白上縁起恋灯絵巻【完結】   作:DX鶏がらスープ

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はい、と言う訳で後日談その三です!
今回は例の動画の3つ目のお題に至るまでのお話です

前の二つよりも少し長いですが、楽しんでいただければ幸いです!!


結婚前夜編 婚前挨拶

 

唐突だが、一口に結婚すると言っても、その為にやらなければならない事というのは意外とたくさんある

 

例えば互いの両親への挨拶と報告だったり、結納や結婚指輪探しに婚姻届の提出

加えてそれらに伴う各種行政手続き等々

もちろんそれらに加えて、肝心の結婚式等のメインイベントの準備も必要な事は言うまでもないし、他にも大小含めてやることはまだまだある

 

こんな風に結婚の為にしなければならない事というのは、私的な事も公的な事も含めて結構な数がある訳だが、しかし今回の僕らの結婚に関しては、普通の人の結婚に比べると比較的やることは少ない方だろう

 

まず、フブキさんは神様であり、当然戸籍なんてものはない

だから婚姻届の提出は不要だし、それに伴う各種行政手続きなんてものも必要がない

まぁ、公的な形で夫婦である事を証明できない事に関しては、少し思うところがあるけれど…とにかくこれらの手続きを僕らはパスできる

 

そして次に結納だが、生憎と僕の両親はどちらも既に亡くなっている

親戚に関してもわざわざ僕のために来てくれるような人達ではないし、そもそも来てもらったとしても、フブキさんの事が見えない時点でまともに儀式の進行ができないだろう

また、これに関してはフブキさん側にしても似たような状況の為、どちらにしろ結納は行えない

 

こんな風に、事情が事情なだけに、僕らの結婚に関してやるべき事は意外と少ない

 

だけど、それでも絶対に避けられない事というのはやはり存在するもので…

 

「…それで?うちに話って?」

 

白上神社の本殿

神社の奥、関係者しか入れない場所に敷かれた座布団に正座する大神さんは、端から見る分にはとても落ち着いている

だけど、何故自分がこの場に呼ばれたのかという理由に関しては薄々察しているのだろう

対面する僕らに向けられた金色の瞳には、普段よりも冷たく恐ろしい光が宿っているような気がした

 

…しかし、ここでそれに屈する訳にはいかない

 

「…折り入って、大神さんにお話したい事があります」

「うん、何かな?」

 

言ってみなよ

 

そんな言葉と共に目を細める大神さん

けれど、口調こそ穏やかなものの、今の彼女が放つプレッシャーは普段の彼女のそれとは比べ物にならない程に剣呑なもの

まるで重力が二倍になったかのような、それこそ物理的な圧力さえ伴いそうな程の圧倒的な威圧感に僕は思わず自身の手を握りしめる

 

しかし

 

「…では、単刀直入に言わせてもらいます」

 

それでも、僕はそこから目を反らしたりなんかしない

ともすれば押し潰されそうになる程の重圧を放つ大神さんの視線をしかし、真っ正面から受け止めた上で僕は頭を下げる

筋を通す

 

すなわち

 

 

 

「ーー大神さん、フブキさんを僕に下さい」

 

 

 

そう言って頭を下げる僕と、それを受けてしかし何も言わない大神さん

二人の間に沈黙が流れ、まるでピンと糸を張ったかのような緊張が周囲を包む

 

…一秒か二秒か、あるいは一時間か二時間か

無限のような一瞬

そして、顔を上げなよという大神さんの言葉に顔を上げると、目の前の彼女は少し困ったような顔で苦笑していて…

 

「…ふふ、ちょっと意地悪だったかな?ごめんね」

 

そう言って姿勢を正すと、今度は彼女の方が僕に頭を下げる

だから僕ももう一度彼女に頭を下げた

 

 

 

「ーーこちらこそ、フブキをよろしくお願いします」

 

「…はい、必ず幸せにします」

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

「し、死ぬかと思った...」

「あはは、大げさだなぁ海斗くんは」

 

少し経ち、一旦休憩しようということで、お茶を飲みながらそんな事を呟くと、目の前の大神さんはそう言って笑った

 

だけど

 

