過去最大級の使徒を
このままではパワーアップしていく敵に対処できなくなるため、こちらもパワーアップしなければならない。
というわけで今回はその一環として、オートパイロットの実験である。これが完成すればパイロット無しにエヴァンゲリオンが動かせる、つまりは裏で建造している量産機も戦えるようになるのだ。
「ほら、お望みの姿になったわよ。17回も垢を落とされてね!」
全裸のアスカが吠える。
ここまで何度も何度も全身を洗浄され、ようやくそれが終わってクリーンルームに通されたのだ。あまりの面倒さに不満も出てくるというものである。
というのも今回の実験はプラグスーツの補助無しにシンクロテストを行って、そのデータを取りたいのだが。エントリープラグ内をLCLで満たし、そのLCLを肺に取り入れることで呼吸している関係上、できるだけキレイな状態で搭乗する必要があるのだ。
「え、でもそもそもプラグスーツ姿でそこらを歩き回ってるし、いつも結構汚れてるよね?」
「呼吸用のはそれ専用にマスクとかで供給してほしいよな」
シンジもマイトもその説明に納得していないようだ。なんなら血まみれの包帯姿だったり、1日外を歩き回った学生服姿で乗った世界があるらしいし、今さらの話である。
「お父さん、お肌すべすべ」
「レイちゃんはいつもつるつるすべすべな気がするが」
そんなことはお構いなしに、この感動を分かち合おうとばかりにじゃれついてくるレイを抱きとめ、確かに今回はすごいなとマイトは感心する。
エステの比ではなく、もはや皮膚を削り取る勢いでキレイにされたのだ。これなら清潔係も反逆者とは言えまい。
というかいくらクリーンルームでも、こうやって他人と接触できるのはどうなのだろうか。
『では4人とも、この部屋を抜けてその姿のままエントリープラグに入ってちょうだい』
室内に備え付けられたマイクから、リツコの指示が聞こえる。
「それはいいけどリツコ、なんで4人いっぺんになのよ。普通は思春期の男女に対する配慮とかあるでしょ」
まあこのメンバーなら慣れてるからいいけど、と付け加えながらも、アスカは一応の抗議を入れる。
『………………視聴率のためにはサービスシーンが必要なのよ。1人ずつよりも複数の女の子が同時に画面内に映ってたほうが
「ロボットアニメなんだから、熱い戦闘シーンで稼ぎなさいよ」
彼女のツッコミはもっともなのだが、盛り上がらない戦闘シーンばかりでもはや信用が無いのだ。
戦闘終了時の爆発こそお約束通り派手だが、それ以外は実にあっさりとした内容で、これでは視聴者が楽しめない。
「だったら次の使徒は私が派手にやっつけてやるわよ」
『期待してるわ』
腕を組んで胸を張り、アタシに任せなさいと主張するアスカ。
その素晴らしい光景の横には冷や汗を流す2人組がいる。
(次の使徒…………)
(もうやっちゃったんだよなぁ)
実はシンジたち4人が
カビというかシミというか、とにかく
アレが使徒だったことにレイもアスカも気付いておらず、ただの掃除だったと思っていたりする。
(今回もまともな戦闘シーンは無しだね)
(それに加えて次は
こうなったらサービスシーンに賭ける他は無い。水着、温泉ときてさらに全裸を重ねるというなりふり構っていられない状況なのだ。
ちなみに余談だが、一部地域では実際にこのあたりで放送打ち切りになっていたりする。
なので本当にサービスシーンは大事なのだ。決して趣味で入れている訳ではないのだ。
「……サービスシーン、の割にはまったく反応してないわね」
いつもの雄々しさはどこいったのよと、アスカはサービスの向かう先を眺める。
それはまさに明鏡止水そのものであった。
「これでもTPOはわきまえているので。男らしさはINするときだけで十分ですよ」
ここでTPOにINしたマイトがハイパーモードに移行したら放送事故である。
暴走したらそれはそれで視聴率が取れるかもしれないが、ジャンルが熱血ロボットアニメから変わってしまうので避けたいところである。
まあそれはともかく、彼としては確認しておきたいことが1つある。
「そういう意味だとTV放送時にはいい感じに小物で隠されてたり、謎の光で見えなくなるからいいんですが、もしかしてそこのカメラ使ってそちらから全部見えてます?」
「あ、それアタシも気になるっ」
彼らが入ってきたのとは反対側、つまり正面からめっちゃこっち見てるカメラがある。これは実験の一環なので、当然リツコたち技術局員たちがその向こうにいるわけで。
『大丈夫。映像モニタは切ってあるわ。プライバシーは保護してあるから』
「そうきましたか」
「見えてないなら安心ね」
普段であれば彼らの様子を視覚的に観察できるよう映像を流しているモニタについては、特別にすべての電源が落とされている。今回は実験が実験だけに、パイロットたちは終始全裸での行動となるためである。
それを聞いたマイトは録画もされていないことを確認し、この数分間の映像と記憶を消すために用意していた
『とはいえ何かあったら大変だから、サーモグラフィによるモニタリングは続行してるの』
こうして音声によるやり取りはできるとはいえ、やはり何も見えないというのは味気ないもとい心配なので、プライバシーに配慮した形で監視できるようにしてあるのだ。
『だから、あなたたちがYMCAごっこして遊んでるのは分かるわ』
「やっぱ見えてるじゃないのっ!?」
慌てたAスカがMァイトの背中に隠れる。
その横で
『そこまでハッキリとは見えてないから安心しなさい』
とはいえある程度の個人が特定できるだけの映像ではあるわけで。
例えば髪の毛。
血が通っていないため周囲より温度が低くなっており、髪型や長さは判別できる。
「アスカは分かりやすいですね」
「1人だけ長いものね」
モニタを覗いていたマヤとミサトはすぐに分かったようだ。
腰までとは言わないが、背中の半ばまで届く長い髪はアスカだけである。次に長いのは肩口まで伸ばしているシンジと、それを真似して伸ばし始めたレイである。
例えば身長。
今回のように段差のない場所でお互いを比較できるような立ち位置であれば、その大小くらいは判別できる。
そのため同じような高さに頭のある3人はレイ・シンジ・アスカ。残りの1人……
「! いた!!」
マヤが指差す先には、他の3人とは違い頭部だけが真っ黒に塗りつぶされた、人の形をしたシルエット。
「こいつです!!」
人間の中に紛れ込んだパラサイトを見分けられた決定的な瞬間であった。
「…………ねえマヤ、それマイト君に仕込まれたの?」
「さっき、サーモグラフィで監視してるって話のときにぜひって」
えへへと笑うマヤとは反対に、リツコは頭痛をこらえるように頭を押さえる。
ただでさえ地下のアレがアレしてオートパイロットの開発が暗礁に乗り上げており、この実験自体が意味をなさなくなっているのだ。もはや予定を組んでしまったから以上の理由がない状況で進行しているくらいなので、さらに訳の分からないモノを重ねないで欲しい。
『自分が人間だと思うのなら、おとなしく我々の指示に従え』
リツコの心の中にいる二佐がそう叫ぶのであった。
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【使徒、侵入】
メルキオール が乗っ取られた
バルタザール が乗っ取られた
カスパー が乗っ取られた
レイ 「……」
レイ 「はい」
レイ 「じゃ、いってくるわ」
アスカ「どこへよ」
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