以前登場人物達の武器や戦い方は『ヤマト神想怪異譚』準拠と言いましたが、さくらみこさんに関してだけは撤回させてください
流石に形だけとはいえ白上神社の関係者という形を本作のさくらみこさんが取っている以上、『ヤマト神想怪異譚』ベースの能力設定だと色々と不都合がありそうなので
静かな夜を引き裂くような獣の絶叫
それを聞いた瞬間僕と白上さんの反応は早かった
「海斗くん!」
「はい!!」
そんなやり取りだけで走り出す僕と白上さん
そのまま用水路を駆け抜け、声が聞こえた場所へと急行した僕らは、そこに冥獣がいることを確認すると共に、即座に戦闘態勢に入った
「僕が動きを封じます!白上さんはその隙に!!」
そう言いながら僕は結界で冥獣を閉じ込める
それと同時に、周囲に更にいくつかの小さな四角い結界を周囲に展開し、後続の白上さんの為に空中に足場を作る
そして突然結界に閉じ込められた事に驚き戸惑う冥獣を尻目に、僕の作った足場を巧みに使って変幻自在の動きで冥獣の下まで近づいた白上さんは、その手に持った刀を一閃
刃が結界に触れる瞬間に術式を組み換え、白上さんの刀だけを透過させる事で、冥獣を結界に閉じ込めたまま白上さんの斬撃を直撃させる
そしてそれによって急所を絶たれた冥獣は、何が起こったのかも分からないままにその場に倒れ付した
「ナイスアシストです!海斗くん!!」
そう言ってサムズアップする白上さん
そんな彼女にありがとうございます、とお礼を言いながら念のため式神を飛ばして周囲を警戒するが、幸い近くにいるのはこの個体だけのようだ
だがどうしてか胸騒ぎがする
何か良くない事が起きているのではないかという予感が止まらない
そしてそれは近くに走ってきた白上さんも同じく感じているようで、あたりに重苦しい空気がただよう
いや、むしろ僕よりもずっと長い間冥獣と戦い、その出現を感知できる白上さんには僕よりもずっと詳しく今の状況が見えているようで
「な、なにこれ…」
「どうしたんですか、白上さん?」
「冥獣の気配が増えてる…
新しい気配が次々と…
それにこの方角は…!?」
その言葉と共にバッと白上さんが目を向けた先にあるのは小さな小山だ
しかし、僕らはそこに小さな神社があるのを知っている
そしてその神社…白上神社は、白上さんにとって家のようなものであると同時に、さっき倒した冥獣の元々の発生源が封印されている場所で…
その瞬間僕のスマホから鳴り響く着信音
突然のそれに驚きつつも、瞬時にそれに出る
相手はみこさんだ
しかし
「…はい!はい!
白上さんは僕と一緒です!
はい!すぐに向かいま…っーー!」
僕が返事を言い切る前に何かが壊れる音ともに電話が切れる
…恐らくスマホが破壊されたのだろう
だとすると二人はかなり危険な状態かもしれない
自分の顔から血の気が引いていくのを感じる
「白上さん!白上神社に帰りますよ!!」
「ま、待ってよ海斗くん!一体何が!?」
「薄々勘づいてるんじゃないですか!?」
「っ!ま、まさか!?」
顔を青くしつつもちゃんと付いてきてくれる白上さんに、しかし僕は事実を告げる
「ーー破られたんですよ!冥界の扉の封印が!!」
・・・・・・
一刀両断
まさにその言葉通りに目の前の冥獣を切り倒した白上さんはしかし、倒れたそれに目もくれず、その勢いのままにようやく見えてきた鳥居を勢いよく潜り抜けた
「すいません!遅くなりました!!」
そう言ってまた新たな冥獣を切り捨てながら境内へと突入する白上さんと、そんな彼女の後に続いて境内へと足を踏み入れた僕
