「くっくっく…
来たか、白神神社の祭神とその守り手よ...」
現場に到着すると共に、犯人と思わしき角の生えた少女にかけられた言葉に僕は戦慄する
(この子…白上さんの事が見えて…!)
「…何者ですか?」
「よくぞ聞いてくれた!」
得体のしれない人物なだけに出方を伺う僕の言葉に対して、待っていましたとばかりに叫ぶ少女
と同時に、どこからともなく現れる四人の新たな人影
「なっ!」
「い、一体どこから!?」
突然の増援に警戒する僕と白上さん
だがそんな僕らの様子など一向に構うことなく、角の生えた少女は叫び、またそれに追従するように現れた四人も同様に叫ぶ
「そこに跪け!」
「吐いて捨てるような現実を!」
「一刀両断ぶった切る!」
「終わりなき輪廻に迷いし子らよ!」
「漆黒の翼で誘おう!」
「我ら、エデンの星を統べる者!」
「「「「「秘密結社holoX!!!!!」」」」」
(でござるー…るー…るー…ーー)
………時が止まった
呆気にとられる僕と白上さん
それに対して決まった…!とでも言わんばかりの恍惚の表情で完璧なポーズを決める角の生えた少女と、どこか遠い目をする四人
何をどう突っ込めば良いのか分からない、何とも言えない空気があたりを支配する中、しばらくすると、こほんとマントを着た女性がわざとらしく咳払いをする
それで我に返ったのか、角の生えた少女は改めてこちらに向き直ると、何事もなかったかのように話し始めた
「え~…という訳で秘密結社holoXの総帥ラプラス・ダクネースだ
よろしくな」
「あ、えっと…白上神社で祭神をやらせていただいています、白上フブキと申します?」
「…白上さん、真面目に答えなくて良いから」
「はっ!?」
つい素で自己紹介をする白上さんに、思わず突っ込む
だが少し…いやかなり斬新なものとは言え、自分達から自己紹介(?)をしてきたと言うことは、まだ相手には会話をする気があるという事だろう
…正直今の時点でかなり嫌な予感がしているが、それでも話し合いで解決できるというのならそれに越した事はない
だから僕は思いきってこの目の前に少女に問いただす
すなわち
「…ラプラスさん、で良いですよね?
単刀直入に聞きます
何故こんな事をしたんですか?
そして目的は何ですか?」
「ふむ、良い質問だな
人にものを聞くのにまず名乗らないというのは減点要素だが…吾輩は今気分が良い!
特別に答えてやろう!!」
そう言って大仰に手を広げるラプラスさん
「それはズバリーー世界征服の為だ!!」
「…せ、世界征服?」
突然飛び出すあまりにもスケールの大きい目的に流石に面食らう
だが目の前のラプラスさんは違う
大真面目に世界征服というとてつもない夢を語る彼女の目はどこまでも本気で
「そうだ!
我々ホロックスはいずれ世界の全てを手中に収める!!
その為にこの地にあるという冥界の扉の力が必要なのだ!!」
そう語るラプラスさんの目はどこまでも澄み渡っている
本気で彼女は世界征服を成し遂げる気でいる
だけど、残念ながらその願いを叶える訳には行かない
「…冥界の扉を開くという事は、多くの人の命を危険にさらすという事です
ラプラスさん、あなたはそれを分かった上で言っているんですか?」
思わず拳を握りしめる
「海斗くん…」
そうだこの人は知っているのだろうか?
冥界の扉を開くという事がどういう事なのか
それがどんな事態を引き起こすのか
それに何より
(白上さん達がどんな思いで封印を守ってきたのか、この人は…!)
そう考えるとふつふつと怒りがこみ上げてくる
だが目の前の少女はそんなこと知らんとばかりに続ける
「無論だ
だがそんな分かりきった議論に何の意味がある?
危険が伴う事など百も承知!
それでも吾輩は成し遂げなければならない!!」
「…であれば、やはりあなたの願いを叶えるわけにはいきません
どうかお引き取りを」
しかしラプラスさんの余裕は崩れない
「それは残念だな…
だが、それならここに来るべきではなかったな」
「?
それはどういう…」
「分からないか?
我々はいわゆるオトリという事だ」
その言葉に僕は一気に自身の顔から血の気がひくのを感じる
そしてそんな僕の表情を満足げに見ながらラプラスさんは続ける
「白上祭りの日を狙えば、一般人の避難誘導にも人手を裂かざるを得ない分、結果として防衛体制は弱体化せざるを得ない…
まぁ、そういう事だな」
「…っ!
白上さん!!」
「はい!」
「おっと、ここまで聞かせて行かせると思うのか?」
引き換えそうとする僕らの前に、ラプラスさんの側にいた四人が立ちはだかる
「っつ~訳で、取り敢えずキミらには沙花叉達と遊んでもらうよ☆」
「5対2と言うのは些か卑怯ではござるが、これもラプ殿の野望の為
ご覚悟を…」
「くっ!?」
ナイフを持った黒いフードの少女と、日本刀を構える侍装束の少女が前に出る
後ろの二人もまたそれぞれに構える
そしてそんな僕らの様子をニヤニヤと笑いながら見つめるラプラスさんもまた、侍の少女の言葉から、何らかの力を隠し持ってる事は間違いないだろう
袋の鼠
そんな言葉が頭を過る
しかし、だからと言ってはいそうですかと頷く訳にはいかない
「ほう?
