異世界迷宮でプライドを   作:ブラック微糖

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048 毒針

 

「俺は魔法が使えるし、特別な移動魔法が使えるし、特別に強い武器が出せるし、ハーレムを目指している」

 

 アビィが困惑した様子で一番奴隷に聞いた。

 

「えっと……どれが冗談ですか?」

 

「シロウ様はハーレムを含めて全部本気です」

 

 二人して可哀想な人を見る目で見てくるの何か癖に来るな。

 

「だからダンジョンに直接……そういえば詠唱もありませんね」

 

「無詠唱も使えるし、複数のジョブがあり、ジョブを自由に切り替えられるぞ!」

 

「すごい、です!」

 

 頭痛が痛そうなアビィも、ライラーのように単純に「すごい!」で済ました方が楽になるぞ。

 

「それは凄いですね……」

 

 一気に説明したからそんな結論になるのも仕方ないと思う。

 

「他にも色々あるが、基本的に内密にしてほしい」

 

「まだあるのですか……分かりました」

 

 アビィが遠い目をしている。

 

「誰かに話したとしても気がふれたとしか思われませんし」

 

 俺を含めて全員で深く頷いた。

 

   アンドリー南の迷宮

    第1階層 待機部屋

 

「毒針も売るほど集まったのでクロスボウを撃ってみようと思う」

 

「売るほど集まったなら売ればいいのでは?」

 

 正論しか言わない心なきロボットのようなことを言うアビィからクロスボウを受け取る。

 

 ルウのダンジョンの知識とアビィのドワーフの知識が合わさるとかなり情報が更新された。

 

 ダンジョンにおいて弓と弩は不遇な武器種である。

 剣と魔法の世界において、重量のある矢やボルトを持ち歩く必要があり、更に残弾が尽きれば何もできない。

 

 クロスボウ・弩の特徴は全ての種族が装備でき、腕力で威力が上がらない分、専用のボルトが必要である。

 鉄のボルトや毒針では革装備や最下層のモンスターにそこそこの固定ダメージは入る。

 一番弱い木のボルトではダンジョン外のLV1のモンスターにしかダメージが入らないとされている。

 ボルトは鍛冶師が作れるが、階層が上がるとその分だけ要求される素材が価値が上がるのでコスパが最悪だ。

 

 弓は、腕力で威力が上がる武器だが同時に器用さを高く要求される武器らしい。

 竜人族やドワーフのような腕力の高い種族が使えれば威力が期待できるが、器用さが低いと装備すらできない。

 結果的に器用さが高い獣人やエルフが使うと逆に腕力が低くて微妙な武器に代わってしまう。

 矢は鍛冶師が作れても、矢の種類では威力は変わらず耐久性が変わるだけらしい。

 

 結論、微妙過ぎるな!

 

  ニートアント LV1 

 

 毒針をセットしたクロスボウを構えると射出する。

 距離が離れているので僅かに的を外れたが、2射目は当たった。

 

「やったか?」

 

「駄目、です」

 

 原作では20本近く使ってやっと毒にしていたので1発では無理だろう。

 

 毒になっていない蟻がこちらに気が付いたのか迫ってくるのでライラーにタゲを取ってもらう。

 

 彼女は蟻にシミターを1発当てるとそのまま飛び、ダンジョンの壁を蹴って天井と壁の境に張りついた。

 

 蟻はライラーを認識しているが困ったように床をぐるぐる回っている。

 

 まさかあれはタゲを持ったプレイヤーが梯子や壁などに張りついて敵の攻撃範囲外で待機する様子が蝉に見える、定番ネットゲーム戦術の通称セミでは?

 

 毒の判別をルウに任せてクロスボウを連射するが一向に毒にならない。

 

 クロスボウに腕力補正が乗らないとされているが、ボルトを充填するのに力が必要なので充填速度には影響が出そうに思える。

 

「ぁ」

 

 アビィの声に手が止まるが、蟻が天井のライラーに向かって壁を登り始めたのだ。

 

「大丈夫ですよ」

 

 ルウの視線の先、蟻の攻撃が届きそうな距離まで迫られたライラーは手を放して床に降りた。

 蟻が追いかけてくるが床に降りた時点で、反対側の天井と壁に飛び移った猫娘に翻弄されている。

 

「毒になりました」

 

 アイテムボックス2枠目を使い始めた時点で、どこまで毒にならないか逆に挑戦している気分になっていたが30本後半で毒になった。

 

「あとは毒で倒れるまで頼む!」

 

 ライラーは飽きてきたのか欠伸をしながら淡々と繰り返すと、毒ダメージで蟻が倒れた。

 

  毒針 

 

 一応、他の魔物が合流しないか注意はしていたがアンドリー南の第1階層は探知範囲が極端に低いニートアントしか出ないので問題なかった。

 

「これで何のジョブが得られるのですか?」

 

「これで戦士がLV30になれば暗殺者が取得できるはずだ」

 

「戦士にレベルはありませんが?」

 

 この世界はボーナススキル=鑑定が無いのでアイテムボックスの数でレベルが分かる探索者以外はレベルが存在しない説が主流だったか。

 

「俺は、ジョブのレベルや武器や防具のスキルスロット数が見えるスキルが使える!」

 

 アビィは一番奴隷に聞き返した。

 

「ハーレムを含めて全て冗談言ってますか?」

 

「面白いお方でしょう?」

 

 何か芸が滑ってる芸人を見せられているような視線は止めてほしい。

 

「すごい、です!」

 

 ドロップアイテムと転がった毒針を回収してきてくれたライラーを撫でて労わっておいた。

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