───エピソード.12
「ここまで楽しませてくれるとは───流石は7つ星。ああ、獅鷹アケビもいたね…そろそろ、終わりにしようかッ!!」
「…嘘だろ、フラムブラストが…効かねぇ…!」
「これは、物理攻撃も無理そうね?」
「…千光院様を傷つけたお前を…許さないッ!!」
千光院青龍…襲来ッ!
7つ星は危機に至るッ!疲弊している面々に向け、青龍は岩石を高速で放つ…ッ!艦隊の砲撃にも準ずる威力を、いとも簡単に打ち出すその様は、『超』能力者ッ!!
「新月君、危ないッ!!」
「!」
絶対防御の盾が、呆然とする新月ルリの身を守るッ!
獅鷹アケビは消耗しきっているが、『騎士』として、守り抜くために全霊を賭す…!
「【強奪】ッ!!」
陰から飛び出したのは、破天トオルッ!!その能力、【強奪】ッ!触れた能力者の能力を奪う!ただし…。
「君の能力は、私に通じない。…私の方が出力が大きいからね。わかるかな?」
自分より出力が大きい相手には、通じない…!氷の槍を撃ち込まれるが、俊敏…!かつてストックした自己強化持ちの能力を使用。高速で動き回り、盾の後ろへと逃れる…!
「…ケケ、出力ってのはな、長期戦になればなるほど小さくなってくんだ…!背後に気をつけろよ。俺はいつもお前を狙ってる…!」
「…見立ては確かだ。あらゆる能力者は、能力の出力を保てる限界がある…。私の場合もそうだ。1時間とか2時間とか、そういう程度ではないがね…!」
瞬間、青龍が踏み込み…飛び上がるッ!腕を引きッ!拳を構えた…!向かうは獅鷹アケビ…!
「盾狙いか!」
「メガトン───パンチ。」
集合した盾により、驚異的な拳圧は防がれた。しかし、同時に青龍から放たれた大量の岩石弾によって、一行は身動きが取れない…!
「…せめて、千光院君が居てくれれば…!」
決して、背中は向けられない。現在、千光院リオウは治療中だ。
───エピソード.13
千光院リオウには、信じがたかった。セキュリティ代表長官である父が5代表を襲うなど…。襲撃者は、青龍の姿を騙った他者の変わり身だと思った。
『リオウ。リオウ。』
『リオウは、理を示す鷹と書くんだ。どこまでも力強く、そして、調和を齎す存在。それがリオウなんだ。』
『リオウ。きっと、お前ならば…それができるはず。お前ならば、第一特区を任せられる。』
そう、思っていたのに。
じゃ、この目の前の景色は…なに?
「お、父、様…。」
獅鷹アケビの反応が遅れたのは、仕方がないことだ。
あれはお父様だ。間違いない。力場からしてわかる…安心してくれ。私が話をつける。
そう『天帝』が自信満々に言ったのだから。
「千光院君ッ!!」
細い身体に槍が突き刺さる。崩れ落ちる天帝───。
「姉さん!千光院さんを!」
「!おうッ!」
新月マコト、能力『光』ッ!レーザーをピンポイントに照射し、青龍の目をくらますッ!光の速度に対抗出来る人間はいないッ!!故に通じた!
「ぬッ…。奪われてしまったな。」
光によるショックを受けている数瞬間に、糸紬ヨリトの『糸』と、新月ルリの脚力により救出…!かつ、動ける者たちで一斉に攻撃…!
「これはお返しだ───フラム・ブラストォッ!!」
「血に溺れろ───【赤穿ち】ッ!!」
「…千ッ雷撃ッ!!」
「千剣明王。」
『進化』の炎、『血』の針千本、『電波』の電気ショック、『模倣』による千剣明王…。
しかし、全て、全て自前のバリアにて、払い除ける…ッ!青龍の圧倒的な力が、この場を支配する…!
「多少の傷はついたよ。…まだ見せてくれるかな?」
だが、7つ星が希望を失うわけにはいかない…!獅鷹アケビも健在だ…!まだ終わりじゃないッ!
「皆さんッ!防御は私に任せてください!糸紬君、新月弟君、血伊吹君は千光院君の治療をお願いしますッ…!」
「わかった!皆、耐えるぞ…ッ!千光院リオウが、立ち上がるまで…ッ!!」
───エピソード.14
そこから数々の攻防を経て、今に至るわけだ。
正直な話を言うと、これはもう将棋で言う詰みだと思う。王手はもう刺された。いつだって取られてしまうだろう。持ち時間で必死に延命しているだけ。
「……。」
千光院青龍は余裕そうだ。
獅鷹の集中力も切れかけていて、絶対防御がただの壁に成り下がるのも近いだろう。そうなったらどうなる?破壊されて、みんなで死ぬ…のかな?生けどりだから、負けるだけか…。
まぁ、なんにせよ、僕がいなければ───ここでおしまいだっただろう。
「…キヒッ…。」
黒の地平というのに【接続】してから、言語中枢がおかしい。しばらくまともに言葉を話せそうにない。些細なことだ。
「ギヒャッ。」
身体が、組み上がっていく…。黒の地平。それはデータベース。能力者が共有する記憶空間。僕はそこで、能力者に備わる根源的な能力の使用方法を教えられた。
力場。
超能力の実現に必要なもの。それを能力者は、『ビジョン』に通す。ビジョンに通された力は、各々が利用しやすい形に加工される。それが能力者の個性を生み出している。
力場をビジョンに通さず使うと、どうなるか…。それは散々、千光院青龍が示してくれている。───圧倒的な、力を得るのだ。
「───御堂、イカズチ。」
「ギヒャヒャヒャヒャヒャーーーッ!!!」
その姿は、硬質的だった。
黒で出来たボディに、赤のラインが走っている。"力場をそのまま物質化"している為だ。
鎧に名を付けるのであれば、【
御堂イカズチは、驚異的なスピードで飛び出し───長く鋭く伸びた黒爪にて、易々と青龍のバリアを切り裂いた。また、勢い余って、その身を両断ッ…!
