一般通過冒険者が知り合い達に狙われる話   作:一般通過冒険者

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やっぱりコイツは人じゃないと吾輩は思う

 

 

 吾輩は冒険者である。ガールフレンドはまだ無い

盗賊共の襲撃を退けてから早2日、再襲撃は無く穏やかな旅路を進んでいる。

 

やはり旅はこうでなくては

 

 

馬車が揺れる度に吾輩のバケツ鉄兜の天辺に生えている申し訳程度の毛髪がヒョコヒョコと揺れる。

 

周りの連中からはヒヨコみたいだと言われるが遺憾である、腐ってもこの毛はグリフォンの毛で高過ぎて少ししか生やせなかっただけである。

 

 

…今思えばトンデモナイ無駄遣いであった

 

かつて英雄に憧れていた頃の吾輩の過ちの1つだ。

英雄譚の英雄に少しでも近付こうとしたのが始まりだった。

 

とうに諦めたつもりだったがまだ未練が残っていないかと聞かれれば同意する事は厳しい

中々割り切れないモノである

憧れは止まらないのモノである。

 

 

何故この様な事を言い出したのかというと今吾輩の目の前で乳繰り合っている若者達が居るからだ。

 

吾輩の視界内でイチャつくなぶっ飛ばすゾ

これは吾輩に対する宣戦布告と捉えて宜しいか?

 

それに早く街で鎧の汚れを落としたいモノだ、不届き者共の血で汚れてしまった軽く落としたがしっかり洗わなければシミとサビになってしまう。

 

汚れの所為か周囲から避けられているのだ…吾輩的にはこのバカップル共も吾輩から離れて欲しいモノだ。

 

 

まァ、あの(リリス)から暫く離れられるなら我慢は出来るが

 

そんなこんなで馬車に揺られる内に眠くなりうつらうつらしていると隣に女が座って吾輩の背中を強く叩いた

 

 

「よー眠そうなツラしてんなー」

 

 

………?

 

 

「寝ぼけてるなコイツ…おーい!起きろーお前の大好きなリリスちゃんが来てやったぞ〜」

 

 

………Zzzzzz

 

 

「えぇ…寝惚け過ぎだろ…こんな近くにいんのに反応しねぇのかよ……」

 

 

……ンが…ん…?この声何処かで…

 

 

「兜取ってもバレないか…?よいしょ…アレ?引っかかってる?」

 

 

ムゴッ!…く、首がく、苦しい…息が………なっ!?リリス!?

 

 

「今気づくのかよ…タイミング悪りーな…」

 

 

と言うか何故お前此処に!?

 

リリスはダンカルクの街に居るはずだ

なのに何故この商隊に居る!?他の護衛にコイツの名前は無かった筈だが…

 

 

吾輩が疑っているとリリスは両手を広げて言った。

 

 

「何故ってそりゃぁ…ベリスのオッサンに頼んで商隊に乗せて貰っただけだよ」

 

 

頼み込めば乗せて貰えるモノなのか…?

 

 

「貰えるモンだよ」

 

 

………今からでも降りれるか…?

 

 

「今降りれるか考えただろ?」

 

 

馬鹿な!?思考を読まれただと…!?コイツ…読心術に精通しているのが…!

 

間違いない…リリスは読心術を駆使してベリス殿を誑かして商隊に乗り込んだのだろう…何という女だ…

 

 

「いや誑かしてねーし」

 

 

!?また読まれた!?

 

 

「いや、何かお前感情が動作に出過ぎなんだよ…」

 

 

ふ、ふん!吾輩の動揺を誘っている様だが無駄である!

吾輩は冷静沈着なのだ!

 

 

「……冷静沈着ねぇ…」

 

 

リリスは吾輩のつま先から兜の天辺までを見渡しながら呆れた様に言う。

 

 

あゝ主よ…どうか吾輩をこの悪魔(リリス)から救い給え…

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

息が出来ない

私、ベリス・シュバーデンは額に滲んだ脂が滴り頬を伝うのを感じながら思った。

 

 

「お〜ベリスのオッサン今回の件どうしてくれんの?」

 

 

私の眼前に行儀悪く座る女性が原因だ。

 

 

「リリス殿…今回の件とは…一体何の…「何でアイツをあのメス猫の商隊に同行させた?」

 

 

私の言葉を遮るように彼女は言い椅子から立ち上がり私に詰め寄る

 

 

「それは…孫娘が北方の街道を通る為に信頼出来る戦力を…」

 

 

分かっている此処で何を言っても無駄である事は、そら見たことかまた圧が増した、そろそろ殺気を抑えて欲しいモノだ私は耐えれるが他の従業員が気絶寸前だ

 

 

「…北方がアイツにとってどんな意味を持つか知ってんのか?」

 

 

北方の街道…ここダンカルクと北方を結ぶ道、そしてこのダンカルクが所属する王国が八年前の大戦によって奪い獲った帝国の領土

 

話によればモーゼン殿は北方生まれと聞く。

あの道は戦に破れた兵士や王国民に追われた帝国の民が不届き者と化している。

 

間違いなく王国の商隊が通れば襲われるだろう。

そうなればモーゼン殿はかつての同胞を斬る事になる。

 

だが北方の民は強い

今回は多くの護衛を付けたがそれでも孫娘を守れるかと聞かれれば私は首を縦には振れない。

 

 

モーゼン殿ならば必ずあの子を守ってくれる。

亡き息子の忘れ形見を失う訳には行かない

 

 

「アンタがエリカを大事にしてるのは知ってる、だからこそだ大事なら手元に置いとけば良いじゃねぇか」

 

 

分かっている、それがあの子を守る事だと

だがあの子の意思も尊重して上げたい外を見たいという想いを

 

私が口ごもっていると彼女が頭を掻きながら言う

 

 

「……まぁ過ぎた事言っても仕方ないか…」

 

 

「申し訳無い…」

 

 

申し訳無い、彼女にとって彼は大切な友なのだ

その彼の気持ちを踏み躙るような事をする私を許せないだろうに

 

私が椅子から立ち頭を下げ謝罪すると彼女は言った

 

 

「ん?今、申し訳無いって言ったか?」

 

 

…?

 

 

え?今から商隊の護衛を依頼しろ?既に街を出てかなり時間が経っているが…早馬を出そう…え?良い?走って行く?

 

 

 

…冒険者って凄いなぁ…

 

 

私は子供の様な感想を胸に抱いた

 

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