白上縁起恋灯絵巻【完結】   作:DX鶏がらスープ

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実際神様って普段何してるんですかね?


神様の憂鬱

 

突然だが、神様が普段どのように過ごしているか知っているだろうか?

 

勿論、その神様が祀られている土地や神様そのものの性質や性格などによってその実態は異なる訳だが、この白上神社の祭神であるうち達の場合、その主な仕事は冥界の門マガツトボソの監視と、磐ノ斗の地に沸いた冥獣ケガレの退治だ

 

そしてそれに付随して地脈の管理や修繕から、野生動物の保護や彼らの争いの仲介、祈りを捧げてくれた人への幸福祈願など、色々な雑務がある

 

また、ただでさえ冥界の化物がさ迷い出てくる土地柄という事で、死者の魂が安全に冥界に行けるように霊道を整備し、必要であればその守護をするというのも重要な仕事の一つだ

 

こんな風に、一口に神様と言っても別に暇なわけではない

むしろ土地が土地なだけに、白上神社の祭神の肩にかかる責任というのはとても重いものである

 

だからフブキはあれで意外と忙しい身だし、それを知ってるからこそ、うちもそんなフブキの力になる為に色々と手伝ってる訳なんだけど

 

「フブキ?」

「…」

「フブキってば!」

「わぁっ!?」

「どうしたの?

さっきから全然集中できてないよ?ちょっと休む?」

 

いまいち一作業に集中できてない様子のフブキにうちはそう提案する

 

そしてフブキも自覚自体はしていたのだろう

ごめんごめんと頭をかきつつも、手元に持っていた磐ノ斗の地図をその場に置く

だからうちも一旦作業を切り上げると、ちょっと待っててとフブキに声をかけてから詰所の台所まで赴いた

 

(う~ん…このあたりかな?)

 

こぽこぽと、火にかけたヤカンの水が沸き立ち音をたてる

それを聞きながら、棚からいくつかお菓子を拝借したところでふとそれが目に止まる

 

共用のお菓子スペースの隣に設けられた、みこちと海斗くんの為のお菓子スペース

飴や煎餅など当たり障りのないものしか入っていない共用の籠と違い、チョコやラムネにグミやスナックなどなど、とにかく色々な種類のお菓子がたくさん入っているみこちの籠と、ミニドナーツや海苔のはさみ焼きなど、数は少ないながらも厳選されたのであろう選りすぐりのお菓子が入れられた海斗くんの籠

それを見ていると、少しだけほっこりとした気分になる

思えばここも随分賑やかになったものだなと、今更ながらに感慨深くなる

だからこそ

 

(まぁ、気持ちは分かるけどね)

 

そう独りごちながらお盆を持ってフブキのところへと戻ると、用意したお茶を彼女に差し出す

しかし、対するフブキの反応はどうにも精彩を欠く

 

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます、ミオ」

 

お茶を受け取りながらも、彼女の顔は心ここにあらずといった様子で、さっきとまるで変わらない

どこか寂しげで悲しげな様子でぼんやりと遠くを見つめている

 

だから少しだけ鎌をかけてみた

 

「…あの子が来ないのがそんなに寂しい?」

「ぶふっ!?

べ、べべ別に白上は海斗くんの事なんて考えてなんか…!」

「あれ?

うちは別に、海斗くんの事だなんて一言も言ってないけど?」

「~っ!!

み、ミオ~っ!!」

 

からかわれたと気付いてフブキが顔を赤くして怒り出す

そんな彼女にごめんごめんと謝りながら自分用に持ってきたお茶に口を付けるうちだったけど、そんな時ふと周囲の景色に目が止まった

 

白上神社の境内から見える景色はすっかり秋一色だ

山の木々は紅に染まり、涼やかな風が吹き抜ける田畑には、黄金色の稲穂が揺れている

それを見ていると、時間の流れは早いなとつくづく思う

 

(もう海斗くんがここに来てから数ヶ月も経つんだね…)

 

そしてみこちに関しては数年

本当に、彼らと過ごす日々はあっという間だと痛感する

 

そんな事を考えていると、ようやく落ち着いたのか恨みがましそうな目で、今度はフブキがうちに問いかけてきた

曰く

 

「そもそも!そういうミオはどうなんですか!?

