地球連邦戦記   作:名無之助

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第8話 平和の終わりを告げる砲火 後編

第219深宇宙探査船団の護衛についている第219空間護衛隊は偵察に向かった駆逐艦2隻が撃沈されたことを受け、探査船団が撤収中の探査スタッフの収容と退避を完了するまでの時間を稼ぐために、敵艦隊に対し遅滞戦闘(敵の侵攻を遅らせることを目的に行う戦闘)を行うことを決定し、探査船団から離れ、敵艦隊の進路上に展開し、その時を待った。

 

 

 そして、第219空間護衛隊が布陣しているのを確認した敵艦隊の指揮官は、それを見て獰猛な笑みを浮かべていた。

 

 艦隊の旗艦である大型戦艦の艦橋から、第219空間護衛隊の動きを監察していた敵艦隊の司令官は第219空間護衛隊が逃げるのではなく、戦おうとしているのを感じて、その獰猛な笑みをさらに深めつつ、その司令官は自分の隣に座る副官に話しかける。

 

 「我が帝国がまだ知らない星間国家がいたとはな・・・そして何より、あんな少数部隊でありながら良い動きをする。何だったか・・・コーネリアだったか?あそこの連中よりは肝が据わってるようだ。そう思わんか?」

 

 そう問われた副官も同じように笑みを受けべつつ、頷きながら返答する。

 

 「そうですな・・・しかし、コーネリアもあの最後に挑んできた公王直轄艦隊だけはそこそこ楽しめました。とはいえ、あの所属不明艦隊、中、小型艦しかいないようで、いささか物足りませんな、まあ、先ほどの小型艦の行動を見るに、勇猛さはあるようですな」

 

 「フハハハハハ!勇猛さと来たか!これは面白い!お前がそんな風に評価するとはな!なかなか動きの良い艦隊なことだし、楽しませてもらうとしよう、さて、楽しむにはとりあえずは・・・相手に敬意を払い、名乗りくらいは上げておこうか」

 

 笑い声をあげそのように話した敵指揮官は、全周波数を用いて広域に渡り通信を行った。

 

 ≪我々はエベロラ帝国第32遠征軍クロリア艦隊第120分隊である。これよりこの星系は我が艦隊が接収する。よって貴官らを排除する≫

 

 そう一方的に宣告した後、指揮官は配下に命じた。

 

 「帝国軍として我らに抵抗しようとした彼らに対し、敬意をもって全力で正面から叩き潰し、帝国軍の強さを教えてやれ」

 

 その命令を受け、敵艦隊・・・帝国艦隊は攻撃陣形を取り前進してくる。

 

 それを確認した第219空間護衛隊(以後219護衛隊と表記)は、先ほどの宣告に一瞬混乱したもののすぐに持ち直し、宣告の内容を記録したデータを緊急送信した。

 

 それと同時に219護衛隊司令は艦隊に指示を出す。

 

 「全艦扇状に陣形を組め!敵艦隊が射程に入り次第攻撃開始、ただし、丙614、丙618は攻撃に参加せずに左右に散開しミサイルを放出、ミサイルのコントロールは本艦に移せ、その後にタイミングを合わせミサイルを起動する。それと同時に2艦はミサイルに紛れ敵艦隊へ突入、かく乱せよ!」

 

 その指示に従い一糸乱れぬ動きで陣形を整える。

 

 その動きをみた帝国艦隊は散開をはじめ、そして、無数の光弾が放たれる。

 

 「敵艦隊から攻撃!熱源無数に発生!」

 

 「全艦回避運動!丙614、618は直ちに行動開始!」

 

 回避運動を取る219護衛隊だが、無数のビームをすべてかわすのは難しく、被弾してしまう。

 

 219護衛隊旗艦C241の左側にいた駆逐艦が回避に間に合わず数発のビームに貫かれ爆散する。

 

 さらに、219護衛隊の貴重な高火力艦である巡洋艦の一隻も機関部付近に被弾、火災が発生してしまう。

 

 

 「駆逐艦丙611被弾!轟沈‼巡洋艦C244も被弾、機関の出力低下も戦闘行動に支障なし!」

 

 オペレーターから報告を受けた司令は苦虫をかみしめたような表情を一瞬見せるが、すぐに次の指示を出す。

 

