超能力特区と熱烈なる狂犬   作:K+#ガソ林

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生きるために

───エピソード.21

 

 オルトロスの襲撃宣言から、三日後。

 

【 刻限が 来ましたね。 】

 

「…あぁ。どうする。」

 

【 心配はありません。…彼らの方から来たようです。 】

 

 ファリンとオルトロスは、監視カメラより送られた映像を見物する。そこには、クガンと7つ星一行の姿があった。

 

「奴らはどうしてこの場所を?」

 

【 震電タイガの能力でしょう。…電波で我々の施設を特定したのです。 】

 

 武装した白龍組が陽動としてセキュリティ本部を襲撃。

 7つ星、千光院リオウ、獅鷹アケビ、クガン、そして…。

 

「…来たか。御堂イカズチ…。」

 

 復調した御堂イカズチ含めた一行が、セキュリティ内部を制圧している。目的は、研究目的のために監禁されている能力者達の解放と、千光院青龍、又彼の部下の排除と拘束、サクセスの破壊だと思われる。

 

「…プラム。」

 

「はーい。」

 

「御堂イカズチのところに頼む。」

 

 

───エピソード.22

 

 一行はセキュリティ本部の内部廊下を進む…狙いはサクセスだ。千光院リオウは御堂イカズチに話しかけた。

 

「御堂イカズチ。今は雑談している時間もないが…後で時間は取ってくれよ。私は君に借りを返さなければならないッ…!」

 

「…そうだなァ。無事に終わったら、な。」

 

(…まさか、完全に正気なんて…。それも、協力してくれるなんて…ッ!)

 

 御堂イカズチの言語機能は、1日の休息により戻っていた。彼の意思ははっきりしていた。かつ、あの時千光院青龍の前で用いた力も扱えるようだった。すなわち、それは…とても心強い。

 

「…おい。ヴァルハバラの狂犬…。青龍の相手はよろしく頼むぜ?」

 

 破天トオルは不敵な笑みで期待を投げる。御堂イカズチもまた、獰猛な笑みで返した。

 

「ククッ。成り行きがそうなればなァ…。───お前ら、俺から離れろッ!!」

 

「!?」

 

 御堂イカズチが後退する…ッ!その瞬間!青い光…電光、けたたましく吠えるッ!轟音と共に、壁と床を焼き焦がし現れたのは…オルトロスとプラムッッ!!

 2人とも、何も言わず佇んでいる…立ち往生する7つ星に対し、御堂イカズチが叫んだッ!

 

「…おいッ!!…お前ら、先に行けッ!!」

 

「…行くしかないネ。行くネ。」

 

「異論無いよな?」

 

「…御堂サンッ!!頑張ってくださいッ!!」

 

「…死ぬなよ。御堂イカズチッ!!」

 

 それは、千光院青龍と御堂イカズチ抜きで戦わなければならないことを意味している。また、内部に残った超能力兵士たちとの決戦も…!残されるは、御堂イカズチ、オルトロス、プラムの3人…ッ!

 オルトロスは落ち着いた様子の御堂イカズチに疑問を抱いた。

 

「…やけに物分かりがいいな。俺とお前は初対面…そうだろ?」

 

「いや?オルトロス。お前のことはファリンから聞いている。…彼女は勝ち残った方を従僕にしたいらしい。」

 

「…ほぉ。」

 

「間抜けな話だよな。思わないか?───思い上がるわけでも無いが…。あいつ程度に、俺は支配されるのかよ。」

 

「……。」

 

「腑抜け。…お前はここで死ね…!!」

 

 戦闘開始ッ!!

 【終末狼(ヴァナルガンド)】───起動ッ!!血涙を流し立ち上がる、黒狼の騎士…ここに誕生ッ!!

 力場によって構成された鎧はあらゆる超能力を防ぎ、爪はあらゆる超能力を破壊するッ!!

 まさしく、力の化身…ッ!御堂イカズチはオルトロスへと跳躍し、切り刻むッ!!

 

「【機甲鎧(ギア・フレーム)】…展開ッ!!」

 

 寸前、オルトロスは身体から展開したパワードスーツに身を包む…。

 

(馬鹿かよ。…そんなもんで超能力に勝てるか?)

 

 オルトロスの身を包む白骨の鎧…それは余りに、頼りない…ッ!!

 超能力から生まれたわけではない機械は、超能力による改変を容易に受ける…。

 切り刻むッ!!終わりまでッ!!

 

「ギヒャァアアアッッ!!!」

 

「うぐあああああああッッ───!!??」

 

 一撃で屠る。それを何度も繰り返す…まさに、オーバーキルッ!!御堂イカズチの出力であればこそ、再生能力は維持されているが…傷は深くッ!!再生は遅れるッッ!!

 

(───違和感。)

 

 オルトロスの鎧から、漏電する。スパークした電気が青く光った。

 御堂イカズチが感じた、一瞬の違和感…。

 

「───【錬成完了】…」

 

 引き込まれる───【終末狼(ヴァナルガンド)】がッ!!黒き鎧は煙となって、オルトロスの体へと引き込まれる───これは、まさか!

