リジェネレイト・トリップ~アルとアイザの異世界旅行記~ 作:自由山明
マキワ様の部屋に着くと、入り口には護衛と思しき人が立っていた。
「すみません、マキワ・ノア様にお誘われしているアルティマです。マキワ様はいらっしゃいますか?」
「話は聞いている。マキワ様はまだ食事中だから、もうしばらく待っていてくれ」
しばらく待っていると、マキワさんの食事が終わったようで、護衛の人が食事を外に出した。
そのあとマキワさんの準備が整ったようで、部屋に招き入れられた。
「失礼します。本日はお招きいただき、ありがとうございます」
「おお、来たか。では、そこに座りなさい」
二つイスがある内、マキワさんに勧められたイスに座る。
護衛の人がグラスを持ってきて、ワインを注ぐ。
マキワさんは待ちきれないとばかりに聞いてきた。
「じゃあ、世間話は抜きで早速本題を話そう。エルヴィスはどんな感じだったかい?」
「まず、エルヴィス様と初めてお会いした時はシャドーウルフ相手に戦っていました。少し傷を負っていましたが私が加勢し、特に大きな怪我無く戦闘を終えることができました」
「エルヴィスから手紙で聞いたよ。息子を助けてくれて感謝する」
そう言ってマキワさんは頭を下げる。
「……! 頭をお上げください、マキワ様」
僕がそう言うとマキワ様は一泊置いて、頭を上げた。
「ありがとう。それと、こういう人目のない所では私に対してそこまで硬く喋らなくてもいいよ。そこまで硬いと疲れるだろう?」
「わかりました。では、お言葉に甘えて敬語で喋りますね」
「敬語でいいのかい? 冒険者はもっと砕けた言葉を好むと聞いていたのだが」
「私は、敬語で喋るのが得意ですから。確かに砕けた口調も好きですけど、こっちの方が性に合っているんですよ。まあ、他の冒険者で僕みたいな人は少ないですけどね」
「そうか、辛くないならよかった。さて、息子の話の続きを聞かせてくれないか!」
そうして、しばらくの間ワインを飲みながらエルヴィス君の話に花を咲かせた。
ワインは思いの外甘く、飲みやすかった。
「……! このワイン甘くておいしいですね」
「そうか! なら用意した甲斐があったよ!」
マキワさんからエルヴィス君の昔話を聞かせてもらえたりしたので、僕も話していてとても楽しかった。
きっとマキワさんは貴族の中でも話しやすい人なんだろう。
でも、ひとつ気になることがある。
マキワさんは別にエルヴィス君のことを嫌っていたりしないようだ。
なぜ、エルヴィス君はアードリアン村に向かわされたのだろう?
思い切って聞いてみることにした。
「マキワさん、エルヴィス君はなぜアードリアン村に住んでいるんですか?」
「それはだな……エルヴィスは私の第二夫人との子なのだが……第一夫人と第二夫人の仲がとても悪くてな……色々あった挙句、あの村に向かわせることになったのだ。私としては家族みんなで仲良く暮らしたかったのだが……自分の力不足を痛感しているよ……」
「なるほど、奥さんが複数人いるとそのようなことが起こるんですね……知り合いに似たような人がいるので心配ですね……」
「ああ、仲を取り持つのはとても大変だ! その人にくれぐれも気を付けるように言ってくれ」
ハヤト君、今頃何をしているんだろうか?
きっと苦労しているんだろうなぁ……。
そんなことを思いながら話を続け、いつの間にか時間が経ちマキワさんは明日に備えやることがあるらしく、護衛の人にそろそろお開きにした方がよろしいかと、と言われてこの会は終わることになった。
「アルティマ君、今日は息子のことが聞けて嬉しかったよ。また何かあったら聞かせてくれるとありがたいよ」
「こちらこそエルヴィス君の昔話が聞けて楽しかったです。また進展があったらお話ししますね」
お開きとなったので自室に戻る。
戻ると、アイザはすでにベッドに入っていたが、僕が帰ってくるとすぐに起きた。
「おかえりなさい、マスター。楽しめたようですね」
「うん、貴族ってことで身構えてたけど、マキワさんはとても話しやすかったよ。他の貴族の人もこれくらい話しやすいといいな~。……まあ、無いだろうけど」
「ええ、私が軽く調べたところ、そのような話しやすい貴族は爵位が高くなるほど減少する傾向にあるようです」
アイザと少し喋っていたらいい時間になったので、お風呂に入ってから寝る。
お風呂は小さいながらも十分足を伸ばせて気持ちよかった。
明日はついに謁見か、果たしてどんな驚きが待っているのだろうか。
そんなことを考えながら眠る。
翌朝、謁見する準備を整え待っていると、セバスチャンさんが迎えに来てくれた。
「セバスチャンでございます。お二方、少し早めではありますがお迎えに上がりました」
「はい、今出ます」
廊下に出てからセバスチャンさんに謁見の間まで案内される。
謁見の間までは客室までと違い、非常に入り組んでいた。
敵の侵入を遅らせるためなのだろうが、僕的には余計に歩くため非常にめんどくさい。
まあ、様式美だと思って何とか頑張って楽しむか。
謁見の間には、僕たちの他にたくさんの貴族や官僚が集まっているが、冒険者である僕たちは場違い感が否めない。
セバスチャンさんは、ギルマスのフーベルトさんの隣に僕たちを案内すると用事があると言って離れて行った。
それから十分ほど待っていると謁見の儀が始まった。