「良かった。ずっと探してたよ」
「XXXX」
やはり孤児院の子供だったようで、修道服のエルフがこちらに気が付いた。
「すみません! アンリを連れてきてくださった方々を無視してしまって」
「シロウ様はブラヒム語をお使いになられます」
エルフの中性的な声に、ルウが注意するがもしかして
「重ね重ね申し訳ありません。ボクはエルカトルと言います」
「俺はシロウだ」
「一番奴隷のルウです」
「ライラー、です」
「アンリ!」
軽く挨拶をすると幼女が真似して微笑ましい。
エルカトルが孤児院の中へ案内する。
「どうぞ、中へ。孤児院のシスターもお礼を言いたいと思います」
リーベ
孤児院 応接室
応接室に通された俺たちは、老後の女幹部みたいな悪人面の婆さんと対面している。
クラレンス ♀72歳 沙門LV20
垂れた耳の形からおそらく狼人族。
作中では狼人族といった獣人は50歳頃まで若い姿のままで60歳以降は見た目で分かるほど老化するらしい。
昔は100%美人だったと思うが、拳銃と札束が似合いそうな腰が曲がったシスターは見たこと無い。
出されたハーブティーにヤバい薬が入っていないか匂いを嗅いでみるが、むしろ香りがしなくて古くて安物に感じる。
「わたしはここの孤児院を任されているシスター・クラレンスだよ。院の子がご迷惑かけたね」
彼女が深く頭を下げた。
「こちらこそダンジョン帰りで気が付くのが遅くなってしまったが大事にならなくて良かった」
そこでやっとクラレンスの瞳の奥で安堵が見えた気がする。
子供とはいえ不法侵入すれば盗賊ジョブにはならないだろうが、窃盗未遂で騎士団案件になりそうな出来事だ。
俺がそれを追及しにこの場にいる訳ではなく、純粋に謝罪を受けに来たと分かって安心したと見るべきか。
アンリは孤児院の窓から脱走して隣の俺の家に入ると、大きな桶があって覗き込むと落ちて出られなくなってしまったようだ。
桶は外側には金具があって足を掛けられるが内側には何もないので、何となく想像できる。
「そういえば隣に引っ越してきて未だ挨拶ができてなかった。そうだな、ウサギの肉があるから皆で食べてくれ」
「いいのかい?」
アイテムボックスから余っているウサギの肉を出そうとするが、机に直置きという訳にもいかないだろう。
「皿を用意してもらえるだろうか?」
「すまないねぇ、ところであんたは
ウサギの肉がお祝いとかで食べられるとかで縁起がいいと思ってチョイスしたが、量のある山羊の肉の方が良かっただろうか。
で、この婆さんとんでもないこと言ってきてないか。
「人数分あるかは分からないので山羊の肉も付けよう思う」
「あんたは奴隷を買う気はないかい?」
直球!
正体現したね。
やはり孤児院の子供を売り払う系のシスターであったか。
「は、話を聞いてから判断しよう」
ウサギの肉を手にしたまま冷静になることした。決めつけは良くないし、ライラーも肉をじっと見るのは止めなさい。
「孤児院を卒院した子の話さ。町で働きながら孤児院の手伝いもしてくれてる真面目でいい子だよ」
シスターは薄いハーブティーに口を付けると続きを話し出した。
「税金を払う分の蓄えは残していたようだけど、つい先日に院の子供が病気になってね」
もう話のオチが分かったが、黙って話を聞くことにする。
「当然、孤児院に薬を買う余裕はないし、その子が税金を払うお金で薬を買ったのさ」
「税金が払えないということは、既に脱税奴隷に?」
ルウが会話に入ってくるがシスターは首を振った。
「まだ、脱税奴隷候補さ。けどあと5日で遅延金を含めて税金分を稼ぐのは不可能だから同じことかね」
「借金はできないのか?」
「孤児院出身者は金を借りられる信用なんてないのさ。他の卒院者から募るにしても皆、必死に働いて孤児院にもお金を入れてくれている。無理は言えないよ」
シスターも手は尽くしたのだろうが、この廃墟のような孤児院を見れば結果は分かる。
「そこで奴隷を買うという話になるわけか」
「脱税奴隷や候補なら税金と遅延分を払えば通常奴隷にできると聞いたことがあります」
ルウの言葉が事実なら税金と少しの金額で奴隷が入手できることになるが。
「それは奴隷商に確認してみないと分からないが、どうしてこの町の他の住民に頼まない?」
「町の住民とはいえ知り合いを奴隷にすると外聞が悪いのさ」
奴隷制度が一般的とは言え知り合いを奴隷にするのは問題があるのか。
税金が払えなくなったから一度奴隷になって立て替えてもらったら、奴隷商に売られてしまったといったトラブルも発生しそうだ。
そういうグレーゾーンのことをすると領主にも目を付けられそうだ。
残念ながら俺は辺境伯にもう目を付けられているのでほぼデメリットが無い……。
「本人と話をしてみたいが可能だろうか?」
「それはそうさ。少しお待ちなさいな」
シスターがその渦中の人物を呼びに部屋を出た。
「よろしいので?」
「俺らの人手が足りてないのは事実だからなぁ。合いそうにない人物なら断るから心配するな」
「お腹減った、です」
応接室のドアがノックされて「失礼します」と俺たちを案内してくれた美人エルフが現れた。