 

(───能力の主導権を、奪われた。)

 

 御堂イカズチのエネルギーは、オルトロスのエネルギーと言える。2人が同一人物であるためだ。

 そのため、オルトロスは御堂イカズチの【終末狼(ヴァナルガンド)】を吸収することができた。

 だが、そのままでは綱引きの如く御堂イカズチにエネルギーを引っ張られて戻されてしまう。そこで、対策に利用したのが"プラム"であった。

 

(…能力の力場を、掴むことが…できない…ッ!?)

 

「もうあなたのじゃないからね。…狂犬。」

 

「───女の、能力ッ!」

 

 プラムの能力は、電光変化…様々なものを電気に変えることができる。

 ①オルトロス、御堂イカズチのエネルギーを吸収。

 ②プラム、オルトロスが御堂イカズチより奪ったエネルギーを電気変換。

 ③電気から、プラムの能力エネルギーへと再変換。

 ④能力エネルギーを用いて、プラム自身の能力を使い【終末狼(ヴァナルガンド)】をオルトロスに形成。

 というのが、一連の流れだ。【終末狼(ヴァナルガンド)】の形成自体は、奪った無尽蔵なエネルギーを用い、力場を物質化するだけなのでプラムでも比較的楽に行える。

 【機甲鎧(ギア・フレーム)】はプラム自身の電気をオルトロスの周辺に滞留させるため使用した。

 

 …メカニズムはここまで。すなわち、これが何を意味するか。

 御堂イカズチのエネルギーは、全てプラムとオルトロスのものになる。

 御堂イカズチは【終末狼(ヴァナルガンド)】を形成できない。

 御堂イカズチは、自身を再生することすらできない。

 

(まずい。このまま、では───。)

 

「…キヒッ、ヒャアァァァァァァッッ!!」

 

「が。」

 

 御堂イカズチは、腹を何度も爪で抉られ、首を刎ねられ、脳天を貫かれ、心臓をひき肉にされ、ありとあらゆる血を抜かれ───死んだ。

 

───エピソード.23

 

「…三日ぶりだね。諸君…。今度はまともな勝負になるかな?まぁ、今度はこちらも仲間がいる。」

 

「……。」

 

「1人は欠席している。御堂イカズチの戦いを見届けたいようだ。…まぁ、もういいだろう。───降参して欲しい。余計な痛みを増やしたくない。」

 

 サクセスの部屋に繋がる大通路にて立ち塞がる、千光院青龍。

 その傍らに立つのは『黒竜』黒雲シオン、『神剣』雨羅木スサノオ、『白虎』凪海ミレイ、『韋駄天』八岐タケル…出力強化を受けた彼らは、自我を失い、命令に従うままだ。

 

「…父上。もはや容赦はしない…この千光院リオウの信頼と、肉親への愛を裏切った代償、その命にて償うがいいッッ!!」

「千光院君の意思の赴くままに…そして、我ら代表の誇りのために…あなたの思うままにはさせないッ!!」

 

 千光院リオウ、獅鷹アケビ二代表の啖呵と共に、7つ星も叫ぶッ!!

 

「千光院様を傷つけたこと、千光院様のお父上であろうが許さないッ!!」

「この島の自由を取り戻すッ!!」

「あなた達は間違っている…!」

「人をなんだと思っているの…!?」

「恐怖なんかで、僕たちを支配できると思うなッ!!」

「…くだらねェ。ムカつくぜ…!ここで死ねッ!!」

「思い切りばかり良くても、周りがついてけなくなるだけだッ!!」

 

 クガンが千光院青龍を見据える…。

 

「…我が妻、ファリンの魂の安らぎのためにも…あなたの理想は終わらせル!!」

 

 しかし、青龍は笑い出した。これは傑作だ。

 

「…君たち。無能力者1人連れてきて…何になる?クガンはその能力を封印したと言っていたじゃないか。」

 

「───そうだナ。ワタシの能力は自己封印されていタ。だが…年月を経て、ワタシの能力は成長していタ。ワタシの妄執に沿う形ニ。ファリンを取り戻す。そのためならば…!」

 

 クガンからプレッシャーを感じる…。

 景色が、歪んでいる…?

 どうやら、三日の準備期間で力を覚醒させたらしい。

 

「お前が見ていル【歪み】。それはこの現実が不確定であることを示す───ワタシの能力は、現実を支配する力だ。ワタシは見たいものを見る。見ないものを消す。…さ、始めよう。戦いを。」

 

 一行は戦闘態勢を取った。

 

「…良いだろう。超能力であるというならば、それを掻き消すほどの物量で挑めば良いということ…ッ!!始めようか挑戦者ッ!いや、世界を救う勇者様御一行ッ!!───ここで一回、魔王にひれ伏してもらおうかッ!!」

 

 迎え打つ、千光院青龍率いる超能力兵士たち。果たして、その勝負の行方は───?

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