超能力特区と熱烈なる狂犬   作:K+#ガソ林

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えっ!?もう狂犬ムーブしなくてもいいのか!?

「……終わった…のか…?」

「これがヴァルハバラの頂点…『鳴鬼』と『狂犬』…!割って入ることもできなかった…ッ!」

「…救助します!」

「待てッ!危険かもしれん!」

 

 遠巻きに先の戦闘を観測していた、謎の集団…。彼らは第七特区の欠番を解消するために、本日中央区に集められた7人の候補者であった。

 大会自体はこの騒ぎでおじゃんとなってしまったが…。彼らの志は同じ。この特区の敵は…滅ぼすッ!彼らはチームを組み、リバティユニオンを打ち倒すための戦いに挑む…ッ!

 その戦いの最中、リバティユニオンに与する鳴鬼組のボス、明賀峯晴貴と御堂イカズチが戦闘すると聞いて、観戦していたのであった。しかし、観戦者は彼らだけでない。

 

「救助を頼む!周りは…俺たちが固める!」

「御堂クン達をお願いするよッ!」

「誰にも邪魔はさせませんわッ!!」

「御堂ォーーッ!!」

 

 狂犬組を名乗る御堂イカズチのファン達が周りを固める。囲いの中、第3、第4、第5から遣わされた実力者達によって、御堂イカズチ、明賀峯晴貴の緊急治療が行われ始める…!

 

「俺の能力によりッ!光を生み出し照射するッ!紫外線により微生物やウィルスを除去ッ!」

「私の能力は血を生み、操るッ!血液型を同じにしッ!輸血ッ!」

「僕の超高細度の糸で縫合ッ!繊維圧迫によりッ止血ッ!抜糸せずとも意のままに意のままに消失できるッ!」

「す、すげェ…やっぱり第五の糸紬は天才だし、第四の血伊吹はほんとの万能だぜ…!」

「第三の新月だけなんで飛ばした?」

「私の弟だ。アイツにはそれぐらい簡単だぜ!」

「……。」

 

 治療が終わりかけたその時───。

 

「ぐわーーッ!?」

「くっ……御堂クーーーンッ!!」

「御堂様ァァーーーッ!?!?」

「御堂ォーーーーッ!!」

 

 狂犬組の断末魔が響き渡る…ッ!目にも止まらぬ瞬殺だ…!第二からやってきた実力者が辺りを警戒する。そこには、黒いフードを纏った人物がッ!

 

「…いったい誰だ!?見当はつくがな…!」

 

「ほう、では、当ててもらおうか…!第二特区の震電タイガッ!」

 

「…リバティ、ユニオン!」

 

「正解だ。クク…御堂イカズチ、並びに明賀峯晴貴は我々の最優先事項。2人揃えて回収させてもらうぞ…ッ!!」

 

 リバティユニオンの幹部らしき4名が、候補者組を取り囲んだ…ッ!

 

「ケッ…俺らを相手にするには、数が足りねーんじゃねーか?」

 

「所詮、ひよっこの君達に対しては、この人数で充分だ。」

 

「違います…ッ!千光院様達が、あなた方には抑えきれないからだッ!!おかげでここに割ける人員も少ないんだッ!」

 

「……。それが真実だとして、我々は一生懸命、死に物狂いで君たちを抹殺するだけだッ!!」

 

「みんな、来るぞッ!!」

 

───エピソード.15

 

 ここは仮設病院───。

 リバティユニオンによるテロ活動の日から、2日が経った。テレビを見るのは、御堂イカズチ。まだ本調子とは言えないが、以前ほどの後遺症もない。

 

「超能力特区の7つ星…リバティユニオンを撃退、か。」

 

 明賀峯にやられている間に、すっかり残りを解決されてしまったらしい。

 

『7つ星…彼らは第七特区の代表候補者として集められていて、代表決定戦が始まる時間にリバティユニオンによる襲撃を受けたようです。』

『そんな状況で、集中攻撃されていたセキュリティの立て直し、また、七つの特区全ての襲撃者を撃退…。いやはや素晴らしい功績ですねぇ。島管理AIからの評価は鰻登りでしょうなぁ。』

『ええ、本当に彼らには感謝です!明日には中央で表彰式が行われる予定ですよ!…続いて、テロ当日に脱走していた明賀峯晴貴についてですが───。』

 

「…………。」

 

 解決した…とは言ったけど、こっちはテロ襲撃を予見できていたわけじゃなさそうだし、セキュリティだけで解決できた問題でもないし…。この島、相当ヤバい?