しかし、そんな僕らの目の前では、既に血で血を洗う凄まじい攻防が繰り広げられていた
「遅い!何してたんだよおめぇら!!」
そう言いながら大幣を振るって冥獣を3体まとめて吹き飛ばし、お札で追撃を行うみこさん
そして、その後ろで複数の火球を旋回させて冥獣を焼き付くしながら結界を張っている大神さん
二人ともボロボロで、特にみこさんに関しては声の元気さとは裏腹にひどい状態だ
と言うのも、状況から察するに、恐らく彼女は冥獣を境内の外に出さないように結界を張り続ける大神さんを守っていたからだろう
勿論、結界と同時並行で大神さんも出来る限りのフォローはしていたようだが、それでも一人でかなりの数の冥獣を食い止め続けていたみこさんは既にボロボロだし、大神さんにしても全くの無傷という訳にはいかない
とは言え、そんな彼女達の必死の奮闘のお陰で、僕らは何とか間に合った
「大神さん!代わります!!」
「助かる!これでうちも前線に出れる!!」
僕が大神さんから境内の結界の維持を引き継ぐのと同じタイミングで、白上さんもみこさんの下へとかけよる
「みこさん!援護します、合わせて!!」
「OK!行くよ、フブさん!!」
「「せーの!!」」
そうして放たれたのは、境内の石畳を砕く程の凄まじい雷霆と、全てを凍らせる絶対零度の凍てつく波動
抜群のコンビネーションで放たれたそれは、周囲に響き渡る程の轟音と共に、二人の前方の冥獣の群れをまとめて消滅させる
が、しかし
「くっ!キリがない!!」
再び冥獣が補充される
倒しても倒しても、後から後から冥獣が沸いてくる
幸い神社がある山自体を覆う大結界と、山からの唯一の出口である白上神社の境内に張られた結界のおかげで冥獣は外に出ていない
救援に駆けつける前にそのあたりは前もって確認しているし、唯一の例外であった個体は僕と白上さんが用水路を出た直後に既に倒している
今の状況ではむしろ、他の場所での偶発的な発生の方が怖いが、不幸中の幸いか冥界の扉が開いている状態ではそこから出てくる以外の冥獣の発生は基本的に無いらしいので、これに関しては無視して良いだろう
だが、とにかく数が多い
倒しても倒しても次から次へと沸いてくる上に、80年ぶりの解放ということもあってか、その数もまた多い
幸い今のところはそこまで強い個体は出てきていないが、恐らくそれも時間の問題だし、何よりこのままでは確実に押し切られる
じりじりと焦りだけが募る中、一時は僕と白上さんの援護もあって優勢だった戦況は、いつの間にか徐々に劣勢へと傾きつつあって…
「ぐっ!?」
最初に膝を着いたのはみこさんだった
だが思えば僕と白上さんが来るまでほとんど一人で戦線を支えていたのだ
疲労や怪我の度合いは四人の中では一番深く、故に限界が来るのもまた一番早かった
そしてたった四人の戦力の一角が崩れれば、その分の皺寄せが他にいくのは至極当然の事で...
「みこさん!…あぐっ!?」
「フブキ!!」
「白上さん!!」
思わず視線を反らしてしまった白上さんに、一瞬の隙を突いた冥獣の痛烈な一撃がクリーンヒットする
すぐに冥獣を切り払うも、急激に白上さんの動きが鈍り、そこに雪崩れ込むように冥獣の群れが殺到する
しかし誰も救援に迎えない
みこさんは自身を守る事で手一杯だし、大神さんも大量の冥獣に取り囲まれて手が離せない
無論僕とて境内の結界を維持するので精一杯で他の場所まで手が回らない
だから僕らは白上さんが次第に追い詰められていくのを、ただ見ている事しか出来なくて...
