オルトロスの能力② - 武器生成
白い棒を出現させる。その形状や質感は、骨に酷似している。
───エピソード.6
───ここで語られるは、過去の話。
御堂イカズチは、突然の事に衝撃を受けていた。
自宅にて考え込む。昼間、仲がいいセキュリティの高官…宮部からされた話について…。
…御堂イカズチを狙う何者かが、この島にいる…ッ!
「御堂イカズチ、確保指令…。」
どうしてこんなことになっている?僕が狙われる…おかしいだろう。僕は、狂犬だ。荒っぽく、喧嘩に明け暮れている不良なんだ。たったそれだけじゃないか。
「……。」
…とりあえず、今日は寝よう。そして、明日から考えないと。セキュリティの宮部さんの話に乗るかどうか…。
しかし、寝床に着く前に、何かの物音が聞こえた。それも、聞き慣れた音だ。肉が打たれる鈍い音、肉が壁を打つ重い音…。
玄関の戸が、無理矢理に開けられる、無線の着信音でハッとした。
セキュリティの人らしき男が、黒衣の男に蹴られ、転がる。黒衣の男は───ゆっくりと僕に近づいて来る。
「ぐっ…御堂イカズチ…!逃げて…くれ…。」
それきりに力尽きるセキュリティ。だが、既に望むには遅い。勘ではあるが…。もう追っ手に囲まれている気がする。逃走は不可能だろう。
というか、僕としても…ただやられるばかりではいられない。鼻を明かしてやりたい。───僕の精神の平穏を奪った代償に。
臨戦態勢となり、黒衣の男に問う。
「…自己紹介、頼むぜ。どこのモンだ?何故俺を狙う?」
影の刃───仕事人は、短刀を構えた。
「御堂イカズチ。我々は六閥の手の者…。貴方には、大変価値がある。」
「…聞かせろ。」
「貴方こそ、自分が異常とは思わないのか?…天帝との戦いで見せた再生復活、鳴鬼の拳を相殺したその膂力、そして、7つ星との決闘で発揮した血の鎧…。その全てが、自己治癒の範囲を超えている。」
(…新月ルリとの決闘まで、見られているのか…。)
「…出力が高けりゃ、能力者は枠を超えた力を発揮するモンだろうが。学校で習うことだぜ。」
「おお。わかっていらしたか。…貴方の能力出力は、圧倒的に優れている…ッ!是非とも、モルモットにしたいとのことです!六閥の方々のお考えとしては!」
「…やれやれ。こりゃ根までやらなきゃ、駄目らしいな…。───地道にお前ら、1人ずつムショにぶち込んでやる。」
まさに、御堂イカズチは身を切った…。血が溢れ、流動し───彼の身を包み込む【鎧】となるッ!!
「───狂犬の目を覚まさせたこと、後悔するんだなァッ!!」
「…ッ!」
血狼装発動───赤黒なる狼騎士、再臨ッ!!踏ん張り、前方に向けて跳躍…!鉤爪にて切り裂くは、闇の刃の命ッ!!
「が…はッ!?」
「キヒャァアーーーッ!!」
ガードも出来ず貫かれ、暗殺者は呆気なく倒れた。狂犬は髪の毛を操作し───止血と捕縛を兼ねた拘束を施すッ!そして屋上へ…ッ!周囲を警戒ッ!
「これで終わりか?…呆気ねーじゃねーか。…伸びてるセキュリティと一緒にセキュリティに送らなきゃな。」
が、まだ───今宵は終わりでないッ!!
「見事、御堂イカズチ。」
「……クク、そうだよな?前座にすらならなかったよ…六閥ゥ!───!?」
背後からの声に振り返ると、そこには居たのは…この超能力特区のセキュリティ代表長官…!千光院青龍…ッ!
「…セキュリティ…代表長官…!?」
「君とは顔を合わせたことはなかったつもりだが…勤勉だな。…おい。」
「はっ!」
背後の部下が、ある男を持ってくる。… セキュリティ超能力犯罪対策科、宮部昭仁…!気絶している…!
「…宮部サン…!」
「彼を殺されたくなかったら、逃げるなよ狂犬…。私はただ…君と戦いたいだけなんだ。」
「…ざけんな…!」
「君が勝ったら、彼を無事に家に帰す。私たちも君から手を引く…。どうだ?」
「んなもん、信じられるか。…だがどっちみちッ!オメーはぶちのめすしかねェよォだなッ!!」
「…その意気や良し…行くぞッ!!」
狂犬は今や、明賀峯晴貴に比肩する格闘能力と、治癒の応用能力を組み合わせた戦闘が可能だ。すなわち、『天帝』千光院リオウとはベクトルの違う強さを持つ…一角の『最強』であるッ!!
対するセキュリティ代表、千光院青龍…彼の能力は未知数ッ!
「ヒャアァァァァッ!!」
爪による一撃───高速かつ、ガード不可能!切り裂かれる青龍…一撃ッ!この試合もまた…一撃ッ!!
だが…再生…!
(再生持ちか…。確かに、そう言う能力じゃなければ、俺に対して姿を見せるなんてできねェ…!)
