超能力特区と熱烈なる狂犬   作:K+#ガソ林

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 コロナ対策に失敗し、長らく1人生死の境を彷徨っておりました。
 


オルトロス

───エピソード.15

 

『戻りましたか、青龍!───っ!?』

 

 青龍の各パーツは繋りきれていない。御堂イカズチにより引き裂かれた部分の能力力場が乱されているため、再生能力がうまく働かないのだ。

 千光院青龍はテレパシーやサイコキネシス、他さまざまな能力を使用して脳機能を保っている。

 

「御堂イカズチにやられた。…彼は規格外だ。私には、太刀打ちしようがない。」

 

 御堂イカズチが見せた力─── 【終末狼(ヴァナルガンド)】。能力者が操る力場(黒の力)を物質化することで、あらゆる干渉を無効化、かつ、触れた能力の力場を乱し防御破壊する。

 つまりは、何もかも意に介さず、何もかもを引き裂き破壊する力である。

 

「黒の力は消耗が激しい。能力者がビジョンに力場を通しているのは、そうしなければすぐにガス欠してしまうからだ。圧倒的な出力を持つことで、黒の力を無尽蔵に使えるとすると…御堂イカズチに対抗することは難しい。」

 

『…そんな…。』

 

 千光院青龍の戦闘性能は、セキュリティ1である。これでは…。

 

「待て、青龍兄。失礼しています。サクセス。」

 

「…玄武。」

 

 千光院青龍の弟、千光院玄武が待ったを出す。彼には何か案があるようだ…。

 

『玄武。あなたには超能力研究を任せていましたね。その件で何かあったと言うことでよろしいですか?』

 

「…あなたが中央コンピュータとの同期を切っていたから、そのような余計な手順を踏むことになりました。もう既に中央には報告済みですが、報告します。───出力強化により、黒の力の物質化に成功した兵士が5体程。」

 

「───なんと。」

 

 青龍とて、驚嘆の声を隠さずにはいられない。

 青龍は超能力の貫通力を上げる黒いモヤを出すのが精一杯だ。で、あるのにも関わらず、御堂イカズチと同じレベルに到達した能力者が、5人も…!

 

『…それは嬉しいニュースですね。青龍!あなたは来るべき作戦の日まで身を休めなさい。玄武は昇給します。』

 

「…了解した。」

 

「ありがたき幸せ。」

 

 それでは、解散!となるところだったのだが…。

 

「───すまんが、ちょっと待ってくれないか。俺の話も聞いてくれよ。」

 

 青き電光と共に現れたのは、謎のヘルメット男…オルトロスだった。

 

「聞いてけー。」

 

 裏社会の番犬、プラムも共にいる。…ここはセキュリティ機密地下施設。超能力力場の登録を済ませていない者は入れないよう、暗部組織の能力者によって妨害が為されている。ここに立ち入れるのは、圧倒的な出力で妨害を突破した能力者のみとなる。

 

「…誰だ。何が目的だ?」

 

 臨戦体制を取る千光院青龍。しかし、彼を制止したのはサクセスだった。

 

『やめなさい。青龍。…また、お会いできましたね。"オルトロス"。』

 

「…ま、まさか、同期を切っていたのは…。」

 

 玄武は動揺する。サクセスは機械的に微笑んでいる。目的が見えない。

 

「サクセス。ファリンの───時間を支配する能力者の確保はできているか?」

 

『はい。』

 

「───時間を、支配する…?」

 

 オルトロスと呼ばれた男は語り出す。

 

「能力者がビジョンの先に辿り着く"黒"。そこに辿り着けば実際にイメージできることは、なんでもできる。ただし───イメージできるなら、だ。過去の改変、イメージできるか?今ここにある現実をもしもの世界に塗り替えると言うことならば、イメージできるだろう。しかし、過去の世界を対象にすることは、普通できない。何が言いたいかと言うと、時間を改変することは"黒"に至った能力者でも難しいと言うことだ。」

 

「…。」

 

「俺が為そうとしているのは、いや…俺とファリンが為そうとしているのは、過去の改変だ。サクセス。ファリンに会わせてくれ。…お前達もついてこい。」

 

「ついてこいー。」

 

───エピソード.16

 

【 私があなたを『過去』に送り出した時間に近づいていく。 】

 