(「本当はただ、寂しかっただけなんです…」)
不意に頭を過ったのはついさっきの会話
だがしかし
(「救われた気がしたんです
少しだけ、自分の事を認めてあげられた気がしたんです」)
そう言って嬉しそうに笑う白上さんの笑顔
それを思い出した瞬間に僕は白上さんの下へと走り出した
「海斗くん!何を!?」
視界の端で大神さんが叫ぶも無視する
力の限り全力で駆け抜ける
だってあまりにも理不尽だと思ったから
一人になるのが怖くて頑張り続けた小さな狐の神様
両親が死んで一人ぼっちになってしまった僕と同じように…いや僕以上に大切なものを失い続けながらも、それでも前を向く事を諦める事無く頑張り続けた頑張り屋の神様
そして…ひとりぼっちだった僕とずっと一緒にいてくれた優しい神様
長らく忘れていた暖かい時間を思い出させてくれた大切な神様…大切な友達
そんなかけがえのない大切な人の最期が
長い遠回りの果てに、ようやく自分を許す事ができたと笑っていた、不器用だけど優しい友達の最期が
こんな得体の知れない化物に殺される事だなんて、そんなのあんまりじゃないか!
(ーーそれに何が救われた気がした、だ!)
本当に救われていたのは僕の方なのに!
君が救われた以上に僕は君に救われてるのに!!
(――だから、君を守りたい!)
目の前に見えるのは、度重なる負傷の前についに倒れ伏してしまった白上さん
そしてそんな彼女に向けて振り上げられる致命の一撃
だが、それがどうした?
間に合わないのなら間に合わせれば良い
結界を張るのが間に合わないのなら、僕自身の体を盾にすれば良いんだ!
(――君の力になりたい!)
僕は白上さんと冥獣の間に体ごと割り込む
そして祈る
届けと
間に合えと
人生でこれ以上無い程に真剣に祈る
…それにそもそもだ
(――君だけに限った話じゃない)
僕だって…
(ーー君の事が大切だって、そう思ってるんだ!!)
・・・・・・
ようやく周囲の冥獣を一掃し、フブキの方を向いた時には既に海斗くんがフブキの前にその身を投げ出していて
そこに振り下ろされる冥獣の腕
そんなものを真っ正面から受けて二人が無事でいられるはずが無い
それでも今のうちには、ただその光景をながめる事しか出来なくて...
「フブキっ!海斗くんっ!!」
思わず叫ぶも結末は変わらない
ドンッという音ともにあたりは土煙に包まれ見えなくなる
だがあれではきっと…
「そんな…
フブキ…海斗くん…」
思わず膝を折る
だけど
「…ミオちゃん、あれ…」
「?」
近くにいたみこちの声に顔を上げる
するとそこには呆然とした様子のフブキと、そして…
「あれは…」
その光を見た瞬間に脳裏を過るのは80年前の戦い
生まれたばかりのうちは参加してないけど、それでもあの当時を知っている者として目の前の光景には心当たりがあって…
「まさか…白上神社の神主一族の力?」
・・・・・・
「これは…」
確かに僕は窮地に陥った白上さんの目の前に飛び込んだはずだ
そしてそこで死んだと思ったのだけど、まだ生きてる
それに体の奥から沸いてくるこの力は一体…?
戸惑う僕に、しかし大神さんが叫ぶ
「海斗くん!
フブキを連れて冥界の扉へ行って!」
「え?」
思わぬ指示に困惑する僕に更に大神さんは続ける
「その力と白上神社の祭神の神通力があれば、冥界の扉の再封印が出来る!!」
「!」
「だから早く!
ここはうちらが食い止めるから!!」
その言葉に僕は頷き、後ろを振り返る
するとそこには、もう一度自分の力で立ち上がった白上さんがこちらを真っ直ぐに見ていて
「まったく…危ない事をしますね、海斗くん」
「耳が痛いですね…それでも白上さんを助けられた」
「…どうしてそこまでしてくれるんですか?」
「そんなの決まってるじゃないですか」
そう言って僕は右手を差し出す
「友達だからです、違いますか?」
「…いいえ、その通りです!」
そう言って握り返してきた白上さんの小さな手は、それでもとても柔らかくて暖かったから
「来ます!」
その白上さんの言葉に、僕は瞬時に結界を張って冥獣達からの攻撃を退ける
何と言う事はない
相手の攻撃を防ぐだけの結界術の単純で基本的な運用
彼らの鋭い爪や牙が、僕の結界に阻まれる
だが、今の僕の結界の効力はそれだけに留まらないらしい
「これは…」
ポウッと、まるで蛍火のような光の粒子が舞う
結界に触れた冥獣達の体は徐々に光の粒となってほどけていき、遂には完全に消滅する
明らかに通常では起こりえない反応
思わず息を呑む僕に、大神さんが叫んだ
「その力の本質は生と死の境界線を定める力!