海斗くんどころか、最近はみこさんまであんまり来てくれないんですよ!何とも思わないんですか!?」

 

その言葉に少しだけうちは考える

ても思えば答えは最初から決まっている

 

「う~ん、そうだねぇ…

確かにちょっと前にこっちに引っ越して来たばかりの海斗くんはともかく、ここ数年、ずっとうちらと一緒にいたみこちまで顔を出す頻度が下がってるのは、ちょっと寂しいかな」

「だったら!」

「…でも海斗くん達には海斗くん達の理由があるわけだし、それを無理に引き留める訳にも行かないでしょ?」

 

そう返すと、それはそうですが…、とフブキはうつむく

だけどこういう事はちゃんと言っておかなきゃいけない

だからうちも続ける

 

「それに、そもそも最初に二人とも言ってくれてたよね?

しばらくやることがあるから神社には来られないって

それならうちらに出来る事は待つことだけ、そうじゃない?」

「でも…」

 

理屈ではうちの言葉が正しいと分かっているのだろう

それでも感情面で納得がいってないのであろうフブキの頭を、うちはそっと撫でる

 

「大丈夫だよフブキ

別に二人ともフブキの事を嫌いになった訳でもいじわるをしている訳でもない

単純に色々忙しくて手が回らないだけなんだよ」

 

そう言ってうちはフブキを…これで意外と寂しがりな妹を励ました

 

「用事が済んだら、また神社に来てくれるよ」

「そうですかね…」

「当たり前じゃん

それともフブキは、二人が簡単にうちらの事を見捨てるような薄情な人間だと思ってるの?」

「し、白上はそんなこと!」

「でしょ?ならうちらはどーんと構えてる位でちょうど良いんだって!」

 

ひとまずはそれでフブキも納得してくれたが、こんなにもフブキが海斗くん達の事を気にするのは、やはり昔の事を思い出してしまうからだろう

 

そう、昔

 

まだ磐ノ斗の地に今より人がいて、うち達の事が見える人達もそれなりにいた頃の話

 

冥界の門マガツトボソが閉じられた事により、この地にいた人々が次第にこの磐ノ斗の地の外へと去り始めた頃の事だ

 

元々この地は冥界の穴からあふれでる冥獣ケガレの脅威に対抗する為に人々が集まった地である

 

だからその脅威が明確に取り除かれれば、その為に集まった人々がここに留まり続ける理由はないし、そうなると良くも悪くも冥界の門マガツトボソを中心に回っていた村の経済は打撃を受ける事になる

そして、その煽りを受けて冥獣ケガレの事を知らない人々までこの地を去っていく事になり、そうして次第に磐ノ斗の地は寂れていく

 

もちろん最後の戦いが終わった後全ての磐ノ斗の霊能力者達が即座にここを去った訳ではないし、戦後すぐあたりの時期にはなんだかんだ言ってもまだ多くの人々がこの地には残っていた

実際フブキが先代様かあさんに拾われて白上神社に来たのも大体この時期で、だからこそうちや先代様かあさん、村のみんなに可愛がられて育ったフブキは、この村の事が大好きになったのだろう

 

だけど、忍び寄る荒廃の足音を止める事は誰にも出来ない

加えて冥界の門マガツトボソ封印の際に、古来からずっと冥獣ケガレとの戦いの最前線に筆頭として立ち続けだけでなく、地元のまとめ役として冥獣ケガレを知らない人々からも慕われていた白上神社の神主一族が全滅したのも良くなかった

磐ノ斗の衰退を止められる者は誰もおらず、そして更にそこに高度経済成長期の田舎からの人口流出の流れが拍車をかける

 

