白上縁起恋灯絵巻【完結】   作:DX鶏がらスープ

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ちなみに、この作品の雪花ラミィさんは白上神社周りの事情についてはノータッチです
一般通過ハーフエルフです

理由は雪花さんが、白上さんたちが見えるほどの霊力を持っていないから

確かに雪花さんはハーフエルフですが、人間以外の種族だから無条件に神が見えると言う訳ではありません
メンバー全員が白上さんを見れるホロックスが例外なだけで、異種族=霊力が高いと言う訳ではないので、彼女は冥界とか冥獣とかについては何も知りませんし、何なら本編の事件に関しても気付いてさえいません

その点、立場としては夏色さんや星街さんとほぼ同じです



ラミィの日記2

 

▲月★日

 

狐の子供の熱が下がった!

 

そして更に嬉しいことに、ちゃんとご飯を食べてくれるようになった!!

 

いや~、本当に一時期はどうなる事かと思ったし、朝起きたらラミイの胸元で寝てた時にはビックリしたけど、これで一安心!

 

まだ完全には体調が戻っていないみたいだけど、それでも今のこの状況ならきっとすぐに良くなるはず

 

一緒にゆっくり治していこうね!

 

 

 

◎月□日

 

狐の子供は日を追う事にどんどん元気を取り戻していってるみたい

 

やっぱり、ちゃんとご飯を食べてくれてるのが一番大きいんだと思う

 

これならきっと、春までには体の包帯は全部取れるはず

 

…ところで、そろそろいい加減この子の名前を決めなきゃいけない頃かもしれない

 

成り行きとは言え、一度面倒を見てしまった以上、最後まで面倒を見る覚悟自体は最初から決めていたんだけど、状況が状況だったから名前の事をすっかり忘れていた

 

何か良い名前を考えておかなくちゃな…

 

 

 

◎月△日

 

よし決めた!

 

色々考えたけど、やっぱりシンプルな名前が一番良いよね

 

という事で、うちの子の名前はクロちゃん!

理由は黒いから!!

 

そう本人(本狐?)の前で言ったら、何だかものすごく微妙な顔をされた

具体的には「ないわ~」って感じで、今まで見たことがないくらいに白けた顔をされた

 

なんでよ!

かわいいでしょ、クロちゃん!!

ラミィのセンスに文句でもあるわけ!?

 

 

 

■月□日

 

時間はかかったけど、やっとクロちゃんの包帯が全部取れた!

 

それで、おめでとうクロちゃん!って全力で抱き締めたら、尻尾で顔をひっぱたかれて悠々と逃げられた

 

お、おのれ…ラミィのペットの分際で…

 

ふふん!

でもラミィ知ってるもんね

こう見えてクロちゃんがツンデレさんだって事を!!

 

普段はクールな顔してる癖に、たまに寝てるラミィの布団にこっそり潜り込んできたりするし、ラミィが仕事から帰ってくると、興味なさげな顔の割に尻尾は揺れてたりするの、ラミィ全部知ってるんだから!!

 

んもう!

クロちゃんってばかわいいな~!!

本当はラミィの事大好きなんでしょ?

 

ラミィもクロちゃんの事、大好きだよ♡

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

あれから…ワタシがラミィに拾われてからそれなりの月日が過ぎた

 

冥界の扉マガツトボソ関連の戦いで負った怪我はすっかり癒え、ほんの僅かずつではあるが、力も戻ってきている

 

と言うのも、ワタシは確かに白上フブキの分かたれた魂であり、もう一人の白上フブキではあるが、同時に彼女が冥界に置いていった魂の負の部分、つまり冥獣ケガレとしての側面も持っているからだ

 

この磐ノ戸の地は元々冥界との境界が不安定な土地であり、その為に冥界の扉マガツトボソ関係なしに冥界の瘴気が溜まりやすい土地だ

 

冥界の扉マガツトボソが封印されていても冥獣ケガレが発生するのはそういう理屈だが、そんな土地柄だからこそ、この土地では現世でありながらも、見つけ方を知ってさえいれば瘴気溜まりを発見する事ができる

そして一応冥獣ケガレとしての側面も持つワタシなら、そこに溜まっている瘴気を自らの力に変換する事ができる

 

そう言う訳で怪我が治った後、ワタシは白上フブキやあの少年達に見つからないように、細心の注意を払いながら瘴気溜まりを探し、そこに溜まっている瘴気を吸い上げて回っている

