地球連邦戦記   作:名無之助

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第1話 惨劇のコーネリア

 地球からオリオン座方向に約3万8000光年離れた場所に、コーネリアという惑星があった。

 

 その星は地球とよく似ており、大きさもほぼ同じだったが、大陸は一つしかなく、陸と海の比率は1対2という緑の美しい惑星であった。

 

 そこに住む人類は尖った耳と赤みがかった肌を持つ、容姿は地球人に似た人々が住んでいた。

 

 コーネリアは、特殊なエネルギー技術と高度な宇宙技術、さらに宇宙艦隊、生態系管理技術を有し、恒星系内の4つの惑星と10ほどの準惑星を統治していた……その時までは。

 

 ある日、恒星系の外れにある惑星サルサに住む子供が、空が急に暗くなったことに気づき見上げると、無数の未知の宇宙船が浮かんでいた。次の瞬間、眩い閃光が走り、子供は意識を失った。跡には巨大なクレーターが残り、都市は灰燼に帰した。これが、彼らの地獄の始まりだった。

 

 コーネリアの軍は謎の宇宙艦隊の構成系への侵入を既に把握しており、惑星サルサの防衛戦力は緊急発進する暇もなく瞬時に壊滅、残存部隊も反撃すら許されずそのすべてが焼き尽くされた。

 

 

その謎の艦隊は、コーネリア語では解読不能な信号を発し、懸命に戦うコーネリアの艦隊を圧倒的な戦力で駆逐し遂にコーネリア本星の目前まで迫った。

 

 コーネリア公国は起死回生をはかり、決戦を挑むべく艦隊を出撃させ、本星の最終防衛ラインと定められたコーネリアの月の軌道上に艦隊を展開させた。

 

 コーネリア公国主力艦隊を率い、謎の艦隊と対峙するはコーネリア公国の王太子 キロル・ナ・コーネリアである。

 

 公国の最後の守りとして彼は決死の覚悟で乗艦する戦艦の艦橋から敵艦隊をにらみつける。

 

 コーネリア主力艦隊は度重なる敗戦で疲弊し、残存艦艇は本星に国民の避難誘導のために残っている一部の艦隊を除き、その全て、100隻余りの艦隊が、この場に集まっていた。

 

 対して、そこに現れた敵艦隊の数に、彼は戦慄した。

 

 総数約600隻、圧倒的であった。

 

 速度性能に優れるコーネリア公国艦隊は、圧倒的な数の暴力に対して勇敢に戦った。

 

 「兵たちよ臆するな!君たちは我が勇敢なるコーネリア公国の兵士!王太子である私が命じる!祖国を守るのだ!全艦、我につづけ!」

 

 記録に残っている王太子の最期のことばである。

 

 この号令をうけ艦隊は敵艦隊に吶喊、敵艦隊はそれを正面から受け止め、そして粉砕した。

 

 コーネリア公国は王太子と軍の主力を失い、本星を包囲下に置かれることとなる。

 

 

 

 

 

 **惑星コーネリア・首都ネリアス**

 

  首都の城で、コーネリア公国 公王マイル・デ・コーネリアは決断を迫られていた。

 

 敵からの降伏勧告――その内容は「隷属か死か」という過酷な選択だった。かつて内戦で多くの民と、親族を失った彼は、生き残ることの価値を知っていたが、その条件は認めがたいものだった。

 

 そして 彼の苦悩をよそに臣下たちの意見は割れていた。

 

  「奴隷なんぞ真っ平だ!戦って死ぬほうがマシである!」

 

 公王の眼前にて開かれている御前会議にて、軍務大臣が沈黙に耐えかねて声を上げた。

 

  「お前がそうでも、民はどうなる?民を巻き込む気か!」

 

 内政などを担当する大臣が立ち上がり、軍務大臣の発言に対して語気を強める。

 

 「じゃあ降伏して奴隷になるのか?民を差し出す気か!」

 

 「誰もそのようなことは言っていないではないか!」

 

 今にもつかみ合いになりそうなところで、外務大臣がたちあがって二人の間に割り込む。

 

 「和平交渉を試みるべきだというのに、お前たちは極端すぎるわ!」

 

 「「貴様は黙っていろ役立たず!!」」

 

 外務大臣の発言に対し、内務、軍務両大臣は外務大臣に罵倒を浴びせ、外務大臣も怒りをあらわにして目の前のテーブルにこぶしをたたきつけ怒気をあらわにする。

 

 「なんだと!?」

 

 今にも乱闘になりそうな臣下たちを見て公王がゆっくりと立ち上がる。

 

 

 「いい加減にしろ!見苦しいぞ!」

 

 公王が一喝すると、臣下たちは不安げに彼を見つめた。マイルは彼らの目を見て、迷いを捨て決意を固めた。

 

  「今は生き残ることが大切だ。だが、希望を失えばそれも叶わない。だから、我が娘フィル・ナ・コーネリアと、彼女が率いる艦隊に民を乗せた輸送船を護衛させ、敵の包囲を突破してこの星系を脱出させる。彼女らがいつかコーネリアを取り戻す希望となるだろう。脱出が成功した後、我らは降伏する」

 

 王のその言葉に臣下たちはざわめく。

 

  「それは無謀です!」

 

 臣下の一人がそういったが、公王はそれでも、とつづけた。

 

  「だが、やらねばならん。希望が必要なのだ」

 

 その時、部屋に一人の少女が入ってきた。

 

  「フィル、聞いていたな?」

 

 「……うん、聞いてた」

 

 

 父である公王の言葉に、娘フィルは短く答え父の顔を見つめる。その瞳は真っ直ぐ父を向いていた。

 

  「お前は幼い頃から感情を表に出すのは苦手だったな、それでも人一倍優しい子なのは知っている。その澄んだ瞳を見れば、普段は分かりにくい感情も読み取れる。お前の父でよかったと心から思う。だから今は……分かるな?」

 

  「うん……皆を守る。そしていつか帰ってくる……だから、待ってて。」

 

  フィルは涙をこらえ、決意の光を瞳に宿しながら父に抱きしめられた。

 

 

 

 

  その9時間後、コーネリア残存艦隊30隻と民を乗せた輸送船5隻が、惑星を旅立った。

 

 

 それを援護するべく、公王自ら残りの残存部隊を率いて、敵艦隊に陽動をしかけ、公女の艦隊が敵の隙をついて包囲を突破したのを見届けたのちに降伏したが、コーネリアの民への見せしめとして公開処刑された。

 

 公王は最期、処刑の直前に声を張り上げ「民たちよ!希望を捨てるな!」と叫び、直後に敵のレーザーで全身を焼き尽くされるといった壮絶な最期であった。





【挿絵表示】
 フィル公女です。
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