「…いやいや

あれだけ海斗くんにプレッシャーかけといてよく言えますね、ミオ?」

 

ずっと僕の隣に座っていたフブキさんが、そんな大神さんの事をじっとりとした目で見つめる

その顔は、いつも大神さんと仲良しなフブキさんにしては珍しく、少しばかり不満そうなものに見える

 

しかし、そんなフブキさんの視線を、大神さんは平然とした顔で受け止めた

 

「まぁ、話題が話題だしね

それにわざわざうちのところに話を持ってくるっていう事は、二人ともうちの事をフブキの後見人だと意識してのことでしょ?」

 

ーーそれならうちも、それなりの態度で望まなくちゃね?

 

そう言いながら澄ました顔でお茶を飲む大神さん

 

そんな彼女に、でもですね~、とまだちょっとむくれているフブキさんだが、大神さんの言い分もわかるのだろう

 

「………はむ」

 

すねたような顔のまま、お茶うけのお菓子を口一杯に頬張るフブキさん

そして彼女はそのまま手元にあった湯飲みを手に取ると、中身のお茶を一気飲みする

それを見て、僕は彼女の懐の深さに感謝した

 

きっと個人的に言いたい事はたくさんあったのだろう

それでも、それを外に出すと確実に空気が悪くなる

そしてそれは、彼女自身も含めて誰もが望まない事だ

 

だからこそ、胸の中に渦巻くそれらをお茶とお菓子と一緒に物理的に飲み下したフブキさんの心意気が僕にはとてもありがたく感じて…同時に彼女がそんなことをしなければならないくらい、僕の事を心配してくれていた事もちゃんと理解しているから

 

「ありがとう、フブキさん

でも僕の事なら大丈夫です

大神さんだって、悪気があったわけでもないんですから」

「…」

「それに僕はフブキさんが心配してくれただけで嬉しいですから

…ね?」

 

そう言って、空になったフブキさんの湯飲みにお茶を注ぐ僕

ついでに大神さんと自分のものにも注ぎ、さて飲もうと湯飲みに伸ばした手にはしかし、いつの間にかフブキさんの尻尾が巻き付いていて

 

「フブキさん?」

 

思わず隣を見るも、フブキさんはプイッとそっぽを向く

だけど、その頬がわずかに赤くなっている事だけは僕にも分かって…

 

「…海斗くんは、もう少し嫌な事は嫌だって言うべきです」

「…」

「いつも平気そうな顔して何でもホイホイ受け入れて…

見ている白上の気持ちにもなって下さい…」

 

相変わらず僕の方を見ずにそんな事を言うフブキさん

だけど、僕の手に絡み付いた彼女の尻尾は、それとは裏腹に僕の手を放すつもりはないみたいで

 

「…分かりました、気を付けますね」

「…どうだか

海斗くんはお人好しですからね」

 

ーーまぁ、そこが良いところではあるんですが

 

軽くため息をつきながらも、ようやくフブキさんは僕の方を向いてくれる

その表情にはまったく仕方がないなという呆れが浮かんでいるものの、それでもこちらを見つめるその瞳には、とても優しい光が宿っている

 

「…やっぱり、海斗くんは私が見てなきゃダメですね」

 

そう言って少し困ったように微笑むフブキさんの笑顔が、だけど僕にはどうしようもなくかわいくて、愛おしくて

一瞬見惚れていた事を誤魔化すように、僕は頭をかく

 

「あはは…手厳しい…」

「でも、そんな私の事が好きなんでしょ?」

「…はい、大好きです」

 

そう言ってフブキさんの方を見る

するとあちらも同じように僕の方を見ていたようで

 

互いの視線が絡み合う

何も言わなくても互いの意図が通じ合う

僕の手に絡み付いていたフブキさんの尻尾が優しくほどかれる代わりに、フブキさん本人の体が僕の方へと近づいてくる

そして、それを見た僕は彼女の体を受け止める為に両手を広げて…

 

 

 

 

 

「…あの~

うちの事、忘れないで欲しいんですけど~…」

 

 

 

 

 

ーーその言葉と共に、バッと互いに距離を取る僕とフブキさん

磁石の反発もかくやという勢いで互いの体を限界まで放す僕らの姿に、流石の大神さんも苦笑いだ

 

「まったく…

お熱いねぇ、二人とも」

「ミ、ミ、ミ、ミオ!!

