異世界迷宮でプライドを   作:ブラック微糖

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040 狂闘

 

   アンドリー南の迷宮

   第7階層 ボス部屋

 

 ボス部屋に入ると中央から巨大な球体が出現した。

 

 ぬっと巨岩の塊が電柱のように細い体と短い足で立ちあがると威圧感がある。

 

  コラージュコーラル LV7 

 

 コラーゲンコーラルとの違いは大きさもあるが、岩の表面に様々な色の石が張り付いていることだろう。

 

 成程、糊付け(コラージュ)か。

 さすがに鋭利な石は無いようだが見た目からに耐久と重量が上がっていそうだ。

 

ファイアーストーム!

 

 挨拶代わりの魔法を叩きこむが、無機物系魔物は炎に焼かれながらゆっくりと迫ってくる。

 

「ライラー!」

 

 ルウが指示すると、妹猫が斜めからコラージュコーラルに迫る。

 ほぼノーモーションでボスの身体が斜めに傾けて、地面に頭を叩きつけた。

 モーニングスターのような一撃がボス部屋の床に激突するが、ライラーは直前でバックステップで避けて反撃する。

 

 反撃のシミターが表面の石に当たり弾かれる。

 

「石に当ててもダメージは入りませんが、コラージュコーラルに張りついた石は何度か攻撃すると剥がれていきます」

 

「つまり攻撃を当て続けて石を剝がしてからが本番か」

 

 その巨大な頭を床に叩きつける瞬間が逆にこちらの攻撃チャンスであり正攻法であるのだろう。

 でも、俺には魔法がある。

 

 ファイアーボール!

 

 剛速球の火玉がボスの頭に直撃して、岩の表面から石が剥がれ落ちていく。

 単体魔法を確実に当てる技量はないので全体魔法を使うことが多いがあれだけ的が大きければ流石に当たるか。

 

 ルウもライラーもボスを囲みながら頭突きを誘発しながら攻撃を当てて石を削っていく。

 

「来ます!」

 

 魔法を当て続けて石が全て落ち切ったボスが瀕死の発狂モードに入る合図だ。

 

 ボスが頭を地面に叩きつけると、その場で高速回転し始めた。

 ブレイクダンスのヘッドスピンを連想するが独楽のような回転するボスがゆっくりと移動を始める。

 

()()気を付けてください!」

 

 ミノの無秩序突進と違って余裕で避られると考えているとルウの声と同時に肩に()()が激突する。

 

 床に転がる、()()()()()()()()()()()()()

 

 こ、こいつ床に落ちた石を回転で巻き込んで飛ばしてきやがったな。

 

 草刈りの回転刃が石を巻き込んで射出する事故にて毎年かなりの数の車や窓ガラスが割れているのを思い出した。

 油断していたが防具に当たったので動けなくなる痛みではない。

 顔や防具の隙間には絶対当たってほしくない。

 

あやまちあらば安らけく 巫女の(はふり)(まじな)いの 全体手当て

 

 ルウの全体手当で肩の痛みが引いていく。

 これは判断ミスでライラーを攻撃ではなく、転がった石をボス部屋の隅に投げさせることに専念させれば防げた事態だ。

 ヒントこそあったが、初見のボスの発狂モードを予想するのは困難過ぎる!

 

 ライラーが壁にボスを誘導して激突させるとバランスを崩れて回転が止まった。

 

 ラッシュ!

 

 経験値ボーナス20倍を外して、三日月槍に持ち替えると攻撃スキルで止めを刺す。

 悠長に魔法で攻撃して再度発狂モードに入られると面倒と判断した。

 

 硬いと聞いていたが、防御無視の恩恵でほとんど抵抗なく刃が滑ってボスが消滅した。

 

  コーラルドーサ 

 

 ドーサ=(にかわ)は純度の低いゼラチンだった気がする。

 ボスの方がドロップアイテムが低品質のことがありえるのだろうか?

 

「コーラルドーサはコーラルゼラチンよりも強力な接着剤です。食べられませんが雨風に強いので野外で絨毯を貼るのに利用されていますね」

 

 この世界の絨毯は敷くものではなく貼るものである。

 

   アンドリー南の迷宮

     第8階層

 

「近くに魔物の気配がしますがどうされますか?」

 

 第8階層に移動するとすぐにルウの気配察知が反応したようだ。

 

「そうだな、少し試してみたいことがあるので二人は先に帰って夕食の準備をお願いできるか?」

 

 アイテムボックスから山羊の肉などの食材を姉妹に渡すと自宅にワープゲートを繋いだ。

 

「……危ないことはなされないでくださいね」

 

 ルウは何かを察したのかゲートを潜る瞬間にそう呟いた。

 

「危ないことね」

 

 三日月槍を構えて魔物がいる方の通路に歩き出す。

 

  ミノ LV8 

  ミノ LV8 

  ミノ LV8 

  ミノ LV8 

 

 知ってた。

 第8階層に到達できていない理由であるミノ4体の群れ。

 さすがアンドリー南の迷宮、殺意が高すぎて隠しきれていませんよ。

 

 魔法を使わずに獣人の脚力を利用して無防備なミノの群れに駆け抜ける。

 

 ジェノサイドアタック!

 

 渾身の一撃が直撃した牛に確実に大ダメージが入った手ごたえを感じる。

 姉妹を庇いながら戦うことはできないが、仲間がいなければ狂戦士のスキルが使える。

 

 ジェノサイドアタック! 

 

 攻撃の当たった2匹目の牛が悲鳴を上げる。

 同じ魔物に連続で当たれば簡単に倒せるのにジェノサイドアタックさんは不器用だ。

 

 地獄の血祭(カーニバル)の始まりだ!

 

 乱戦になり突撃できない牛を一方的に蹂躙できると確信した瞬間だった。

 

「加勢するぞ!」

 

 は?

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