アンドリー南の迷宮
第7階層
「シロウ様、やりましたね! 鉄剣が相場以上で売れましたよ」
「さすが、ボスです」
姉妹から全力で称賛してもらえるけど俺、また何かやっちゃいました?
数少ないガチで何もやっていないパターンなので流石なのは辺境伯様だな。
金貨が20枚増えて、家賃とかで減った資金が一気に30枚近くに回復した。
ちょっとATMで下ろしてくる感覚で盗賊狩りをしている他の二次創作主人公たちとは違って積極的に人狩り行ってないから万年資金不足である。
それが一番効率いいのは理解しているのだが、何か複雑な気分になってしまう。
よくあるオセロとかトランプ作って金策したりとかも、別にこの世界でする必要は無くないか?と思ってしまう。
原作主人公の収入が6割くらいダンジョン外の琥珀や鏡取引だったりするが、それを成立させるためにダンジョンでMPを伸ばした彼の成果だろう。
そもそもドワーフの件だって、俺が妥協すればいいだけの話なのである。
性別年齢問わずドワーフを買って鍛冶師を仲間にすれば、戦術も金策もとれる選択肢が広がる。
別に処女の奴隷が欲しい訳ではない、欲しい奴隷が処女だったときに困るのだ。
「シロウ様?」
「ボス?」
考え込む俺を姉妹が不思議そうに覗き込んでくるので、苦笑して聖剣を取り出して答える。
「すまない、資金の使い道を考えていた。第7階層の魔物はコラーゲンコーラルだったか?」
「はい、硬い魔物なので注意が必要です」
「ご注意、です」
アンドリー南の7階層はコラーゲンコーラル。
最下層で一番硬い魔物と、一番火力のあるミノが並ぶのは中々に面倒くさいか。
ルウ 巫女LV15
ライラー 戦士LV15
MP回復の為に獲得経験値20倍を外すことも多いので姉妹の成長は遅い。
他の探索者からすると驚異的な速度で育っているのだがLV30に到達まではかなり遠い。
現状、ほとんど被弾せずに倒せる階層でしか戦っていない。
そう考えると、ライラーを戦士のまま育てるよりも腕力も育つ剣士の方が戦闘時間は減るし、ボス周回も楽になる。
ライラーも剣士にして派生ジョブの条件を探すのが遠回りに見えて近道な気がしてきた。
虎人族の固有ジョブの条件が分かっていないので、未発見のジョブを複数発見する必要があるからなぁ。
「次の戦闘はそのまま戦うが、問題なければライラーを剣士にしようと思う」
「はい、です!」
通路を進むと不思議なシルエットが動いていた。
岩でできたサッカーボール?のような物体に細長い体と短い足が付いており、コミカルに跳ねている。
コラーゲンコーラル LV7
コラーゲンコーラル LV7
ミノ LV7
「ファイアーストーム!」
詠唱省略で必要ないのだが、戦闘開始の合図も兼ねてスキル名を叫ぶことにしている。
どうせ全体魔法がヒットした時点で魔物に発見されるのだ。
「来ます!」
やはりミノの突進が速いな。
ライラーとルウが駆け抜けて、ミノの左右から挟撃するが減速せずに迫ってくる。
聖剣をバントの構えで盾にすると、ミノの突進に合わせて角に叩きつける。
金属が激突した甲高い音が響くが複数ジョブで強化された俺の腕力なら問題なくガードが成功する。
あとは角の攻撃を獣人の視力と反応速度で聖剣で防ぎつつ魔法を連打するだけだ。
ファイアーストーム!
聖剣が折れることはないがこれをやると無数の傷が刀身に付いてしまう。
大丈夫だ、オリーブオイルを塗れば元に戻る!
姉妹が残る2匹のコラーゲンコーラルを抑えてくれる間に、3度目の全体魔法で魔物の群れが消滅する。
コーラルゼラチン
コーラルゼラチン
「コーラルゼラチンです。絨毯などを貼る接着剤などに使われます。お湯をかけると綺麗に剥がれますので便利ですよ」
ルウがドロップアイテムを解説してくれる。
地味にミノが皮を落としてないが、ゼラチンはゼリーなどに使われている固まるコラーゲンだ。
ゼラチンが動物性のコラーゲン、寒天が植物性のコラーゲンだったかな。
コーラルはサンゴの意味なので、珊瑚が動物性?
迷宮の魔物、しかも魔物の一部でもなくドロップアイテムなので気にしたら負けなのである。
ゲームとかで魔物が通貨を落とすのに意味を考えていたら夜しか寝れなくなってしまう。
「コラーゲンコーラルの硬さはどうだった?」
「カチコチ、です」
「武器が刺さるか刺さらないくらいには硬いです」
三日月槍には防御無視が付いているので簡単に倒せるだろうが、聖剣などの別の武器の刃が欠けてもオリーブオイルで直るのだろうか?
「問題なさそうなので、ライラーを剣士に変える。ミノは基本は俺が、2匹出たときはライラーが、3匹出たら三日月槍で前衛に出る」
アンドリー南の迷宮
第7階層 待機部屋
宿屋の夕食の時間を考える必要が無いのと、午後は狩り始める時間が遅かったのでがっつり残業してみた。
ルウ 巫女LV17
ライラー 剣士LV8
姉妹のレベルも順調に上がっている。
ジョブを変えたライラーだが、俊敏補正が変わっているわけではないので魔物の攻撃を全て回避していた。
階層以下のレベルは上がりやすいようで一気に伸びたので一安心である。
姉妹はどうしてもコラーゲンコーラルを相手することが多くなるので、武器の状態を確認見たが問題なさそうだ。
「よし、ボスを倒して今日は終わろう!」
「お肉、です!」
俺は忘れかけてたけど、ライラーは覚えていたようだった。