リジェネレイト・トリップ~アルとアイザの異世界旅行記~ 作:自由山明
時間になるとセリアさんがやってきてCランク昇格試験に参加する人を集めた。
今回参加する人数は、僕も合わせて八人だった。
そのうち四人は明けの明星、他の三人がパーティーのようだ。
「では、参加者の皆さん今回の試験内容を説明しますね。今回の試験はこの町の西側にある洞窟に潜伏している悪名高いウモッカラ盗賊団十三人の殲滅です。報酬は一人銀貨三枚です。では、依頼書をお渡しします。この先は皆さんで話し合って決めてください」
そう言って依頼書を持ってセリアさんは受付に戻っていった。
どうやらギルドは最低限しか干渉しないらしい。
セリアさんが去ると明けの明星ではない方のパーティーのリーダーらしき人が話し始めた。
「じゃあまずは各自自己紹介をしよう、僕は今生の夢のリーダー、ハヤトだ」
「クリストルです」
「ドーナだ」
ハヤト君は黒目黒髪のいかにも主人公っぽい感じの少年で、クリストルさんは人間の魔法使いの少女で、ドーナさんはドワーフの鎚使いの重戦士の少女だ。
(アイザ、ハヤト君って多分日本人だよね?)
(はい、そのようです。彼にはこの世界の人間にはある魔力が無いようですし、彼を分析してみると確かに過去、日本国で暮らしていたようです)
(あと何気に人族以外の人種を初めて見たな)
(このあたりの地域は人族が多くその影響で人族以外を見かけないのでしょう。王都に行けばたくさんの人種が集まっていますよ。あ、イリス様そっちは危ないです。すみませんイリス様がはしゃいでいるのでここらへんで失礼します)
ありがと、アイザ。
続けて明けの明星のみんなが自己紹介をする。
「明けの明星のリーダー、ミレイラよ。よろしくね!」
「リュシオンです」
「アレンだ」
「ま、マーリャです……」
明けの明星のみんなの自己紹介が終わったので僕も自己紹介をする。
「永遠の旅のリーダー、アルティマだよ。パーティーメンバーは今回の試験には参加してないからいないよ。よろしく」
そうして、自己紹介が終わり、目的地に向けて町を出た。
後ろからギルドの試験官らしき人が追ってきている。
この人たちが合否を判断するんだろう。
歩きながら今回の作戦会議をしていると話題は盗賊の潜伏する洞窟にどう入り込むかの話になった。
「やっぱり見張りがいるだろうから、そいつらをどうにかしてからだと思う」
そうハヤト君が言う。
見張りか、遠距離攻撃で仕留めるのが得策だろうけど……先制攻撃になっちゃうからプラズマショックで気絶させるくらいが限界かな。
「僕とマーリャとアル君とクリストルさんが遠距離攻撃ができるから、この面々で見張りを仕留めよう」
盗賊のことや、マーリャが豹変することがあることを話し合いながら移動し続け、日が陰ってきたので近場のちょうどいいところで野営をする。
僕が収納にしまった食材で料理を作り、ふるまうと今生の夢のみんなも喜んで食べてくれた。
料理を食べ、各自見張りの当番を決めて就寝した。
僕はハヤト君と見張り当番が一緒になるようにし、気になっていることを聞くことにした。
「ハヤト君ってさ……僕と同じ日本人だよね……?」
そう言うとハヤト君は驚きながら聞き返してきた。
「えっ⁉ ……同じってことはアルティマ君も同じ日本人なの⁉」
「まあ、元だけどね。それに君の住んでた日本とは世界線が違う日本だろうけど」
「でも、日本は日本だよ! 僕の名前は神崎隼人。アルティマ君は?」
「僕はこの体になってからの名前を名乗っているんだ。僕の名前はアルティマ・リジェネレイト・ライガーだよ」
それからハヤト君と趣味や故郷について話し合ったりしているうちに見張りの交代の時間になった。
翌朝、保存食を使った料理を食べて盗賊のいる洞窟に向かって出発した。
道中、襲ってきた生物を倒しながら盗賊のいる洞窟に到着した。
「あれがウモッカラ盗賊団のアジトか……見張りの盗賊が二人いるな……」
