001 夢
男なら誰しもハーレムを夢を見ると思う。
昔から、サバンナの動物たちの映像を見るのが好きだった。
過酷な環境の中で、無数の群れを侍らせる雄ライオンの姿に憧れたこともある。
もし転生するなら強い雄ライオンになりたい。
まぁ、名前は虎だけどさ…
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歌声が聞こえる……。
子守歌のように優しく、さざ波のように懐かしい、そんな旋律が徐々に遠ざかり、ピタリと止んだ。
「……ん」
埃っぽい臭いを感じる鼻を擦りつつ目を開けると、
「知らない天井だ……」
もはや定番の台詞がとっさに出たが、再度見ても岩の天井。ゆっくりと横を見ると岩の壁があった。
「……ははは。ゲームのし過ぎで幻覚を見ているのか?」
重症だな、と仰向けのまま苦笑する。どうすれば夢から覚めるのか考えつつ、寝返りを打つ。
背中で感じていた固い感触から分かっていたが、床も岩でできている。
「もしかして、アレか?」
嗅覚と触覚が夢を否定しているので、一つ思い浮かんだことがあった。
―――自殺を決意する前に!
いや、あれは変な悪戯サイトで…
警告!あなたはこの世界を捨て異世界で生きることを選択しました
2度とこの世界に帰ってくることはできません 続けますか?
→はい いいえ
選んだよ。
最終警告!
本当に2度と帰ってくることはできません
それでも続けますか?
→はい いいえ
はい、を選んだ記憶が鮮明に思い出されたことで背筋は冷めていくが、同時に胸が熱くなっていく。
『異世界迷宮でハーレムを』という小説がある。
主人公が異世界で奴隷のハーレムを築きつつダンジョンを攻略する冒険ストーリー。
俺は、その小説が好き過ぎてファンが作ったであろう悪戯サイトに釣られてしまった……。
「鑑定」
自分の手のひらを鑑定すればステータスが表示される筈……されない?
「嘘だろ!? 転生モノの必須スキルの鑑定にボーナスポイント振ってないとか何の縛りプレイだよ! キャラクター再設定!」
BP 98
「しかも妥協したのかよ、俺の馬鹿ぁ!!」
あの作品の初期BP=ボーナスポイントの最大値は確か99。
原作を含めて多くの2次創作の主人公達も当たり前のように最大の99まで我慢強く粘っていた。
「いや、違うなこれ」
BP 98/99
キャラクター再設定 1
そうだよ、絶対必須のキャラクター再設定を取るとこうなるのは当然だよな!
このキャラクター再設定のお陰でBPを自由に配分できるのだ。複数ジョブ解放やボーナス呪文を使い分けるのがあの小説の魅力だった。
もしかしたらこのキャラクター再設定のスキル、
うっかりチェックを外して再設定を閉じた瞬間、……想像したくない。
指さし確認、よし! いやこれはダメな猫だ。
さっそく、鑑定スキルと詠唱短縮にチェックを入れてみる。
BP 96/99
詠唱短縮 1
鑑定 1
キャラクター再設定1
「鑑定」
再度、手のひらを鑑定すると今度こそステータスが表示される。
シロウ トラシマ
♂ 16歳
村人LⅤ1
「?」
軽く混乱したので頭を整理しなければならない。
虎島 志朗、これは俺の名前で間違いない。問題は次の項目で人間族は確か男と表示される。
♂は他種族の表示だ。耳を触るが長くも尖ってもいないから、エルフではない。腕は筋肉質でも棘も生えてはいないから、ドワーフでも竜人でもない。残る種族は……。
「鑑定」
尻尾
「尻尾が生えてる、しかも虎縞の」
臀部から生えている虎模様の尻尾を見つつ、頭に手を当てると更に二つの耳があるので獣人族で確定。尻尾の形状から狼や犬系ではなく、猫科、つまり猫人族か!
原作最強のチート狼人族に憧れる気持ちはあるし、わっちな狼の神様とか好きなので未練はあるが猫も悪くない。
年齢も転生前は36歳だったのが、16歳になって20歳も若返っているがメリットしか無いしあまり触れなくてもいいか。若さは大事!
「確か更に2ポイントで詠唱省略にできたはず」
BP 94/99
詠唱省略 3
鑑定 1
キャラクター再設定1
「はぁ…、いい加減に現実を見るか」
夢にまで見た世界で現実を見るのは変だと分かっているが、次々と鑑定結果が表示されていく。
ダンジョンの壁
ダンジョンの床
ダンジョンの天井