異世界迷宮でプライドを   作:ブラック微糖

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056 農具

 

 シャベル。

 

 ファンタジー世界においては異質であるが、軍記物語では根強い人気がある武器だ。

 歴史上において弓や銃といった遠距離武器を除くと剣と槍に続いて人を殺した武器として名前が挙がる。

 敵の頭蓋骨や肩骨ごと切断できる重量と頑丈さ、更に戦略的に素早く穴が掘れる有能さ。

 

 まぁ、ダンジョンの床は宝箱以外では硬すぎて掘れないらしいが。

 

「駄目でしょうか?」

 

「その鋼鉄製のシャベルは1万5000ナールざます」

 

「いや、大丈夫だ」

 

 値段、スキルスロット共に問題ない。

 

 なんで武器屋に農具が?という気持ちが無いわけではないが、店には草刈り鎌や大鎌も並んでいる。

 農民というジョブが存在しているのだから、それに適性がある武器が作成できても不思議ではない。

 

 人間の鍛冶師が作った普通の農具と違って、スキルスロットがあるということはドワーフ製の正真正銘の武器なのだ。

 

 3割引きスキルは複数の買い物で発動するので、もう一つ何かを買う必要がある。

 

「店主、ショーテルは置いているか?」

 

「あるざます! すぐお持ちするざます」

 

  ショーテル 

  ショーテル 〇〇〇〇 

 

 独特なS字に彎曲(わんきょく)した両刃の片手剣が店の奥から2振り出てきた。

 ショーテルはその独特な形状の刃で盾を持った相手の腕を傷付けて有利にする武器だと言われていた気がする。

 

「ショーテルは聖銀製で魔法の威力が上がーるざます。魔物の防御を僅かに貫通する有能な武器ざまーすがあまり人気ではないざます」

 

 正直なところは好感が持てるざます。

 魔法の威力が上がるがパーティーの要の魔法使いを前線に出すのは防御貫通を内蔵しててもリスクの方が大きい。

 魔法使いは腕力も器用も体力も低い後衛ジョブなのだ。

 

「防御貫通の効果も気休め程度と言われています」

 

 余程、前衛で戦いたい魔法使いなら欲しがるだろうが人気があるかと言われると無いと思う。

 

「いくらだ?」

 

「5万ナールざます」

 

 腐っても聖銀(ミスリル)製の武器、人気がなくてもそれくらいはするよなぁ。

 エルカトルの契約に4万ナール税金を納めると、金貨は残り11枚、3割引きで……。

 

「鋼鉄のシャベルが1万5000ナール、ショーテルが5万ナールで合わせて6万5000ナールざますが、お勉強して4万5500ナールお願いするざます」

 

 取引に使えるのと、純粋に性能を試してみたいのでスロット4個のショーテルを購入した。

 ショーテル1本の値段でシャベルが無料になるから勉強は大事だなぁ。

 

「お勉強、です」

 

 他人事なライラーを見ると目を逸らされたが、俺もブラヒム語の文字の勉強しないといけないとは思っている。

 

「ライラーは簡単な読み書きはできますよ」

 

 一番勉強が必要なのは俺だったことが判明してしまった。

 

   アンドリー

  商人ギルド商談室

 

「この度は当商館をご利用いただき大変感謝致します」

 

「本日はよろしく頼む」

 

 翌朝早くエルカトルとルウを連れてアンドリーの商人ギルドに行くとすぐに商談室でヤーロンと合流した。

 

 アビィは試験を受けるために鍛冶師ギルドに向かっている。

 武器を持っているとはいえシャベルなので帯刀しているライラーを護衛に行かせた。

 正直、ドワーフの腕力で奮われるシャベルの方が相手にしたくないが。

 

「これはこれは、お美しいエルフの方で……」

 

「彼は男だ」

 

 さすがに熟練の奴隷商人でも動揺を感じたが、手続きはスムーズに進む。

 

 別室で第3者と本当に奴隷になることを希望するか確認している間にヤーロンと雑談する。

 

「性別については驚きましたが、オークションに出れば白金貨2枚、いや3枚に届く逸材ですぞ」

 

「残念ながら売るつもりはないな」

 

 しかし白金貨2枚は破格過ぎる。

 ダンジョンで優秀な竜騎士でも白金貨に届かず、魔法使いでやっと白金貨1~2枚の世界でその値段だ。

 性別は男だぞ? いやむしろ希少性でいうと価値を吊り上げている可能性すらあるな。

 

「俺のハーレムにも男手は必要になるからな」

 

「感服いたします」

 

 ハーレムを妥協しないためにそこまでするか?と純粋に感動されている気がする。

 

 シロウ・トラシマ

 所有奴隷:ルウ/ライラー/アビィ/エルカトル

 

 税金を払い終えて、手続きを完了するとヤーロンが揉み手で営業してくる。

 

「ところで、ダンジョン攻略を頑張っておられるシロウ様におすすめの()()()の奴隷が入荷いたしましたがご興味はございませんか?

 勿論、女性でございます」

 

 興味ある。

 おそらく金髪ギャルドワーフの話だと思うが先に値段を聞くと白金貨1枚。

 はい、無理!解散!

 

「ドワーフはアビィを買ったから十分だし、エルカトルよりも美麗ならば考えるが……」

 

「失礼いたしました。あれを超えるのは至難でございます」

 

 またの奴隷が必要な際はご利用くださいと、ヤーロンと別れて再びリーベへと飛んだ。

 

   リーベ

   自 宅

 

「ライラーとアビィは中庭の方にいますね」

 

 パーティー編成の位置情報でも二人が自宅に戻ってきているのは確認できる。

 

「なんで中庭……、シャベル、何も起こらないはずもなく」

 

 嫌な予感がするが、俺には中庭が穴だらけになっていないことを祈るしかできなかった。

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