ひとしきり小言を終えると、ミサトは会議室を出て行った。
リツコの方は次の仕事があるからととっくに退室している。議事録の方はマヤの端末に送信済みで、シンジたちにはそこから共有されるだろうと思っている。
「怒られちゃったねー」
「あの2人っていつもあんな感じで仕事してるんですか? それとも
「あ、あはは……」
マヤからは苦笑が返ってくる。つまりそれが答えである。
また権限の大部分を
「
技術開発部に所属する、しかも優秀な彼女はその職務柄、他の部署よりも機密に触れることが多い。
そのためたとえ内部の人間であっても明かせない情報があるというのは理解できるのだが。
それでも閉塞感というか息苦しさというか、もどかしさを感じるものである。
(んー、やっぱり何かおかしい)
(どうしたの?)
この組織は、本当に使徒を撃退して人類の滅亡を防ぐためのものなのであろうか。
本来であれば人類の総力戦であってもおかしくない状況なのに、単独かつ内部で足を引っ張りながらやらせるというのは、明らかにおかしいのだ。
それに他にも不審な点がある。というのも実際に使徒が現れて目前まで迫ってきたこの状況下で、当日に着任したばかりの素人を前線に送り出したことに対する危機感がまったくないのだ。これまでの危機感の無さというのは使徒が本当に来るのかという不信から来るものだと説明が付くが、今現在もとなるとどういうことなのだろうか。
シンジが居なくとも使徒をどうにかできたのだろうか。
例えばファーストかセカンドがいつでも出撃できる状態で待機していたとか。
マイトはその答えを知る
サードインパクトという致命的な部分を避ける算段ができているため、あとはシンジの人生経験のためにある程度流れに身を任せようと思っているのだ。
というわけで、現在の限られた知識だけで考察を始める。
(もしかして真エヴァンゲリオンに乗るゼロチルドレンが居るとか?)
(序盤の終わりくらいに出てきて、終盤を目前にして退場しそうだな)
そんな戦力があるのなら、油断して今のような状況になるのだろうか。未知の存在である使徒に対して勝利を確信できるというのは考えにくいが。
(じゃあ使徒が未知じゃないってこと?)
(それなら対使徒用の兵器を複数準備したと思うんだよな)
エヴァンゲリオンを用意する必要があった理由については、裏の事情を知ってしまったマイトは理解しているのだが。エヴァンゲリオンだけを用意した理由についてはよく分かっていない。
今回の使徒戦、マイトがあっさりと片付けたので話題になっていないが、事前の戦闘シミュレーションでの被害額は数兆円規模だったりする。もし泥仕合の上で最後の自爆が成功していた場合、桁が1つ2つ確実に上がっていたという試算もある。しかも金があればそれで解決というわけでなく、初号機の修理・街の復旧にかかる資材と時間、人手をどう確保するかという問題も出てくる。
このような規模の被害が出る戦いをこれからどのようなスパンで繰り返すのかは不明だが、使徒の生態が分かっているのなら他の手を考えた方が良いだろう。例えば毒とか。
(確実に倒す手段は知らないけど、不安にはならない………………八百長?)
(対峙したときの感じだと、使徒にそこまではっきりとした意思は無いと思う)
使徒と話が付いているなんて可能性は無さそうだが、逆に意思が無いのを利用してリモコン操作している可能性はある。
(とはいえその事実を全員が知っているなんてのは考えられないから、組織全体の緊張感の無さは説明が付かない気がするな)
(んー、残念)
他には無いだろうか。
使徒に勝てると確信がある、という方をもう一度考えてみる。
(じゃあエヴァンゲリオンなら、エヴァンゲリオンならなんとかしてくれる!)
(それだと良いとこまで行くけど、最後に監督のミスでサードインパクト起きそうだな)
敗因は
(でも確かに、その可能性はあるな)
(でしょ? きっと追い込まれたらすっごいパワーに目覚め…………追い込まれたら?)
シンジがふと気付いてしまう。
(もしかして意図的に追い込もうとした?)
