地球連邦戦記   作:名無之助

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第9話 葬送

第12救難群及び、同じく捜索活動にあたっていた第38中継ワープステーション所属の第285警備艦隊及び286警備艦隊はワープしてきた第219深宇宙探査船団を発見、護衛の第219空間護衛隊所属の巡洋艦C241及びC244の救助活動を開始、両艦ともに大破し漂流している状態であったが、奇跡的に火災や誘爆は起きていない状態だった。

 

 救助作業の指揮は第12救難群の指揮官が統括し、探査船団の他の船や補給艦も救助活動に加わった。

 

 第12救難群はまずは分散し捜索活動にあたっていた艦艇の集結を命令、救難艦R・レスターとJ・ロックウェルの二隻がC241とC244に接弦、さらに艦載していた救難艇を発進させ接弦部とは違う区画からも救助を行い迅速に乗員を救出しようとした。

 

 そこに救難群所属の病院船と警備艦隊も集結、救助のバックアップ体制をすぐに構築した。

 

 既に収容限界を迎え、格納庫を閉鎖し格納庫内も野戦病院として機能させ、救難艇はそのまま病院船へと患者を輸送するように管制により誘導がされている。

 

 救難艦の艦内はまさに命の戦場であった。

 

 「輸血パックが足りません!追加のパックはまだですか!?」

 

 おびただしい量の血液が格納庫内の床を濡らす中、医師や看護師が声を上げている。

 

 「内臓が損傷している!手術室はあいていないか!?すぐに切らないとまずいぞ!」

 

 「既に第1から第5までのすべての手術室が埋まってます!ここでやるしかありません!」

 

 既に血で汚れている床をさらに血液で汚しながら多量に出血している患者を救うべくメスを手に取る若い医師。

 

 「輸血パックの予備を持ってきました!使ってください!」

 

 足りなくなった輸血パックを補充するために医療行為に先住している医師や看護師に代わり走り回る整備員をはじめとする救難艦に乗り込んでいる軍人たち。

 

 「心停止です!電気ショック、全員離れて!3.2.1ショック!、心音戻りました!治療再開します!」

 

 格納庫内はおろか同じような怒声や指示を出す声が、光景が救難艦や病院船の中で繰り広げられている。

 

 限られた設備の中彼らは持てるすべての技術、能力を使い命をつなごうと懸命に戦っていた。

 

 それでもなお救えない命も多かった。

 

 「クソ、また心停止だ・・・電気ショックを!3.2.1ショック!だめだ、戻らない・・・もう一度だ、チャージを!」

 

 「よせ!・・・もう無理だ。救えるものを優先しろ」

 

 ある場所では救命措置を中止する決断を強いられる者もいた。

 

 「誰か!出血多量だ!手伝ってくれ!」

 

 呼ばれる声に走りよる医師は、その患者を診てこぶしを握り締めながら首を横に振る。

 

 「・・・!無理だ・・・もう、死んでる」

 

 「くそ、俺より若いじゃないか!!くそ、くそ!」

 

 そのような光景がいくつも繰り返され、発見から4時間後、すべての救助活動、遺体回収も終了し、救助活動にあたっていた部隊は撤収した。

 

 結局護衛隊のC241、C244の乗員併せて180名中、生存者は21名、その中に最後まで指揮官として指揮を執っていた護衛隊司令官は含まれていない……最後の被弾時に部下をかばい飛んできた破片が背中に深く突き刺さったのが致命傷だった。

 

 生存者と戦死者の遺体を乗せた救難群はそのまま地球への帰還命令を受け、各中継ワープステーションを使用し休養をはさみつつ連続の長距離ワープを行い2週間ほどで地球へ帰還した。

 

 地球には、報道機関の他に連邦政府がチャーターした移動手段を用いて第219空間護衛隊の乗員の家族が連邦軍総司令部の宇宙港に集結していた。

 

 搬送される生存者の中に自分の夫、妻、息子、娘、父や母など家族やまたは恋人の姿を探す者、そして見つけて生存を喜ぶ者の姿もあれば、掲示された戦死者/殉職者名簿に自分の家族、恋人の名前を見つけてしまい泣き崩れる者、呆然とする者など悲嘆にくれるもの達の姿もある。

 

 宇宙港の片隅からその光景から目を離すまいと、決意のこもった目で見つめている人物がいた。

 

