これが、最後の務め───。
───エピソード.17
新月ルリの能力、『進化』…その時々の状況に合わせ、身体を変化させる超能力。対する、御堂イカズチの能力は『自己治癒』…。この2人の能力は、肉弾を必須とする。すなわち───根性のぶつかり合いだッ!!
「ヒャアッ!!」
御堂イカズチは山猿の如く変化!明賀峯との戦いで見せた鉤爪を振り回し───広範囲の空間を切り裂いたッ!新月ルリは両の腕を盾へと変化、受け止めるも切り裂かれる…!
(防御が通用しないッ!?)
「ヒィアッ!!」
「それなら…ッ!こうだぁぁぁぁッ!!!」
ルリの胸部に砲身が現れる。エネルギーを一瞬で充填し───炎と変えて討ち果たすッ!!
「フラムブラストォォ───ッッ!!!」
ルリが持つ最強威力の必殺技であり、ノーモーションで放てるカウンター技…!御堂イカズチの肉体を焼き焦がす…がッ!
「!?」
じり、じり…焼けながら、前に!御堂イカズチは、ニタリと笑っているッ!
「ヒャアァァァァーーッッ!!」
「ッ!?」
狂声と共に放たれた一撃───ハサミの如き爪撃を飛び退いて避けるルリ。尻込みするが…すぐ気を持ち直すッ!!
「勝負は…こっからだぜッ!!狂犬ッ!!」
「…キヒヒッ!!」
(…焼くっ!普通に切断するよりか、熱で攻撃すればタンパク質が変性して、より大きなダメージになるッ!)
「ヒートエッジッ!!」
リバティユニオンとの戦い以前では、意図して発動する事が困難だった『進化』を使い熟す新月ルリ。彼女の意思に応え───体が共鳴するッ!!両腕が炎の剣に変化し、降りかかる狂犬の鉤爪を防いだ…!
「さらにフラムブラストッ!!」
「ギヒャァアアアッ!?」
胸部砲身は現役である。このままフラムブラストの火力で御堂イカズチを焼きながら、爪の攻撃を防いでいけば…そのまま新月ルリの勝利だッ!
「悪く思うなよなッ!強いのが悪いんだよッ!!うありゃあああああッ!!」
しかし、その勝利は、御堂イカズチの予測できない行動によって絶たれる。後退した。───御堂イカズチは後退した。
「…!」
御堂イカズチが避ける。そのことを予想できないのは、彼の今までの行動からして当然のことだ。だが、彼が今まで避けずに攻撃を受けてきたのは───避けようがなかったからだ。自己治癒の能力では避けれない速度、避けれない範囲だったからだ。
「…楽しいなァ。新月ルリィ…。お前、色々持ってて…おもしれぇ。───だがよ。俺が今まで通りじゃ、つまんねェよな。…そォだよなぁッ!!!」
御堂イカズチ対明賀峯晴貴の戦いで起こった…明らかに異常な出来事を覚えているだろうか。あの戦いで御堂は明賀峯の攻撃を相殺していた…しかしッ!それは不可能なのだッ!明賀峯と御堂、2人の肉体の差は、1mmと10mの差ッ!厚さが違うッ!勝てる道理がないッ!
では何故、あの時相殺できたのか…ッ!!
「あの戦いで…俺は血を認識しッ!操ることが出来たァッ!!」
身体を切り付けると───全身から吹き出した血が、御堂の全身に纏わりつく【鎧】となり…その色は赤から黒に染まっていく───ッ!
「血、狼、装…ッ!!」
現れるは血の涎流す赤黒の狼騎士…爪を剣とし、構えを取るッ!
「…さァ!喧嘩の続きと行こうじゃねェか!!」
「…流石はヴァルハバラの狂犬…ッ!しゃあッ!行くぜ!!」
新技【血狼装】。それは、見かけの強さだけの技ではない。御堂イカズチが新たに行き着いた境地───液体を操るための装い。流動する血液の流れを力とすることが可能ッ!かつ、体毛により流れの速度、角度を操作することで───緻密に自由にパワフルに肉体を操作できるッ!
御堂はさらにスピードアップッ!爪を振り回し、足蹴りを放ち、狂犬の如く動き回るッ!!
爪での攻撃に気を取られた新月は蹴りを腹に喰らってしまう…ッ!
「ヒャアァァァァッ!!!」
「グおおッ!?」
(なんだこれ…ッ痛いッ!?まるで、水面に殴られてるみてェだ…ッ!!)
徐々に避けられなくなっていく攻撃───一撃が致命傷になりうる爪の猛攻ッ!加速して行く攻防の中で、防げていたものが防げなくなっていく…ッ!
「どォした7つ星ィッ!!その程度かよォォォォォォォォッッ!!」
「!」
「仲間の程度も知れるなァ!ケヒャヒャヒャヒャッ!!」
(……。)
リバティユニオンを打ち破る中で、さまざまな出会いがあった───。千光院のおっかけのレイ、頼れる指揮官のタイガ、負けず嫌いな弟のマコト、意外と気が利くセナ、あんま話したことないヨリト、何度も喧嘩したトオル…。
あの全員で打ち破った。己の殻を破って勝ったのだ。
たとえ恩人でも…発破だと分かっていても…あの旅路を馬鹿にされて、黙っていることはできねェッ!!