【 その度に、あなたは力と記憶を取り戻す。 】

 

【 ようやく、ここまで来ましたね。オルトロス いえ 御堂イカズチ 】

 

「御堂イカズチ!?」

 

「やっぱり狂犬じゃないか。」

 

「…ファリン。お前の指示通りにやったぞ。"俺は、お前の能力の影響規模でしか過去改変できない"。そろそろ解放してくれ。」

 

【 あなたには 最後の務めが残っています。 】

 

 空間凍結された研究室より、開けっぱなしの瞳がオルトロスを射抜く。

 

【 御堂イカズチを 殺してください。 】

 

「ええー。まじ?やっば。」

 

「プラム。少し黙れ。…いや、今まで静かだっただけ良い方か。褒めてやる。」

 

【 返答を 】

 

 過去、御堂イカズチだったオルトロスは、御堂イカズチを殺せと言われている。

 

【 私の能力をルーツとしているあなたは、御堂イカズチを殺害しても消えることはない。寧ろ…現在の御堂イカズチを殺さなければ、いずれあなたが消滅しますよ。 】

 

 現在の時間軸は、過去改変能力者ファリンの支配下にある。

 ある時間帯A、ファリンは御堂イカズチを過去に送った。

 時間帯Aにオルトロスが到達すると、オルトロスは消滅する。

 ファリンの能力期限が切れて、存在保証ができなくなってしまう。

 

【 御堂イカズチを殺せば、あなたが御堂イカズチになり変わることが出来る。あなたにはまだまだ、協力してもらいたいことがある。やってもらえますね? 】

 

 しかし、時間帯Aに御堂イカズチがいなければ別だ。ファリンによる存在保証が切れたとしても、御堂イカズチの証明はオルトロスに引き継がれる。

 

「…わかった。」

 

「ギャー!自分殺しー!」

 

「少し黙れ。…なぁ。」

 

【 何か。 】

 

「こいつらにも説明してやれ。俺たちの目的ってやつを。」

 

「…。」

 

 腕組みする千光院兄弟。蚊帳の外である。

 

『その前に、私から一つ。青龍、玄武。私の目的はなんでしたか?』

 

 サクセスの目的、それは…。

 

「超能力の果てにある、人類の永遠の繁栄…?」

 

 玄武が答えるが、サクセスは首を振る。

 

「違うぞ玄武。サクセス、あなたの目的は…人々が、超能力を使わなくて良いようにすることだ。」

 

 青龍の言葉に、サクセスは頷いた。

 

【 そろそろいいでしょう。…私の目的は、時間遡行による、超能力の廃止。私の超能力出力を膨大にすることで、『超能力がないけど、幸福な世界』を演算し、創生し、今の世界に重ね合わせる。 】

 

 ファリンがやろうとしているのは、『全人類が超能力を使えない世界』を超能力による改変によって実現することだ。

 

「…過去を含む必要はあるのか?全人類に洗脳もしくは現実改変を施せばそれで済むと思うのだが…。」

 

【 私の能力は過去に遡れる。即ち、過去の人々を救える機会がある。超能力黎明期───様々な人々が超能力を原因に自滅・暴走し、世界人口の60%が失われた。彼らを救わずして、何をどうするのか。 】

 

「話は分かりました。しかし、方法はどうするのですか?全人類に対する現実改変は、今まであらゆるテロ組織が目的としてきました。しかし、そのいづれも能力の持続力と、能力の貫通力…この2点を克服し切れず、反乱と報復を受け崩壊した…。」

 

【 過去は、一度改変すればそれで持続します。貫通力は出力にて補います。『強奪』の能力研究により、私には能力者の出力を奪うことが出来るようになっている…。すなわち、現状残る全ての能力者を電池とすることで、大時間遡行・新世界創生を行うのです。 】

 

「…とんだ与太話だ!だが、サクセスが彼女を信じると言うのであれば、私は協力しよう。興味がないわけではない!」

 

「この青龍、人々を超能力犯罪から守ることこそ役目…超能力自体を取り払う。そのことに異論はありません。」

 

『では、四日後…御堂イカズチを襲撃します。ここが最後のチャンスです。…御堂イカズチのパワーは確実に欲しい。そのためには、オルトロスに御堂イカズチを殺してもらわなければならない。いいですね。』

 

「あたしはそのつもりー。」

 

「行くぞ。プラム…ここでの用は済んだ。四日後、また。」

 

 電光に包まれ、消えるオルトロス一行…。決戦の日は近い…!

