新せいきエヴァンゲリオン   作:七九六十

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5-3 第12使徒(レリエル)

 

 

 

 さて、総集編(ふりかえり)という名の尺稼ぎが終わればまた作画のレベルが戻り、動きのバリバリあるアニメになる。

 とはいかないのが現実の厳しいところ。

 

「今回の使徒、手抜き過ぎない?」

 

 シンジの視線の先にある発令所のモニタには、第三新東京市に突如として現れた使徒の姿が映し出されている。その姿は空中に浮かぶ巨大な黒い球体で、白い線状の模様が入っているシンプルな見た目である。

 つまりは手抜きである。

 

 見た目だけでいえば第5使徒(ミョウバン)も手抜きであったが、生物的な見た目が続いた後に突然無機物的でシンプルなものが来たこと、それに加えて少し(ひね)った八面体というのもあって逆にインパクトがあったのだが。

 

「せめて模様が動くとかあればなあ」

「1677万色に輝いて欲しい」

 

 マイトとレイも不満なようだ。

 

「もしかして、使徒の方向性ってずっとコッチ……? だとするとアタシのこれまでの訓練って……」

 

 アスカは不安のようだ。

 彼女が何年も正規パイロットとして訓練してきた成果は、今のところ無抵抗の第7使徒(アリクイ)を一刀両断したことくらいである。

 その高い戦闘技能が活かされる日はくるのだろうか。(反語)

 

「ホントに手抜きね。影をただのベタ塗りで、しかも真下に描くだなんて」

「そうじゃないでしょミサト、影はそっちじゃなくて横のビルに……」

 

 ため息とともに吐かれたミサトのセリフを訂正しようとしたリツコだが、自分のセリフに引っ掛かりを覚える。

 

 再度メインモニタに映る使徒の姿をよく観察する。

 空中に浮かぶ黒い球体。白い線で模様が描かれているが、それ以上のことは不明。

 そしてその真下には黒い影。しかしそれは周囲の他の影に比べてはっきり分かるほど黒く、光源の位置を無視して常に使徒の真下に存在している。

 

 それに気づいた一同。

 

「あれ絶対、下の黒いヤツが本体だよね」

 

 可能性としては上下で2体の使徒というのも考えられる。RPGのボスでよくある、攻撃と補助の役割を分担したモノである。

 しかしその場合、画面映え(インパクト)の面から考えると今回のような手抜きの無機物チックな使徒では選択しないはずである。今まで一体ずつしか来なかった使徒が同時に複数体、なんておいしいシーンはもっと派手な戦闘が予想される、それこそアスカが望む格闘戦が行えるような形態の使徒で使ったほうが視聴率が取れる。

 

 よって今回の使徒はチョウチンアンコウ型、上の球体を使徒だと思って攻撃したら下から強襲される的なタイプだと予想された。

 

「この場合、チョウチンに攻撃しても意味ないよね?」

「おそらく何の効果もないだろうな」

「…………爆発する」

 

 デコイ部分にダメージ判定を付ける必要はないため空振りするだけであろう。レイの大好きな爆発は起きそうにない。

 

「……逆に言えば、無限に派手な格闘戦を続けられる?」

 

 もしかして目立つチャンスなのではとアスカが可能性を探る間に、大人たちは話を進めていく。

 

「下が本体なのはいいとしても、弱点のコアはどこにあるのよ」

 

 使徒は必ずその身に赤い球体を宿している。少なくとも今まではそうだったので、ミサトはモニタに映る黒い影からそれを探そうとする。

 しかし見つからない。

 厚みがあるのかすら分からないほど薄いその身体では、球体を隠すことなどできそうにないのだが。

 

「おそらくあの影は、四次元ポケットもしくはどこでもドアなのよ」

 

 リツコは他の技術局員から送られてきた観測データ、解析結果をもとに判断する。

 厚さ約3ナノメートル。これまで使徒のコアの形状が変わらなかったことから考えると、おそらくそういうことなのだろう。

 

 あの影のようなものが使徒本体で、体内が四次元ポケットのように広がっているパターン。

 あの影は使徒の能力によって作られたどこでもドアで、その向こう側から使徒本体が覗いているパターン。

 いずれかであると考えられる。

 

「……そんなこと、できるの?」

「ATフィールドならできるわよ、きっと」

 

 NERV(ネルフ)本部の誇るATフィールドのスペシャリスト、赤木リツコ博士のお言葉である。

 

「四次元ポケットのお約束と言えば、頭を突っ込んで中身を片っ端から取り出せばいいのかな?」

「うーん、それはあまりやりたくないな」

 

 シンジのいうやり方だと、何かの拍子に閉じたときにグロいことになりそうである。

 それに中の広さも分からないため、手が届く範囲にコアがあるとは限らない。

 

「じゃあどーすんのよ。後ろから叩いて吐き出させる?」

「……逆さにして振れば出てくると思う」

 

 アスカとレイの案もお約束といえばお約束である。

 

 ではドアの場合は?

