超能力特区と熱烈なる狂犬   作:K+#ガソ林

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生きるためにキレる2

 そもそも、生きるためって何だろう。

 僕が生きていける土壌は十分にあった。別に、千光院に喧嘩を売らなくたって、地道に喧嘩して、犯罪者をムショにブチ込みにいけば第七特区の治安も時間はかかるがなんとかなるだろう。

 ではなんで、こんなことをやってる?

 治安の為、第七の為、名前で無法を制する…そんなことを言っておきながら、僕の心はみんな、第七特区の無法精神に染まっているんじゃないのか?

 …………まだ死ねない。死ねないんだ。だが、逃げるなんて…僕が決めた道だろ。逃げたら、臆病者の誹りを受ける。バカにされ、コケにされ、そして、皆第七の狂犬を忘れ、僕がいない場所では無法が繰り返される…。ここの警察だって、見張られてなければ必死な仕事はしない。

 まだ、終われない。応えてくれよ。僕の超能力。

 

───エピソード.7

 

「終わりですね。…途中で逃げ出さなかったことは記憶に留めておきましょう。あなたは最後まで、己が矜持を尊び、逃げることはしなかった。まぁ、逃すなんてありえませんが。」

 

「ッ……まだ、まだ…っ!!」

 

 何度もラッシュと再生を繰り返す御堂イカズチ。その身体は限界を超えている。すでに、再生は不十分で、手足は欠け、全身から血がとめどなく垂れている。体組織の崩壊が始まっているのにも関わらず、人の形を保てるのは御堂イカズチのポテンシャルだ。

 

「まだ、終われねェ…ッ!!死ねねェ…ッ!戦うんだッ!!勝つんだよ…ッ!!」

 

「狂気的です。狂犬の名に相応しい。名残惜しいですが、もうおしまいにしましょう。まともに動けないようですので。」

 

 御堂イカズチは、よろめきながら立っている。

 獅鷹アケビは、歩き出した。鎧は接触した部位を食い破る、シュレッダーのようなもの。御堂の身体全部を鎧でバラバラにする気だ。

 

「………。」

 

 誰か、もう、熱烈に助けて欲しい。

 そう思っても、誰も助けてくれないのは、僕自身わかっている。

 それも、致命的なところでこそ、誰も助けてくれないものだ。

 

 御堂イカズチは、絶望の中で気を失った。

 

───エピソード.8

 

「御堂ッ!!イカズチィーーーーッッ!!!!」

 

 声が響く。

 男女問わず、声が重なる。

 

「…誰だ?」

 

 辺りを見渡せば、この決闘場に多数の老若男女が集まっていた。

 

「やられてんじゃねーよ。御堂ッ!」

「御堂クンッ!鳴鬼を倒した狂犬ッ!俺たちの希望ッ!!」

「御堂ォォォーーッ!!死ぬなァーーーッ!!」

「御堂様ッ!今馳せ参じます!」

 

 わらわらと御堂に駆け寄る群衆に、獅鷹アケビはつい、その足を止めてしまう。

 

「……。」

 

「うちの御堂クンに何してんじゃゴラァッ!!」

「殺すぞダボッ!!」

「セキュリティ!こちらです!」

「おう、任せろ!救護班!御堂イカズチを頼む!」

 

「!?」

 

 第七特区のセキュリティは腐敗している。それは、全ての特区が把握していることだった。だが、この有り様はなんだ…。第七のセキュリティ達が、徒党を組んで、住民達と協調している…!?

 

「なんだ…これは…!?」

 

「セキュリティの者だ。獅鷹アケビ、同行願おう。」

 

 セキュリティの者に対し、獅鷹アケビは叫ぶ。これは、これは一体どういうことだと…!

 

「どういうことだこれはッ!第七は私闘が当たり前で、不良どもが支配する無法地帯じゃなかったのか!?」

 

「2000人もの不良が昨日、病院送りにされた。」

 

「…。」

 

「その前には100人。そのもっと前には…まぁ、だいたい総計して5000人。その量の不良が、それも徒党を組むような強い奴らがこの街から消えた。御堂は…。」

 

「もういい。」

 

「御堂はセキュリティのケツを叩いてくれたんだ。…俺たちは不甲斐なかったが、これからはこの街を代わりに守っていかなくては───。」

 

「なら何故ッ!!千光院リオウを傷つけた御堂イカズチを逮捕しないのですか!?」

 

 慟哭する獅鷹アケビ。だが、セキュリティの男は穏やかに答えた。

 

「ああ、協力感謝するよ。」

 

「…?」

 

「御堂イカズチの逮捕に協力してくれたじゃないか。あんなに弱らせてくれた。」

 

「───。」

 

 結果的には、そうですが。

 

「彼は逮捕、然るべき罰を受けてもらおう。…あと、千光院リオウから、君に連絡がある。」

 

「…千光院君から…!?」

 

「今朝、第七に送られたメッセージだ。機会があれば、獅鷹アケビに見せろとね。」

 

『録画メッセージを、再生します。』

 

 デバイス上に千光院リオウの姿が現れた。

 

『獅鷹君。君の気持ちはありがたいのだが、御堂イカズチを殺されてしまうのは困る。私の人生に於いて、勝ち逃げされるなど以ての外。そして、寝込みや病中を襲うのは恥ずべきこと。』

 

「……。」

 

『彼がまた私に挑みにくるその時までに殺されてしまっては困る。君のことは好ましく思っているが───これ以上の邪魔をするなッ!!』

 

「ウッ………………。」

 

 そのまま無言にて、映像を直視できず目を逸らし…鎧で顔を隠したまま、獅鷹アケビは浮かせた地面に乗って飛び去った。

 

「任意同行は…あれじゃ無理そうだな。もしもし、獅鷹アケビ、逃亡しました。協力者なので捜索は結構です。オーバー。」

 

 夕暮れが過ぎ、辺りは藍色に染まっていく。

 

「さて、御堂イカズチ。君が知らぬところで案外、仲間ができているみたいだよ。あの日君が現れてから…この街も随分変わったもんだ。」

 

 見送られる御堂イカズチ。その先は…生か、はたまた死か…!

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