異世界迷宮でプライドを   作:ブラック微糖

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010 奴隷

 

 翌朝に来いと命令されたので、姉妹を連れて騎士団に向かった。

 

 

 欠伸を噛み殺しているのは宿屋に帰ってから素直に大変だったからだ。

 

「無理やりされた、です」

「ひどい人です」

「何もしてないだろ……」

 

 血塗れの3人が宿屋に戻ると当然騒ぎになった。

 

 そこで俺は、人が誘拐されているのを見かけて窓から飛び降りて追跡、騎士団と一緒に盗賊団を壊滅させた設定でごり押した。

 

 おそらく見張っていた騎士が駆けつけて、そのままインテリジェンスカードも確認されたが何とか信じてもらうことができた。

 

 さすがに部屋には入れてもらえず宿の裏の井戸で血を落とすことになったがここでトラブルが発生した。

 

「水やだ、です」

 

 妹猫が嫌がるので姉と無理やり洗うことになった。

 水を嫌がる猫かよ、いや猫人族だけどさ。

 

 爪で引っかかれながら暴れるので終わったころには疲れ果てて眠ってしまった。

 生傷を「手当」で癒した姉も、暴れ疲れた妹も倒れるように眠り、宿屋の店主に起こされて現在に至る。

 

    アンドリー

   騎士団詰め所

 

 案内する騎士の昨晩はお楽しみでしたね?という目に弁明する気力もない。

 

「ご苦労であった。これは奴隷商の紹介状だ」

 

「有難き幸せでございます」

 

 さすがの辺境伯のバケツヘルムに篭った声も疲れを感じさせた。

 

「それと、これが昨晩の懸賞金である」

 

「ははぁー」

 

 仰々しく馬鹿丁寧に礼をすると辺境伯が愉快そうなので続けている。

 見た目が虎耳付いたヤンキーなので、ギャップが面白いのかもしれない。

 

「多くないですか?」

 

「頭目の懸賞金も入っておるからな」

 

 盗賊の首は差し出したので懸賞金は諦めていたのだが、討ち取った名誉だけ受け取る、むしろ手柄は横取りしないように聞こえる。

 

 あまり借りは作りたくないのだが、ここで受け取らないのも面子を潰す気がする。

 

「どうして、ここまでしてくださるのですか?」

 

「……我にも、同じ年頃の娘がおってな」

 

 辺境伯が兜を脱ぐと、困り顔の垂れた兎耳が生えたダンディなオジ様が現れた。

 

 ぁ、兎人族の方だったのか。

 

    アンドリー

    奴隷商の館

 

 奴隷商では辺境伯の紹介状のおかげもあり、スムーズに所有者を書き込みが完了した。

 

  シロウ・トラシマ ♂16歳 探索者・自由民 

  (所有奴隷:ルウ、ライラー) 

  ルウ   ♀15歳 僧侶LV3 (奴隷:所有者シロウ・トラシマ) 

  ライラー ♀15歳 村人LV4 (奴隷:所有者シロウ・トラシマ) 

 

「これで契約は完了し、シロウ様はこの2人の主人と成りました。

 主人は奴隷に食事と住まいを与える義務がございます。

 これらが履行されなければ、権利を停止される事もありますのでご注意ください」

 

 奴隷商人は笑顔と揉み手で営業してくる。

 

  ヤーロン 男48歳 奴隷商人LV51 

 

「ご存じとは思いますが、当店は奴隷を商っております。戦闘奴隷や家事奴隷を取りそろえております」

 

 金持ってそうな奴隷商人は俺の耳に囁いた。

 

「愛玩目的の奴隷もおります」

 

 こ、こいつ俺の願望(ハーレム)を読むとは流石は高レベル奴隷商人侮りがたし。

 後ろに控える姉妹が冷たい視線でこちらを睨んでいる気配がする。

 獣人だから普通に聞こえますよね……。

 

「今日は止しておこう、また仲間を増やすときはお願いするかもしれない」

 

 また来るからな!覚えておけよ!!

 

「所有者変更の手数料は300ナールですが、今後の末永い取引を期待して2名分で420ナールお願いします」

 

 3割引きスキルを使って銀貨と銅貨の支払いを済ますと、奴隷商の館を逃げるように去った。

 

    アンドリー

     古着屋

 

 女性の機嫌を取るには買い物だと古事記にも書いてある。

 

 古着を予備を含めて3枚ずつ買おうと指示すると姉妹は嬉しそうに店内を物色し始めた。

 

 これ以上好感度が下がり続けると後ろからシミターで刺されてバッドエンドな未来が見える。

 刺してくるのは妹の方ではなく、何故か姉の方なのだが。

 

 長くなると覚悟して来たので、奴隷商の言葉を思い出す。

 

 新事実だったのは、獣人族は別種族の獣人間で子供が生まれる可能性があるらしい。

 妊娠する確率は低いが無いことはないらしい。

 これを知らなかった3人は普通に驚いて、少し気まずい気持ちになったのは言うまでもない。

 

 楽しそうに服を広げて笑う彼女たちに余計に手を出しにくくなったのだが仕方ない。

 

 ティッシュの代用に薄布やパピルスが使えるのか真剣に考えていると姉妹が服を持って戻ってくる。

 

「シロウ様には、これが似合うと思います」

 

 俺の服を選んでくれていたのか……、胸がジーンとなる。

 だけど、そのスカジャンみたいな服よく見つけてきたね?

 

「ボスはこっち似合う、ます」

 

 妹の方はロックバンドの歌手が着てそうな穴あきの服を発掘してきた。

 金髪ヤンキーみたいな見た目なので似合うかもしれないけどさ!

 

 結局、両方買うことにして更にアロハシャツっぽい服が追加された。似合うけどさ!

 

    アンドリー

     布地屋

 

 薄布を買いに、近くの布地を取り扱っている店も覗くことにした。

 

 鮮やかな布に姉妹が興奮していると、ふと目についた柄があった。

 

「虎柄か」

 

 さすがに虎の皮ではないようだが、似たような柄の布地を見つけてしまった。

 そういえば奴隷商から枷を付けない場合は所有者が分かるようにした方が良いとアドバイスを受けていた。

 

 姉妹に贈ると照れくさそうにルウはスカーフのように首に巻き、ライラーは髪を縛るのに使った。

 

 ……薄布は多めに買うことにしよう。 

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