(初戦で、しかもバックアップすら無いのに? いやでも……)
潜在能力を覚醒させるためにわざと、というのはよくある話である。ただしそれは味方がやられた振りをする等であって、わざわざ所属する組織を丸ごと堕落させる必要は無いのだ。
ただし、覚醒したエヴァンゲリオンさえ居れば組織は不要、というなら話は別だ。
どうせ通常兵器は役に立たないうえに、ロボットと違って人造人間だから自己修復できて補給いらず、24365連続稼働OKであればパイロットだけいればいい。無駄に組織を育てる手間はかけたくないのも分かる。
(だとすると、初戦を無傷で終えたのは不味かったか)
(敵が弱いうちのほうが安全だからね)
そもそも覚醒するだけの潜在能力があるのかも不明で、また
そもそも彼ら3人が小言を受ける原因となったのは、ミサトとリツコだけで会議が進むことに暇を持て余して雑談していた中で飛び出した、マヤの一言である。
「なんでシンジ君は、男物の制服なの?」
「え?」
現在のシンジは男物を着ており、丁度いい物が無かったため少しオーバーサイズ気味である。
「ボクは男ですよ?」
「これでもカワイイから良いのでは?」
「んー、女物のほうがカワイイと思うんだけど」
というわけでマヤの端末でオンラインのアパレルショップを覗いて、シンジに似合う服をあれやこれやと探していたのだ。
「やっぱりこっちのワンピースの方が」
「フリル付きすぎじゃないですかね?」
「洗濯が大変そう」
そしてそれは今も続いているのである。
マヤの勧めるそれは少女趣味というか乙女チックというか、シンジとマイトの2人では絶対に出てこない発想の産物であり、それゆえに受け入れ難いものであったのだ。
「シンジは仕草が男のままだから、これ系は似合わないと思うんですよね」
「だからって男物をそのままってのは………………あれ? まさか下着も?」
「ああ、そこは女物に変えました。あまりにも形状が合ってなかったから、売店で買いましたよ」
仕事柄、急な泊まり込みもある組織である。そこら辺は内部の売店で取り扱っていたりする。ただし飾り気のないというか味も素っ気もない、単に体裁を整えるため程度のモノであるが。間違っても普段使いするレベルではない。
「え゛、アレを!?」
「ダメでした?」
売店の下着は品質だけでなく、サイズに関しても問題を抱えている。売り場面積の都合で細かい区分で用意することができないため、ある程度の範囲で対応できるようなモノになっているのだ。
しかしシンジは男の子。いつものようにSMLから選ぶような感覚でいたため、特に違和感なく受け入れていたのだ。
これにはマヤもお怒りである。
曰く、服のデザインについては好みがあるから好きにしていいが、体型に合わせたモノにしなさい。
曰く、下着についてはそれ以上に体型に合わせて選びなさい。
曰く、若いころからの細かい積み重ねが、後々の差となって現れるのです。
女の子としては初心者未満なシンジに指導する、実に頼れる先輩の姿がそこにはあった。
「支度金はたくさん貰ったんだから、服にもお金をかけなさい!」
「いやー、着られればいいかなって」
「家電にはしっかり使ったんですけどね」
中学生男子で服にお金をかけるのは、色気付いた極一部のみだろう。まだまだお子様なシンジたちではそこまで気が回らなかったのだ。
ちなみに支度金とは、前回の使徒戦のご
数兆円、場合によってはさらに桁が上がるほどの被害額が予想されていた中で、ほぼ無傷と言っていいほどの完勝を収めた彼ら。それによって浮いた予算の中から万分の一ほどを振り込んだクレジットカードを支度金として渡されたのだ。名目上は既に別の目的で使用されたことになっているため、派手に現金化するとか自分の口座に移す以外であれば、領収書も必要ないという実にありがたいモノである。
