一般通過冒険者が知り合い達に狙われる話   作:一般通過冒険者

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昔馴染みの友その1

 

 

 吾輩は冒険者である、産み親は居ない

産まれた時分から1人であった。

 

代わりといってはなんだが幼少の頃に過ごしていた街が商隊が途中で立ち寄る、スパンラルという名の街だ。

 

この街に行く為に商隊の護衛を受けた理由の1つだ

駄賃も浮き金も稼げる一石二鳥と云うモノである。

 

 

いやしかし久方ぶりの帰郷となる。

あの日故郷を発ってから早十年…ゴミを漁っていた日々を思い出す、良く変なモノを口に入れ体調を崩したモノだ。

 

吾輩が思い出に浸っていると横槍を入れてくる女がいた。

 

「お〜私が隣に居るのに考え事たぁ命知らずな奴だなぁ?」

 

 

そうリリス言いながら吾輩の脇腹を肘でグリグリと削って来る。

 

 

鎧がメキメキと音を立てている気がするが気の所為だろうか…?

 

 

「まぁ良いよ私は優しいからな、街に着いたら今度こそ呑もぜ?それで手打ちにしてやるよ勿論お前持ちで」

 

 

呑む訳無いのである、何度奢らせれば気が済む、毎回呑みに行く度にベロンベロンになるコイツの介抱は絶対にお断りである。

 

昔馴染みの友にも顔を出さねばなら無いと云うのに

 

 

商隊はスパンラルに三日程滞在するが準備などで自由に使える時間は1日あるか無いか、この様なヤツに構っている暇など少しも吾輩には無いのだ。

 

 

「は?私と呑むよりムサイ友達を優先すんの?ねぇ?」

 

 

吾輩が友を優先すると知ったリリスは吾輩の首に手を回して脇を絞めヘッドロックをしてくる、吾輩の首回りがポキパキと音を立てている気がする。

 

そう言う所だぞ

 

そして何度も言うが美女は自分で美女と言わないし昔馴染みの友は吾輩と違ってムサくないのである。

 

吾輩も子供ながら友の容姿は整っていたと思う、性別は知らないが髪は短かった。

 

 

「ほー…随分とそのお友達の事褒めるんだな?私の前で?」

 

 

む?車内の空気が湿って来たなこの辺りは乾燥帯なのだが…湿度が高いと商品が傷んでしまう換気するか

 

 

馬車の後部の幕を開ける

車内に吹き込む乾いた風の匂いを感じながら

吾輩は昔馴染みの友に思いを馳せた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 日が丁度吾輩の頭上に来た時、商隊はスパンラルに着いた

エリカ殿やホーガルド殿や商隊の人々に軽く挨拶をし吾輩はスパンラルの街へと足を繰り出す事にした。

 

吾輩に着いて来ようとしたリリスはエリカ殿やホーガルド殿に発見され商隊が取っている宿に引き摺り込まれて行った。

 

ベリス殿に許可を貰ったのは事実だったらしいが商隊に追い付いた後ホーガルド殿達に報告せず乗り込んでいたらしい。

 

報連相を怠るからこうなる

ざまを見ろと云うモノだ。

 

 

街を暫く歩いて見れば吾輩の知っているスパンラルとは全く似て似つかなかった

昔は議会邸の周辺しか建っていなかった多層建築物

がズラリと並んでいるのである。

 

一体この十年余で何があったのだ…時の流れとは吾輩が思うよりも早い様だ。

 

 

根っから田舎人(いなかうど)の吾輩はスッカリ度肝を抜かれフラフラとして最近作られたであろうベンチにへたり込む

 

たまげたなぁ…

 

吾輩は人々の喧騒で騒がしくなりスッカリ狭くなってしまった空を見上げてそう呟く

 

 

この分だと我らの城も無くなってしまっているのではないだろうか?

その様な思考が吾輩の脳裏に過ぎる。

 

かつて友となけなしの金を使って借りていた部屋だ。

我らの城はスラム街にある古びた2階建ての建物の中にあった小さな古い部屋だ、小さな子供二人が丁度入って寝そべれる程度の小部屋

 

建て方が悪いのか風や雨が良く隙間から入って来たモノだ

 

だが幼かった吾輩にとって信頼出来る友との屋根の下は世界で最も安心出来る場所だった。

 

嵐が来た日では友と軋む部屋の中で震えあったモノだ。

 

 

 

…懐かしいな、今でも文通はしているが顔を合わせるのは久し振りだ。

 

 

街に最近出来たであろう大きな時計の着いた建物に目を配ると時計の針は3時を指していた。

 

 

まだ待ち合わせまで2時間程ある…行ってみるか。

 

腰をベンチから上げ埃を払いかつて友と過ごしたあの場所を探す為に歩き出す

 

幸いな事に街並みは変わったが街の形自体はそこまで変わっていなかった、すぐ大通りを曲がれば多少は人が増えかつての様な陰気さを失っては居るが見覚えのある街並みがそこにあった。

 

 

吾輩は心の何処かで胸を撫で下ろした、もしかすれば取り壊されて居ないかもしれない そんな淡い期待が胸に湧き上がって来るのを感じていた。

 

 

 昔使えそうな廃材を集めていた処理所はしっかりと街が管理する様になっており入れなくなっていた。

 

街が発展しているのは喜ばしい事だが何処か一抹の淋しさを吾輩は覚えていた。

 

 

良く転んだ凸凹の坂道、良く憲兵に追われて逃げ込んだ裏路地、姿を多少は変えていてもあの日の面影を確かに残していた。

 

 

奥に進めば進む程、その面影が強くなって来る

 

それに比例する様に吾輩も子供の頃に戻っていく様な気分になる

 

 

そしてこの角を曲がれば…

…此処だ、人に捨てられてしまった様だが吾輩のかつての安息の地があの日の姿で其処にあった。

 

 

吾輩はスッカリ苔がむしツタが絡まったオンボロ建物の扉に手を掛けるとガチャリと音を立てて奥に開く。

 

 

…鍵が空いている?いや、鍵が経年劣化で壊れたのか?

 

 

建物の玄関を見渡す、床や柱が腐蝕して少し建物が歪んでいるのが分かる、床を踏みしめるとギギギと耳障りな音を立てる

 

 

薄汚い建物の中を吾輩はゆっくりとした足取りで進んで行く、時折変な音がするが気にも止めずそして階段に足を掛け登る。

 

 

ギッギッギッバギッギギギ

 

 

その様な音がなるが吾輩には聞こえて居なかった…いや聞こうともしていなかった。

 

かつて吾輩達が借りていた部屋の前に立っていたからだ。

 

深呼吸をして呼吸を整えてから震える手でドアノブに手を掛けた瞬間

 

 

()()から声を掛けられた

 

 

「…久し振り」

 

 

…ッ!?

 

突然声を掛けられ身体が硬直する、振り向こうとするが思うように身体が動かない。

 

脳から末端に至るまでの神経が痺れている様だ

 

 

「……私だよ」

 

 

声の主は不安気に問う

声質からして若い女性だろうか

だが吾輩には聞き覚えの無い声だ

 

申し訳無いが吾輩に若い女性の知り合いはエリカ殿とリリスしか居ない

 

そう答えるが吾輩はそれが間違いであった事を次の瞬間知ることになった。

 

「誰?エリカとリリスって?」

 

 

吾輩の首筋に極限まで研いだ薄氷の刃が添えられた気がした。

 

 

 

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