地球連邦戦記   作:名無之助

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第2話 逃避行

 10日後、コーネリア公国から脱出した艦隊は、ワープ航法などを駆使しコーネリア星系から約1万2千光年の位置を航行していた。

 

 そして幾度目かのワープをしようとしていたその時、敵の追撃部隊に追いつかれてしまった。

 

 

 

 「敵の追撃!?全艦防御陣形!輸送船団の後方に展開して輸送船団を守って!」

 

 フィル公女の命令の元艦隊は輸送船団を守るべく展開し、戦いに備えるが、それは戦端が開かれてすぐに艦隊の悲鳴の嵐に変わった。

 

 ≪こちら巡洋艦サルサ、機関部に被弾!航行不能!≫

 

 ≪こちら戦艦サルトール、我操舵不能!ぐあぁぁ!≫

 

 ≪被弾した!たすけてくr……≫

 

 一隻、また一隻と、敵艦隊から放たれる白亜の光線に貫かれて沈んでいく味方艦、そして更に一隻、公女フィルの眼前にて、彼女が座乗する旗艦、プリンセス・コーネリアを庇う様に、その前方に躍り出た巡洋艦が白亜の光線に貫かれて爆発する。

 

 ≪コーネリアに栄光を!殿下!どうか後を頼みまーーー≫

 

 その最期の声を聞いたフィルは拳を握り締め、顔を伏せる。

 

 次々と被弾し、傷つき、そして力尽きていく味方艦隊…しかし、彼らは折れない。

 

 被弾し戦闘力をなくした駆逐艦は敵艦に突っ込み相打ちに持ち込む。

 

 艦橋を破壊されて更に航行不能になった艦は、それでも最後まで主砲を撃ち続けた。

 

 彼等は、ただの一人も折れることなく戦う。

 

 通信機越しに友軍艦の断末魔を聞き続けるオペレーターはそれでも職務を忠実に果たし続ける。

 

 彼等が折れれば、彼等が守る避難民が、そして何より、彼等が忠義を捧げる公女が、その身が危険にさらされる。

 

 戦いが続く中、公女フィルのもとに、次々と味方の悲報がもたらされる。

 

 「殿下!第3近衛戦隊全滅!、敵艦隊が輸送船団に迫ります!第4近衛戦隊が対応中ですがこのままでは持ちません!」

 

 「殿下!敵の増援艦隊が出現しました!」

 

 艦隊旗艦である戦艦【プリンセス・コーネリア】も奮戦していたが既に何発かの被弾を受け、無視できない損を負っていた。その艦橋で、艦隊を率いている公女フィルは民間人を乗せている輸送船団に敵を近づけまいと懸命に指揮を執るが、敵は数も質も圧倒的であり、勝てる見込みは皆無であった。

 

 

 

 

 

 「だめ、このままじゃ逃げきれない……」

 

 

 

 

 指揮を執る公女フィルだったが、過酷な現実に、脳裏に最悪な結末が想起され心が折れそうになる。

 

 そんな公女を横から見ていた人物、プリンセス・コーネリア艦長 ラム・ドーム大佐は、公女に対し一括する。

 

 「殿下!指揮官がそのようにされては困ります!命じてください!艦隊に殿となり敵を足止めするように!その間に残りの艦隊と輸送船団はワープでこの宙域を脱出するのです!それとも輸送船団の民間人も一緒にここで皆殺しにされるつもりですか!」

 

 

 その一喝に正気に戻されたフィルは、ドーム大佐を見つめる。

 

 「指揮官とは、部下に死ねと、そう命じなくてはならない時があるのです殿下、我ら軍人、既に覚悟はできています」

 

 「でも・・・」

 

 フィルが何かを口に仕掛けためらったその時、味方艦から通信が入る。

 

 ≪こちら第5近衛戦隊!我が戦隊と第6近衛戦隊が敵を足止めします!殿下と輸送船団はその間にワープで離脱してください!≫

 

 「そんな」

 

 ≪殿下!どうか我らの希望を紡いでください!お願いします!≫

 

 「・・・分かった、第5、第6近衛戦隊は敵を足止めして、他は輸送船団とともにワープでこの宙域を離脱する、急いで!」

 

 フィルは苦渋をにじませながら命令を発し、こぶしを握り締める。

 

 通信を聞いていた兵たちも顔を俯かせるが、すぐに職務に復帰し、命令に添い準備を開始する。

 

 ≪殿下、あとは頼みました≫

 

 「・・・ごめんなさい」

 

 フィルが絞り出した言葉は誰にも聞こえることはなかった。

 

 それを最後に通信は切れ、足止めの艦隊が稼いだわずかな時間ではあったが、艦隊はワープした。

 

 しかし、敵の放った最後の一発が、ワープに入る直前のプリンセス・コーネリアに直撃、被弾により爆発しながらプリンセス・コーネリアはそのままワープしたのであった・・・。

 

 

 

 コーネリア星系から約2万4千光年 太陽系から2万6千光年の位置、地球連邦宇宙軍 第36中継ワープステーション管制室

 

 異変に気付いたのは、いつも通りレーダーを監視していたステーションの管制官だった。

 

 「管制より緊急、ポイントA13に許可されていない正体不明のワープアウト反応をレーダー上で確認、付近の警備隊は直ちに確認に向かってください」

 

 

 そしてほどなくして管制官は驚愕する報告を受けることとなる

 

 ≪ステーション管制へ、こちら第10警備隊旗艦パトロール艇P339、応援を要請する、ワープアウトしてきたのは所属不明の武装した艦隊と思われ、すべての艦がひどく損傷している!救助活動の要アリと認める!≫

 

 「こちらステーション管制応援と救難隊は向かわせた!所属不明の艦隊とは何か!?詳細を報告せよ!」

 

 ≪見たこともない艦艇だ、口では説明できない!後程収集したデータを送る≫

 

 そしてステーションの責任者である所長のもとにも報告が入り、所長が通信を管制官といったん交代した。

 

「了解!こちらはステーション所長だ。緊急事態と判断できるため、当ワープステーションは現時刻をもってレベル3の警戒態勢を発令、付近の友軍部隊並びに管区司令部にも報告と応援を要請した。第10警備隊は現状できる限りの救助、及び情報収集に努めよ」

 

≪第10警備隊了解、通信終わり≫

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