そんな軍資金を得た男子中学生が、新生活に必要なモノを揃えるとなったらどうなるか。最新の高機能な家電を買った、ホームシアター環境を整えた、大きなベッドにしてみた、大きな冷蔵庫にジュースやアイスをたくさん入れてみた。そんな感じに散財した彼らであったが、服に関しては安売りしていたシャツや間に合わせで購入した下着で満足してしまったのだ。
「これだから男の子は……」
スキンケア用品? 洗顔用石鹸なら買いましたよ? という2人に頭を抱えたマヤは、このままではダメだと悟る。
「分かりました。これから必要なモノを買いに行きましょう!」
技術開発部に所属するマヤは、使徒の襲来によって忙しい日々を送るはずであった。しかし実際には使徒があっさり倒されたために交戦記録がほぼ残らず、また自爆したために体組織などのサンプルも得られず、エヴァンゲリオンも無傷で戻ったために修理も必要なければ問題点も見つからず。つまりは得るモノも失うモノも無かったために仕事が発生せず、ならばシンジたちの世話を押し付けてしまおうとなったのだ。
一応は表に出せない技術の産物であることから、できるだけシンジたちの秘密を知る人間を増やさないようにしたという建前もある。
そういうわけで朝一の会議も終わったことだし、仕事の一環として買い物に出かけることになったのだ。
「……もしや、これはデートなのでは?」
その流れの中で、マイトが余計なことに気付く。
確かに碇シンジと伊吹マヤの2人であれば、デートと言っても過言ではないだろう。年齢差に目をつぶれば、だが。
しかし、碇シンジ♀+マイトと伊吹マヤの3人ではどうなのであろうか。
「うーん。デート、なのかな?」
「男女で一緒に服を買いに行って、デートじゃないって言う方が変、なのかしら?」
シンジとマヤにとっては、一応デートの枠に入ったようだ。
「もしかして、ボクたちにとっては人生初?」
「そうなるな」
中学生だからというのもあるが、これまで他人とは表面的な関係性しか築いてこなかったシンジである。デートの経験は無い。
「あ、そういえば私も初めて……」
「え?」
「ん?」
マヤが2人の言葉に相槌を打つ感じでカミングアウトしてしまう。
そして2人の反応から自分の失言に気が付いてしまう。
「あ、いやその、違っ?!」
視線を向けられてパニックが加速したのか、顔を真っ赤にしてワタワタしている。
別にデートが初めてでも問題は無いのだが、それをわざわざ
やはり年長者としての意地というか、女の子らしさを語ったが故にというか、実はデートをしたことが無いと知られて恥ずかしくなってしまったのだ。
「なるほど。男の人が苦手なんですね」
「うぅ、そうなの……」
そして言い訳を重ねた結果、勢い余っていろいろと話してしまったマヤであった。
先ほどまでの頼りになる伊吹先輩はどこへやら、これではもはやマヤちゃん先輩である。
(男嫌いって、クラスの女子にも居たような気がする)
(異性を意識しだす年齢によく見られるらしいな。自分とは異なる部分を受け入れることができない、とかなんとか)
そして女子校のような同性しかいない空間で過ごすと、男に対する偏見に凝り固まったままになってしまい、今のマヤのように距離を置くようになるのだ。
特定個人に興味を持つようになるとその人を通して男の事を受け入れられる下地ができ、男全般に抱いていた偏見も自然と解消されていくらしいのだが。
「でもボクも、マイちゃんが相手だからこうやってくっついてるけど、他の男の人は
「シンジの場合はまた違うような気がするが……」
シンジは異性がどうのの思春期的なモノではなく、そもそも他人を必要としていないという、もっと根深いモノである。マイトが近くに居る安心感から今のようにある程度の社交性のある緩いキャラになっているだけで、他人と1対1であれば警戒心と恐怖心がもっと前面に出てくるであろう。
ギュッとしがみついてきたシンジを受け止めつつ、マイトはそんなことを考える。そしてここ数日のシンジを相手することで鍛えられたテクニックで甘やかす。気分的には、じゃれついてきた子犬を相手にする感じである。
そしてそんな2人を
(マヤさんの苦手意識って、どれくらいなんだろ?)