そうハヤト君が言うと、続けてリュシオン君が作戦を話し始めた。
「じゃあ洞窟の上から奴らを狙おう。できるだけ静かに倒すよ」
遠距離攻撃ができる面々が洞窟の上に移動しリュシオン君が攻撃する盗賊を決める。
「アル君とクリストルさんは右の方を、僕とマーリャは左の方を攻撃する。いいね?」
全員静かにうなずく。
「じゃあ僕の合図で一斉に攻撃して。みんな準備はいい? ……撃て」
盗賊に向かって風魔法と土魔法、矢とプラズマショックが飛んでいく。
死角から攻撃したため盗賊は気付くことができず、攻撃が直撃し絶命した。
「よし、見張りは仕留めたし戻ってみんなと合流するよ」
みんなと合流し、いよいよ盗賊のいる洞窟に入る。
盗賊との直接対決という事でミレイラとマーリャがだいぶ張り切っている。
「いよいよね! 盗賊をけちょんけちょんにしてやるんだから!」
「盗賊はとてもずる賢い! 残さず倒す!」
「あまり張り切りすぎるなよ……」
おっと、マーリャのスイッチが入り始めたようだ。
ミレイラとマーリャが張り切りすぎないようにアレンさんが諫める。
前日に話していたので今生の夢のメンバーは多少驚きはしたが特に大きな問題は無かった。
「ちょっといいかな? 僕は夜目が利くから先頭でいい?」
僕の提案がみんなに受け入れられたため、僕は先頭を進む。
今回は狭い洞窟が戦場なのでナイフの雷光を使う。
洞窟に入ると中はとても暗く一般の人なら松明が欲しくなるが、盗賊に見つかってしまう恐れがあるので、暗闇の中を歩く。
まあ僕は色々な方法で世界を見ることができるから、松明がなくてもへっちゃらだけどね。
「みんな止まって、罠だ」
洞窟の二股の通路の前には簡易的な鳴子のようなものが仕掛けられていた。
音が出ないように収納して、目の前の二股の通路の内どちらに進むか決める。
「右の通路にはどうやら捕まっている人がいるようだし盗賊の人数も少なそうだから、まずは右の通路に行った方がいいと思うけどみんないい?」
みんなが小声で了承してくれたので、右の通路に進む。
すると、中には松明に照らされた盗賊一人と捕まったと思われる猫獣人の少女がいた。
ハヤト君が急いで助けようとするが、相手が少女を人質に取りそうなので止める。
「なんで止めるの……早く助けないと……」
「落ち着いて……相手はまだあの子の近くにいる……人質を取られないように離れてから勝負を仕掛けるよ……いいと思ったら僕が手を引っ張る……」
ハヤト君ははっとしたようにぼ僕の前で息をひそめる。
素直で助かる。
しばらく待つとトイレに行きたくなったのか盗賊が少女の側を離れこちらの方に向かってくる。
暗闇に身を潜め、丁度いいタイミングでハヤト君の手を引っ張りハヤト君が盗賊に攻撃する。
「な……ゴハァ!」
盗賊は仲間も呼ぶことができずに首を斬られて絶命した。
「君! 怪我をしているじゃないか! 僕のポーションを使って」
ハヤト君が盗賊を倒してすぐに怪我をしている猫獣人にポーションを渡す。
その猫獣人は突然のことに戸惑いながらもポーションを飲み傷が癒えていく。
「あ、ありがとうなのです。私の名前はソフィーなのです。あなたのお名前は何というのですか!」
ソフィーちゃんの目がキラキラしている。
どうやら助けてくれたハヤト君に少なからず好意を抱いているようだ。
良かった……盗賊を切り殺したことにショックを受けてハヤト君を拒絶したりはしないようだ。
「僕の名前はハヤト。これから残りの盗賊を倒しに行くから君はおとなしくここで待ってて」
「はい! 待っているのです。ハヤト様!」
そう言ってソフィーちゃんがハヤト君の手を握る。
「あの子私たちのライバルになりそうね……」
「ああ、クリストルがいるだけでも厄介だってのに、また増えるのかよ……」
ねえ、まって、後ろからすごい殺気が飛んでくるんだけど!
これは後で修羅場になるかな……。
ご愁傷様……ハヤト君……。