 僕の能力は相当強いけど、それだけじゃ生き残れないことはわかった。じゃあどうするって、安全な場所に逃げないと。

 …安全な場所ってどこ?一応ここは、最先端のセキュリティが備わってるし、超能力自警団も(第七を除いて)多く存在している。ここが一番安全なんじゃないか?でもだからこそ狙われるわけだし…。

 

「もしもし、御堂イカズチ君だね。部屋に入っても?」

 

 誰!?いきなり誰!?

 

「…えと、どうぞ。」

 

「失礼する。」

 

 現れたのは、ちょび髭を生やした偉丈夫…青と黒で塗られたその制服は、彼がセキュリティの高官であることを示していた。

 

「私はセキュリティ超能力犯罪対策科、宮部昭仁だ。御堂イカズチくん。君の鳴鬼組組員、また、明賀峯晴貴の逮捕協力と、民間人の避難協力に感謝する。」

 

「…いいってことよ。」

 

「君の事情は医師から聞いている…。記憶喪失なりに、狂犬を引き継いで、君は明賀峯晴貴と戦った。…辛かっただろう。」

 

 そう言えば、記憶喪失だった。もう記憶戻ったけど。……ん?

 

「もう、君は…ヴァルハバラの狂犬ではない。ゆっくり、平和に生きていってくれ。我々は既に、本国や海外のセキュリティによる助力を得れるよう、約束を取り付けている。今回のようなことは、二度と起こらないと約束しよう!」

 

 もしやこれ…僕はまだ記憶ないままってことになってんのかな?

 ……よっしゃぁあああーーッ!!狂犬やめれっぞぉぉおおーーッ!!

 

「…あ、ありがとうございます…。」

 

「…!御堂イカズチくん。何か、必要なモノがあったら、すぐ我々に言ってくれ。これは我々につながる専用のメールアドレスと…あと、一応、無線だ。かければ近くのセキュリティが駆けつける。危なくなった時はすぐ使ってくれ。」

 

「…えと…。」

 

「お、早速何か思いついたかな?」

 

「名前を…変えさせてほしいんですが…。」

 

───エピソード.16

 

 と言うわけで、僕は公的に新しい身分をもらった。新しい名前は海堂カズイチ。後ろ暗いものは何もない、爽やかな好青年である。茶染めしてストレートにすれば誰にもバレないのである。よぉーし、体も元気なことだし、今日は平和になった第七でも散歩するかぁー!

 

「だーかーらー!御堂イカズチに会わせろって言ってんだよッ!」

 

「御堂イカズチ君は病床の身だ!とても会わせられる状態ではない!」

 

「自己治癒の最強だろッ!あの人が今も回復してねえ訳がねぇッ!筋を通してェだけなんだ!第七の代表が…あの人に挨拶しねーでどうするんだよッ!!」

 

「…彼に会わせることはできない!」

 

 なんか僕に用があるっぽい女の人と、宮部さんが口論している。周りにはいくつか群衆も…。

 …まぁ、最後だし、話くらいは聞いてやるかな。

 自己治癒を応用すれば、茶染めした髪の毛も抜き落とすことができる。僕は跳躍して、宮部さんの横に立った。

 

「よォ。ヴァルハバラの狂犬に、なんか用かい?」

 

「み、御堂君!…何故!」

 

「…今回だけなんで…話を聞くだけですし…。」

 

 こっそり耳打ちする。む…それならば、と、宮部さんは後ろに下がっていった。女の人が話し始める。

 

「まずは、挨拶をさせていただきます。本日より、第七特区の代表を預からせていただくことになりました───新月ルリと申します。」

 

「フッ…話に聞いた超能力特区の7つ星か。」

 

「もったいねぇお言葉、痛み入りますッ。……あの明賀峯率いる鳴鬼組を潰してくださった御恩、御堂サンには、一生頭が上がりませんッ!」

 

「……。」

 

 ガバッと土下座する新月ルリ。

 

「第七を守ってくださった、その漢気に恥じぬよう……命張って、この役目、務めさせていただきますッ!!」

 