(職場の人とは普通に話せてたよな)
今後どれくらいの付き合いになるのかは不明だが、変に距離を置かれると困る立場の人だ。円滑な人間関係を築いていくためにも、程度を知っておきたいところである。
それでは確かめてみようとなるわけで。
「マヤさん的に、ボクはどうなんですか?」
「え……?」
マイトの腕の中でもぞもぞと体勢を変え、マヤに向き直って質問する。
そんなシンジを見て、マヤは改めて彼?について考えてみる。
まず見た目は可愛らしい中学生というのもあって、自分が苦手としている『男』というイメージからは遠く懸け離れている。というか今はどう見ても少女である。
次に中身はここ数日の検査で判明した通り、尽くす事と甘える事に全力な子供である。男らしさの欠片も無い。
「シンジ君は女の子だから」
「えー?」
本人は不満そうだが、まあ仕方のないことである。どう見ても女の子だ。
納得していない彼の両手を握り、友好度をアピールする。
では次にとシンジはマイトの背後に回り、その背中を押す。
「じゃあマイちゃんはどうなんですか?」
「え……?」
その質問を受け、マヤは続けてマイトについて考えてみる。
まず見た目は中学生であっても自分より背が高くて厚みがあるため、苦手としている『男』というイメージには近い。しかし裸を見たときに忌避感は無かった。あれは良いモノだ。
次に中身はここ数日の検査で判明した通り、シンジを物理的にも精神的にも守るための盾である。男らしいかはともかく、少なくとも女ではない。
「うーん……」
どうやらマヤとしては答えが出なかったようだ。
この数日間を共に過ごしたこと、そして先ほど一緒になってミサトからのお説教を受けたことで仲間意識というか、親しみを感じてはいるのだが。
(悩んでるってことは、男は無条件にダメってわけじゃ無さそーだね)
(やっぱり個人として親しい異性が居なかったから、ってだけのような気がするな)
どうやらそれほど深刻なものではなさそうだ。
「じゃあマヤさん、こんなのはどうですか?」
次はマイトの番である。彼はマヤに向かって追加情報を与える。
「シンジは14歳の中学生ですが、俺のほうは生まれてから10年くらい。つまりは小学生のようなものです」
「え?」
分かれたのか新規で発生したのか、というのはあるが、マイトという人格の稼働年数はそれくらいである。
マヤとしては彼の見た目から高校生くらいを想定していたために、感覚がおかしくなってしまう。
「さらには肉体を得たのはつい先日。つまりは生まれたての赤ん坊とも言えます」
「え? え??」
赤ん坊かどうかはともかく、見た目を除けば子供と言えなくもない。
自分よりも大きな、10歳の子供。そんな視覚情報と認識とのギャップから、マヤの混乱は増すばかりである。
「……んー、じゃあ『男の子』ってことで」
つまりはシンジのように抵抗なく受け入れられるほどでは無いが、『男の人』ほどでもないという感じに落ち着いたようだ。
まあそんなわけで立ち位置が明確になったので、次の確認である。
マイトはどの程度までなら大丈夫なのかを割り出すために、マヤに質問する。
「マヤさんは『男の人』との会話は問題ないんですよね?」
「ええ、仕事中にもよく雑談とかしてるし」
彼女の所属する技術開発部や、使徒戦の時のようにオペレーターとして参加する場にも、当然ながら男性職員が居る。そこで会話ができないレベルであれば早々に職を外されていたであろう。
「でも、男女間のアレコレに関する話はちょっと……」
「それは普通の人でも眉をひそめることもありますし、気にしなくてもいいのでは?」
公の場でそういう話をすることを嫌う人もいるし、顔見知りの性に関連するものを想像してしまうのが嫌だという人もいるのだ。マヤだけが特別と言うほどでもない。
(というか中学生相手に何を言っているのだろうかこの人は)
(具体的に話してくれたほうが分かりやすいけど、そこはボカしてもいいのにね)
そういう話をしてもいいと思うほど心を開いてくれたのか、それともマイトたちが子供だということを忘れた、単なるうっかりさんなのか。そもそもの発端が一緒に買い物に行くという話だったことから、前者であると信じたいところではあるが。
少し気になりつつも次の質問に進む。
「肉体的な接触はどうなんですか? 仕事でそういうことがあるのか分かりませんが」
そう言って握手を求めるように右手を差し出す。
シンジとマイトの検査は例外的なことらしいので、技術開発部の普段の業務ではプラグスーツの開発でもしかしたら、というくらいだろうかと予想を立てる。
「んー、それは『男の人』とはちょっと嫌かな」
そういってマヤはマイトの手を取り、握手を交わす。どうやら『男の子』は大丈夫らしく、つないだ手をブンブンと振り回している。
では上限のほうはどうなのであろうか。
「ボクと同じことができれば免許皆伝ですね」
「まあそこまで出来るのなら、日常生活では何も考慮しなくて済むな」
「んー、そうね……」
シンジの言葉を聞いたマヤは何を納得したのか、1つ
これにはマイトもビックリである。シンジと同じ扱いをしますよ~と冗談で腕を広げていたのだが。シンジよりも大きいとはいえ、マイトよりも小柄であるためにその腕の中にすっぽりと収まっている。
(マヤさんって、意外と大胆?)