冥界の淀みや穢れでありながら生者の世界へと迷い出た冥獣を、改めて死者として再定義することで現世から弾き出し、冥界へと送り返す力だよ!!」
「なるほど...それは良いことを聞きました!」
自分の力の本質を理解した僕は、自身の前方の空間座標に結界を構築する
するとそれだけで、そこにいた冥獣達は軒並み光の粒子になって消滅し、僕はそれを繰り返す
そうして強引に先へと続く道を作り出した僕は、改めて白上さんに向き直った
「さぁ、行きましょう白上さん!」
「はい!」
冥界の扉へ繋がる山道へと駆け出す僕と白上さん
当然逃がしてなるものかと残った冥獣達が僕達に襲いかかるも、完全に冥獣特効の僕の能力を前にした彼らはなす術もない
次々に消滅していく冥獣達の間をすり抜けていく僕らを、それでも尚追おうとする冥獣達だったが、そんな彼らの前に新たな人物が立ち塞がる
「…悪いね
今うちの大切な友達たちが頑張ってるんだ
ここは通さないよ」
そう言って燃え盛る業火で周囲の冥獣達をまとめて焼却する大神さん
そして、それに更に追い討ちをかけるように、極大の雷撃が残った冥獣達を吹き飛ばした
「…みこち、別にキツいなら休んでても良いんだよ?」
「何言ってるのさ、ミオちゃん
みこはえりーと巫女だよ?
友達が頑張ってるのに一人だけ寝てられるかっての」
そう言って不適に微笑みながら再度立ち上がるみこさん
そしてそんな二人に守られながら、僕らは走る
「ミオ!みこさん!!
二人とも、お願いします!」
「御武運を!!」
「はいはい、さっさっと行っといで」
「後はみこ達に任せるにぇ!」
そうして僕らは後の事を二人に任せ、山道の奥へと足を踏み入れる
長かった今夜の騒動の終わりを予感しながら
「ーーと言うわけで、ベタベタだけど」
「ここから先に行きたかったら、みこ達を倒してからにしやがれっての!」
・・・・・・
ーー死にたいと、そう思っていた
(「…まぁ、見て
あの子よあの子」)
(「あぁ、あれが唯一生き残ったっていう男の子?
可哀想ねぇ、あの年で両親をどちらも亡くすなんて…」)
(「でもご両親の葬式で一度も泣いてないのよ?
白状よねぇ」)
(「まぁ、本当に?
両親が死んでも悲しくないのかしら?親不孝な子だこと」)
ーー突然の両親の死を受け止め切れなくて…
この悲しみと苦しみを、誰にも打ち明けることが出来なくて…
だから死にたいと、二人のところに僕も行きたいと思って…
(「また自殺未遂だって?」)
(「おいおい勘弁してくれよ、これで今月4回目じゃないか?」)
(「まったく勘弁して欲しいよな?騒ぎになる度に事情を聞かれるこっちの身にもなって欲しいものだよ」)
(「でもあれの父親の実家は由緒正しいお家柄で、その一族の末端のあれを孤児院に入れたり放逐するのは外聞が悪いとかいう話なんだろ?」)
(「あぁ
だから一族の者が持ち回りで保護者役してんのさ
…ちっ
そんなに死にたいんなら、最初の事故で親と一緒にくたばっときゃ良かったのになぁ?
