ガンダムとマクロスの技術差が凄いのでプロトカルチャー様に頑張って頂ければワンチャンあると思いました。
よろしくお願いいたします。
FREEDOM
我らは己の傲慢さ、欲望によって滅びる。
自ら生み出した存在によって。
今際の際、未来の“君へ”この言葉を贈ろう。
───あなたの使命は愛から導かれる。
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この赤い残像は戦いの歴史。
炎の赤。爆発の赤。そして、血の赤。
太古の昔、人類種の祖と呼ばれる“プロトカルチャー”は地球人類が独力では到達できなかった高度な科学技術を持ち、各銀河系に一大星間国家を築いた輝かしい歴史を持つ。
しかし、彼らは発展し過ぎた科学力故に神の如く振舞った傲慢な存在でもあったように感じる。輝かしい歴史を持つ彼らの国家はやがて二つの勢力に分かたれ、絶滅戦争にまで発展してしまった。なぜ国家が分断してしまったのか、その真相は闇の中。知る者は誰もいない。
滅亡に瀕した彼らが最後に辿り着いた地、現代では“ブリージンガル球状星団”と呼ばれる銀河に、彼らは自らが生きた証を多く築いた。それは後に“遺跡”と呼ばれ、その遺跡の中にある記述があった。そこに書かれているものは彼らの記した日記、または記録のようなものだ。
全てを読み解けなかったがその一部を記そう。
───我らは観測した、異なる宇宙を。
我らと異なり、太陽系の外に出ることは叶わない人類。そこでは遺伝子操作によって誕生した種、“コーディネーター”と自然に生まれた種、“ナチュラル”と呼ばれる人間が戦争をしている時空。
互いが互いを憎み、妬み、恨み、数多の兵器を誕生させては戦場に送り、今まさに我らと同じように絶滅戦争へと発展している。例え異なる時空、次元であったとしても人類は同じ過ちを繰り返す、という証明なのだろうか。愚かだと分かっていても止められぬ点では我らも同じこと。
そんな絶滅戦争に発展する世界と我らの世界は似ている。悲しいぐらいに。けれど、もう一つ似ているものがあった。それは“歌”だ。歌を奏で、人々の荒んだ心に癒しを与える。戦争を止める為の歌、平和を願う歌。この共通点を見つけた時は嬉しく思った。
平和の願う歌姫、“ラクス・クライン”
そしてもう一人、戦いを好まず、されど誰よりも戦う才に溢れた哀しき運命の人。けれど歌姫を守る為に立ち上がる戦士の姿を見た。
自由の剣と共に駆ける“キラ・ヤマト”
我らはこの時空で彼らに注目した。何度も傷つき、平和を願い、戦い続ける二人。彼らが戦わなければ滅びる世界。その中を懸命に生き抜き、互いを支えあう姿に我らは心を奪われた。例えすれ違ったとしても互いを信じ抜き、戦場の中で愛を叫ぶ者に我らは思ったのだ。
高度な科学力が平和を築くのではなく、人が人を愛する想いこそが大事なのだと、今更ながら気が付いた。気が付いた時には遅かった。我らが遺伝子工学によって生み出した“ゼントラーディ”に文化を発生させないようにしたのだから。人を想い会う心を失ってしまった我らは滅びる運命にあったのだと悟った。
───記録はここで途切れている。
彼ら、プロトカルチャーは高度な科学力を持って異なる時空を観測することに成功している。これはマルチバース理論に多大なる影響を及ぼすに違いない。人類の未来にも大きな発展を与えるかもしれない。だがそれよりも、彼らプロトカルチャーは観測した時空において、“ラクス・クライン”と“キラ・ヤマト”なる人物に注目をしていた。
絶滅戦争の中でも共に戦い抜いた存在。プロトカルチャーに人が人を愛する想いが必要だと気が付かせた二人。一体どのような人物なのか、確かに気にはなる。けれど忘れてはならない。我ら人類はまだ幼く、プロトカルチャーと同じ文明を手に入れればその力を扱え切れず滅びゆく幼い存在であること。
私はここに記す。
人類がプロトカルチャーと同じ過ちを繰り返さない為にも、文明の成熟こそが必要であると。行き過ぎた力は大きさ災いを呼ぶ。それは紀元前に彼らが証明している。だからこそ、プロトカルチャーのテクノロジーに依存することで人類の進化の停滞と、滅びの道を開いてしまうことを望まない。
───レディM
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西暦2065年、銀河系各地で人々が自我を失い凶暴化する謎の奇病、“ヴァールシンドローム”が発生した。この奇病は西暦2059年の“バジュラ戦役後”に発症が確認された病である。症状は血管の拡張、筋肉の肥大、自我の喪失。衝動のままに破壊を尽くす暴徒と化す病が銀河系各地で確認されている。