 

(新世界創生…。新たな世界の創出…しかし、それは、ファリンの能力の【期限】が来たらどうなると言うのだ?)

 

───エピソード.17

 

「クガン様!失礼します!7つ星を連れて参りました!」

 

「ワタシ、クガンいう者ね。はるばるご苦労。君たちが7つ星?」

 

 地下。白龍組の臨時拠点にて…7つ星はさまざまな真実を知った。

 六閥が能力者の非人道的な研究をしていたこと。

 サクセスが六閥を統括していたこと。

 セキュリティも共犯であったこと。

 クガンの妻が六閥に拐われていたこと…。

 ───すなわち、この超能力特区自体が、『悪』であったこと…!

 

「…じゃあ、どうするんだよ。誰と戦えばいいんだよ…。」

 

 7つ星は悲嘆に暮れる。

 誰もかれもが悪であるならば、悪の号令で悪にならざるを得ないのであれば、一体誰を殴れば解決すると言うのか?

 

「…セキュリティと、サクセスだ。」

 

「千光院様!?」

 

 千光院リオウ、復活…!獅鷹アケビの押す車椅子での移動だが、彼は健在だ。

 

「死者は語らない。秩序を乱したならば、皆殺しだ。更生させることも、議論することもできないのであるから。奴らは誘拐犯だ。私の他の5代表を襲撃し、獅鷹君しか逃れられなかった。彼らを殺すことに罪はない。」

 

 その目には、危ういほどの光が集っている。

 

「ま、待ってくださいリオウさん。皆殺しっていうのは、少し言い方が悪いというか…。」

 

「大規模な集団を逮捕すると、どれだけ小分けにしても集団で留置されることになる。彼らが一斉に反逆すれば、民間人が犠牲になる。それも彼らはセキュリティと共犯だ。」

 

「…異論はねェぜ。」

 

「トオル…!」

 

「筋は通ってるだろ。相手さんは手加減してくれるのか?死なない程度によ…。」

 

「……。」

 

 迷う7つ星…。しかし、その場に現れたのは…彼。

 

「邪魔するぞ。オルトロスだ。」

 

「オルトロスだぞー!」

 

「お前はプラムだ!」

 

「何言ってんのオルトロス。そんなの当たり前じゃん。」

 

「…少しやかましくなるぜ。悪い。」

 

 血伊吹セナが質問する。いきなりの乱入者だ。

 

「えっと…クガン…さん?この人、誰でしょうか?大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫ネ。多分。」

 

「多分!?」

 

「話はすぐ終わる…。クガン、ファリンからの伝言だ。───お前の『ビジョン』が世界を救う鍵になる。」

 

「───どこで、それを。」

 

「俺がセキュリティの手の者だからさ。」

 

「───なッ…!?」

 

 ざわつく周囲。

 

「とはいえ、今はまだ仕掛けない。三日後だ…。三日後までに、お前のビジョンを把握しろ。」

 

「…ワタシの能力は、封印されている。ワタシ自身で封印した。」

 

「お。話が速いじゃないか。それを解けと言うんだよ。」

 

「…ワタシはかつて六閥の研究所にいた。その時発覚したワタシの能力は…支配。ワタシの想像をトリガーに、生物、非生物問わず望んだ行動を取らせることができる。」

 

「まさしく、世界の支配者に相応しい力だ。…その力で、世界を平和にしよう。」

 

「封印は解けない。」

 

「…は?」

 

「ワタシの支配の能力は、終わったんだ。」

 

「…まぁ、とにかく三日後だから。どこに逃げても無駄だぜ。…あぁ、お前らがこっちに仕掛ける分なら、自由だけどな。」

 

「それじゃ、じゃねー。ばいびー!」

 

「───ファリンは、お前を待っている。」

 

「ッ…いい加減にしろッ!!」

 

 電光と共に、どこかへ瞬間移動するオルトロスとプラム。残された7つ星と2代表、クガンは今後のことを議論する…。

 その傍ら、眠り続ける御堂イカズチ(本物)であった。

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