超能力特区と熱烈なる狂犬   作:K+#ガソ林

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生きるために喧嘩を売る

 第七特区は、以前までならどうだったかは知らないけれど…今だと最弱候補だ。原因は、僕が以前まで第七特区を張っていた『鳴鬼組』のボスをムショ送りにしたこと。

 おかげで、第七は一体感を失い、外内勢力に対抗する力を失った。一応半端なところで収まっていた治安も、統率が乱れたことで歯止めが効かなくなっていっている。僕はその責任を取るため、鳴鬼組の残党と喧嘩しながら他の連中に睨みを効かせなければならない。

 当然ながら、僕1人の力で効果的に睨みを効かせるのは難しい。見回ったところで、現状は悪化し続ける…。僕はその改善のために、一つの噂を広めることにした。

 『御堂イカズチは、手が早い。』

 誰に関してもキレて、キレて、キレまくるような…。無差別に何もかもを徹底的に食い破る狂犬なのだと。

 

───エピソード.3

 

 第一特区、『ミッドジュク』───その代表、『光帝』千光院リオウ。

 対するは、第七特区の狂犬…御堂イカズチ。

 2人は第一特区の外れで向かい合っていた。群衆が遠巻きに見守る中、リオウが口を開く。

 

「…何用だね。汚らわしい格好で。」

 

「ここまでおとなしくついてきて、そりゃねェな。」

 

 事の発端は一つの電話───定期的に行われる全特区代表大会への不在告知。第七は、今回は欠席する。その理由こそは。

 

「千光院リオウ。俺は『鳴鬼組』のボス、明賀峯晴貴をぶっ殺した。」

 

「監獄送りだろう。」

 

「へっ。…俺はな、スカした態度が嫌いなんだ。」

 

「……。」

 

「俺はな、この7つの特区全てを服従させてやるつもりなんだよッ!!俺の力でッ!!───この喧嘩を受けろッ!千光院リオウッッッ!!!!」

 

 リオウは呆れ、ため息と共に言葉を吐き出した。

 

「…その程度の用事で、この私に予定外の時間を取らせて、ただで済むとでも?」

 

 電雷迸る。

 リオウの能力は、第一特区のトップ───世界を改変しうる、いわば『超』能力ッ!!

 電雷だけでなく、水氷火風鉄空その全てを司り、操り、生み出す規格外の力…!!

 

「場所を移したのは、失敗だったな狂犬くん。───私の手加減が狂わないことを祈れッ!!」

 

「上等ォッ!!切り刻み殺してくれらァッ!!!」

 

 御堂イカズチの能力───『自己治癒』。

 しかし、彼の場合は、治癒の上限を超えた『自己促進』と呼ぶのが相応しいだろう。最弱とされる自己範囲型のカテゴリに属しながら、出力が飛び抜けている一点のみで頂点に比肩する。

 爪を伸ばし、体毛を伸ばし、牙を伸ばし───『狂犬』と化すッ!!

 

「ヒャアッ!!」

 

 跳躍───しかし!

 一思いに飛ばせ、一思いに切り刻まれる───その程度であれば、第一特区は務まりはしないッ!

 

「電雷にて焼き焦がしてくれるッ!!」

 

 怒りの雷霆(ライトニングボルト)、リオウ第一の必殺技。リオウに挑まんとした数々の強者を沈めてきた一撃───。

 

「ぐうううううああああああああッ!!」

 

 効く!

 電流の放電により、視界は潰れ、体組織は沸騰!筋肉は痺れ、痛みは全身を迸るッ!

 しかし、『自己治癒』は止められない!

 

「…自己範囲型カテゴリはこれだから面倒だ。」

 

 風にて体を浮かし、後方へと飛び立つリオウ。先ほどまで立っていた場所に爪が突き刺さる…!逃げるリオウを追い走るイカズチッ!

 

「ヒャハッアハァーーーッ!!」

 

「…明賀峯は、私の第三の必殺技にて倒れた。…では君には、第四からスタートしようか。」

 

 第ニの必殺技、巨峯火柱(エクスプロード)、第三の必殺技、血凍地帯(コキュートス)───それらを飛ばし、第四の必殺技!

 

深海発生(アビス・タイダル)。息の根を止めてやるッ!」

 

 瞬時───イカズチの周囲に水、水、水!!水の密室…それだけではない!海流に押し流され、踏ん張りもまともに効かない…!