ヴァールシンドロームは人体の細胞に“フォールド”して寄生する“フォールド細菌”が原因であると考えられており、そこでヴァールシンドロームに対抗すべく“フォールドレセプター”保有者を集め、“星間複合企業ケイオス”は戦術音楽ユニット“ワルキューレ”を結成するに至る。
そんな中、“蒼天使”と呼ばれる人型の兵器はある日を境に、何の前触れもなく姿を現した。
その姿はまるで、神より遣わされた天使であるかのように。
蒼天使とは突如出現した人型起動兵器のことを指す“VF”やゼントラーディ軍が運用する“クァドラン”に“リガード”シリーズとも異なる異質の機体。背部に光の翼やゴーストのような遠隔兵器を射出する左右四対の蒼い翼のバックパックを備えていることから蒼天使と呼ばれる。
銀河中がヴァールシンドロームによる大混乱に陥る中、蒼天使は凄惨なる戦場に出現しては何も語らず、何事にも動じず、圧倒的な力でヴァールシンドロームを無力化する。
ヴァールシンドロームに感染したものは自我を失うが生身のまま暴徒と化すのではない。例えばゼントラーディ軍の者がヴァール化すれば、彼らは暴徒と化したまま自軍の機動兵器を操り、破壊衝動に突き動かされるままに機体の弾薬とエネルギーが尽きるまでそこにある全てを破壊する。
生身でも危険なのに、そこに兵器が合わさればどうなるか。もう語らずともその事実は明白だろう。武器を持たぬ人々はヴァールの暴走から逃げることしかできない。例え弾薬が尽きようとも有に10メートルを超える巨体は人間にとって脅威だ。人は抵抗虚しく蹂躙されるだけの存在に成り下がった。
だが、蒼天使はヴァールを悉く無力化させる。
ヴァールシンドロームが発生した惑星にフォールドし、戦場に介入。機体に装備された数多の兵器群を巧みに使いこなし、ヴァール化した兵士達の操る兵器を無力化する。ビームで構成された刃は武装や四肢など戦闘能力を有する部位のみを切断して目標を沈黙させる。
手の届かないところは翼より射出された計八基の遠隔兵器から刃やビームを放ち、時に人々を守るバリアとして機能する。たった一機であらゆる状況下での戦闘にも対応できるその凄まじい汎用性は脅威の一言に尽きた。不幸中の幸いと言えるのは、その矛先がヴァールに向いていることなのだろう。
星間複合企業ケイオスの軍事部門、デルタ小隊と戦術音楽ユニットワルキューレよりも早く戦場に舞い降りては迅速かつ圧倒的なスピードでヴァールの無力化を行う。ただこの蒼天使はどこの軍、企業にも所属していない完全なアンノウンであることだけが分かっており、他には何も情報はない。
蒼天使───誰もがその本当の名を知らない。
ヴァールを根本的に鎮静化することも、ヴァールとなった人々をワルキューレのように元に戻せる訳でもない。ただ兵器を持ったヴァールを無力化してくれるだけの存在。けれど、日夜ヴァールに怯える人々にとって暴徒から守ってくれる存在がどれほど心の拠り所になるかは言うまでもないだろう。
何が目的、何の為に戦っているのか。
それすらも分からないが彼は戦場に現れる。
黒煙の上がる戦場を蒼き翼を広げて駆け抜けながら。
───惑星アルヴヘイム
都市マリエンブルグにてヴァールが発生し、多くの新統合軍の兵士達が自我を失いVFなど軍より人々を守る為に与えられた兵器を破壊の限りを尽くす為に稼働させている時のことだった。
蒼天使の出現も同時期に重なりデルタ小隊と戦術音楽ユニット、ワルキューレはヴァール鎮圧の為に出動を命じられ、惑星アルヴヘイムの地へと降り立った。この時デルタ小隊を率いる“アラド・メルダース”は無意識に高鳴る胸を抑え込みワルキューレを守るべく戦場を駆け抜ける。
場所はマリエンブルグ。近くには統合軍の駐屯地もあり、最初に多大なる被害を受け、今も尚多くのヴァールと化した兵が破壊行為を行う戦場。その中に蒼天使は居た。
そしてアラドはその戦い方に、卓越した技術を感じ見惚れてしまう。
“VF-171”、ペットネームナイトメアプラスは“VF-17”、ナイトメアをベースに開発された新統合軍の主力機である。機体性能はVF-17と比較すれば若干劣る部分はあれど、操縦性の向上やピンポイントバリアなど防御力の向上や多くの武装オプションと組み合わせることで様々な場面に対応できる優れた機体と評価されている。