「…っ!?」
新月ルリの全身が光り輝き───彼女は仲間達の思いを載せ、リバティユニオンを討ち果たした、かつての最終装備を纏うッ!!
「…これは、
「…ヒヒッ!」
「!…行くぜッ!狂犬ッ!!」
狂犬は、その様を見ても退かない。その
ルリが構える巨剣、溢れ出す光り輝くエネルギーの奔流に、飛び込んでいく───!
「
熱剣大切断ッ!!
狂犬、振り下ろされた炎の一撃を、受け止め鉤爪にて持ち上げるッ!しかし焼き溶けていく…ッ!あまりの熱と衝撃に、血の鎧が剥げるが、溢れるような血の涎と共に狂犬は前進したッ!
自傷し血を吐き出すことで、液体を確保ッ!沸騰してもまるで構わないッ!
(この感覚───千光院以来だな。)
爪が折れ、何本も折れ、生やしても折れ───。
「───うああああああああッ!!!」
「ヒャアァァァァアアアアアッッ!!!」
叫びの中、決着した───。
───エピソード.18
「…1時間経ったか。…おーい!勝負ありだーー!!」
遠巻きに見守っていた宮部が、2人に試合終了を告げ、駆け寄る。そこには、近くの石に腰掛ける狂犬と、力を使い果たし倒れ込む新月ルリの姿があった。
「宮部さん。お疲れ様です。」
「…深く聞くつもりはないぞ。」
「なんのことです?」
「…君が、本当は記憶を取り戻してるかどうか!とかな。」
「…その、すみません。助かります。」
「全く…。私闘は取り締まりの対象なんだからな。…君の事は信用したいが、思ったより不安になってきた。」
「まっさかぁ。…いえ、その。反省してます。」
「…狂犬は、もう役目を果たした…っていうのも寂しいが…人生は戦いだけじゃない。…それじゃ、私は新月君を回収してセキュリティに帰る事にするよ…。」
宮部昭仁は、新月ルリを抱えて去っていった…。
「ありがとうございました。宮部さん。…行っちゃった。」
これで、ここには狂犬が1人…いや、ただの御堂イカズチが、1人。
───エピソード.19/エピローグ
「御堂さんが…引退!?」
「御堂クンがそういう判断をしたなら、それを尊重すべきだよね…。」
「御堂様…寂しいですわァ〜!!」
「御堂ォォォーーーッ!!」
ヴァルハバラの狂犬、御堂イカズチ引退説───そのような字面が載った記事を話題に嘆く狂犬組…。現第七特区代表、新月ルリや、他の目撃者からのさまざまな証言で裏付けられている。
『狂犬の意志、引き継がせていただきましたッ!これからの第七特区を背負い、この新月ルリ、頑張らせていただきますッ!』
しかし、この説にはさまざまな意見があり…。
『勝ち逃げは許さないぞ御堂イカズチッ!!この私、千光院リオウが必ず君を探し出して見せるッ!そして再戦だッ!』-千光院リオウより
『奴が引退?冗談だろう。あの喧嘩馬鹿が、喧嘩を辞めるなんて事はない。』-獄中の明賀峯晴貴より
意見というか、欲望寄りではあるが、とにかく認めないという層もいるらしい。…厄介なことだ。
僕は今、優雅なコーヒーブレイクだというのに…。喧嘩しないと、健康だね、まったく。
近況を言っておくと、近場に新しくできた能力者学校に通ってるんだ。なかなか課題やら、授業やら大変だよ…。でも、狂犬の働きほどじゃないけどね。
「もし、突然失礼。」
いきなり対面の席に誰か座ってきた!?…って、宮部さんか。
「宮部さん。どうされたんですか?」
「海堂カズイチくん。…君に頼みたいことがある。」
「…?」
「セキュリティに忍び込み…いや、ごめん。なんでもない。」
セキュリティに忍び込み!?!?!?
「え、えと、どういう───。」
「…すまない。時間がない…これを見てくれ。」
渡されたチラシの中に、小さく薄く書かれたメモ───『御堂イカズチ確保指令』
御堂イカズチ、確保…!?
「…いずれ君にもたどり着く。何故なら、彼らはセキュリティを掌握しているのだ。…クソッ!不甲斐ないッ…!私にもどうしたらいいか…。」
「………。」
平穏ではいられない。
御堂イカズチの喉笛に迫る───六つの闇の牙。
超能力特区の闇を司る『六閥』との争いが───始まろうとしていたッ!!
第一部、完ッ!!
御堂(裏ボス)の性能はゲーム的な感じだと
・攻撃のガード不可能
・一定時間攻撃を受けていないと回復
・広範囲爪攻撃
・特殊な必殺技でない限り状態異常無効
・体力を削ると第二形態に入り、装甲を纏う。
・装甲を破壊すると特殊イベントが発生。最終装備が今後使用可能になる。
な感じです。
第一部の読了、ありがとうございました!