一人二人と、時を追うごとに共に過ごした大切な村人達がこの地から去っていく光景を前にして、だけどうちらは何も出来なかった

 

何故ならうち達は神様だから

冥獣ケガレを倒し、村を守る事はできても、村の経済を建て直し人口の流出を止める事は出来ない

それは人の営みの領域の話であり、所詮この土地の守り神でしかないうちらには、それに介入する事などできはしない

 

だからこそ、フブキは絶望した

みんなから神様として慕われながらも、そんな彼らが去っていくのをただ黙って見送ることしかできないという自分達の現状があの子には耐え難い苦痛だったのだ

 

(「なんで…どうしてなんですか…

私達は神様なのに…どうして!!」)

 

そう言って泣いていたフブキの姿は今でも覚えている

そしてその葛藤もまた理解できない訳ではない

 

(うちとしては、それもまた仕方がない事だとは思ってるけど…)

 

それはきっとうちが生まれながらの神だからであって、磐ノ斗の地の人々の為に頑張った結果として神になったフブキにとってはそうではないのだろう

 

そして自分の中では折り合いがついている事とはいえ、それでも神としての義務を遂行できず、そのまま忘れ去られていく事について何も思う事がないと言えば嘘になる

 

だからフブキの気持ちは分かるのだ

 

久しぶりに現れたうち達の事が見える人間

それもこの地の監視として派遣されたみこちのような、どんなに仲良くなっても互いの立場が最後の足枷になってしまう人間ではなく、ありのままの神様として振る舞う事ができる唯一の人間である海斗くん

 

そんな彼とのやり取りがフブキにとってどれだけ救いになっているかなんて考えるまでもないし、だからこそ彼が来なくなったことがどれだけフブキにとって不安な事なのかもうちには分かる

 

きっとかつてこの地を去っていった人達を思い出してしまうのだろう

行かないでと手を伸ばす事すらできなかった自分の無力さを思ってしまうのだろう

 

(…とは言え、今回はきっと杞憂だよフブキ)

 

そう確信できるのは相手が他ならぬ海斗くんだからだ

きっとあの子は最後までフブキの事を見捨てない

僅か数ヶ月程度の付き合いとはいえ、彼がフブキの事を大切に思っている事位うちにだって分かるし、それを一番分かっているのはフブキ自身のはずだ

 

それに…

 

「…ねぇフブキ、ちょっと散歩に行ってみたらどう?

気分が晴れるかもよ?」

「…そうですね

じゃあちょっと行ってきますね…」

 

「はいはい、行ってらっしゃ~い!

 

………さて、フブキは行ったよ?」

 

フブキが鳥居から出るのを確認したうちはそううそぶく

 

すると、先ほどフブキが出ていった鳥居から入れ替わりで今度は海斗くんとみこちが出て来た

 

「久しぶりだね海斗くん」

「えぇ、大神さん」

「本来ならフブキが寂しがってたよ~って、小言の一つ位は言うつもりだったんだけど…?」

「すみません、まだ白上さんに会うわけにはいかなくて...」

 

そう頭をかく海斗くん

しかし次にこちらを向いたその目は真剣そのものだ

 

よく見ると二人ともあまり寝てないのか目の下にくまが出来ているし、身体中から疲労の気配が濃く滲み出ている

 

それでも彼から感じる真っ直ぐな想いに、うちは自分の予想が外れていなかった事を悟る

 

(まったく、フブキも罪な子だね…)

 

そもそも、海斗くんがフブキの為にならない事なんてする訳がないじゃないか

 

そんな至極当たり前の事実を再認識するうちに向かって海斗くんは口を開く

 

すなわち

 

 

 

「…大神さんにしか頼めないんです

手伝ってくれませんか?」

 

 

 




???「ちゃんと出てきたのに台詞が一個もなかったにぇ…」

ごめんなさい
展開を考えると多分主人公と一緒に白上神社に行ってるだろうな、と思って出したんですけど、主人公と大神さんの台詞に割り込める台詞が思いつきませんでした…
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