 「全艦後退しつつ応戦!ミサイルの放出はどうなっている!」

 

 「丙614、618両艦ともミサイル放出地点まであと30秒!」

 

 「分かった!全艦扇状に広がりつつ徐々に後退しろ、早すぎず、遅すぎずだ!」

 

 その間にも敵艦隊の攻撃は苛烈を極める。

 

 幸いにも旗艦C241は被弾していなかったが、機関部を損傷したC244はさらに1発を被弾、黒煙に包まれつつあった。

 

 既にこの時点で219護衛隊の損害は甚大であったが、士気は崩壊せず、統制を保ち反撃を試みる。

 

 第219護衛隊の有効射程に帝国艦隊は既にはいっていた。

 

 しかし、火力が足りないのだ。

 

 そこで護衛隊司令はさらに命じた。

 

 「全艦!自由射撃を中止!統制射撃で1隻づつ確実に撃破する!全艦目標指定、照準連動、目標正面左側の一番先頭の大型艦、一斉射撃、撃て!」

 

 護衛隊の3隻による一斉射撃は敵艦に命中したが、撃沈には至らなかったが、それでも損害を与えることには成功した。

 

 帝国艦隊の先頭を行く戦艦が損傷を受けるのをみた帝国艦隊指揮官はほう、と感心したように息を漏らす。

 

 「わが帝国の戦艦に損傷を負わせたか、あのような中、小型艦でこれは快挙だな、まるでなってなかったコーネリアの連中もこれくらい骨があれば楽しめたのだが・・・っ!?」

 

 

 そこまで語ったところで、帝国艦隊指揮官は突如艦を襲った衝撃に体制を崩しかける。

 

 「何があった!?」

 

 すぐに状況を確認すると、副官から報告が入る。

 

 「ミサイルです。さらにミサイル群にまぎれて駆逐艦が突入してきました!戦艦グレゴーが艦橋に零距離射撃を受け沈黙、さらに本艦も至近距離から砲撃で機関部に被弾しましたが、損傷は軽微です。突入してきた駆逐艦はわが護衛艦と交戦中」

 

 その報告に指揮官は声を上げて笑う。

 

 「ハハハハハ!やるじゃないか!だが、ここまでだな、全艦、突撃隊形だ。我が艦隊の突撃に耐えられる艦隊は存在しない、光栄に思えよ?名も知らぬ星の勇者たち」

 

 そして、帝国艦隊の陣形変更の動きに、219護衛隊もすぐに気が付いた。

 

 帝国艦隊へ決死の突入をした駆逐艦達もすぐに気が付き、その動きを妨害しようとしたが、無数の敵艦に囲まれ集中砲火を受け二隻とも間を置かずに撃沈されてしまう。

 

 219護衛隊旗艦C241のオペレーターはすぐに敵の動きを報告する。

 

 口調は冷静だが、その表情は恐怖に引きつっていた。

 

 「て、敵艦隊突撃してきます!さらに、ミサイル発射、数は10、内2発が本艦への直撃コース!」

 

 「回避運動!迎撃」

 

 「ダメです間に合いません!着弾します!」

 

 C241の乗員が覚悟を決めたその時、ミサイルとC241の間に割り込む艦影が見えた。

 

 そして爆発、二つに折れながら爆炎に沈む艦にC241の乗員は唖然とした。

 

 すぐに再起動を果たしたのは司令で、即座に指示を出す。

 

 「駆逐艦丙564が本艦をかばってくれたのだ!その犠牲を無駄にするな!後退しつつミサイル発射!同時にミサイルの半数は遠隔起爆装置をセットしてばらまけ!探査船団の退避状況は!?」

 

 「探査船団、全スタッフの収容完了!ワープにて離脱します。ワープ準備完了まであと一分!」

 

 報告するオペレーターもその報告を聞く司令にも、その表情は険しい、それでも彼らは誰一人弱音を吐く者はいない。

 

 指揮官は一瞬息を吐くと追加の命令を出す。

 

 「良し、ミサイル放出と同時に敵艦隊再度一斉射撃、その後反転し探査船団のワープ完了と同時に我々もワープで離脱する!寮艦にも伝えろ!」

 

 「了解!」

 

