超能力特区と熱烈なる狂犬   作:K+#ガソ林

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島管理AI『サクセス』

 オルトロスの能力③ - 再生能力

 あまりにも強力であり、再生速度は御堂イカズチと並ぶほどである。

 

───エピソード.8

 

「御堂イカズチ。面会の時間です。」

 

 鉄の監獄。様々なプラグが御堂イカズチに接続されている。もはや、指一本動かせない…そんな状況だ。

 激しい痛みに耐えかね、御堂は返事することすらできなかった。

 

「……。」

 

「貴方にとっては、これが最後の機会となるでしょう。…六閥の方が直接姿を表すのは、珍しいことですから。」

 

「…六…閥…。」

 

 御堂は車椅子に乗せられ、そのまま移動を始めた。廊下を渡り、道中、実験される超能力者を見る。しかし、何もできず、目を逸らす。

 エレベーターが降りきった先にあるのは、六閥の部屋…。

 

「さぁ、ご対面です───!」

 

「…まさか…そんな…。」

 

 そこにいたのは、ロボット…ッ!

 6体のアンドロイド…!

 こちらを向き、彼らは順々に話し出した。

 

『初めまして、御堂イカズチ。私達は六閥と呼ばれる組織です。』

『六閥はこの人工島作成時に作られた組織でした。それはなぜか?ドロップアウトする能力者の受け皿としてです。』

『初めから、島運営の要素に含まれていたのです。そして、我々は暴走しているわけでなく、正常です。』

『すなわち、我々のこの行動も、島運営として正しいものであるのです。超能力者の研究は必要ですから。』

『ある意味我々は、この島のスケープゴート。超能力研究の汚名を被る組織であるのです。』

『ここまで話すのは、貴方に協力していただきたいからなのです。』

 

 奥から、美しい女性が部屋に降りてくる。いや、彼女もアンドロイドだ。鋼鉄の瞳は、御堂イカズチに向けられた。

 

『御堂イカズチ。私は島管理AI、サクセス。六閥の統括でもあります。真実をお話しします。』

 

「…勝手にしやがれ。」

 

『人類の進化である超能力は、1人が覚醒すると全員に拡散され、今では全人類が使用できるようになっています。しかし、それは決して良いことだけではなかった。』

 

「…。」

 

『人類は超能力に引っ張られるようになった。その人間性は力に依るようになった。あなた方は、超能力を使わずにはいられない。───だからこそ、この人工島は作られた。』

 

 この世界の人類の話をしよう。

 超能力が目覚めても、みんなで我慢すれば今まで通りでいられた。だがしかし、そうはならなかった。

 秩序の守り手でも、悪意の殺人者でも、人生を超能力に振り回されてしまう。使わずにはいられない。

 ギリギリ理性が保てるのが、16歳の頃まで。そういうことで、僕らは超能力特区に送られたのだ。

 ちなみに、Eランクや、Dランクの能力者であれば無条件、Cランクは条件付きで特区行きを免除できる。

 

『御堂イカズチ。あなたは人間の域を超えている。…私の目的は一つ。人々が、超能力を使わなくて良いようにすること。』

 

「……。」

 

『嫌ですよね?今までここに来た全ての人に同じ質問をしましたが、皆嫌だと言いました。無力な自分に戻りたくない。超能力も自分自身だ。自分だけの特別を失いたくない…。』

 

「…。」

 

 御堂イカズチとしては、複雑な気分だった。超能力が世界に混乱をもたらしているのは、明確だ。犯罪者の力となり、事故を引き起こし、無用な進化を遂げ、人を傷つける…。

 この素晴らしい夢のような世界は、とろけるような残酷さを内包している。

 

『超能力は人の進化。だから私は、人々の為に目的を新しくしました。思考停止にすぎません。私を作り出した方々の目的と一致している。すなわち、私に与えられた命令───超能力を研究する。』

 

「…長ったらしい。」

 

『人類が真に争いの停止を、永遠の繁栄を望むのなら、超能力の果てにこそ、その答えがあるはず。』

 

「……。」

 

『御堂イカズチ…。あなたの能力出力を強化します。』

 

───エピソード.9

 

「あ、あああッ!もうッ!もうやめてくれッ!!やめてくれーーーッッ!!嫌だッ!!嫌ァーーーーーッ!!!」

 

 電流と薬物によって、脳みそに刺激を送り続ける。

 能力者は脳から特殊な力場を生み出し、超能力を行使している。脳を刺激すると蛇口を捻るように…超能力が溢れ出す…!

