超能力特区と熱烈なる狂犬   作:K+#ガソ林

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生きるために狂犬ムーブを続けるしかない(絶望)

 第七特区中央病院、その病室の中で、彼が目を覚ます。

 御堂イカズチ、17歳。

「…僕、何でこんな怪我を…?あ、でも全然動かせるや。」

 

───エピソード.9

 

「肉体は完治しております…。しかし、記憶が消えているようでありますな。」

 

「………。」

 

 突然のことに、御堂イカズチは困惑していた。彼の精神は、この第七特区に来る前のものである。ちょうど、周囲に第七へ配属されたとカミングアウトした頃の。

 

「僕は、どうすればいいですか?」

 

「……肉体的には回復していますが…しばらくは入院して、記憶の手がかりを見つけるのがよろしいでしょう。御堂イカズチくんの活動記録は映像で残ってますので、全て確認してみてください。無理強いはしませんが。」

 

「………。」

 

 まぁ、僕のことだ。大したこともしてないだろう。第七は治安が悪いから、いじめられてるかもだけど……。

 

───御堂イカズチ鑑賞会

 

『へっ、狂犬上等よ。…かかってこいッ!!』

『俺はな、この7つの特区全てを服従させてやるつもりなんだよッ!!俺の力でッ!!───この喧嘩を受けろッ!千光院リオウッッッ!!!!』

『ヒャアァーーーッッッ!!!!』

『上等だァッ!!!死ねェーーーーッ!!!』

 

 これはなんのじょうだんですか。

 

「これが僕だっていうんですか?真面目ですか?」

 

「生憎、御堂イカズチは貴方1人で、完全に一致しております。」

 

「信じられない。」

 

「とはいえ、御堂イカズチは不良の大半をしばいて第七特区を救ったヒーロー。そのように思う人もいるのです。今のあなたには、むしろ重荷なのかもしれませんが。」

 

「…だとしたって、喧嘩売りすぎ…。人殺しとか、本当にしてないんですよね?」

 

「記録にはありません。」

 

「…ん、ぐ……。」

 

 現実を受け止めきれない御堂イカズチ。

 

「ああ、当然余罪は沢山ありますから、無理したとて、ここからは出れませんよ。」

 

「そういえば、そうですね。こんなにやらかしたんだ。二、三年は…。」

 

「3ヶ月です。」

 

「え?」

 

「3ヶ月後には、謹慎が解けます。」

 

「だからといって、退院しなきゃいけないわけじゃ…。」

 

「…他の患者様の、ご迷惑になりますので…セキュリティの管轄病院に移っていただくことになるでしょう。」

 

「………。」

 

 それきりで、先生はシアタールームから出ていった。

 …御堂イカズチには相当敵が多いようだ……。もし、このまま記憶が戻らないとして、僕は平穏に生きていけるのか?一体どうしたらいいんだ。いや…でも、僕には超能力がある。映像にもある通り、自身を複製できるような強力な力だ。

 寧ろ、僕自身の生命は保証されたようなものじゃないか!問題は、周りに迷惑をかけてしまうことだ。このネットワーク社会、誰が御堂イカズチなんてバレバレだ。それに、他人を装えるような技量はない。

 ……放浪の旅でもするかな?

 

───エピソード.10

 

 ある日、目覚めると突然、病院施設全体が大きく揺れ出した…!

 

「な、なに!?どうなってんの?」

 

 しばらくその場でうずくまっていると…突如、病院の明かりがみんな消える。一体全体、何が起こったのか…人を探して歩いてみても、人っこ1人いない。おそらくは停電している…。

 

「…第七中央病院で、テロが…ジジ…」

「リバティ・ユニオンと名乗る大規模テロ組織の作戦…ジジ…」

 

 走り回る車の音と共に、報道と思しきアナウンスが響いている。予備電源で動かしているであろうラジオも、途切れ途切れに現状を語り出す。

 

「明賀峯晴貴が脱走…ジジ…。」

「周辺住民の皆様は、気をつけて他の特区への避難をお願いいたします。」

 

 外へ出る。

 みんなはどこへいっていたのか、その答えは───これだ。

 捕まっている。

 銃を、突きつけられ、暴行を受けて。

 問は一つ。狂犬はいずこに。

 暴徒は鳴鬼の旗の下一つになり、第七特区ヴァルハバラを、悪鬼の巣窟たらしめる。

 

「…。」

 

 御堂イカズチは、決意して前へ踏み出す。

 その心には、ある言葉が刻み込まれているから。

 

【誰かに、もう熱烈に助けて欲しい。そう思っても───。】

 

【誰も助けてくれないのは、僕自身わかっている。】

 

 笑う。ものどもが笑う。

 なんだ?誰か、出てきたぞ?

 もしや、奴こそが狂犬か?いやいや、あのような腑抜けは狂犬でないよ。狂犬であれば、すでに喧嘩は始まっている。

 

「僕は。」

 

【それも、致命的なところでこそ、誰も助けてくれないものだ。】

 

「いや…俺こそが、第七特区、ヴァルハバラの狂犬だ。」

 

【でも、だからこそ、僕は僕なりの方法で、人を助けたいと思っている。】

 

 息を、目一杯吸い込む。

 『狂犬』、御堂イカズチを演じる。演じなければ───演じて、救わなければ───僕は、僕として、生きられないッ!

 

「…クヒヒッ…さぁッ!!喧嘩を始めようぜッ!!クズどもッ!!」

 

 華々しく名乗りを上げ───狂犬の眠りは、3ヶ月も経たずに、おしまい。

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