 

そのお陰で、僅かずつとはいえワタシの力は戻り始めているのだが、磐ノ戸の地の現世と冥界の境界が安定し始めているせいで、瘴気溜まりの数は次第に減り始めている

このペースで行くならワタシが完全に力を取り戻す前に、磐ノ戸の現世と冥界の境界は完全に安定し、新しい瘴気溜まりも生まれなくなるだろう

 

かと言って、今のワタシでは再び冥界の扉マガツトボソをこっそり開くことは恐らく不可能だろう

 

完全な状態の祭神二人に、異界創造レベルの結界術使い

それだけでも厄介極まりないのに、これらに加えて、数々の魑魅魍魎を討ち果たしたという伝説のえりーと巫女であるさくらみこに、未だ底が見えないホロックスの面々が加わると言うのだから目も当てられない

今の白上神社の防衛レベルは、それこそ要塞か、あるいは城レベルの鉄壁のものであり、それを考えると今のワタシの力ではそれを突破するには正直心許ないと言うのが現状だ

 

では、そんな状況で、なぜワタシが危険を冒してまで自身の力を取り戻そうとしているのか

無意味なそれを求めるのか

 

…一種の惰性であることは否定しない

これまでワタシはオリジナルである白上フブキと、どれだけ願っても助けてくれなかった現世の存在達への復讐の事ばかりを考えていた

そして、その為だけに必死で術を磨き、情報を集め、計画を練っていた

だから、ワタシにとって冥界の扉マガツトボソを開くという事は、ある種の人生の目的と言っても良かったのだ

 

だが、それを可能にする千載一遇のチャンスは既に失われてしまった

ワタシがその人生をかけて取り組んできた復讐は妨害され、恐らく二度と日の目を見る事はないだろう

だからこそ、正直今のワタシは迷っている

 

分からない…分からないのだ

これから先、自分がどうやって生きていけば良いのか

何を信じ、何を目的に歩いていけば良いのかが

 

それが、ワタシが特に意味もなく力を取り戻そうとしている理由

先に惰性だと言ったが、まさにその通りで、何もなくなった空っぽな自身の空虚を埋めるために、ワタシはなんとなくで無為な行為を続けている

 

(まったく…ワタシも堕ちたものだな)

 

とは言え、他にどうしろと言うのか

答えの出ないそれに対して、想いを馳せている時だった

 

「クロちゃ~ん!ご飯だよ~!!」

 

降りてきて~、と叫ぶ声の方に目をやれば、そこにはエプロン姿でお玉を持ったラミィの姿

それを確認したワタシは、身軽な動きで自身のいた場所から飛び下りると、そのままラミィの前まで赴く

 

「クロちゃん本当、屋根の上好きだよね~

高いところ好きなの?」

 

そう笑ってラミィが置いてくれたペットフードと水の入った皿にワタシは口をつける

だが、そこまでは良いとしても、ついでとばかりにワタシを撫でようと伸ばされた手についてはいただけない

 

尻尾で軽くペシッとその手を叩く

ケチ~!という抗議の声が上がるも、この位はいつものやり取りの範疇なのでワタシも気にしない

ちょっとくらい良いじゃん!とぶーたれるラミィを無視して、ワタシは澄ました顔で食事を続ける

 

…もっとも、この流れも、気が付けば随分と板についてきたものだとは自分でも思うが

 

(まったく…どうしてこうなったのやら)

 

内心で軽くため息をつくも、何が楽しいのかワタシの食事をニコニコしながら見つめるラミィの顔を見ていると、何だかどうでもよくなってくる

 

「どう?美味しい?」

 

そんな言葉と共に微笑むラミィに見守られながら、ワタシは彼女の出してくれたご飯を黙って食べる

だが、本来憎い現世の人間に施しを受けているという噴飯ものの状況であるにも関わらず、なぜか今のワタシには、この時間が悪いものだとはどうしても思えなくなってしまっていて…

 

ーーそう、あの日ラミィに拾われて以来、結局ワタシはそのままラミィと一緒に暮らしている

 

それは、最初は単純に怪我で満足に動けなかったからという理由だったのだが、怪我が治った後も居座り続けたのは、この場所が存外居心地が良かったからに他ならない

 

それに…

 

「ん?なぁにクロちゃん?」

 

食事が終わり、ワタシの食べたご飯の皿を台所で洗うラミィの足元に静かに近づく

すぐに気が付いて不思議そうな顔をするラミィを無視して、ワタシは自身の顔をラミイの足にすりつけた

 

「ほぇ!?く、クロちゃん!?」

 

驚くラミィを無視して、一通りそれを終えると、ワタシはそのままピトリとラミィの足に体をくっ付けたままその場に座り込む

そして口をぱくぱくさせながらそれを呆然と見つめるラミィの視線を平然と受け流しながら、ワタシはそのままラミィの足に体を寄せ続ける

 

…もちろん、こんな普通のペットが飼い主に甘える時にするような行動なんて普段は絶対にしないし、してたまるか

絶 対 に !!