(勢いでついやっちゃった、な気がするんだが)
さすがにシンジを相手にするようなことはできないので、背中と腰に手を回して優しく抱きしめる程度に留める。
余談だがこの男、先日
「ラスボスかな? それともゼロチルドレンの乗る最強のエヴァンゲリオンの正体だったのかな?」
「どちらにせよ、『鍵を入手した後に取れる最初の城の強い装備』的な扱いになってしまった気がする」
そんな感じである。
ちなみにわざわざ使徒サイズの十字架と杭まで用意して貼り付けにしてあったので、その努力を無にしてはいけないとガワだけは残してある。素材は発泡スチロールだったりするが。
まあそんなわけで人類を超越どころではない存在となったマイト。
「んっ?!」
彼の腕の中に居るマヤは、とてつもない安心感に襲われていた。
人間とは比べ物にならないほど強大な存在である使徒。それをさらに超える存在に抱きしめられ、肉体的にも精神的にも、この上ないほど満たされてしまった。
もはや横の端末に「I NEED YOU.」と表示されてもおかしくない状況である。
(シンジよりも柔らかいな)
(むー)
さすがは大人の女性である。身長はさほど変わらないが、肉付きはマヤの方が断然上である。
(ボクもすぐに大っきくなるもん)
(……オマエはいつまで女でいるつもりなんだ?)
マイトはこれから5年10年先の姿を想像するが、どうも上手くいかない。今の『線の細い男の子のようだが、よく見ると女の子』なシンジのイメージが強すぎて、女らしくなった姿がイメージできないのだ。
そもそも成長、というより変化するのだろうか。
エヴァンゲリオンから肉体を分離する際の精神に引きずられた、というのは分かるが、それだけで女の身体になるというのはどうなのか。しかも各種検査を受けても異常が見つからないほどに、完璧に機能しているのだ。
シンジもマイトも、女の身体には詳しくない。そのためどこからかテンプレートを持ってきて無理矢理に構成されたような気がしており、であればそのテンプレートから変化しない可能性もある。
……ちなみに
そんなアホなことを考えていたせいか、マヤの身に起きた異変を見落としてしまう。
(……何だか様子がおかしいような)
(男の人が苦手だったから、じゃなさそうだよね?)
2人が気付いた時には既に手遅れで、腰が抜けて
どうやら普通の人間にとって、マイトの腕の中は刺激が強すぎたようだ。少し方向性を変えれば下着デザイナーになれそうな状態だったらしい。
これまではある意味同一の存在とも言えるシンジが相手だったために問題なかったのだが、これは出力を抑える必要があるようだ。
マヤを椅子に座らせると、そのまま机に突っ伏してしまう。
一先ず彼女が落ち着くまで様子を見ることにして、その間にマイトは出力の調整を行う。
それを見ていたシンジは、薄っすらと笑みを浮かべてマヤに近づく。
「マヤさんマヤさん」
そしてその耳元で
「
それに対する、マヤの返答は────────