「風呂に入る前に体を洗うぞ」
この世界では風呂は貴族が金と奴隷を使って入る贅沢なのでルールなど知らないだろう。
一番奴隷の特権でルウ、君に決めた!
「さ、先にシロウ様をお洗いになった方がよろしいのでは?」
「石鹸の使い方や洗い方などを覚えてほしいからな」
石鹸のパッチテストは三人とも問題なかったので、さすがダンジョン素材というしかない。
未だ固まっていない柔らかい石鹸をお湯で軽く溶かして恥ずかしがる姉の腕に広げていく。
「ぬるぬるしますね」
未知の感覚にルウが戸惑っているが、泡立たない石鹸に俺が困惑する。
石鹸が失敗していたというよりも汚れに負けている可能性が高いな……。
これは本気を出して姉妹を洗う必要があるな!
「尻尾は自分でやりますので!」
「くすぐったい、です」
「み、耳は駄目です」
「もう一回してほしい、です」
結局姉は3回洗って、妹は4回洗うことで泡塗れの羊さんになった。
正直、疲れたので風呂に入りたいのだが俺自身も半月近く石鹸で洗えていない。
「お洗い致しますね」
「ぬるぬる、です」
たわしなんて便利なものはないので、彼女たちが手や体を使って俺を洗ってくれる。
自主規制の迷宮
第5回層
泡とか
「ふぅー」
「はぅー」
「ぬぅー」
お湯に浸かった瞬間に深いため息と心地よい満足感が出てくる。
「お風呂には初めて入りましたが、素晴らしいです!」
三人で入るには少々ギリギリなので膝の上に半分乗っている姉が高揚した顔で絶賛する。
「ぬくぬく、です」
妹は俺の肩に頭を預けて溶けだしている。猫は液体だというが本当だったのか。
「これからは可能な限り風呂に入っていこうと思う」
「これを、毎日?」
二時間コースなら原作主人公のように数日に一度のペースでいいやと思ったが30~40分程度なら頑張れる。
「シロウ様は貴族様だったのですか?」
「んー、俺は貴族ではなかったけど
「魔法、です」
「魔法だったかもなぁ」
お湯の温かさと姉妹の柔らかさに、ここが桃源郷かと思ったが浮かんでいるのは柑橘である。
そういえば原作主人公が浮かべていた柑橘は香り付けに見えたが、石鹸の弱アルカリ性を中和させる効果もあったのか。
彼の教養の深さを改めて痛感するな。
「一瞬、武器を出すぞ」
三日月槍を出して刃で柑橘を半分に切って、果汁を湯舟にポタポタ落としていく。
唐揚げにレモンを勝手にかけたら戦争が勃発するかもしれないが、俺が風呂場のルールである。
ライラーの視線に気が付いたので、ルウとライラーに半分ずつ柑橘を渡しておく。
酸っぱい顔をする二人に笑うと、果汁を飛ばしてくるので目を庇ったりと楽しい時間を過ごす。
残った柑橘は
リーベ
自宅 裏庭
久々に風呂に入れて身体がリラックスできたのか、翌日は起きるのが少し遅くなってしまった。
新しい下着姿でばたばたと起きる姉妹を眺めつつ着替えると食事の準備は任せて中庭に出ることにした。
風呂場と風呂桶にカビが生えないように換気も兼ねて扉と窓を開放しておく。
聖剣をアイテムボックスから取り出して素振りをしてみる。
まだ重さがありレベル不足を実感しつつ、汗をかかない程度に無心で振り下ろす。
これで神官のジョブが獲得できればいいが、他の二次創作主人公たちは楽々取得できていたりする。
心を無にするだけで取得できるなら神官ギルドはどうして滝行を推奨していたのだろうか?
無駄なことを考えてしまうのでこの方法では一生獲得できそうに無いと悟っただけだ。
孤児院の方から視線を感じつつ、素振りを続けていると食事ができたと声がかかったので終了した。
リーベ小島の迷宮
第7階層
5日に一度の市場に、武具屋を回ってみたが欲しいと思うような装備はなかった。
ちなみにアンドリーの武器屋のスロ無し聖剣は売れ残っていた。
パンに焼いた肉と野菜を挟んだ簡単な弁当を作って、ダンジョンで魔物を狩り続ける。
ルウ 巫女LV18
ライラー 剣士LV10
アンドリー南でボス周回しても良かったのだが、あの竜人二人組に会うと気まずいのでリーベの第7階で姉妹のレベルを上げた。
帰る前に、第8階層の魔物と戦ってみることにした。
装備を更新できても5日後になるし、少々の被弾には耐えられるレベルまで来ている筈だ。
リーベ小島の迷宮
第8階層
ミノ LV8
ミノ LV8
ナイーブオリーブ LV8
エスケープゴート LV8
アンドリー南が異常なだけで普通はミノ4体が揃う確率は高くない。
俺とライラーがミノを1匹ずつ受けもって、ルウがエスケープゴートの退路を塞ぎつつ2体を牽制している間に魔法で倒せた。
「戦えそうなので明日からは8階層を攻略しよう。ミノ4体は避ければいいだけだ」
姉妹にも余裕があったので、ワープで自宅へと帰った。
リーベ
自 宅
「何者かの気配がしますね」
ルウが少し警戒した声で言う。
彼女に案内されて、武器を構えて風呂場の行くと大桶の中に幼い少女が寝ていた。
アンリ ♀5歳 村人LV2
「寝てる、です」
さすがに槍の石突で起こすのは可哀想なので、ルウが揺り起こすと少女が目を覚ました。
「XXXXX?」
人間語? 少女の耳が木の葉のように独特なのでドワーフ語か?
ルウもドワーフ語は話せず、会話が通じないので泣きそうな少女をどうするべきか。
「どこから……、隣の孤児院の気配が慌ただしいのでそちらから?」
「その可能性は高そうだな」
俺が閉め忘れた中庭に繋がる扉を見ながらルウの推理を肯定する。
リーベ
孤児院 入口
孤児院の扉を叩くと、中から息を呑む程の美人のエルフが出てきた。
エルカトル 15歳 僧侶LV4
「アンリ!」
ルウが手を繋いでいる少女の姿を見ると飛び出して優しく抱きしめた。