「…流石に、君の相手は務まらないかな?」
涼しげに言う青龍。分たれた身体は黒いモヤ───力場で繋がれている。身体的欠損は、この2人の前では大した意味をなさない。
攻防は続く。黒爪は何度も青龍を裂き、微塵に裂き、見苦しいほど切りつけた。その度に青龍は後方へ後ずさる。余裕な笑みを浮かべつつあるが、反撃ができない。いや、しているが、意味がない。
岩石弾、絶対零度、火柱、溶岩流、毒ガス…その全てを、御堂イカズチは意に介していない。彼の能力出力に裏打ちされた、大変贅沢な絶対防御を打ち破る手段がないのだ。
「…【
殺傷性を付与した【
「───ウォォォォォォォンッッ!!」
爪を溶かし、肩を溶かし、そのたてがみを溶かした───が、手に負えない。この狂狼は、相手にできない。
全然全く効いていない。むしろ元気に爪を振い続けている。パチリ、と、青龍の視界に閃光が走った…。
「…驚いたな。私の限界だ。…退散させてもらうッ!!」
脳疲労が限界に達し、力場を維持することが難しい状態になった時、能力者の視界には閃光が瞬くのだ。
青龍が選択したのは、テレポートによる、瞬間転移…。狂狼の爪により力場は乱されていたはずだが、持つ余力全てを使って力場を保護し実行したらしい。流石はセキュリティ代表長官。
嵐が過ぎ去り、場は粛然となる。
「………?」
7つ星と獅鷹アケビ、揃って事態がまだ把握できていないようだ。
「───ケヒッ、ヒヒヒッ…ヒィーッハハハハハハハッ!!!」
なので、高笑いでもして、少しは考えてもらうことにしよう。
「…御堂イカズチが…助けて、くれた…?」
そうだ。
「で、でもあの様子…暴走している…?」
ちがう。
「…どうする。理性を失っている彼が、ここで野放しになってしまったら…。」
もう。しょうがないなぁ…。
御堂イカズチは気絶したフリをすることにした。鎧を解き、バタッと倒れる。その様子を見て、皆警戒を解いたようだ。
「…!御堂サン助けっぞ!!お前らッ!!」
「…千光院様の容体は!?」
「千光院さんは大丈夫。縫合完了…。で、こっちは…見たところ御堂イカズチには目立った外傷もない。治療は必要ないと思うよ。運ぼう。」
「そうね、彼、かなり重そうだから。運ぶ人は気をつけないといけないわ。」
「千光院君は私とレイで運びます。御堂イカズチは他の皆さんにお願いします。」
御堂イカズチのそばで、ガラリと石をどかし破天トオルが顔を出す。かなり傷ついている様子だ…。奇跡的に急所は避けているが…。
「…おい、俺のことも気にかけてくれねェか。流れ弾喰らっちまった。」
「あらあら大変。糸紬くん。」
「…トオルはトオルで、自己治癒とかないのに前に出るから流石だよな…。いや、奪えばできるのか?」
「できる。ただな、前の戦いでストックしといたのを切らしちまった、…そこの狂犬からは何度試しても強奪できねェし、散々だ。」
破天トオルの治療に取り掛かる血伊吹セナと糸紬ヨリト。それを横目に、新月マコトと震電タイガはこれからの行き先を案じる。
「よし、それじゃ、トオル君の治療が終わったら…どうしようね。」
「…第七にでも…。いや、どうするか…。」
しばらく考えたが、答えは出てこない…。その時だった。
がらり、と、瓦礫を崩して…男が地下から這い上がる。
「やーやー。皆さん。自己紹介からさせてもらっていいスか?」
「…何者?」
「自分、海を超えた先の『白龍組』のモンです。名前はシェイロン。…先ほどの戦い振り、遠目から拝見させていただきました。…このまま終わるのは、実に惜しい。頼みの綱の御堂イカズチは、力を使い果たし眠っている…。我々のところに来ませんか?」
「…胡散臭い、ですね。」
「…とりあえず、信じてくださいよ。…俺は六閥に家族を奪われた。絶対に、この島をぶっ壊す。その決意に嘘偽りはない…。」
「六閥…?敵はサクセスとセキュリティじゃないのか…?」
「…話が速い。そのサクセスは、有望な能力者の誘拐と実験を六閥という組織にやらせていた。…さ、ついてきてください。地下へ。」
シェイロンは、サイコキネシスで地面を掘り進め、地下へと歩いていく…。
「黒雲シオン、雨羅木スサノオ、凪海ミレイ、八岐タケル…他の4人の代表も、さっさと取り戻さないとまずいかも知れません。一緒に来てください。」
…少し遅れて、7つ星一行もシェイロンについて行くのだった。