「ククッ…───フラム・ストーム。」
「───炎ッ!?」
2人とも、激しい炎に呑まれる…自爆覚悟の爆発攻撃!だが、驚くべき点はそこではないッ!複数の能力を使用することは…不可能だ!通常不可能ッ!長い歴史の中で不可能ッ!
が!炎だけでなく…風も!化学反応も!サイコキネシスも…ッ!この男は全てを操っているッ!
「金縛り!?…サイコキネシスかッ…こんなもん…!!」
しかし、身じろごうにも、筋肉の一つ一つが拘束、停止させられている…!今の御堂イカズチでは、対処できない…!
「無理するな。君はまだ出力強化を受けていない…。どうだ?今からでも構わない。」
「…何のつもりだァ…!」
「私の協力者になれ。強くしてやるぞ…?外に出る権利もあげよう。モルモットには、それすらない。───人権を保つ最後のチャンスだ。」
…。
「お断りだ。───人権を保つ最後のチャンスだとしても、俺は、お前なんかに絶対従わねえ…!」
「そうか…。薬物を投与せよ!御堂イカズチを第一特区に輸送する。」
「ハッ!」
炎が止まり、注射を受け───御堂イカズチの意識は遠くなっていく。
(……頼むぞ、新月ルリ…。僕の…仇は取らなくてもいいけど…せめて、第七のみんなを…。)
───エピソード.7
「と言うことですのッ!夜の御堂様ウォッチングをしていたら…偶然見つけまして…ッ!おそらく、奴らはセキュリティ…ッ!」
「新月サン。御堂クンを救ってくれよ!彼を載せたトラックは確かに、第一特区に行ったみたいなんだ!最後に入った場所はここで、そこから一切そこに出てないッ!」
「御堂イカズチは…その建物…『フェンリルビル』の中にいる可能性が高い!?」
「御堂ォォォォーー!!」
「ああもうわかった!うるせェ!うるせェ!」
カラオケルーム。人目につかない絶好の場所…。新月ルリと、狂犬組の密談…!
「…近いうちに仕掛けねェと御堂を他の場所に動かされる可能性がある。しかし、私だけで動くのは無謀だ。あいつらに声かけるしかねェな。」
「…まさか…。」
「ああ。7つ星、再結成だッ!!もしもし!震電か!?私だ!このホットライン、誰にも傍受されてねェんだよな!?」
突然虚空に向かって話出す新月だが、それは7つ星の1人、震電タイガの能力『電波』に期待してのこと。彼の能力にかかれば───どこでも、いつでも、その場所が会議室となるッ!
『緊急か?他の五人も呼んでおいたぞ。』
「タイガ、そこにいる4人にもビジョンを頼む!」
『わかった。』
目の前に広がる会議室───脳内をジャックして展開された、意識の議場!狂犬組は驚く…この能力が、リバティユニオンへの逆襲を可能としたッ!
『この空間では、多少思考が加速するとはいえ、長居するとそれなりの時間が経過する。気をつけろよ。』
震電タイガ。
『また厄介ごとの匂いがするね。』
糸紬ヨリト。
『姉さん!今回は何が起こったんだ!?』
新月マコト。
『…ま、粗方想像がつくがな…。この街もきなくせェ。』
破天トオル。
『…えと、皆さん、お久しぶりです!』
天照レイ。
『…久しぶりね。確かに、久しぶりね。』
血伊吹セナ。
『ああッ!みんな久しぶり!今日集まってもらった理由なんだが…。』
そして、新月ルリッ!
7つ星…ここに集合ッ!
会議はつつがなく進行した。ルリは狂犬組から聞いた話をそのまま説明、タイガが司会となって、突入作戦についてのあらかたを決め終わった頃…。
『セキュリティのジャックは俺、俺の護衛にヨリト、突入組は新月姉弟とトオル、セナとレイはイレギュラーに対応してくれ。』
『決まりだな!』
『───ザザ護衛は───。』
『…ッ!?おい、───ザザ』
震電タイガのブレインジャックが…不安定に…!が、しばらくすると、安定化した。…ある有名人の登場と共に。
『ああ、ごめん。こう言う仕組みの能力か…。すまない。もの珍しくなってね。レイの近くに、見たことのない周波数があったから…。』
『せ、千光院様!?タイガのブレインジャックに入り込むなんて…ッ!リバティユニオンですらできなかったのに、流石すぎますッ!!』
『…千光院リオウ…!』
現れたのは『天帝』、千光院リオウ…規格外な力だ。流石にレベルが違いすぎる…冷や汗を浮かべる震電。
『…御堂イカズチ奪還作戦───私もついていくぞ。異論はないな?』
『───な、無い…っ!』
『当然、突入する。…では、作戦当日に。』
圧倒的な存在感…っ!これが、天帝…戦慄する7つ星であった。
(はぁ〜…今日の千光院様もカッコよかったなぁ〜。ほんと、人のモノマネしかできないような僕なんぞでもお姿が見れるなんて最高すぎる〜!)
御堂イカズチの周りで、運命の歯車は進み始める…!