───エピソード.11
御堂イカズチ救出作戦が決行されているその傍で、この島の運命を左右する重要な出来事が起こっていた。
5代表襲撃事件である。
セキュリティ代表、千光院青龍によって呼び出された5名…。
第二特区ヴァナブクロ代表、『騎士』獅鷹アケビ
第三特区アルヴシブヤ代表、『黒竜』黒雲シオン
第四特区ヨトゥンギンザ代表、『神剣』雨羅木スサノオ
第五特区ムスペルウエノ代表、『白虎』凪海ミレイ
第六特区ニブルノウチ代表、『韋駄天』八岐タケル
彼らに、衝撃の真実と選択肢を、青龍は与えた…。
「───簡潔に話そう。先日あったリバティユニオンの襲撃…あれは私が手引きしたものだ。」
「…何、を…?」
「あそこまで巨大な空中要塞に、センサーが反応しないわけがなかろう。…私は、サクセスの命に従っている。」
『皆様、お集まりいただきありがとうございます。サクセスです。本日は、最後までお話を聞いていただけると嬉しいです。』
「…本当、なのか…。」
唖然とする面々───語り出すサクセス。
『超能力者の出力を上げると、能力が拡張されることは知っていますね?では、出力を上げるには、どうしたらいいか…最も効率が良いのが、戦いなのです。より接戦となれば大きく成長します。』
「そんな事のために…平和に暮らしている人たちを巻き込んだのか。」
この島は基本的に、強力な超能力者を隔離する場ではあるが、力を持たない人がいないわけでもない。医者や、教師、労働者、観光客…様々な人がこの島で暮らしているのだ。
『それで、話があります。───我々は、あなた方で研究がしたい。リバティユニオンを使ったのも、超能力者を育てるより、あなた方を拉致する目的が強い。あなた方が我々に研究されてくれるのであれば…リバティユニオンによる襲撃は二度と起こらないと約束しましょう。』
「───。」
なんと、醜い発言か。
これが島管理AIのやることか。島民を人質にとって、生贄になれなどと…。
「───馬鹿なことを…ふざけるな。断固拒否させていただきます。」
「言葉は選んだ方が良い。」
青龍がアケビら5人を睨みつける。
「私も実験を受け、出力を強化した身だ。…君たちの成長の果てが、人類の救済となるものであれば、サクセスは満足するだろう。大人しく協力すれば、最低限の尊厳は守られる。」
「我々を舐めるのも大概にしろ…。───我らが数字は、序列ではない。この7つの代表に収まりし者は、誰もが最強となり得る。」
「千光院青龍、並びにサクセス───覚悟ッ!」
戦闘が始まった…!
始めに動いたのは、千光院青龍!絶対零度空間で全体を攻撃する…ッ!
「そうか───残念だ。凍れッ!!」
「【
瞬間───獅鷹アケビの絶対防御の鎧が、ここにいる全員に装備される…ッ!獅鷹自身は動けなくなるが、全体に最強の防御力を付与できるバランスブレイカーッ!!
代表達は絶対零度空間を無視して動き出すッ!
「ありがとう獅鷹さんッ!うおおおおおッ!!」
黒雲シオンの能力、『黒龍』。物理法則が適用されない任意の質量を持ったドラゴンを生成することができる能力ッ!生命体とは程遠く───故に意思持つ災害…!
「【黒龍演舞】ッ!!」
「バリア展開ッ!」
青龍のバリアによって阻まれる…ッ!しかし、この黒龍は、シオンが生成できる最大質量5トンにも達している。獅鷹アケビですら受け切ると消耗する最強攻撃なのにも関わらず…傷ひとつない障壁…ッ!
「───爪ッ!」
が、それを破る───『白虎』凪海ミレイ。彼女は身体に強固な武装・装甲を展開することができる。
また、彼女の持つ超能力力場を楔として打ち込むことで、超能力由来である物体・現象の強度を乱して破壊することができるのだ。
『爪』により、バリアは強度が下げられ破られた。そこに割って入るは───。
「───神剣・人割き。これにて御免。」
雨羅木スサノオ。能力は『神剣』。剣術に限り、事象の書き換えを行うことができる力。彼の認識を空間に投影し、剣術実行と共に空間を書き換えるのだ。故に、防御不可、回避不可の一閃───。
「どこを狙っている?」
「ッ!?」
しかし、能力力場の強度が高ければ高いほど、雨羅木スサノオの作り出す未来の影響を受けない。青龍は無傷だ。
「…こんな時でなければ、しばらく試合をしたいのだがな…。」
「私の仲間になれば、いくらでもできるようにしてやろう。」
「雨羅木君ッ!離れてッ!」
「…!わかった!」
「───?」
下がる雨羅木に、一瞬の違和感を感じ───その一瞬のうちに、巨大な衝撃を背後から受ける。
最後の代表、『韋駄天』八岐タケル…走れば走るだけ、加速することができるッ!彼自身の速度は高まりに高まって、ソニックブームが発生───いなしきれない衝撃を、青龍に与えるッ!!