 

とは言え普段世話になっているのは事実だし、今日のワタシは気分が良い

 

(………まぁ、たまにはこの位のサービスは、な)

 

そんな事をほんの少しでもワタシが思えるのは、このラミィという少女がワタシの事をとても大切にしてくれるからだ

 

…正直、自分でも絆されてるなとは思うし、それはそれとして、割と頻繁に酔っ払ってはワタシに絡んでくる悪癖に関しては本気でどうにかして欲しいと心から思う

 

「やだやだ!ラミィに構ってくれなきゃヤなのぉ~!!」等と、狐のワタシに言われても困るし、そう言って泣きながら、ワタシの体を目茶苦茶になで回すのに関しては…正直コイツ一回位はっ倒してやろうかと何度考えた事か

 

それに酒を飲むのは良いが、布団以外のところで寝るな、風邪ひくだろ

あと飲んだ後の食器とかはせめてちゃんと水に浸けろ、汚れが落ちにくくなるだろ

 

…と言うか、酒もそうだが、なんなんだこのクロって名前は…

いくらワタシの体が黒いからって安直過ぎるだろ!

なにが「という事で、今日から君の名前はクロちゃんね!」だよ!!

もっとこう…なんかあるだろ!

 

…こんな風に、ラミィに言いたい文句はそれこそ山ほどある

それに、別にワタシは現世の事が好きになった訳では決してない

だから今でも現世の人間の事は普通に嫌いだし、馴れ合う気なんて一切ない

 

それでも

 

(こいつの事は…まぁ嫌いじゃない)

 

ーーいつからだろう

彼女と一緒にいるのが、不快じゃなくなったのは

むしろ楽しいと思うようになってしまったのは

 

ーーどうしてだろう

彼女と一緒にいると安心してしまうのは

隣にいると心が安らぐのは

 

ーーそして…何故だろう

彼女との暮らしの中で、今まで欠けていた何かが、ゆっくりと満たされていくような気がするのは

彼女に抱き締められて寝る夜が、涙が出そうな程に暖かくて心地よいのは

 

だから

 

(…このまま、ただの狐として…)

 

最近ではそんな事すら考える

少し前の自分なら憤慨したであろう、考える事すらなかった選択肢

だけど、それでも良いかもしれないと思ってしまうのは、それだけラミィとの日々が暖かかったからだ

酒癖が悪くて、勢い任せに適当な名前をつけるようないい加減なところがある少女ではあっても、それでももっと彼女といたいと、同じ時間を生きたいと、そう望んでしまうからで

 

(…あぁ、もしかしたら、ワタシが欲しかったものはコレなのかもしれないな)

 

ラミィと一緒に歩む未来

 

それは、思えばワタシが半ば諦めかけていた、大切な人と一緒に過ごす時間そのもので…

ずっと、ずっと求めていたそれが今この瞬間自身の手の中にある事に気が付いた瞬間、何かが自分の中でカチリとはまったような気がして…

 

「ツ、ツンデレなクロちゃんにもようやくデレ期が!?

う、嬉しい!!ラミィもクロちゃんの事、だ~い好きだ…おっふ」

 

ーーツンデレは余計だ

 

慌ててワタシを抱き締めようとするラミィの顔を、今度はわりと本気で尻尾ではたく

この女…本当に懲りないなとは思いつつも、それでもそうやって愛情を向けてくれる事自体は満更でもなくて

 

(…どうか、こんな日々が…)

 

ずっと続きますように…

 

目を回してその場に倒れるラミィに呆れながらも、それでもワタシは親愛の情を込めて、自身の顔をラミィの体に擦り付けるのだった





余談ですが、作者的には狐形態の黒上さんのイメージは『SummerPockets』のイナリとポケモンのゾロアを足して2で割った感じです

あと短いですが、後日談その二は次でラストです
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