 

「嫌ッ!!やめて…!やめてくれッ!!やめてッ!!やめてくださいッ!あ、あう…あ、あ!あ!あぁあああああーーッ!!?」

 

 全身に力場が放出される。死に際の断末魔の中で、御堂イカズチは自分という存在の消滅を感じた。

 『ビジョン』が、見える。

 

「───あ。」

 

 『ビジョン』が、見える。

 それは、一つ一つのピクセルに…ありとあらゆる記憶と景色が詰め込まれている。絵などではない、乱雑な画像。

 

「───あ、あ、あ…。」

 

 『ビジョン』は広がる。

 御堂イカズチの身体から、光となってエネルギーが迸る。超能力が暴走しているのだ。

 広がり続けるビジョン。

 眼孔に仕舞われている目も、鼻も、口も…身体も、全てがそこにない。

 脳で視ている。

 視えて、しまっている。

 

【 御堂イカズチ くん 】

 

「───」

 

【 クガン に 伝えて ? 】

 

 そこは、暗く染まった世界で、

 

「誰…?」

 

【 いずれ 貴方 に 会う。 】

 

 そこは、やけに明るい黒が反射して、

 

【 黒の地平 すなわち この領域にて 待つ 】

 

【 そう 伝えてね ? 】

 

【 私 は ファリン 】

 

【 私達が 手伝う から 】

 

 そこには、僕と同じような、人間たちがいた。

 

 

───エピソード.10

 

「…御堂イカズチのバイタル、不安定。」

 

「出力が高すぎると、苦痛を伴う。しかし、自己治癒持ちだ。問題ないだろう。」

 

「!御堂イカズチが何か呟いています。音声を送ります。」

 

『…これが…ビジョン。…黒の地平。たどり着く。出力を増した先にある…?』

 

「…。」

 

『…あ、あ、あ、あ…ファリン…。クガン…誰…?……痛い。痛い、痛いッ!痛い!痛いィーーーッ!!』

 

 御堂イカズチが暴れ出す。拘束マシーンを炎で焼き切り、電雷を纏ってグルグルとのたうちまわる。科学者達は騒然とした。

 

「…今の、見たか?」

 

「千光院青龍と同じようなことを…したよな。再現性がある…?」

 

「…万能の能力者を、作れる…!データをサクセスに早く回しましょう!」

 

 サクセスにレポートを提出し、興奮冷めやらぬまま彼らは…絶命した。

 そう、絶命した。誰の手によって?

 降り注ぐ電雷。

 地から生える火柱。

 血凍り付く氷原。

 窒息招く深海。

 磁力で纏められた岩塊。

 そして、光の剣。

 

「…不穏、不遜、不審!この場にいる者たちに慈悲はない。」

 

 現れたのは…千光院リオウ…!

 狂乱する御堂イカズチと相対するッ!

 御堂イカズチ救出作戦は、すでに開始していたのだ。

 

「…痛い、痛い痛い、痛いィーーーッ!!」

 

「…これは、酷いな。」

 

 光すら放つ圧倒的な出力にて、天変地異を引き起こす御堂イカズチ。その様に理性などない。故に、その挙動は天災の如く破壊をもたらす。

 …だが、理性なく、狂気もなければ、勇気もない。そんな者は、天帝の前に立つ資格がない。あらゆる天変地異は、天帝の能力により無効化される。

 

「第七の技、『創点印』。」

 

 付加された磁力により、御堂イカズチの体が引き込まれる───。そしてそのまま、彼の体の複数の部位に強力な磁力が発生。

 

「弾けろ。」

 

「───。」

 

 御堂イカズチの身体は、磁力の反発力によりバラバラと化した。

 …通常、他者の体内に干渉することは、難しい。

 能力者の肉体は、超能力力場により覆われている為だ。体内干渉は特に強い抵抗を受けることになる。

 ので、このような技は圧倒的な出力を持つ千光院リオウだからこそできる、最強最短の必殺技である。

 

「……。」

 

「これで、よしと。」

 

 四肢がない御堂イカズチの体を抱えるリオウ。

 

「…さ、帰ろうか。もしもし…震電君かい?御堂イカズチを発見した。相当ケガしているから、救護班の用意を。今から戻る。…よし。」

 

 一体、千光院リオウが何を考えているのか───それは、千光院リオウにしかわからない。特に気絶している御堂イカズチには、考えることすらできない話であった。

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