 警護官に守られながらゆっくりと歩みを進め、宇宙港の格納庫に並べられた殉職者の遺体が収められた地球連邦の国旗がかけられた棺の前まで行き、深々と頭を下げるその人物こそ、地球連邦軍の最高責任者であり、連邦政府の最上位者である連邦大統領だった。

 

 無遠慮に遺族に向けてカメラなどを向ける報道関係者の前をわざと横切るように進んだため、自然と報道関係者もそちらに視線を向けていた。

 

 そして大統領は、遺族の方へも大きく頭を下げた後、マイクを渡そうとした部下を手で制し、声を張り上げるようにして言葉を紡ぐ。

 

 「私は地球連邦大統領にして、地球連邦軍の最高責任者であるアルベルト・ハーリングです。今回の事案について、すべての責任は事態の深刻さを楽観視してしまった連邦政府、いや、私にあります。公表はいまだされておりませんでしたが、いま、この場で報告します。今、地球は異星人の脅威にさらされている。先月の話ですが、地球連邦は史上初めて異星人と接触、そして彼女らを保護しました。そして彼女らから、侵略的異星人の警告を受けたものの、対応の協議の結果、公表はしないまま探査活動の自粛と各探査船団への警告、撤収を内々で指示するに止めてしまっていました。今回の事態はそのように楽観視していた私たちの認識の甘さが招いたと言っても過言ではありません。

 

 私は地球連邦大統領として、今回の事案で殉職した兵たち、そしてその遺族の方に、その責任の下必ずその犠牲に報いたいと、この場で誓わせていただきます。私は軍の最高責任者という立場上、謝罪は殉職した兵たちに対する侮辱にもなりえると理解しているため、この誓いをもってそれに代えさせていただきたい。

 

 最後に、自らの職務を遂行し、非戦闘員たる船団を守り通した彼ら英雄たちに、敬意と感謝を伝えます」

 

 そして再度大統領は再度深く頭を下げる。

 

 彼は無意識ながらに血がにじむほどの力でこぶしを握り締めていた。

 

 それこそ、彼の悔恨を表していた。

 

 大統領はその後、並べられた棺、中には遺体もない空の棺に遺品のみが収められたものもある殉職者全員分の棺1つ1つに一礼しながら、勲章をその棺の上に丁寧に2つづつを置いていく。

 

 一つは、戦闘などによって戦死、負傷したものに送られる連邦旭日名誉戦傷勲章と呼ばれる太陽系の太陽をあしらった枠に、旧米軍のパープル・ハート勲章を合わせたようなデザインの勲章と勇敢さと、その責務以上の功績を示したものに授与される連邦議会旭日名誉勲章、これも旧米軍の名誉勲章に太陽の意匠といくつかの旧国家の同格の勲章の一部の意匠を合わせたデザインのもので、地球連邦最上位の勲章である。

 

 それらを、護衛隊の戦死者、駆逐艦乗員分を含め519名全員分の棺に大統領は一つ一つ丁寧に置いていく。

 

 それは、大統領の決意の表明、そして兵士たちへの葬送の意味をこめた行動だった・・・。

 

 勲章を全ての棺に置き終わると、礼装に身を包んだ40名程の兵たちが並べられた棺の前に整列する。

 

 その兵たちの指揮官が号令を発する。

 

 「地球連邦軍人として、自らの職務を遂行し勇敢に戦い命を賭して使命を果たした英雄たちに弔砲を捧げる!捧げぇーー筒!!」

 

一糸乱れぬ統率された動きで空砲の込められた銃を構える兵士たち、その顔は真剣であり、殉職者への畏敬の念を抱いているのがわかる。

 

 「撃て!」

 

銃の発砲音がこだまする。

 

 2回目

 

 3回目の発砲が終わると、指揮官は再び号令を発した。

 

 「気を付け!英雄たちに…敬礼!!」

 

 号令に従い、整列した兵たちが敬礼する。

 

 いや、整列していた兵たちのみならず、格納庫内にて警備に当たる警備兵や大統領の警護官も敬礼をしている。

 

 大統領の側に控えている秘書官なども、大統領に習い、文民の敬礼で殉職者への敬意を示していた…。

 

 そして敬礼をした後に頭を上げ、並べられた棺をもう一度目に焼き付けながら大統領は決断する。

 

 地球市民を守るために、地球連邦軍が大きく動く、その決断を・・・。

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