一応、作者はちゃんと明言したんですけどね?
「いましたか、ミオさん!?」
「ダメ!少なくとも境内の中にはいないみたい!!」
ミオさんの報告を聞いた僕は、そのまま集まってくれた他の友人達の話も聞いていくが、結果は芳しくない
誰もフブキさんの事を見ていないし、今日は会ってないという
それを聞いて僕は頭を抱える
せっかく昨夜から降り続いていた雨が止んだというのに、まさか雨が上がるのと一緒にフブキさんまで消えてしまうとは…流石に想定外も良いところだ
(何かに巻き込まれてなければ良いけど…)
そう思うも、今の僕らには彼女の無事を祈る事しかできない
『どこでも磐ノ戸君』が持ち出されていない以上、少なくとも磐ノ戸の外へ出ていないのは確定だが、流石に何の知らせもなしに姿を消されれば心配にもなる
今ならまだ単なる行き違いですむが、今日中に見つからないのなら何らかの事件性か事故を疑わなければならないし、何より明日は待ちに待った結婚式だ
そんな状況下でいたずらに姿を眩ますような人ではないことを知っているだけに、一体何があったのだろうと心配になってくる
だが無情にもトラブルというものは重なるもので...
「!こ、これは!?」
突如、弾かれたように振り返るミオさん
信じられないという驚愕に満ちた表情でどこかを見つめる彼女に一拍遅れる形で、その場にいた博衣さんのポケットからも警告音が鳴る
慌てて端末を取り出し起動する博衣さんだが、展開された磐ノ戸の地図と思われるものを見るなり絶句した
「こ、こより?」
「ら、ラプちゃん
これヤバイかも…」
青い顔で周囲にも見えるように拡大された地図には無数の光点が映っていて、それは今なお少しずつではあるが増え続けている
それが示す事は…ミオさんの反応からしても一つしかない
「冥獣の大量発生!?
そ、そんな!最近は発生すらほとんどなかった上に、冥界の扉だって開いてないのに!?」
「…恐らくこの磐ノ戸の地の性質を利用したんだと思う」
周囲が騒然とする中、ここにいる中で一番冥獣に詳しいミオさんがそう口にする
「現世と冥界の境界が緩い分、この地には冥界の瘴気が流れ出てくる事があるのは知ってるよね?
恐らくこれはそうやって現世に漏れ出た瘴気が溜まった場所である瘴気溜まり…つまり冥界との境界が緩い場所を簡易的な冥界の扉として運用した結果だと思う」
勿論簡易的なものだから、本物よりも規模は大きくないし、出てくる冥獣の質もそこまで高くはないはず
何より放っておけば無限に冥獣を吐き出し続ける本物と違って、即席のものであるはずのそれには耐久限界があるはずであり、ある程度の数を吐き出し終えれば、自ずと消滅するはずだと言いながらも、ミオさんの表情は固い
「…とは言えこの数は…
誰がやったのか知らないけど、本当に手当たり次第…それこそほんの僅かにでも冥界との境界が緩んでいる場所であれば門を設置してるんだろうね
そんな劣悪な状況下なら、せっかくの門も10匹弱い奴を出せれば御の字だと思うけど…」
そう冷静に分析するミオさん
だけど、そんな事を言っている間にも博衣さんの地図に映る光点は次第にその数を増しつつある
幸いにもそれらの殆どは人が住んでいない地域に固まっているが、いつこれらが動き出し、人里へと向かうか分からない
そしてこの数だ
一体一体は脅威にならないような雑魚だとしても、これらが一気に押し寄せればどんな被害が出るか分からない
だからこそ、早急に対策を打つ必要があって…
「…開いているのが簡易的な門で、放っておけば消滅するモノであるのなら、要は冥獣さえ足止めできれば問題ないんだな?」
ーーそれなら霊能力を持たない我輩達でも対処は可能だ
そう言って、まずラプラスさんが鋭い目でホロックスのメンバー達を見渡す
「…と言う訳だ、ヤロウ共!
我らホロックスは、これからこの磐ノ戸の地の防衛戦を行う!!
ーーいろは!沙花叉!お前達はそれぞれ西の丘と東の森へ向かえ!!
こよりは各居住地を回って発明品で防備を堅めろ!
幹部はその補助、及び余裕があるようなら遊撃!!
我輩は北を抑える!!」
「「「「Yes, my dark!!」」」」
流石と言うべきか、あっという間に自分達の役目を決めて各々の持ち場へと向かっていくホロックス
そんな彼女達を見て次に動いたのは夏色さんだ
「…それならまつりは住民の避難経路の確保と、いざと言う時の為の避難誘導の準備をしておくね」
戦う力がないまつりにはこういう事しか出来ないけど、必要な事だからね
そう笑って去っていく夏色さんに、慌ててみこさんが同行する
彼女の護衛兼、安全な場所に送り届けた後は南へ向かうのだという
「う~ん…それならうちは遊撃かな?
