地球連邦戦記   作:名無之助

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第二章 第2話・フィル公女、地球へ~中編…

 

 時間を少しさかのぼり、2280年9月5日

 

 地球 旧中華人民共和国 現地球連邦政府直轄地”特別監視領域”

 

 山間部の寒村、数軒の民家のあるそのうちの一軒、その地下にて複数の男たちが集まり何かを話し合っていた。

 

 その地下空間は、いくつかのモニターや通信機もおいてあり、さながらどこかの軍事基地の指令所にも見える施設である。

 

 男たちはテーブルを囲み、独自に整備した有線通信を用いて外部にいる他のメンバーをも交えての会合である。

 

 「集まったな、同志諸君、では始めよう」

 

 集まった5.6人の男達と通信で繋がっているさらに数人の男たちは、この中で一番恰幅の良い男の言葉に頷くと水の入った杯を掲げ同意を示す。

 

 そして会合が始まる

 

 「では、同志チェンから報告を」

 

 チェンと呼ばれた男が立ち上がる。

 

 やせた見た目とは裏腹に眼光は鋭く、にもかかわらず何を考えているのか分かりにくい程の無表情の男、そのに周囲の者たちは不気味さを感じるが、表には出さない。

 そして男の報告に耳を傾ける。

 

 「はい、同志主席・・・報告します。愚劣な資本主義の権化たる連邦内部に張り巡らせている枝よりの情報では、薄汚い王権をもつ異種族の王女は30日前後でこの地球に降り立つとのことです。枝からの情報で得られたのは、第7中継ワープステーションへの到着日時であり、その情報はすでに他の同胞達にも共有され、準備を整えつつあります」

 

 「大変素晴らしい報告だ同志チェン!ありがとう!」

 

 チェンのその報告に主席と呼ばれた男は満足そうに頷くと、他の者達にも報告を促していく。

 

 いくつかの報告を受け、最後の一人が報告に立つ

 

 「同志スリコフ、そちらの準備はどうかね?」

 

 スリコフと呼ばれた男はいかにも人のよさそうな外観に反して、その目はどこまでも冷たい。

 

 「報告します。同志主席、我らに協力する協力者達ですが、こちらは問題なく準備は進んでおります。我らのこの聖戦がなれば、愚民共もこの地球の統治者にふさわしいのが民主主義などという資本主義に傾倒したような堕落した政治形態ではなく、同志主席閣下や我らが先達が成した共産の主義であると気が付くでしょう」

 

 「おお、そうだとも、大変すばらしい!我らの先達が受けた200年前の屈辱、その志を継いだ我ら人民解放戦線が今度こそその無念を晴らし、30年前に成しえなかった連邦を打倒し真の地球の統治者として返り咲くのだ!そのために連邦の権威を失墜させるために、異種の王女・・・亡国であっても王族という許されざる存在を民衆の眼前で抹殺し、それをもって、自ら保護した者をすら守れぬ脆弱な連邦という存在を民衆に知らしめ、連邦打倒の第1歩としよう!人民解放のために!」

 

 「「人民解放のために!」」

 

 そう高らかに男たちが宣言をしたその地下室に、数時間後に連邦警察が突入したとき、そこには既に誰もおらず、機材なども既に持ち出された後であった。

 

 特別監視領域という渡航が厳重に制限され、監視網がはられ厳重に警備されている地域において、討伐対象組織の幹部らが会合を行っていたという事実は、それを察知し警察部隊を投入させた連邦中央警察や中央情報庁、統合軍通信情報局などの情報組織、治安組織を震撼させた。

 

 彼らは、敵組織の撤収の速さから、内部での内通を疑い、苛烈なスパイ狩りが行われることとなり、さらに、その組織が何のために会合を行っていたのかを徹底的に調査した。

 

 その結果、廃艦予定の艦艇を勝手に再武装の上で横流しをしたとして、宇宙軍補給局所属の兵数十名が逮捕、さらに第1居住惑星管区防衛軍でも同様の事案があり、担当者数十名が摘発、その他にも軍の情報などを不正に漏らしていたとして、連邦軍全体で約600名程が摘発される一大スキャンであるとなった。

 

 摘発されたものの中には准将等高級将校もいたことで、連邦軍は情報工作等に対しての警戒と、現状の防諜体制の強化を決定した。

 

 そして、調査の結果、おぼろげながら連中の目的がフィル公女の襲撃であると察した連邦軍は、護衛任務に就く艦隊に極秘理にその情報を伝達。

 

 直接警護につく警護部隊と護衛艦隊に情報を渡すことで、襲撃者を逆につり出そうと考えた。

 

 そのため、この情報はフィル公女たちには知らされることはなかったのである。

 

 

 時を戻す。

 

 2280年9月11日 フィル公女は見送りに来た市民達の声援を背に第7航宙艦隊や残存近衛艦隊とともに地球へ向けて出発した。

 

 連邦軍や政府の動き等とは対照的に、航宙母艦ホウショウへ乗艦したフィル公女やその周囲は平和であった。

 

 第7戦隊司令であるレイスナー准将の案内でホウショウ内部を見学して歩くフィル公女、見たことのないものなどに興味津々な公女の姿は、レイスナー准将や周りに付き従う近衛兵や連邦の護衛達に癒しを与えている。

 

 そうして案内をしていくと、フィル公女がある部屋の前で立ち止まる。

 

 「ここは何?とっても良い香りがする・・・」

 

 不思議そうに自分を見上げながら質問してくるフィル公女にレイスナー准将は口から出かけた”かわいい”という単語をどうにか飲み込み、顔がゆるみそうになるのを堪えながら回答する。

 

 「ここは乗員の福利厚生の一環として設置されている艦内カフェです。本来なら週に1っ回の開店ですが、今日はフィル公女殿下の歓迎会のため開店してます。良い時間なので入りましょう」

 

 

 艦内カフェは広く、艦内の食堂等とも繋がっており、当直の乗員以外はほとんどが歓迎会に参加していた。

 

 そして定番の挨拶もそこそこに始まったのがフィル公女争奪戦・・・ではなく、フィル公女が速攻で向かったスイーツエリアでフィル公女がスイーツを不思議そうな顔をしながら口に含み、瞬間花が咲いたように幸せそうな顔をするさまを見た乗組員たちによる、スイーツ献上合戦であった。

 

 歓迎会でいろいろもみくちゃにされていたフィル公女は、歓迎会後にこ言った。

 

 「地球・・・おいしいものいっぱいだけど・・・みんな私に食べさせようとしてくる・・・怖い」

 

 若干涙目であったという。

 

 尚、やりすぎた乗員たちは後程レイスナー准将と艦長、厨房長からきつくしかりつけられたのであった。

 

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