異世界迷宮でプライドを   作:ブラック微糖

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020 砦町

 

 姉妹に強壮薬を飲ましてもらって何とか動けるようになると、逃げるように冒険者ギルドから出た。

 

    リーベ

   冒険者ギルド前

 

 「うお!?」

 

 澄んだ空気が飛び込んだと思ったら、視界に広がる巨大な石壁。

 

 巨人が襲ってきそうな壁を見ると、その圧倒的なスケール感にここが異世界なのだと感動する。

 

 町を全方位囲っている石壁に姉妹も目を丸くしていた。

 

 周囲の温かい視線に気が付くと、もしかして初めてこの石壁を見ると放心するのは定番だったりする?

 

「リーベに初めて来たなら石壁の上からの景色を見るといいぜ!」

 

 冒険者ギルドの前に立っていたおじさんがNPCみたいに親切に教えてくれる。

 

「石壁に登れるのか?」

 

「砦の石壁だぞ? 登れるのは当たり前だろ」

 

 ぐうの音も出ない正論だが、親切なおじさんは教えてくれる。

 

「騎士団が管理しているから少し金を払うことになるが、景色を見ないのは損だぜ」

 

「損をせずに助かった。これを」

 

 銀貨1枚、指で弾いて渡す。

 真っすぐは飛ばなかったが問題なくおじさんは笑顔で受け取った。

 格好良くしたかったが器用小減少の影響を受けているの忘れてたわ。

 

「とりあえず壁の方に向かいながら町の様子を見てみよう」

「はい!」

「はい、です」

 

 町には様々な種族が歩いており、活気があった。

 

 辺境のアンドリーはやや獣人が多かったがエルフ、ドワーフや竜人族の姿も見える。

 

 こっちの奴隷商館なら様々な種族の奴隷が集まってそうだと考えたが、先にアンドリーの商館を確認して紹介状を貰う方が筋は通るか。

 

 武器屋や防具屋も気になるが、資金に余裕が無いので今は保留でもいいだろう。

 ルウは新品の服屋や古本屋、ライラーは美味しそうな匂いを漂わせる食堂や屋台に興味を示していた。

 

「これ美味いな」

「美味しい、です」

「すみません、私達にも買っていただいて」

 

 無駄遣いはしない筈だったが、肉串の屋台を通ると獣人の嗅覚ではスルーは無理だった。

 まぁ、これくらいの買い食いなら脳内ドワーフのおっさんは出なかったのでセーフ!

 

    リーベ

  石壁の2番昇降口

 

 冒険者ギルドにあった町の簡易地図を確認しておいたが、各種ギルドは町の中心付近に固まっており、続いて商店や屋台が並び、壁に近づくにつれて宿屋や住居が広がっている。

 

 壁に沿って騎士が定期的に巡回しているようで治安の方も悪くないようだ。

 

  騎士 LV20 

 

 昇降口の前にいる騎士に話しかける。

 

「すまない、上に登りたいのだが?」

 

「大丈夫ですよ。入場料はお一人100ナールになります」

 

 ぁ、これはクーラタルの入場料と同じで一度利用すれば俺だけ無料になるパターンでは?

 

「ここは冒険者が常駐していません。どうされますか?」

 

 冒険者(エレベーター)無しかぁ。

 リーベの街は円状に広がっているが、時計のように12ヶ所の昇降口があり、3,6、9、12番の昇降口には冒険者が待機しているらしい。

 壁に沿ってもう少しあるけば3番昇降口が見えてくると勧められる。

 

「いや、徒歩で登ろう」

 

 肉串で無駄遣いしたし、少し食後の運動と節約だと思うことにする。

 

 騎士相手に値引きスキルは効かないので銀貨を3枚払うと、印鑑の押されたパピルスを3枚渡される。

 

「では、こちらの紙をお持ちください、本日限り有効です。あと石壁の上から物を落とすと罰せられますのでご注意ください」

 

 ルウ達にそれぞれ渡すと、日付が記載されている簡易的な入場証と教えてくれた。

 

    リーベ

    石壁の上

 

 獣人になって基本身体スペックが高くなっているので階段も問題なく登れたのは良かった。

 

「……凄いなぁ」

 

 景色を純粋に楽しむ気力が残っているが、ため息を吐くほど見事な景色が広がっていた。

 

 青色。

 石壁から外には一面に美しい湖が広がっていた。

 

「話には聞いていましたが、リーベは湖の上に立った砦です。潤沢な水を活用して上下水道が整備されています」

 

 澄んだ空気の正体はこれかぁ。

 

 姉妹の瞳もキラキラに輝いているので、確かにこれは見ないと損するわ。

 

 水上の町なら水生モンスターしか出ないだろうし、水生モンスターは石壁は越えられない。

 

 グラスビーのような飛行モンスターは出るだろう?って意見が出そうだが、それを言い出すと全ての町にモンスターが出ることになる。

 飛行モンスターはダンジョンの天井よりも高く飛べない可能性もあるか?

 

「私達の村も、湖の近くにありました……」

 

 ぼそりと呟いたルウの肩に手を置いた。

 

「ダンジョン、です」

 

 ライラーがまた変なブラヒム語を言ったと思ったが、彼女が指差す先に湖に浮かぶ小島に見覚えのあるゲートがある。

 

「ダンジョンだな」

「ダンジョン、です」

 

 あれがリーベの近くにあるダンジョンの一つか?

 

「あそこは確か1階がニードルウッドです」

 

「行ってみよう」

 

 ここで薬草採取士を取っておくのも悪くない。

 

「お待ちください。石壁の上の絨毯(じゅうたん)を見ておかないともう一度登ることになります」

 

 さすがに何度も階段を上がりたくはないので、石壁の上を歩いて景色を楽しみつつ絨毯を探した。

 

 獣人の視力で遠目でそれっぽい絨毯を確認。

 絨毯の前では騎士が待機しており、入場証を確認しているのも見えた。

 

 ぁ、これは入場料を無料にできないわ。

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