 

「ガボッ!?!?!?!」

 

「…このまま水温を下げれば、おしまいだ。」

 

 瞬間的に、寒く、暗く!もはや脱出不可能…イカズチに残されたリソースは、全て奪い尽くされている…!

 

「ウク…ヒャアァーーーッ!!!!」

 

 爪で、切り裂いた。水の監獄、その全てを───力にて、力を捩じ伏せるッッ!!

 

「ば、化け物か…!?」

 

 群衆が騒ぎ出す。

 長く伸びた爪───そして、ゆらめく"尾"。

 

「時間、かけたな。───これが完全体だ。」

 

「……。」

 

 睨み合う。

 徐々に、両者ゆっくりと動き出し、お互いの距離が縮まっていく。

 

「変異に時間がかかる。」

 

「…そのようだな。」

 

「さぁ…ッ始めようぜ。」

 

「失望したよ。───爪が伸び、毛むくじゃら、その上で尻尾まで生やして…それで?」

 

 君は再生能力に引っ張られているだけの───ただの愚鈍だ。これであれば、まだ明賀峯の方が楽しめたぞ。

 

「サンドバッグ風情が、これが勝負だと?調子に乗るなッ。」

 

「ヒャアァーーーッッッ!!!!」

 

「死ねッ!」

 

 千光院リオウには、決め技がある。降参したものには、常に"それ"の一端を見せるだけで終わりにする───。第六の必殺技、『千剣明王』ッ!

 

「説明してあげようッ。この技は光の熱エネルギーを束縛、収束させることで実質的に"光の粒子を集めて物質化する"技ッ!光とは、人間の意識では捉えきれないような速度を持ちッ!この地球上に降り注ぐ物質だッ!すなわち、数秒分の光を束ねるだけでも地表を数メートル溶かすほどのエネルギーを集めることができるんだよ…ッ!!」

 

「知らねーーーッッ!!!死ねェーーーッッ!!!」

 

 爪は光の壁により遮られ───溶けた。

 

「ッ!?」

 

「話を聞いていないのかッ。愚か者…もう君が私に勝つというのは、不可能な話なんだよォッ!!」

 

 光───それ自体は、太陽から降り注ぐエネルギー。すなわち、たった1人の御堂イカズチとは違い、80億人とその他全ての生命に命を与えるエネルギーなのだ。リオウが扱うのはその一端とはいえ、出力でさえ、御堂イカズチは敗北した…!

 

「グオオオオああああぁあああッッ!?!?」

 

 絶叫。光の剣が一つずつ、爪で切り払うこともできずにイカズチの身体に突き刺さっていく。熱が体を焼き焦がし、心臓は炭化…再生能力が追いつかずに、その身は塵へと還ってゆく…。

 

「悪く思うなよ。御堂イカズチ。ミッドジュクの平和を守れるのは、私だけだ。お前のような奴に負けてやるほど、甘くなれない。生かして逃すなど、以ての外だ。不穏、不遜、不審!死ぬしかないな?死ね。」

 

 勝負が、ついた。

 御堂イカズチ───消滅!

 観客たちの拍手の中で…突如ッ!

 

「ガッ…!?」

 

 千光院リオウが血を吐いた!?何故だ!?何故、何故、何故!

 

「ガハッ。これは喧嘩だよ。千光院…!」

 

 何故、御堂イカズチが立っているのか!?

 その爪は、リオウを刺し貫いている…!

 

「この時のためにもりもり食べたんだぜ?俺はな、俺を…"複製"できんだ。」

 

 散った血片は極小数にも関わらず…御堂イカズチは、その血から回生!光の中で地中を動き、リオウの背後を取ったのである…!

 

「勝負ありだ。じゃーな。楽しかったぜェ…。また来るよ。」

 

「ぐ…ぅ……。」

 

 リオウは、身体から爪を引き抜かれ、倒れ込んだ。

 

「お、お前は…お前は…この…クズ野郎ッ…!いずれッ!いずれ私が殺してやる…ッ!!この私を生かしたこと、悔やませてやるッ!!」

 

「…ククッ…。そーかよ。元気そーで何よりだァ…んじゃ。」

 

 去る御堂、這いつくばる千光院。

 この対決は、狂犬と光帝という演目で演じられ、さまざまな場所で語り継がれることとなる。

 最後、御堂イカズチが全裸で去ったことも含め。

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