こ、こ、こ、こりぇは!そ、そにょ!?」

「はいはい、ご馳走さま

まぁ、仲が良い事は良いことだよね、うん」

 

真っ赤になって、しどろもどろになりつつも弁解しようとするフブキさん

そんな必死の頑張りを、しかしにべもなくバッサリと切り捨てられた彼女はそのまま轟沈する

 

声にならない声を上げながらその場に蹲る白上さんを慌てて慰める僕だったけど、そんな僕らを眺める大神さんの表情はとても優しいものだった

 

「…実はね、さっきはああいう態度を取ったけど、最初からうちは二人の結婚に反対する気はまったく無かったんだ」

「え?そうだったんですか?」

 

思わず聞き返すと、そりゃずっと見てきたからね、と大神さんは笑う

 

「…今日まで君がフブキの事をずっと見てきたように、うちもまた君達の事をずっと見てきたんだよ、海斗くん

それこそ君達が初めて出会ってから別れ、再び出会い、互いに惹かれ合って最終的に結ばれるまでの全てをね?」

 

ーーそして、その中で君の行動には一度たりともブレがなかった

最初から最後までフブキの事を考えてくれていたし、大切にしてくれていた

そしてフブキもまた楽しそうだった

君と一緒にいる時、あの子はずっと笑顔だった

 

それなら...

 

「ーーあの子の姉として、うちに反対する理由はなにもないよ」

「大神さん…」

「だから…ねぇ海斗くん

フブキの事、改めて約束してくれないかな?

あの子の事を幸せにするって

最後までずっと一緒にいるって」

 

そう言ってこちらを見つめる大神さん

だけど、そんな事は言うまでもない

 

「任せて下さい、大神さん

…いや、これからはお義姉さんと呼んだ方が?」

「あ~…そうだねぇ…

じゃあミオさんで良いよ

どうせフブキだって下の名前な訳だし」

「分かりました、それでは改めてミオさんに約束します」

 

 

 

ーー必ず、フブキさんを幸せにしてみせます

僕の人生が終わるその時まで

 

 

 

そんな僕の言葉に大神さん…改めミオさんも嬉しそうに、満足そうに微笑む

 

「…信じるよ、海斗くん

君ならきっと、その約束を守ってくれるって」

 

そこでようやく復活したらしいフブキさんが僕らの会話に割り込んできた

 

「し、白上だって海斗くんの事、幸せにしてみせますからね!」

「フブキさん…」

「白上達はこれからふ、夫婦になるんですから!

一緒に幸せにならなきゃ嘘ですよ!!」

 

ーーだから、絶対海斗くんの事は白上が幸せにしてみせます!

 

「その代わり、白上の事は海斗くんが幸せにして下さいね!

これで二人とも幸せになれて、ハッピーエンドです!!」

 

まだ少し赤い顔のままそう言いきるフブキさん

だけどその言葉には、僕への深い愛情と思いやりが込められていて

じんわりと溢れてくる涙を必死に堪える僕に、ミオさんが微笑みかけてくる

 

「…この分なら何の心配もいらないかもね?」

「…えぇ、本当に僕には勿体無い程の人ですよ、フブキさんは」

 

そうして僕らは三人で笑い合う

 

でもこれからの僕らは友達じゃない

家族になるんだ

例えいつか終わりが来てしまうとしても、それでも今この瞬間ここにある絆は確かに僕らを繋いでいて

 

「ーーフブキ、海斗くん

改めて、結婚おめでとう」

 

そう寿いでくれるミオさんの言葉に、僕らは改めて二人で彼女に頭を下げるのだった

 

 





と言う訳で、大神ミオさんへの婚前挨拶でした!

まぁ、白上さんをお嫁さんにもらうなら、この方への挨拶は必須ですよね?
幸い主人公はちゃんと大神さんの信頼と好感度を稼いでいたので、何とか許してもらえました

さて、順当に行くなら、家族への挨拶が終わったら次は友達ですよね?
次もお楽しみに!!
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