まったくとんだ厄介者だよ」)
(「違いない」)
ーーだけど死ねない
いざ死のうとすると怖くなって死ねなかったし、上手くいきそうだと思った時に限って邪魔が入った
まるで、お前に死の安息は許されないとでも言うように
生きて苦しめとでも言うように
僕は二人の後を追うことすら許されなくて…
(「君には二週間後からこの場所に住んでもらう」)
(「…」)
(「住居や学校などに関しては心配しなくて良い
こちらが手配する
重要なのは君が普通の生活を送り、普通に生活にする事
それだけだ」)
(「…」)
(「君には悪いが君の父上の実家は少し格式高い家でね
もっとも、君の父上はあまり実家の事をよく思っていなかったそうだが…その血を継ぐ者を孤児院にいれたり放逐するというのは少々外聞が悪い
と言うわけでせめて高校を卒業するくらいまではちゃんと面倒を見たという体裁が欲しいのだよ」)
(「…」)
(「君にとっても悪い話ではないはずだ
さっきも言った通り我々は君を路頭に迷わせるつもりはないし、むしろ世間一般の人間と同じ位の生活は保証しよう
それに我々が欲しいのは体裁だけ
高校を卒業した後は君の自由にして良い
それこそ死のうがどうしようが君の勝手だ」)
(「…」)
(「それから次に行くところでは君には一人暮しをしてもらう
と言うのもこれまでの君の経歴を見るに、君を預かった家庭は軒並み君の事を上から押し付けられた厄介なお荷物としか思っていなかったのだろう?
別に個人がどう思うかは問わないが、それで君をぞんざいに扱われて自殺でもされたら困る」)
(「…」)
(「と言うわけで君は次の場所からは一人暮しだ
無論最低限の監視と報告の義務は存在するが、それでも君がよっぽどの犯罪行為などに走らない限りはこちら側から干渉するつもりはない
」)
(「…」)
(「それとこれは私の個人的な意見だが…君はまだ若い
その年で人生を悲観するのは早すぎる
幸い次の場所はかなりの田舎のようだからな、都会と違ってゆっくり流れる時間の中で、これからどうするかを考えても良いのではないかな?」)
(「…」)
ーーだからこれは罰なんだと思ってた
父さんと母さんを殺して生き残ってしまった罰
苦しんで苦しんで死ぬこと
一生幸せになれないで死ぬこと
それが僕に与えられた十字架なんだと、そう思っていた
けれどーー
「…それじゃあ、始めましょうか」
「えぇ、始めましょう」
走って走って辿り着いたその先
立ちふさがる無数の冥獣達を潜り抜けた先にそびえたつ朱塗りの赤い門
常人ならそこにいるだけで倒れてしまうだろう、邪悪で禍々しい瘴気を放つ巨大な門の前に僕達はいた
既に周囲の冥獣達は一掃した
後は白上さんと力を合わせて門を封印するだけだ
白上さんと二人で頷き、封印の術式を組み上げる
彼女の持つ神通力をベースに術式を構築し、それを僕の力で補正し、より強固な封印として昇華する
周囲に地響きが鳴り響く
封印が進むにつれて、それに呼応するかのように朱塗りの門の扉もまたゆっくりと閉じていく
冥界から流れ出す邪悪な瘴気が薄れ、あたりに漂う重く禍々しい気配も次第に消えていく
その最中に僕は白上さんに声をかける
「…白上さん」
「はい、何でしょう?」
「ありがとう、僕と出会ってくれて」
その言葉に、白上さんは少し呆れたような顔をする
「何ですか急に?水臭いですね
それはこちらのセリフですよ」
「そっか」
「そうですよ」
「…」
「…」
二人とも何も言わない
ただ静かに封印が進み、それによって扉が閉じていくのを見つめている
だけど
「…ねぇ、白上さん」
「はい、何ですか?」
それでも、どうしても僕は白上さんに言いたいことがあって…
「ーーこれからも、よろしくお願いします」
「ーーえぇ、こちらこそ」
二人で顔を合わせて笑い合う
そしてその瞬間に冥界の扉は完全に閉じ、再封印が成される
それと共に一夜の狂騒の終わりを告げるかのように、山間から一筋の朝日がさし込んでくる
まるで今日はきっと良い日だとでも言うように、立ちすくむ僕らも、冥獣達との戦いで傷付いた大地も、暖かく照らし出す
それが今回の騒動の終わりだった
次回、第1章完結です