 そして2隻の巡洋艦から30発のミサイルが宇宙空間に投機され、同時に10発前後のミサイルが帝国艦隊に向かっていく、同時に斉射された衝撃砲のビームなどになんせ帰化が被弾するがそれでも帝国艦隊の突撃は止まらない。

 

 帝国艦隊も反撃にとビームを無数に放ってくる。

 

 巡洋艦C241も遂に数発を被弾、大破してしまうが、それでも懸命に応戦する。

 

 最後の寮艦であるC244もさらに被弾し、戦闘能力を喪失したが、そこに護衛隊にとっての朗報が入る。

 

 「探査船団ワープ完了しました!司令!」

 

 オペレーターが声を張り上げるより先に指揮官もすぐに号令を出す。

 

 「全艦ワープ準備!ワープで離脱する!」

 

 「敵艦隊ミサイルエリアに侵入!」

 

 その報告に指揮官は思わず手でガッツポーズをしたくなる衝動に駆られたが、それを抑えて命じた。

 

 「すぐに起爆し、敵の度肝を抜いてやれ!」

 

 命じた時、一旦抑えた衝動が抑えきれずに思わずガッツポーズをしてしまうが、それをとがめる者はいない。

 

 そして起爆する。

 

 数十発のミサイルの爆発はさながら花火のように見えた。

 

 突撃をかけていた帝国艦隊はその爆発に一時的に浮足立ったがすぐに持ち直し、再度の突撃を仕掛ける。

 

 その一瞬、それが命運を分けることとなった。

 

 219護衛隊は帝国艦隊が持ち直したとき、既にワープ準備を完了していたのだ。

 

 

 「ワープ準備完了!ワープまで10秒!」

 

 219護衛隊がワープのカウントを開始したが、帝国艦隊は逃がすまいとミサイルやビームで攻撃を仕掛ける。

 

 219護衛隊も迎撃するが、迎撃を抜けた2発のミサイルが219護衛隊に襲い掛かる。

 

 「敵ミサイル2発迎撃失敗!接近、着弾します!」

 

 「衝撃に備えーーっ!」

 

 接近した帝国艦隊のミサイルは、1発がC241の盾になろうとしたC244の艦首を吹き飛ばし、もう一発がC241の機関部に吸い込まれていく、そして、ワープのカウントが0になるのと、ミサイルが着弾し爆発が起こるのはほぼ同時であった。

 

 

 まばゆい閃光が走り、その後には2隻の姿はなかった・・・

 

 その光景をみた帝国艦隊指揮官は笑みを浮かべていた。

 

 「まさか、我が艦隊の突撃があそこまで対処されるとは・・・宇宙にはまだまだ俺を飽きさせない楽しみがあるようだぞ、しかも、逃げられるとはな」

 

 「ミサイルが当たったので、逃げられたかどうかは判断が付きませんがな」

 

 「まあそういうな、さて、予定通りこの星系に基地を建設するとしよう、損害も出たから総督に補給とあの艦隊のことも報告しておこうかね」

 

 そう言いながら笑みをそのままに席を立ち、報告のための書類を作成しに向かうのだった。

 

 

 時間を戻し、第38中継ワープステーションから1000光年の位置、第219深宇宙探査船団の消息不明の報告と、捜索命令を受けた第12救難群をはじめとしたいくつかの部隊が捜索活動のためこの周辺まで進出してきていた。

 

 第12救難群 救難艦R・レスターも捜索に当たる一隻であった。

 

 そして彼らは発見する。

 

 接触事故を起こし漂流する探査船団の探査船4隻とそれに巻き込まれたのか損傷し動けなくなっている補給艦2隻、そして何より、轟沈していないのが不思議なほどボロボロになった2隻の巡洋艦を・・・

 

 彼らが持ち帰った情報が、地球連邦の運命を大きく変えていくことになるとは、この時、誰も知らなかった。

 

 

 

 

 今戦闘による損害

 

 第219空間護衛隊

 巡洋艦2隻 大破2

 

 駆逐艦6隻 全滅

 

 補給艦2隻 健在

 

 探査船4隻(軍ではなく探査局の船)健在

 

 エベロラ帝国艦隊

 戦艦4隻中 中破1 小破1 軽微な損傷1

 

 巡洋艦10隻中 中破2 小破3 

 

 駆逐艦16隻中 撃沈2 中破2 小破6

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