一般通過冒険者が知り合い達に狙われる話 作:一般通過冒険者
吾輩はピンチである
今にも殺気だけで頸を刎ね飛ばされそうである。
しかしまいほーむを建てるまで吾輩は死ぬにも死にきれないのだ。だから絶対に死ぬ訳にはいかないのである*1
しかし抵抗しようにも彼女の発する圧からして多くの死線を潜り抜けて来ているのであろう、吾輩の様な傭兵崩れとは違う真の強者である。
吾輩は兜の下で額に脂を浮かばせる
「本当に憶えてないの?」
申し訳無いが彼女にはホントに身に覚えない、それに女性の知り合いと言ったら両の手で数えられる程しかいない。
「…気づいてなかったんだ」
そうワントーン低い声でいうモノだから吾輩の首筋が震え過ぎて兜がカタカタと揺れている気がする。
重ね重ね言うがホントーに知らネーのだ
「テトラ」
ん?何故貴方が吾輩の旧友の名を…
思わず吾輩は振り返ってしまう
振り返った先にいたのはまだ少し幼さを残した顔立ちの灰色に近い白髪を一つに纏めた髪型で鼻筋に対して横に刻まれた傷跡が目に付く女性だった
「私がテトラ」
…テトラ…?貴方が…?………ふむ…
吾輩は目の前にいる女性と友の姿を重ねる
吾輩の記憶の中ではもっと髪は溝鼠色見たいな色だった筈
「それは普通に汚れてたから」
そんな髪は長く…
「それは伸ばしたから」
なんか声少し低くなってるし…
「それは普通に変声期」
変声期といっても変わり過ぎなのでは…
「それ言ったらモーゼンの方が変わってるよ声」
それはそうか、、、
う、受け入れらない…旧友が女性だったとは…今日はお気に入りの風俗嬢とか流行りの下ネタトークで盛り上がるつもりだったのに…
「…まさか男だと思われてたなんて」
それはすまないと思っているが吾輩の記憶の中では…
「分かってる、言わなくていいから」
…それで話は変わるが残ってたとはな
「困ると話題そらそうとするクセ直ってないね、此処は再開発地域に含まれてないからだよ」
再開発地域?あの豚領主がそんな事を…?
吾輩の記憶にあるスパンラルの領主は絶対にそんな事をしない様な見た目の豚貴族だった為に思わずテトラの言葉を疑う
「領主が変わったの、お前が南方に傭兵として流れていった時の少し後に敵国との内通がバレて打首にされて新しい領主が来たんだよ」
そう言いながらテトラは首を掻っ切る真似をする。
死んだのか豚貴族が…結構吾輩、豚貴族の自慢演説好きだったのだが…
「…それでなんだけど、約束ってまだ有効…?」
約束…?テトラとした約束…?
吾輩は鶏よりも小さい脳をフル回転させ過去の記憶を漁るがゴミ箱を漁っていた記憶しか出てこない、本当にツカエネー脳味噌である。
「っ……そう、だよね…!ごめん!今更、虫が良すぎるよね!今のは忘れて!」
…何か黙ってたら勝手に話が進んでいる件について
うむ、今此処で何の約束か忘れたとか言えばホントに殺されかねない、此処は大人しく話を合わせるのが生き残るコツなのだ。
しかしあの時感じた冷気の様なモノ…何だったのかと頭を捻らせていると心の友であるテトラが読心術でも使ったのか答える。
「…あー…私、魔力があったらしくてさっさの冷気は魔力が少し漏れてただけ」
魔力 それは絶対的な力
1000人に1人と云う確率で生まれ魔力を持って生まれてくれば例えスラム育ちでもその瞬間勝ち組コースを爆進出来るのだ。
テトラを置いて街を出るのは辛かったが魔力が芽生えたお陰で何とか生きてこれたらしいのだ。
因みに属性は何だったのだ?
「氷」
氷!?実に羨ましいモノだ
氷属性と云えば貴族から王室まで引っ張りダコであろう。
何せ暑い夏でも涼しい空間を作れるのだ、それに加えかき氷食べ放題は上に食材の保管も出来る。需要は腐るほどあるだろう。
テトラは何処かに雇われていないのか?例えば貴族とか
「特に…?それよりもそろそろ時間じゃない?」
ふと部屋の窓?というか格子から覗く空は朱色に染まっている。
もうこんな時間か…なんて言ってる場合ではない!
早く酒場に行かねば席がなくなってしまう!?
吾輩は勢いよく部屋を飛び出て階段を駆け下りようとしたせいか階段の一段が砕け足を支えて頭から吾輩は落下したのだった。
「…変わってないね。」
何かテトラが言ったように聞こえ振り返るがテトラは何でもないと首を振る。
頭から転落したせいで兜に着けたグリフォンの羽根の一部が欠けてしまっている。
マッタク吾輩は運が悪い…
テトラと昔歩いた道を談笑しながら酒場に向かうのであった。