 

「そもそもどこに繋がってるんだろうね」

「異世界だとするとマズいな」

 

 異世界でロボットな女子中学生は、相手が悪すぎる。ただでさえ視聴率が低迷しているというのに、それに加えて炎上・打ち切りコースになってしまう。

 

「今までの使徒って南側から来てるんだから、南極じゃないの?」

「……黒い月」

 

 それは幻獣が来るところである。

 黒()月の場合はレイの本体(現在はハリボテ)が居るところで、スタートではなくゴールのほうである。

 

 そんな子供たちの予想を聞いていたリツコは苦笑しつつ技術局の出した結論を述べる。

 

「よく分からないから、ATフィールドぶつけて消し飛ばしましょ」

「…………え?」

 

 ミサトは自分の耳を疑った。NERV(ネルフ)本部の誇る赤木リツコ博士の言葉とは思えなかった。

 

「ポケットだろうとドアだろうと、消し飛ばしてしまえば一緒よ」

 

 ポケットの場合は結果としてコアも消滅するので問題ない。

 ドアの場合はそもそも地下のここに直接開けば良いわけで、都市の地表を移動する必要はないのだ。それをしないということは、そこまで便利な能力ではないのだろう。ならば深く考えずにやっちゃえばいい。

 

「…………リツコ、疲れてるのかしら」

「…………最近の実験、上手くいってませんからねえ」

 

 ミサトとシンジは心配と不安の入り混じった感情を覚える。NERV(ネルフ)本部の誇る赤木リツコ博士は大丈夫なのであろうか。

 

 

 

 まあとはいえ他にやることもないので、ひとまずその作戦で進めてみることになった。

 パイロットたちはそれぞれの乗機にて使徒を取り囲むような配置につく。今回からはアスカも身体が溶けるほうのシンクロを行っているため、4機すべてがやけに人間臭い動きをしている。

 

「ATフィールドぶつけるっていっても、どうやんのよ?」

 

 2号機と他機は物理的に離れているというのに、パイロットの自分は他の3人と文字通り一心同体でいる不思議な感覚に戸惑いつつ、それ以上に雑な作戦への戸惑いを隠せないアスカ。

 なにせ彼女にとってATフィールドとは、自機の目の前にかなり大雑把にバリアを張るというものである。第4使徒(イカ)戦にてシンジが手のひらサイズで展開し、あまつさえそれを投げるという暴挙を行っているが、アスカにはまだそこまでのことはできない。

 

「ああ、そこはこっちで調整するから、とにかく全力で展開してくれればいいよ」

 

 マイトは第5使徒(ミョウバン)戦と第6使徒(さかな)戦にてATフィールドを変形させており、それは一緒にシンクロしている者が展開したATフィールドにも適用できる。

 なのでまずはマイトのATフィールドを使徒と地面の隙間に差し込んで持ち上げ、そこに残りの3人がATフィールドをぶつけて四面体を形成し、逃げられないようにしてから圧殺するという流れである。

 

「……ということは、本当の意味でこの4人の『初めての共同作業』というわけだね」

 

 前回の騒動で全員に仲間意識が芽生え、しかも今回はいつもの横で見てるだけのなんちゃって共同作業ではないのだ。

 それに気づいたシンジは、よしと気合を入れて声を上げる。

 

「みんなッ、ボクたちの新しい仲間だッ!! ───カモン!!」

「アタシが来たから、もう安心……って何言わせんのよっ」

 

 ついアスカが勢いに乗ってしまう。

 

「よし、行くよッ!! ───この世に悪がある限り!!」

 

 アスカのツッコミを無視してシンジは突き進む。

 

「正義の祈りが我を呼ぶ!!」

 

 それにマイトが続く。

 

「何なのよこれはっ?! アタシのラブ・アーンド・ピースも守ってよ!!」

 

 アスカが叫ぶ。

 

「四つの心をひとつにあわせ!!」

 

 レイも叫ぶ。

 

「今、必殺の──────」

 

 シンジの声に合わせて、全員のATフィールド(ねりまスピリッツ)が全開になる。

 

『メキシカン・ビッグバンアターック!!』

「待ってメキシカンてなにっ?! アタシはドイツ系のアメリカ人で、メキシコは何処から来たのよっ?!」

 

 

 

 

『アメリカン・ビッグバンアターック!!』

「そうじゃないっ!!」

 

 四方から展開されたATフィールドが使徒を包み込み、そしてさらに押しつぶすように勢いを増す。攻撃力225という何故か青龍白虎朱雀玄武による四神方陣よりも威力があるこの技にはさしもの使徒も耐えられず、悲鳴も上げずに爆散してしまった。

 

「…………なんでアタシ泣いてるんだろう。もう泣かない、って決めたのに」

 

 練馬の平和を守ったアスカだったが、その代償は大きかった。

 使徒は倒せたが、これは自分が望んでいた活躍ではない。戦いは常に無駄なく美しくをモットーに、自分の身につけた操縦技術を駆使して活躍したいのだ。

 

 内部スピーカーを通して聞こえてくる勝利に浮かれた声とは逆に、彼女の気分は沈んでいくばかり。

 

「………………アタシ、何でこんなのに乗ってるの?」

 

 見上げる空は、どこまでも青く澄み渡っていた。

 

 

 

 

 

 

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【死に至る病、そして】

 

 レイ 「ディラックの海ね」

 アスカ「よし、アタシが飛び込んでみるわ」

 

 

 アスカ「命綱(アンビリカルケーブル)しっかり持っててね!」

 

 

 アスカ「えいッ!」

 

 

 レイ 「しっかり」

 アスカ「はああ!」

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