「そうかそうか……で?───それだけじゃねェだろ。」

 

 ゆっくりと立ち上がる新月───その顔は、恩人に向けるものでない。もっと獰猛な───狩人のものだ。

 

「…お身体、悪いんじゃねェんですか。」

 

「ホントの事言うとな、宮部さんの出まかせだ。…狂犬は廃業する。」

 

「!?」

 

「最後の相手はお前だ。」

 

「………ッ!!」

 

「宮部さん、2人で立ち会いたい。車乗せてくれ。人目につかない場所がいい。…狂犬の最後の務めだ。」

 

「…わかった。乗りたまえ。」

 

───決闘場

 

 正直なところ、僕はもう狂犬を続ける気はない。…新しく理性的っぽい代表も決まっている。僕が何かしなくても、第七は平和になっていくことだろう。

 ここに立つのも、これで最後だ。───ヴァルハバラの狂犬の意志、引き継いでくれよ。頼むから。新月ルリ…!

 この喧嘩は…新しい時代へのエール代わりだッ!

 

「───1時間だ。勝負つかなくてもそれで終いにしよう。…互いに出し切ろうぜェッ!新月ルリィーーッ!!」

 

「構いません…。私の全霊、ここで使い果たしッ!───あんたを乗り越えるッ!!行くぞォォォッ!!御堂イカズチィーーッ!!!」

 

 荒野の決闘場にて、両雄、戦開始ッ!!





おまけ(超能力特区の7つ星の紹介)

 名前/所属特区/超能力(簡易)
 天照レイ/第一特区ミッドジュク/『模倣』
 プロフィール:千光院のファンである。全ての範囲の超能力を自在に扱える可能性を秘めている。コピーしたモノは、現在一度に一つまでしか使用できない。

 震電タイガ/第二特区ヴァナブクロ/『電波』
 プロフィール:リーダー格で、指示を出す事に長けている。電波で他者に直接連絡を送りこめる。その上、頭で作ったビジョンを脳内に送る事もできる。他には電気ショックやブレインジャックなど可能。

 新月マコト/第三特区アルヴシブヤ/『光』
 プロフィール:新月ルリの弟。光を生み出し、操ることができる。レーザー熱線や、フラッシュ攻撃で相手を翻弄する。姉の影響で格闘が得意。

 血伊吹セナ/第四特区ヨトゥンギンザ/『血』
 プロフィール:血を生み、操る能力者。血で作った剣を愛用している。素人で身体も一般人並ではあるが、血流を操作して攻撃の破壊力を上げたり、血をクッションにして防御したり、傷ついても血を無限に補充できるのでタフネスもあったりと、とにかく長期戦に強い。

 糸紬ヨリト/第五特区ムスペルウエノ/『糸』
 プロフィール:糸を身体から生み出し、操作することができる。昔は糸の硬度が足りず、貧弱な能力者だったが、現状は訓練して鉄のワイヤー程度の硬度をどれほどの細さでも保てるようになっている。鞭のように操作して斬りつけることで、不可視の切断攻撃を仕掛けられる。しかし、体表辺りで刃が止められてしまうので、威力は少ない。

 破天トオル/第六特区ニブルノウチ/『強奪』
 プロフィール:触れた相手の能力を奪う。奪われた側の能力は、一定時間で回復する。その能力の特異性から、研究機関で特殊な調査を受けていたが、相手の超能力の力場を乱し、力が実行される前に拡散させる能力であると判明したので、第六に配属された。特異性として、奪った能力はその持ち主より強い出力で使うことができる。

 新月ルリ/第七特区ヴァルハバラ/『進化』
 プロフィール:新月マコトの姉。狂犬の暴れっぷりが凄かった頃に第七に配属され、彼の追っかけとなる。第七の現状を知っていく中で、狂犬が騎士にやられて病院送りに。狂犬の意志を継ぐ決意を固め、第七特区候補者に上り詰めた。能力は進化。状況に応じてさまざまな能力を開花させる。能力が発動する時は、必ず全身各所に武装が出現する。(確認できている武装:炎を飛ばす大砲、飛行可能な翼、衝撃波を放つ剣、自動迎撃グローブ、スプリングブーツ)。物語序盤は能力を能動的に使用できなかったが、成長し、好きに能力を使用可能になった。
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