地球連邦戦記   作:名無之助

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第二章 第4話・現れし絶望

西暦2280年9月18日 地球連邦宇宙軍冥王星基地 

 第7航宙艦隊とコーネルア残存艦、そして難民達の輸送船団の一行は、この冥王星基地にて行われるフィル公女、そしてコーネリア難民達を地球へ受け入れるための歓迎セレモニーへの参加を控え、つかの間の休息を取っていた。

 

 そんな中、太陽系外周部の警戒網の要衝でもあるこの冥王星の厳重な警戒監視網の極僅かな隙間、警戒網の死角となっている宙域に、明らかに戦闘用と分かる艦艇数十隻と、民間船に武装を付けただけのような粗末な武装艦50から60隻が集結していた。

 

 その中で一番大きな艦の艦橋、そこにかつて地球の防衛網の構築に大きく貢献し、数十年にわたって軍人として戦ってきた老将 ジョン・ガーフィールド退役中将が苦渋に満ちた表情で艦橋の窓から集まった反乱軍艦隊を睨みつけている。

 

 そこに話しかけてくる男がいた。

 

 「どうしたのかね中将?やはり元とは言えかつての同僚に弓を弾く行為には抵抗があるのかね?心配はいらんよ、彼らも無駄死にではない、我らが地球の真の統治者になるための礎になれるのだから」

 

 その男の声、言葉を聴いて、退役中将はさらに顔をしかめ、冷徹な目でその男を睨みつける。

 

 「そんなことはどうでも良い、貴様らのような連中が宣う大義などに興味はないからな。それよりも、集められる艦隊はたったのこれだけか?連邦宇宙軍を舐めすぎだ」

 

 「な…口の利き方に気を付けることだな中将、貴様の家族だけではない、貴様についてきている貴様の元部下達の家族も我が手中にあることを忘れていないだろうな?まあいい、集まった艦隊がわが軍の全てだ。」

 

 退役中将にひるみながらも男は負けじと言い返すが、退役中将はそれを鼻で笑い、男の胸ぐらをつかみ上げる。

 

 「…今の私は退役中将だ。それに、忘れていないからこそこうやっておとなしく貴様ら薄汚い汚物の指示にしたがってやっているではないか?それとも何か?貴様らだけで海賊船とは何もかも違うこの宇宙艦艇をまともに運用できるのか?ん?どうなんだ?……何とか言えよ青二才が」

 

 そう言いながら退役中将は獰猛な笑みを浮かべながら掴み上げている男を自分の方へ引き寄せ目だけで人を殺せそうなほどの眼力でもって男を睨みつける。

 

 すると、男は何かを言おうとするが、くちがぱくぱくとあいたり閉じたりするだけで言葉が出てこない、そして艦橋内にアンモニア臭がしはじめ、みると男のズボンが濡れていた。

 

 退役中将は男をまるで虫でも見るかのような目で一瞥し、放り投げる。

 

 男は艦橋から逃げるように立ち去るが、その姿に、艦橋内ではかすかに笑い声が聞こえていた。

 

 「良い歳したじじいが漏らすとは思わなかった……」

 

 退役中将のこのことばに艦橋内は遂にかすかな笑い声から大きな笑い声に埋め尽くされることとなる。

 

 ちなみに、

 

 「中将の方がじじいですけどね」

と余計なことを言った副官は拳骨をくらう羽目になる。

 

 そう、ここまでで分かる通り、この艦の艦橋にいるのは不本意ながら連中に従っている元軍人たちであったり、拉致され強制的に徴用された民間船のオペレーター達であったのだから仕方がない。

 

 旧式とはいえ正規の戦闘艦だった艦であるため、集まった数十隻の艦艇の運用は、連中に強制的に

従わされている元軍人や先ほど述べた拉致された民間船舶のオペレーターたちであり、それらの艦艇には監視と指示を強制するための政治委員とその部下数十名が搭乗しているに留まる。

 

 ただし、旗艦となるこの艦には、乗員240名中82名が政治委員の部下、武装政治委員と呼ばれる者たちで占められており他の艦艇と比べて監視も厳重であった。

 

 そんな状況であるが、ガーフィールド退役中将は余裕な表情を見せ、副官もそんな中将に同調した。

 

 「さて、うまく行けば良いが、今の宇宙軍の連中はちゃんとうまく対応してくれるだろうかね?」

 

 「大丈夫でしょう、通信情報部から接触がありました。既に準備は完了、我々も段取りは全て完了してます。後はこの艦にいる邪魔な連中ですが……既に例の部隊が補給品にまぎれて艦内に潜伏中ですので心配はないかと…他の艦はまあ、乗員らでどうにかなりますし、私なんかあの部隊の戦いを間近で見れるチャンスでむしろわくわくしてますよ」

 

 少し興奮気味で話す副官にガーフィールド退役中将は困ったように肩を竦めると、時間を確認してまじめな表情へと戻り、仕事に取り掛かる。

 

 「では、始めるとしよう…」

 

 「はい、閣下」

 

 二人は頷く、そして号令をかける。

 

 「全艦に打電、所定時刻となった!作戦開始、出撃せよ!」

 

 

 ______

 

 

 同時刻

 

 冥王星近海

 

 第8、第9航宙艦隊は反乱軍艦隊の出撃の報告を受け、その進路上に布陣、その時を待っていた。

 

 しかし……

 

 異変に気が付いたのは第8航宙艦隊の前衛を担う駆逐艦のオペレーターであった。

 

 「艦長!艦隊から見て方位8.3.7、距離98000、巨大な重力震!何かがワープアウトしてきます!」

 

 「艦隊旗艦より入電!全艦戦闘配備!各戦隊ごとに散開せよとのこと」

 

 第8、第9航宙艦隊は異変に気が付くと、その練度の高さを示すように即座に反応、偶然ではあったが、不測の事態に備えて回避しやすいようにと各戦隊ごとに散開させる最善手を両艦隊ともに打つことができたのは幸運としか言いようがない事であった。

 

 しかし、何事にも例外はあった。

 

 最前衛にいた戦隊は、対応のしようがないままにそれに飲み込まれる。

 

 「重力震のあった宙域より巨大な超高エネルギー反応接近!」

 

 「回避だ!機関推力最大!取り舵いっぱい!急げ!」

 

 「ダメです!間に合いませn……」

 

 その宙域を凪払った禍々しい濃赤色の光の奔流に、第8航宙艦隊の前衛を務めていた2個戦隊20隻が消滅した。

 

 

 地球連邦宇宙軍は油断していたのだ。

 

 まさか

 

 そんなはずはない

 

 誰もがそう言うはずだ。

 

 重力震のあった宙域に現れた異星の超巨大移動要塞を前に、地球連邦軍の防衛計画、作戦計画はその全てが崩壊した。

 

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