いくらヴァール化しているとは言え、統合軍の操るVF-171は群となれば強敵だ。それこそ歴戦の猛者でもない限り単機で制圧するのは困難なほどに。だが蒼天使は凡そ18メートルはあるだろうか。そんな巨体を誇る人型兵器を自在に操り、次々とヴァールが操るVF-171を打ち落としていく。
正確な射撃は武装や主翼を的確に撃つ。
完璧な間合いの管理。
懐に飛び込めば光の刃が四肢を切り裂く。
翼より八基の遠隔兵器が射出された途端に現れる光の翼は見惚れるほどに美しい。
動きに一切の無駄がない。
全ての動作がまるで未来を予知しているかのように的確だ。まるで背中に目が付いているかのように、背後からの奇襲攻撃は胴体を軽く捻るだけで避け、強引に距離を詰める者には人型を活かした柔道の回し蹴りの動作で距離を取る。単機で戦局を左右してしまう姿は正に一騎当千と呼ぶに相応しい。
例えVFと使っている技術体系が違えど、見る者が見れば分かるだろう。スラスターの操り方、噴射のタイミング、重力の抵抗など、その全てをコントロールしている。あれほどのパイロットが突如として出現するなど驚きを禁じ得なかった。それこそ突然異世界より現れた、と言われた方が納得できる。
やがて蒼天使の攻撃によって武器や翼を失ったVF-171は戦闘能力を失い、機能を停止していく。コックピットを見れば操縦桿を強引に動かし、機体を動かそうとするヴァールの姿が確認できるが機体各部のフレームなどが歪んでいることによって機体は僅かに震えるだけで立ち上がるだけの力はない。
残りは数機。フォーメーションなどはないが群れとなって迫るヴァールに対し、蒼天使は自機に備えられた全ての火器を構える。両手の携行式ライフル、腰部の二門の砲、腹部のビーム砲、そして八基の遠隔兵器。それらが構えられた時、光の翼を煌めかせながら戦場に光が灯る。
【ドラグーン・フルバースト】
多彩なビーム、レール砲などによるビームの嵐は戦場を照らす光となって捉えたVF-171の武装、四肢、主翼、スラスターを的確に打ち抜いた。あれだけの数を同時に、コックピットだけを外して狙い撃つなど歴戦の軍人であったとしても不可能に近い、現実離れした技術にアラドは驚愕する。
遺るものは兵器の残骸。
未だ都市に蔓延る生身のヴァール、そしてコックピットに閉じ込められたヴァールのみ。それらに対しては今ワルキューレの歌によってようやく沈静の兆しが見え始めた。戦場を包み込むのは彼女達の歌声。騒がしいほどの雑音は歌という音色へと変わっていた。
その状況を作り出した蒼天使は頭部のデュアルセンサーを光らせ、戦場を見つめていた。遠隔兵器は元の鞘へと戻り、全ての武装群を非使用状態にすると同時に蒼天使は宇宙に向かって羽ばたこうとした。戦場で終始戦いを見ていたアラドはオープン回線を開き通信を試みる。
「少し待ってほしい!君は一体……っ」
蒼天使の頭部がこちらを捉えた。恐らくあれがメインセンサーを兼ねているのだろう。だが、そんな推察をする余裕はこの時のアラドにはなかった。戦う意思はないと、それは理解できるが言葉にできない何かがアラドの中で警告を鳴らしていたが、同時に敵意を見せない限りは攻撃は無いとも踏んでいた。
その予想は当たり、蒼天使はこちらの様子を伺うだけで何も反応を示さない。この一瞬が長く感じる。やがて沈黙のまま蒼天使は背部のメインスラスターを吹かせ、大空へと戦場を立ち去った。それから直ぐに大気圏内でのフォールド反応が確認され、蒼天使が惑星アルヴヘイムから消えたことが確認された。
凡そ、現在の人類が開発できる兵器ではないと思えた。
機体も、そのパイロットも、全てが異質と感じたが、この銀河の秩序を乱す者ではない。動きも民間人への被害は最小限に留めるだけでなく、ワルキューレさえも守ろうとしてくれた。そこには確かに機械にはない、人としての優しさや人格のようなものが垣間見えた。
「だが、正体は分からずか……」
あの機体のコックピットには一体どのような人物が乗っているのか。何のために戦い、飛ぶのか。アラドは今回の戦闘データを記録し、ワルキューレの元に向かう。ヴァールの暴動は治まりつつあるが、未だに状況が完全に解決したわけではない。気を引き締めなおし、機体を市街地へと向かわせる。
(どこかで道が交わればいいんだがな)
同じ平和の銀河を目指し、願わくば道が分かたれないことを祈るのだった。
(す、すみません。無力化はできても鎮静はできないので後はお願いします!)
その蒼天使、ストライクフリーダムガンダム弐式のパイロットは気まずくで早々に立ち去ったとは誰も思わないだろう。
頑張って続けます。