北と南はあの二人なら一人でも大丈夫だろうし、東も地形を利用できるからかなり時間は稼げるはず…」
ーーとすると、まずうちが向かうべきは西のいろはちゃんのところかな?
あの子なら多分一人でも何とかなるだろうけど、クロヱちゃんのところと違ってすごくシンプルな多対一を何度も繰り返さなきゃいけないだろうからね
うちがいるだけでもかなり楽になるはずだから
次々と決まっていく分担
そして同時にそれぞれが動き出す仲間達
だからこそ、僕もまたそれに倣おうとして
「それなら僕はーー」
「ダメ、海斗くんはここでお留守番だよ」
急に梯子を外される
反論するも、白上神社の防衛を疎かにするわけにはいかないでしょ、という正論を突きつけられては黙り込むしかない
「それに…もしフブキが帰ってきた時、真っ先に迎えてあげるのは海斗くんの役目でしょ?」
「それは…」
確かにその通りだ
それもこんな大変な状況で、もしもフブキさんが戻ってきて誰もいなかったら、事態は更に悪化するかもしれない
それでも、こんな状況で自分が何も出来ないというのが、僕にはどうしても耐えがたくて…
「大丈夫だよ、海斗くん
みんな強いの知ってるでしょ?
今回は君が出るまでもないって事だよ」
ーーそれとも、うちらの事が信じられない?
その言葉にハッとして顔を上げる
だがこちらの事をじっと見つめるミオさんの瞳は、とても穏やなもので...
「…海斗くんが頑張りやさんなのはうちも知ってる
そしていつもみんなを助けてくれる事にも感謝してる
だけどね、海斗くん
別にいつでも君が頑張る必要なんてないんだよ?」
ーーそんなに頑張り過ぎなくても、誰も君の事を見限ったりなんてしないから
「ミオさん…」
「だからここはうちらに任せて、海斗くんはドーンと構えてなよ
その方がきっとフブキだって安心して戻ってこれるからさ」
そう笑ってミオさんは僕に背を向ける
そんな彼女の背中に僕は手を伸ばしかけて…
「…っ!」
寸でのところでそれを止める
何故なら、それをしてしまえばミオさんの信頼を裏切る事になってしまうから
いや、ミオさんだけではない
きっと行方の分からないフブキさんを心配する僕の事を気遣って、わざと僕を冥獣退治に参加させなかった皆の心遣いを裏切ってしまう
(みんな…ありがとう…)
だから、今の僕の仕事は帰ってくるかもしれないフブキさんを待つことだけだ
それに、もし何かあった時に白上神社を守れるのも今は僕しかいない
だからこそ、ミオさんの言う通りに、僕は静かにここで皆の帰りを待つことにして…
「…ん?」
その時だった
石段を踏む音が聞こえる
みんなが去った境内、だれもいないそこへと繋がる階段を誰かが昇って来ているのに僕は気が付く
(まさか…フブキさん?)
一瞬だけそう思うも、すぐにそうではないと気が付く
何故なら階段を昇りきり、鳥居の前で息を切らしているその人物の髪の毛は白髪ではなかったから
透き通るようなライトブルーのそれは、間違いなくフブキさんのものではなくて…しかし、僕はこの人が誰だか知っている
初めて会ったのは、それこそ最初の黒上フブキの騒動の少し後
その後も何回か顔を会わせる機会はあったけど、お互いにそれ以降特に関わる機会もなかった人物
名前は…そう、確か…
「雪花さん…ですよね?
そんなに急いでどうしたんですか?」
珍しい訪問者に驚く僕だが、しかし当の雪花さんの方はと言えば、それどころでは無かったようで...
「…を…知らない?」
「え?」
ぜえぜえと荒い息を繰り返しながらも、何かを呟く雪花さん
だけど、階段をダッシュで昇って来たのか肩で息をする彼女のそれは、僕には一発では聞き取れなくて
「すみません、もう一度…ーー」
その瞬間に肩を掴まれる
だけど、そうして僕を見る雪花さんの表情は、今にも泣き出しそうな程に歪んでいて
「…うちの…クロちゃんを知らない?
ここに…来てない!?」
ーー「意味もなく」登場人物が不幸になる「だけ」のものは書かない
そう明言したんですけどね?
と言う訳で、ここで後日談その二と合流します
と言うか、この流れを作りたかったがためのその二です
それでは次回は、あえてボカした後日談その二最終話の雪花さん視点です
お楽しみに!