異世界迷宮でプライドを   作:ブラック微糖

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046 小芥子

 

 ヤーロンは笑顔で商談を始める。

 

 先程よりも余裕ができたので、ハーブティーのお替りを入れてくれるメイドさんの胸が大きいなぁと見ていると両隣に座る姉妹から冷たい目が刺さる。

 

 頭の角とハタキのような尻尾から牛人族の奴隷なのだろうか?

 

「つい先日入荷したばかりのドワーフなのですが……」

 

 ドワーフ……だと!?

 

 俺が興味が出たのを察したのかヤーロンは続ける。

 

「彼女は少し()()()でして実際にお会いした方が早いでしょう。今連れてこさせます」

 

 牛人族のメイドさんが礼をして部屋から退室していく。

 

 彼女ということは女性か。

 髭モジャおっさんが出てくることは無くなったが、エルカトルの手続きをすると残り資金は金貨25枚しかない。

 訳有りとはいえどこまで安くなるか不明な部分が多い。

 

 優秀な姉妹がいて美人エルフが奴隷になるのだから無理をして購入する必要はないように感じるな。

 

 金髪ギャルドワーフが来たら即買いしたい。

 

「連れてまいりました」

 

「入りなさい」

 

 ヤーロンが促すと、扉を開けて()()のドワーフが入ってきた。

 

  アビィ ♀20歳 村人LV2 

 

 全く知らないドワーフの登場である。

 

「アビィ、シロウ様にご挨拶しなさい」

 

「アビィです、よろしくお願いいたします」

 

 声ちっさ!

 ほとんど蚊が鳴くような挨拶にヤーロンが困った表情で説明する。

 

「この通り、このドワーフは生まれつき大きな声が出せません。健康で病気ではないのですが、喉が弱いようです」

 

 原作のドワーフは耳が細い=年寄りに見えるで減額されていたのを思い出す。

 

「ですが、獣人族の方は聴覚に優れておられますのでいかがでしょうか?」

 

 確かに声が小さいのは欠点であるが、獣人(おれたち)の耳には問題なく聞こえる。

 

「聞き取り難いが、それがそのドワーフの問題なのだろうか?」

 

「残念ながら他にもございます」

 

 その残念ながらは誰の視点なのかは聞くまでもないが、ヤーロンは続ける。

 

「彼女はとある名家の出身なのですが跡取り問題があり、子供を作らせないためにドワーフには売れません」

 

 原作の狼人族も同族に売らないように設定されていたなぁ。

 それが原因でオークションに出せないので、主人公に商談の話が舞い込んだわけだが。

 

「シロウ様は獣人族でございますし、ドワーフとは子供は作れませんので売却可能です」

 

 性奴隷には同意している、と遠回しに言っているのか。

 その目的で愛でるにしても痛めつけるにしても声が小さいと問題なのだろう。

 名家の血も子供を作れないのであれば価値が無くなる。

 

「俺が獣人でも、奴隷や他人のドワーフが行為に及んだらどうなる?」

 

「契約で産まれた子供は奴隷身分になりますので権利等が喪失します。たとえ母体を奴隷から解放した場合でも子供は奴隷になります」

 

 奴隷契約はインテリジェンスカードが関係しており、盗賊制度に匹敵する強制力がある。

 

 俺が奴隷商人を獲得しても契約内容を書き換えることはできないだろう。

 奴隷商人の更に上のジョブが存在すればもしかしたらがあるかもしれないが。

 

 アビィが小声でぶつぶつ言っているが、ヤーロンはここで売りたいのか押しが強い。

 

「本人から話を聞きたいがよいだろうか?」

 

「勿論でございます」

 

 ヤーロンが優雅な礼をして退出すると、アビィをソファに座らせて話しかける。

 

「人間族には聞かれないとは思うが、奴隷商人の頭の銅貨ハゲを貶すのはオススメしないな」

 

「聞かれてましたか」

 

 黒髪に目が隠れるほどに長い前髪、所謂メカクレの彼女はニヤリと笑った。

 

 成人しているがドワーフは子供並に低身長なので着物を纏えば座敷童かコロポックルに見えてくる。

 

「獣人の耳は他種族が思っている以上に聞こえるからな。その反抗的な態度は買い手がなくなるぞ」

 

「私は別に買われなくても構いませんので」

 

 俺はずっと覚えていた違和感を確かめたくて、彼女に手を伸ばした。

 

「失礼」

 

「!?」

 

 前髪を退かすと紫色の瞳の美少女と視線が合った。

 

「可愛い顔をしているのだから、愛想よくすれば大事にされるだろうに」

 

「放っておいてください」

 

 なんか小型犬が必死に威嚇しているように見えてきて思わず笑顔になる。

 俺の笑みが気に食わないのか、手を払いのけて明後日の方向を見てしまった。

 

 可愛いと言われたのがうれしいのかそわそわしていて、獣人ならば尻尾ぶんぶんだろう。

 

 いくつか質問が終わるとアビィが退室する。

 

「どう思う?」

 

「良いと思います」

 

「可愛い、です」

 

 思った以上に姉妹から好感触だった。

 美貌も胸囲もあるエルフは警戒していたが、反抗的な平たいドワーフが一番奴隷を脅かすことはないだろう。

 

 もしかしてそれも含めてこのタイミングで勧めてきた?

 主人と先人奴隷が小声でも問題なく、支障が出てくるエルフ奴隷の加入は彼女の後となる。

 

 ヤーロンが再び入室して聞いてくる。

 

「いかがでしょうか? 彼女は処女ですが、自ら作った張型(ハリガタ)で膜を破ってしまいまして……その他の事情も考慮しまして25万ナール。シロウ様はザフィーラ様のご紹介ですので20万ナール。これ以上は割引できません」

 

 訳ありドワーフ過ぎるだろ。

 

「脱税奴隷の件の手数料だけ前払いしたい、確認や手続きに費用などが発生するだろう」

 

「お気遣い大変感謝いたします。20万ナールと手数料1万ナールで21万ナールですが、シロウ様の偉大な野望を助力するために14万7千ナールをお願いいたします」

 

 3割引きスキルで特価品ドワーフを購入した。

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