リジェネレイト・トリップ~アルとアイザの異世界旅行記~ 作:自由山明
翌朝、今日は空が曇っている。
朝ご飯のいい匂いで起き、匂いにつられてリビングへと向かう。
「あらアルさん、おはよう。突然だけど、今日冒険者に復帰しようと思うの。大分ブランクがあるから、アルさんにも付いてきてほしいのだけど、いいかしら?」
「ええ、いいですよ」
シェリルさん特製ののオーク肉サンドとサラダを食べて、シェリルさんとギルドに向かう。
レジー君とイリスちゃんはコア機と一緒にお留守番だ。
今日も色々な依頼があって、冒険者達が取り合いをしている。
依頼:魔石採掘
推奨ランク:Fランク
依頼達成条件:魔石の採掘
報酬:魔石の重さにより変動
魔道具によく使われている魔石の採掘依頼だったり。
依頼:砂漠山岳国家ガエタンとの戦争への参加
推奨ランク:全ランク
依頼達成条件:指示に従い戦う事
報酬:戦果次第
傭兵まがいの依頼だったり。
依頼:ヒノカ草の採取
推奨ランク:Bランク
依頼達成条件:ヒノカ草十枚の採取
備考:群生地はポッカ火山火口近く
報酬:金貨二枚
危険な火山なのか報酬が異様に高い採取依頼もある。
シェリルさんはどんな依頼を受けるのだろう?
「アルさん、この依頼はどうかしら?」
シェリルさんは依頼を取り合っている冒険者をうまく避け、依頼ボードから一つの依頼票を取ってきた。
依頼:フェデルシダ草の採取
推奨ランク:Cランク
依頼達成条件:フェデルシダ草二十枚の採取
備考:生息域はデュラン高原
報酬:銀貨八枚
少し難しめの採取依頼のようだ。
強い魔物がいるのか、推奨ランクがCランクと高めだ。
特におかしいところはないから受ける依頼はこれでいいか。
「いいですね。これにしましょう」
依頼が書かれた紙を受付に持っていく。
セリアさんの所は人がいっぱいなので、空いているところに向かう。
「この依頼を受けたいのだけれど、いいかしら」
「え、ええ。すぐに受注手続きをします! この辺りでは最近戦争が起こっているので気を付けてください!」
受付の人が頬を赤らめながら手続きをしに行った。
は~なるほど、さてはあの人シェリルさんのこと好きだな。
「アルさん、依頼を受けてきたわ。依頼書も貰ったし行きましょう」
「わかりました。準備できていますよ」
胸元の名札にダニエルと書いてある受付の人から恨めしそうな視線を感じる。
コッソリ小声でその気がないことを伝えると、受付の男性は安堵したようで仕事に戻っていった。
ギルドから出て町の門に向かっている途中に、シェリルさんが彼についてめんどくさそうにこう言及した。
「アルさん、受付の彼の態度から何となく察していると思うけど、彼は私のことが好きみたいなのよね。引退する前に結構しつこくアプローチしてきたから、またしつこく口説かれると思うと憂鬱だわ。いっそのことアルさんが私を貰ってくれないかしら?」
「ちょっと、僕を弾除けみたいに使わないでくださいよ!」
シェリルさんがいたずらが成功した子供のように笑う。
「あはは、ごめんなさい。ただ、もししつこく口説かれたらその時は助けてくれないかしら?」
「それはもちろん助けますよ。何かあったらすぐに呼んでくださいね。ワープしてでも助けに行きますよ」
「アルさん……、ワープ、もとい転移は空間魔法の最上位魔法で、転送と違って使える人が極端に少ない魔法よ? もうちょっとましな嘘を……、嘘よね……?」
「僕は不必要な嘘が好きではありませんからね。こんな場面で嘘はつきませんよ」
そう言うとシェリルさんは呆れながら納得したようで、そうよね……、まあ、アルさんならできるわよね……、と言われた。
なんか僕だからという理由で片付けられているけど……、まあいいか。
依頼書を見せてタダで門を通り、デュラン高原に向かう。
数時間ほど歩いてデュラン高原に到着すると、遠くにたくさんの兵士が見えた。
「シェリルさん、あのたくさんの兵士は何ですか?」
「あれは……、多分うちの国の兵士と砂漠山岳国家ガエタンの兵士ね。どうやら魔法使いが魔導砲を使ってるみたいだわ」
魔法使いの兵士が三メートルほどの大きさの砲台を使って撃ち合っている。
そして所々で兵士の小隊が魔導砲の砲撃を警戒しながら戦っている。
どうやらこの世界は大軍同士がぶつかり合うのが戦争のセオリーではないらしい。
「まあ戦争に関わるとロクなことがないわ。行きましょう」
軍が戦争しているのを横目にフェデルシダ草の群生地に向かう。
「シェリルさん、目標地点にオーガがいます。数は一体」
「取りあえず目視で確認して様子を見ましょう」
オーガに近づくと近くの木の実をむしゃむしゃと食べていた。
名前:オーガ
ランク:B
説明:高い筋力と重い体重を生かしたパワー勝負が得意
シェリルさんがクソデカハンマーを構えながらこんなことをお願いしてきた。
「今回はひとまず私一人で戦わせてくれないかしら。病み上がりでどれだけ戦えるか試したいの。もし危なくなったら助けてくれないかしら?」
「わかりました。いつでも助けに動けるようにします。くれぐれも無茶はしないでくださいね。それと、オーガのお金はシェリルさんが受け取ってくださいね」
「わかったわ」
そう言うとシェリルさんはクソデカハンマーを持ちながら数メートル跳躍しオーガに向かって叩きつける。
オーガは間一髪で避けたが、完全には避けられず肩に当たり、当たったところが抉られる。
「グオォォォ!?」
オーガの鳴き声はオークに似ているが、オークより数段威圧感がある。
まあその威圧感のある鳴き声も動揺しているせいで台無しだけど。
「ハァ‼」
シェリルさんがハンマーをオーガに叩き付ける。
オーガはかろうじて防御に成功するが、力でシェリルさんに負けており、押され始める。
オーガはどんどん後退し、起死回生の一手を打とうとシェリルさんに見えづらい所からパンチを繰り出すが、シェリルさんは軽々と受け止めて反撃のパンチを繰り出し、オーガを大きくよろけさせる。
……オーガってシェリルさんの一・五倍くらいの大きさがあるんだけどな。
そこにシェリルさんの止めの一撃が入り、オーガの下半身がぺちゃんこにつぶされた。
「あら? 少し力加減を間違えてしまったわね。昔の様にうっかり潰してしまったわ……」
これで少し? ……まあいいや、僕も似たようなものだし気にしないでおこう。