蟻酸
少し黄色っぽい液体の入った水風船をルウが拾ってくれる。
「蟻酸は、たしか革や硬革の防具を作るときに使う鍛冶素材です」
「鉄製品を作るときにブランチを使うみたいな追加素材か」
受け取ると見た目通りブヨブヨとしており、リュックサックではなくアイテムボックスに入れないと破けそうだ。
「魔物に投げつけると一時的に防御力を下げる効果があると言われています」
デバフアイテムなら使い道がありそうだな。
「効果時間が短いのと、状態異常と違って効果が続いているかは見分けがつきません」
使い道が難しいなぁ。
「防御力が高いレムゴーレムなどで使われる場合がありますが、毒針の毒で削った方が確実です」
素直に売ってもいい気がするな!
「もう一回だけボスに挑戦しよう。待機部屋に直接飛んでも大丈夫だろうか?」
「アンドリー南ですから問題ありません」
アンドリー南の迷宮
第1階層 ボス部屋
勿論他のパーティーなどおらず、続けてボスに挑戦できる。
やはりここがボス周回の候補地だな。
蜘蛛はスキルカードが落ちる旨味がないし、蟻の毒耐性はいずれ必要になる。
ハントアント LV1
ラッシュ!
あれ? 攻撃スキル1撃で消滅しなかった。
反撃を食らいそうだったのでスキル無しで突くと煙に変わった。
ボスに個体値がある?
いや俺の攻撃力に乱数幅がある?
器用の数値が命中だけに補正がかかるとは思えず、もしかしたらダメージ乱数の最大を引く確率にも影響しそうだ。
この世界の
クリティカル発生を持つのは博徒と、竜人族の固有ジョブである竜騎士がある。
ボーナスポイントに会心確率UPがあるのだが、博徒なしだとそもそも発生すらしないのは原作主人公が検証している。
描写的に器用さを無視して最大値を引くというより、通常ダメージにクリティカル倍率が乗るのが会心の一撃だろう。
「やはりもう少しレベルを上げよう。4階に移動する」
「はい!」
「はい、です!」
アンドリー南の迷宮
第4階層
「4階は魔物の数が3体に増えるのだったな」
「はい、コボルトが混ざるのでそこまで脅威ではありませんが気を付けましょう」
「気を付ける、です」
魔物の数は1階層が1匹、2階層で2匹、4階層で3匹、8階層で4匹、16階層で5匹と増えていくらしい。
32階層でパーティー最大人数と同じ6匹の編成。
64階層では7匹になるのでメンバーよりも多くなるので数は不利に変わってしまう。
若いダンジョンは50階層くらいで攻略できるそうなので現時点で対策を考える必要はないか。
「3匹です、コボルトが混ざっています」
コボルト LV4
スパイスパイダー LV4
グリーンキャタピラー LV4
コボルトは、見た目がゴブリンにしか見えない姿をしていた。
そもそもコボルトもゴブリンも同じ存在だったが、最近の創作では犬顔モンスターってイメージが強いな。
昔のファンタジー創作ではオークとオーガの区別が曖昧だったりもする。
こちらの人数も3人なので1人が一匹ずつ受け持つ必要がある。
俺が拘束が厄介なグリーンキャタピラー、ライラーがスパイスパイダー、ルウが危険度が低いコボルト。
ラッシュ! ラッシュ!
1撃では倒せなかったが2発で芋虫を瞬殺して、ライラーに加勢する。
蜘蛛も後ろから攻撃スキルを2発当てると煙に変わった。
ルウはナイフを振り回すコボルトを鋼鉄の槍で牽制していた。
リーチ差が圧倒的なのでそのまま倒せそうであるが、ラッシュを1発当てるとコボルトは消滅した。
コボルトソルト
「弱いな」
「コボルトですから」
「ですです」
このコボルトソルト、売却額が4ナールで最低価格だった気がする。
2個売ってパン1個買えるとすれば悪くない気もするが、宿泊費や税金を考えるとこれだけで稼ぐのは不可能だ。
弱いがスキルカードが有用で高く売れるのでコボルト専門に狩り続ける探索者もいるようだ。
コボルトスレイヤーとか呼ばれてそう。
「そういえばよくある称号システムとかはないな」
「称号ですか?」
コボルト討伐数1000匹とか、初戦でボス攻略とか……狂戦士や英雄が似たようなものか。
アンドリー南の迷宮
第4階層 中間部屋
「そろそろ夕方の鐘の時間になります」
「もうそんな時間か。俺の腹時計は当てにならないからな」
学生時代とか無限に空腹だった気がするが、大人の感覚だと1食くらい抜いても問題ない。
魔物の数が3匹に増えたのと、夕方まで狩り続けたことでかなりレベルが上がった。
シロウ・トラシマ
探索者LV17/狂戦士9/戦士LV15/剣士LV12/空き
BP 0/116
武器6 63
5thジョブ 15
獲得経験値5倍 15
必要経験値5分の1 15
詠唱省略 3
鑑定 1
パーティー項目解除 1
パーティーライゼーション 1
キャラクター再設定 1
ルウ 巫女LV6
ライラー 戦士LV6
「ボスを倒す前に、コボルトを1匹弱らせて倒したい」
ボーナス魔法は等量交換ではなく、MP全解放の方だった。
前者だとMPを上げる意味があるが、後者だと逆にいつ発動しても精神喪失状態になる。
ならばMPの最大値が低いうちに発動した方が精神の乱高下幅が少ない。
コボルト1体編成だと思ったら蜘蛛や蟻や芋虫が天井から降ってくるアンドリー南の迷宮である。
「どうした?」
ルウとライラーが壁を見つめている。
「この先にモンスターの気配を感じたような?」
彼女が壁に触れると、床がスライドして3人ともが