である。
「ちょっとアンタたち!!」
「…………あれ、ラングレー先輩?」
正確にはまだ使徒ではなかったようだが、まあ似たような
部屋のドアを乱暴に開け放ったアスカが室内の3人に向かってこれまた乱暴に呼びかける。
「学校も行かずに何して…………って、え、何見てんのよ?」
「……内容は実に
アスカのほうには目も向けず、マイトは解説する。
「だがエンディングがとてもきれいな曲なんだ」
そこまで言って、ようやくユラリと立ち上がる。
「それが流れる頃にはこのトンネルは完成する」
「トンネルなんてどうでもいいのよ」
「ってどう見てもアンパンマンじゃないのよ。全然話が違うじゃないの」
「結構合ってると思うんだけど」
愛と勇気だけが友達な人が主役だし、劇場版のボスはそこらの悪役では到底太刀打ちできないほどの規模で
シンジの発言にレイもうんうんと
一先ず
「で、どうしたんです?」
「何でアンタたちは学校に居ないのよ、って話よ」
朝クラスメートの前で転校の挨拶をした際に、同じクラスだと聞いていた3人の姿が見当たらなかったのである。そのため文句を言いにこうして乗り込んできたのである。
「学校…………」
そういえばそんなものもあったなとシンジは思い出しつつ、言われてみれば目の前に居るアスカが着ている制服に見覚えがあることに気付く。最初の使徒戦が終わったころに、退院したレイが着ていたものと同じなのだ。
「義務教育なんだから、学校に行かないとダメじゃない」
「その制度はセカンドインパクトのときに破綻したよ?」
地軸が傾く天変地異に加えて首都が物理的に消えた混乱期に、悠長に学校に通える人間がどれほどいたであろうか。あれから15年ほどたった現在であっても、満足に教育を受けられる環境にない者は多いのだ。
「それにあれは親が子供に教育を受けさせる義務だし。ボクたちに親は居ないよ?」
「うっ」
確かにそれはそうなのだが、そうすると張り切って登校したアスカの立場が無いではないか。
「しかもボクたちは、いつ来るか分からない使徒に備えなきゃいけないんだから、学校行ってる暇なんてないよね?」
「うう」
真新しい制服を見てテンションが上がって忘れていたわけではない。
「そもそもラングレー先輩は大学出てるんだよね? 今さら中学校に行く必要ないよね?」
「ううぅ」
凡百の中学生ども相手に無双できる学生生活って最高、とテンションが上がって忘れていたわけではない。
「それに
「それがね……」
ちゃぶ台を広げお茶を用意し、茶菓子を片手に聞くも涙、語るも涙な話が始まる。
使徒戦の後にシンジたちとは別口で第三新東京市へとやってきたアスカ。これからは本部所属となるため、当然どこに住むのかという話になった。しかしそこは我らが
どうやらあまりにも使徒戦が簡単に終わるため、全体的に気が抜けているようなのだ。
取り合えずでその日はホテルでの宿泊となったのだが、いつまでも住所不定のままでは不味い。
なので
ドイツ時代の顔見知りであり、彼女の自宅が地上にある広めのマンションだということもあり、その話に飛びついたアスカ。
つまり「ウチくる?」「行く行く」という感じである。
「そこまでは良かったんだけどね……」
仮にも国連の非公開組織に所属するお偉いさんの自宅である。下手な業者に立ち入らせるわけにはいかず、そのため駆り出された荷物持ちの職員と共に向かった先にあったのは、想像を絶するような光景であった。
ぶっちゃけゴミ屋敷である。
アルコール飲料の缶やビンに始まり、汚れた食器に弁当や出前のピザの空箱、開封済みのお菓子の袋に使用済みの割りばし等々。
ガラクタが大量にあるタイプではなく、純粋にゴミだけのゴミ屋敷である。
セカンドインパクトにより常夏の国となった日本でこれは致命的であり、黒い同居人もたっぷりである。心なしか大きくて色艶も良い感じである。
『ちょっと、これどーゆーことよっ!?』
『大丈夫よ、帰って寝るだけの生活なんだし』
『その寝るためのスペースすらないじゃない!』
『大丈夫よ、使徒が来る前後はどーせ本部に泊まり込みだし』
『そうじゃないでしょミサト!』
とまあそんなやり取りがあって、こんなところに住めるかというアスカのワガママにより同居は解消されたのだった。
「で、新しく住むとこを探してたんだけど」
日本の生活様式に慣れていないため、近くに知り合いが居た方が良いのは確か。結局ミサトと同じマンションに居を構えることになったのだが。
ここで手続き上の問題が発生したのだ。
ミサトと同居するということで書類を作成、申請してしまっていたため、実際の住所とはズレてしまっている。しかし訂正しようにも一部は処理中ということもあり、簡単には変更できない。なので一度すべての処理が終わってから、改めて住所変更の申請が必要になったのだ。
「住所が確定していないと編入手続きもできないから、今日が初登校になったのよ」
「大変だったんだねー」
彼女の深いため息からは苦労が
「ということは、ラングレー先輩は一人暮らしか」
「家事とか大丈夫なの?」
「……少なくとも、ゴミはちゃんと捨てるわ」
ドイツ時代は寮生活のようなものだったし、大丈夫なはずだ。
ちなみにレイも料理はともかく、一人暮らし歴は長いので最低限の家事はできる。生きる意欲があまり無かったので、本当に最低限ではあるが。
シンジは『尽くす女』と称される
マイトは昭和のダメおやじ程度には、という感じである。
その後もお茶のお代わりとともに茶菓子を食べつくすまで話を続けたアスカ。
生活基盤が安定していなかったことがストレスだったのか、ミサトのズボラさへの愚痴とともにいろいろと吐き出した彼女は、スッキリとした表情で帰っていったのだった。
◆
「って違うわよ、学校よ学校! アンタたちも学校に来なさいよ!」
「えー?」
翌日。再び夕方にアスカが押しかけて来た。
なんだかんだと放課後まで学校にいたようだ。
「なんでアタシだけ学校行かなきゃいけないのよ」
「むしろ何でラングレー先輩は真面目に登校してるの?」
シンジにとっても、そして横で
それが彼女の生真面目さから来たものなのか、それとも他から来たものなのか。
まだそれほど親しくない間柄のため、推測する材量すらない。
「……確かラングレー先輩の学校って、市立でしたよね?」
そこでふと、マイトが余計なことに気付いてしまう。
それがどうしたと視線を向けるアスカに、残酷な事実を突き付ける。
「だったらどちらにせよ、ラングレー先輩は独りで通学することになりますね」
「……え?」
「あ、そうか。学区が違うね」
同じ第三新東京市に住んでいるとはいえ、アスカは地上、シンジたち3人は地下と別れている。最寄りの中学校というのも当然異なっているのだ。
誰かからか全員が同じクラスだと聞いたらしいが、そんなはずはない。
「…………え?」
「越境入学は無理そうだし、諦めるしかないね」
どちらかが引っ越せばその限りではないが、面倒なので黙っておく。
「………………え?」
何やらアスカがえらくショックを受けているようだが、理由は分からない。
やはり推測するには材料が足りない。
裸の付き合いがあるとはいえ、知り合ってまだ半月の間柄である。お互いを理解するには足りない。
とはいえ、ショックを通り越して落ち込み始めている人を目の前に何もしないというのもアレなので、マイトは1つ提案する。
「まあまあラングレー先輩、気分転換に使徒でも倒しに行きませんか?」
「……………………え?」
「明日の昼くらいに到着するらしいんで」
「…………………………え?」
「身体を動かしてればイヤなことも忘れますって」
「………………………………え?」