アンドリー南の迷宮
第6階層 ボス部屋
「ミノのボスは、ハチノスです。基本的に大きなミノですが突撃と角の威力が上がっています」
ハチノスって牛の第2胃袋の名前だっけ?
胃袋の見た目が蜂の巣に似ているからそう呼ばれてたような、そもそもミノが第1胃袋の名前だったか。
第3胃袋のセンマイも出ていたし、第4胃袋のギアラも普通にダンジョンに出てきそうだな。
ダンジョンで牛肉を落とすのは別の牛人モンスターだった気がするので、何をドロップするのだろうか。
タンとか、ホルモンとか……考えていると焼肉したくなるから止めた。
ハチノス LV6
ボス部屋の中央に巨大な牛の魔物が出現する。
よく見ると毛の模様が蜂の巣みたいになっているが、それ以外は大きなミノだ。
作戦通り、俺とルウが散開してライラーがボスを挑発してタゲを取るとボス部屋の扉に激突せん勢いで突進を開始する。
「サンドウォール!」
土魔法でできた壁がライラーの足元に出現してハチノスが激突、厚みのある砂岩の壁にヒビが入る衝撃と音が響いた。
サンドウォールを足場に飛んだライラーはボスの背中に飛び乗ると、シミターで滅多刺しにする。
ハチノスは激突した衝撃で怯みつつ、ライラーを振り落とそうと暴れ出す。
ウォーターウォール!
今度は水魔法の壁を出現させて、崩れた砂壁を巻き込んだ濁った水がボスの視界ごと頭を拘束した。
全体魔法はパーティーには当たらないので使っても問題ないのだが、動きが分かりやすい単体の敵は持続ダメージが入る壁魔法も使えるな。
鋭利な角と強力な突進を封じてしまえば、あとはひたすら攻撃していくだけだ。
「来ます!」
ルウの言葉に警戒する。
ボスのHPが瀕死になると、攻撃が苛烈になる発狂モードに入る合図だ。
他のダンジョンではあまりこの状態にならないのだが、アンドリー南では100%この状態が発生するので逆に慣れてくる。
ハチノスが絶叫するとデタラメに部屋の中を突撃して、壁に激突しては強引に向きを変えて何度も何度も突撃を繰り返す。
激突を繰り返して角が砕け折れたことで身軽になったボスは更に速度を上げていく。
ライラーは既に背中から降りており、3人でそれぞれが邪魔にならないように回避に専念する。
ラッシュ!
疲れ果てたボスの首を刎ねると、煙に変わって討伐完了である。
皮
皮を拾ってくれたルウに聞いてみた。
「確かにスキルを使ってこないから楽ではあるが、労力に素材が見合ってない気がする」
「そうですか? 普通のパーティーはミノを何十発も当てて討伐しておりますし、それで素材が落ちないよりもボス部屋で乱入もなく安全に戦えるボスの方が人気があります」
そう言われると見方が少し変わってくる。
ミノを数発で倒せるパーティーからするとボスの旨味が分からないが、そこそこ狭い通路で複数の突進を避け続けるのは厳しいのだろう。
しかも頑張って倒しても素材が落ちるかは分からないし、確実に落ちる8階層はミノ4匹を同時に相手をするリスクすらある。
「壁に激突させて、角が刺さったところを攻撃とかは?」
「ダンジョンの壁は破壊できません。先程もボスの角の方が砕けていました」
角のある魔物の倒し方あるある、が通用しないのか。
「そろそろお昼の鐘の時間ですね」
姉妹のお腹の牛さんが鳴くので、第7階層をブックマークしててダンジョンを出ることにした。
アンドリー南の迷宮
入口前
「ぁ、虎の人。ダンジョンに入られていたのですか?」
入口付近で騎士と探索者が話をしていた。
「お久しぶりです」
「探索、ご苦労様です! 最近あまり騎士団に来られないと思いましたがお元気でしたか?」
別に一般市民はあまり騎士団に行かないと思うのだが、遠回しに顔を見せろと言われてる感じか。
「おかげ様で元気にしております」
「このダンジョンは探索者の方に人気が無く、後回しになっておりましたが先日の盗賊の件もあります。また低階層で蜘蛛のスキルカードが入手できるのはやはり問題があると、騎士団も見回りや間引きを強化することに決まりました」
探索者が話しかけてくる。
「もし階層を更新されていましたら報奨金が出ますがどうでしょうか?」
「ちなみに何階層まで攻略が進んでいます?」
「40階層です」
思ったより攻略が進んでいた。
アンドリー南は最近できたダンジョンと聞いたので50階層付近までしかないだろう。
もしかしたら近日中に討伐されているかもしれないなぁ。
俺が
「残念ながら、そこまでは進んでないですね」
「そうですか、このダンジョンは他よりも難易度が高いらしく多くのパーティーが全滅しておりますのでお気をつけてください」
知ってる。ここだけ無駄に殺意高いもん。
「このダンジョンに積極的に入っていただけるとザフィーラ様もお喜びになるでしょう」
辺境伯の顔よりもあの印象が強いバケツヘルムの方が浮び、思いついた。
「あの、強権の鉄剣とかって騎士団で需要があります?」