異世界迷宮でプライドを   作:ブラック微糖

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053 交渉

 

「それは助かる。思わぬ美しい女性が出てきて緊張していたからな」

 

「大丈夫です。獣人の冒険者はもっと粗野な方も多いので」

 

 モナはクスクスと笑う。

 彼女の話によると、獣人の対応をすることも多いのだが「スキル付き武器をもっと安く購入しろ!」みたいな客も多いらしい。

 

「それに貴族嫌いのシスターが紹介する人物ですからね」

 

「それは褒められているのかよく分からないな」

 

 お互い肩の力を抜いてハーブティーを飲みながら雑談を続ける。

 

「不思議な方ですね。ダンジョンを攻略されているのに清潔感がありつつも複数の女性の臭いがする、そして何より()の臭いがしません」

 

 狼人族は他の種族よりも鼻が優秀だと聞いていたが、浮気とかしたら隠せる自信がないな。

 

「将来的に余ったスキル付き武器を売りに出したいと思っているが、何が高く売れる?」

 

「そうですね、魔法使いが使う「ひもろぎの杖」は高額になり易いですし、安定して需要があるのは強権の武器になります」

 

「今回買ったカードが成功したとして、何に付けたら高額になると考える?」

 

「成功を期待するのは間違ってはいないのですが、複数買えばそういう場合もあるでしょう。例えば強権の鋼鉄槍であればオークションに出せば最低でも30万ナール、倍にはなりませんが40~50万ナールまで狙えますね。ただ珍しい商品ではないので他に目玉があれば金額は低くなります」

 

 有能だが希少ではない武器はオークションではなく、直接騎士団に持ち込んだ方がいいかもしれないな。

 

「シロウ()は、もしかしてアンドリーのバケツの御方をご存じですか?」

 

「!?」

 

 騎士団のことを考えているとその人物の話をされて少し警戒してしまう。

 

「ぁ、ごめんなさい。先日、バケツの御方の御子女とお話しする機会がありまして」

 

 そういえば辺境伯に娘がいると話されていたな。

 

「彼女が「お父様が最近変わった虎人族の若者がいると言われてて会ってみたいですわ!」と話されていました」

 

 こちら側では虎人族は珍しいらしいので、同一人物の可能性が高いと思われたのか。

 

「アンドリーに寄った際に盗賊退治で騎士団に協力してな、それが縁でバケツの御仁には大変世話になっている」

 

 世間は狭いなぁ。

 辺境伯の娘と取引ができるくらいには、この商人は信用と腕があるのだろう。

 

「そういえば騎士団とは直接は関係ないのですが、強権のショーテルを探している人物を知っています。購入は一任されていますので、50万ナール即金で出せます」

 

 その金額ならばオークションに出すよりも条件が良さそうだ。

 

「覚えておこう。落札できた時の連絡先は、孤児院の隣の建物にしてほしい」

 

「三階建ての?」

 

 住所をまだ覚えていなかったが通じて良かった。

 

「隣に住んだことでシスターと縁ができてな」

 

「そうですか。不思議な縁ですね」

 

 こうして、シロウ君と呼んでくれる美人の女商人と縁ができたのだった。

 

   リーベ

   孤児院

 

 商人ギルドで長話をしてしまったので、孤児院に帰ると全員揃っていた。

 

「どうしてこうなった?」

「躾、です」

 

 ライラーが孤児院の子供達を従えていた。

 

「ライラーさん、凄いですよ。たった半日で子供達に懐かれるなんて新記録です!」

 

 エルカトルに話を聞くと子供達と遊んだりしてる間に懐かれたらしい。

 

鬼人族(おに)ごっこで階段飛び越えられたら無理です」

 

「おねぇちゃ、だいじょうぶ?」

 

 遠い目をしているアビィを5才のアンリちゃんが慰めていた。

 

 こっちの世界にも鬼ごっこ的な遊びがあるのか…鬼人族? サイクロプスごっことかではなく?

 

「ルウ、鬼人族はいるのか?」

 

「鬼人族は滅んだ種族です。()()()との戦いで滅んだと言われていますが?」

 

 虎人族なのに知らないのですか? と怪訝そうに言われたが素直に答えた。

 

「特に話題に上がらなかったから知る機会がなかったなぁ」

 

「童話にもなってますよ、鬼人族を滅ぼした勇者トラタロスとか」

 

 何それ、凄く興味ある。

 本や絵本が庶民に普及してなくても、童話くらいは伝聞で伝わっているよな。

 

「ボス、です」

 

 ライラーが子供たちに俺を紹介すると畏敬の念を向けられてしまう。

 

「昨日の肉をくれた兄さんだよ」

 

 シスターの言葉に子供達から「わー!」と感謝の歓声が上がる。

 

「たった数秒で子供たちに懐かれるなんて記録更新ですね!」

 

 気恥しくなったので、情報共有するために応接室に逃げた。

 

   リーベ

  孤児院応接室

 

 エルカトルが薄いハーブティーを準備していると、シスターが話し出す。

 

「先ずは私からだね。奴隷でも僧侶ギルドに所属はできるけど月数回の治療義務は残るね、脱退する場合は村人に戻されるよ」

 

「エルカトルには一旦探索者になってもらおうかと考えている。俺が冒険者になった際にダンジョンウォークできる人物が必要だ」

 

「僧侶ギルドに所属するメリットとしては治療費が少し割引されるくらいさねぇ」

 

 エルカトルは僧侶ギルドを脱退して探索者になることに決まる。

 

「次は俺だな。シスターのお蔭で無事仲買人に会うことができたよ」

 

「どうだい、美人だっただろ?」

 

「エルカトルの方が美人だったよ」

 

 これにはシスターもぐうの音も出なかった。

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