「がああああッ!?」
「さよならだ。千光院青龍。───星の彼方まで送ってやる。」
八岐タケルは自在にノーリスクで減速できるため、星の彼方まで送られるのは、哀れな彼の被害者だけだ。部屋を突き抜け、壁を突き抜け、大気を突き抜けて───千光院青龍は、宇宙に…!
「まさか、まさかこんな───。」
まさか、こんなにも───。
「育っている…ッ!彼らならば、確実に見えるはずだ。サクセスが望む、人類の夜明けが…ッ!!」
その頃、セキュリティ代表の部屋ではサクセスのことを獅鷹らが追い詰めていた。
「さて…サクセス。ここでの話を全てバラされるか、自分の今までの所業を明文化して謝罪するか、どちらが良いですか?」
「…まだ青いですね。」
その言葉には、たっぷりの余裕が含まれている。───まだ終わってない。
「…みなさん。警戒してください。まだ終わってないようですよ。」
「そうだな。」
不穏なる男…青龍、再臨ッ!
全員が再びの戦闘態勢をとる…ッ!
「───さっき大気圏に送ったのにッ!」
「テレポートをご存知あるかな?…よくもまぁ、出力強化を受けないでここまで…。」
「───神剣・首狩りッ!!」
「爪牙ッ!」
「【黒龍牙突】ッ!!」
「ふむ───。」
凪海ミレイの、能力力場を切り裂く『爪』に、防御を打ち崩す『牙』を加えた『爪牙』。
雨羅木スサノオ渾身のイメージを込めて放たれた、『首狩り』。
黒雲シオンの奥義なる、5トンの高速質量攻撃…黒龍牙突ッ!
体に纏う能力力場を乱されれば、スサノオの神剣の餌食になり、そうでなくとも、黒龍の質量攻撃を防ぐために対策はしなくてはならない。
超高速で突っ込んでくる八岐タケルの奇襲に気をつけながら。
「どれ、技らしき技を披露してなかったね。───私もひとつ、やらせてもらおう。───【
が、そのような展開考察を無駄にしてしまう圧倒的な力。
青龍の周囲から現れた無数の光輪は、あらゆる敵性存在を捕まえ、締め上げる。必中かつ、必殺───奇襲せんと舞い上がった流星を、捕まえてしまうほどに。
「爪が、通用しない…ッ!」
「まさか、斯様なものが存在しようとは…ッ!」
「…ごめん…皆…ッ!」
「俺の速度が、捉えられるなんて…ッ!」
「突き詰めると超能力は、考えた未来を持ってくる力。妄想で現実を塗り替える力となる。理屈じゃない成功を齎すとは、そういうことなのだ。」
「…。」
この場で最後まで立っているのは、【騎士】獅鷹アケビ。絶対防御の鎧は、飛んでくる光輪を貪って溶かす。それは容易いことじゃない。ひとえに獅鷹アケビの、極限の集中力によるものだ。
「獅鷹アケビ。周りの味方は無視か?」
「……。」
獅鷹アケビは、自身の絶対防御の確立のため、貸し与えた鎧を回収していた。
「…千光院…君…ッ。」
地に伏せる4名を横目にもせず、獅鷹アケビが動きだす。
地面を操作し、そのままこの空間から脱出───すなわち、逃走を開始した。
光輪を防ぎながら、獅鷹アケビは飛ぶ地面に乗り続ける。その方向は…千光院リオウの街、第一特区ミッドジュク…ッ!
それを見た千光院青龍は追撃せず、彼女を見送る。
『追わないのですか?青龍。』
「…4名でも十分だろう。それに、獅鷹アケビ…彼女はまだ成長するはずだ。出力強化を一度でも受ければ、そこから成長は鈍化する。今はリオウと一緒に泳がせたい。」
『わかりました。では、彼らに出力強化を施しましょう。……青龍。ごめんなさい。やはり、第一特区に向かってください。』
「どうした?」
『御堂イカズチが、千光院リオウと7つ星によって奪取されたとの連絡がありました。───早急に彼を取り戻してください。』