この状況でも折れないか
大した奴だな」
「…僕が諦めたら、あなた達も諦めてくれるんですか?」
「…気に入った、お前名前は?」
この状況下で特に隠す意味もないので、普通に答える
「なるほど海斗か
良い名だ
では海斗よ、ホロックスに来る気はないか?」
「ありません」
「まぁ、そうだろうな…
それならば、足止めついでに力ずくで従えるのみだ!」
その瞬間にラプラスさんから放たれる空間をねじ曲げる程の圧力
隔絶した超越者の威圧にしかし、僕もまた一歩も引くことなくそれをにらみ返す
そしてラプラスさんもまた獰猛な笑みを見せて
「…あなた達に冥界の扉を開かせる訳には行かない!
世界を冥界に沈めるつもりだと言うのなら尚更!!
押し通ります!!」
「やってみるが良い!
だが吾輩が冥界の扉を手に入れるのは確定事項だ!!
すべての世界を征服し、皆が笑って元いた世界に帰れるようにするために、異世界に渡る力は必要不可欠なのだから!!」
「「………ん?」」
・・・・・・
「本当にすみません、うちのラプが…」
「ご、ごめんなさい…」
そう言ってマントの女性…鷹嶺ルイさんと一緒に頭を下げるラプラスさん
その態度は先のやり取りでの傲慢で余裕のあるものとは違い、ひどくしおらしいものであり
「それにしても冥界の扉がマジで冥界に繋がる扉だったなんてね
沙花叉達完全に勘違いじゃんw」
「伝承というのは語り継がれる過程で何かしらその形が歪んでいくもの
だからこそ冥界へ繋がる扉だというのも、異世界に繋がる扉の伝承が歪んで伝わっていったものだと思ったんでござるがね…」
「え~い!
黙れ黙れお前ら!!
それ以上吾輩の傷口を抉るんじゃない!!」
爆笑する沙花叉クロヱさんと、どこか遠い目をする風真いろはさん
その二人にラプラスさんが怒鳴るが、つまりはそういう事だ
異世界からこの世界へと流れ着いた漂流者達の組織である秘密結社holoX
最終的にすべての世界を征服し、メンバー達が円満に元の世界へと戻れるようにする事を目的に活動する彼女達の下に、ある日黒いフードを纏った女性が来訪する
彼女は白上神社に異世界へと繋がる扉があるという情報を提供し、自身もそれを使用する事を条件に力を貸す事を持ちかけ、ホロックスはその話を承諾
そして今夜の襲撃に至るという流れだ
「それにしてもこの火柱は一体どうやって起こしてるんですか?
こんなに近づいても全く熱くないですけど…」
「ふふ~ん!
それはこよの作った『キャンプファイヤー起こす君』で発生させてるんだよ!!」
未だに煌々と燃え盛っているにも関わらず、明るいだけで一切温度を感じない火柱を、白上さんは恐る恐るといった様子でツンツンと突っつく
そんな白上さんの疑問に答えるのはホロックスきっての科学者である博衣こよりさんだ
「これはボタンを押した人の霊力に応じた灯りを灯す装置でね、それをホロックスの全員で押したからこんなに大きな灯りになったんだ!」
ほら!、と博衣さんが装置の電源を落とすと、白上神社からも見える程の巨大な火柱は一瞬で消える
「おぉ、科学の力って凄いんですね!」
「えっへん!」
そう言って胸をはる博衣さんをラプラスさんが見る
「こより、ここに来たという事は...」
「うん!準備が整ったよラプちゃん!!」
それじゃあ海斗くんとフブキちゃんはこっちに来てね~、と呼ばれた先で、博衣さんはそこに並べられた機械を色々と操作していく
「これをこうしてこうやってっと…
よしっ!
これで準備完了だよ!!」
「博衣さん、これは?」
「ふっふっふ、これはこよが開発した『どこでも行ける君』!
ボタンを押せば、押した人が思い浮かべた場所に一瞬で移動できる機械だよ!」
「わぁ!便利ですね!!」
これさえあれば一瞬で白上神社まで戻れるよ、と微笑む博衣さんと、それに目を輝かせる白上さん
とは言え僕としては気になるのは別のところで
「…あの、これって…」
「…残念だが、この機械に世界の壁を突破出来る程の力はない」
ラプラスさんは残念そうに首を振る
「それにこれは現段階ではまだ試作品だからな
一度使うと壊れて二度と使えなくなる上に、素材が素材なだけに向こう10年は同じものは作れないだろう」
「…今さらですが、そんな貴重なものを使わせてもらっても良いんですか?」
流石に心配になって訪ねる僕にラプラスさんは苦笑する
「問題ない
機械はまた作れば良いし、これは吾輩達の勝手な勘違いでお前達に迷惑をかけてしまった詫びだ」
それにな、彼女は博衣さんから受け取ったスイッチを僕に渡しながら、ニヤリといじわるそうに頬を吊り上げる
「個人的に、我らホロックスを体よく利用しようとしたあの女が気に食わん
アイツの邪魔が出来るというのなら喜んで力を貸すさ」
実は最初このシーンで出てくるのはホロックスではなく、ホロライブファンタジーの面々の予定でした
ただ、別に悪人設定があるわけでもない彼女達に白上神社を襲わせる正当な理由が思いつかなかったのと、彼女達を出すと異世界漂流者の苦難と絶望、現代社会に溶け込めない悲しみと故郷に帰りたいという望郷の思いの果てにようやくできた仲間達との絆、そしてようやく見つけた手がかりの為に無関係な人間を巻き込んでしまう葛藤、みたいな感じで盛大に話が横道に逸れそうだったので、今回は変更しました
好きなんですけどね、3期生